≪プロ社員とアマチュア社員の差?≫ 2013.4 月

≪プロ社員とアマチュア社員の差?≫ 2013.4 月
ガラパゴス化している、日本の女性活用
東洋経済オンライン 3 月 14 日 8 時 5 分配信
<女性活用がなかなか進まない日本。大手企業は女性活用を推進しようとさまざまな制
度を導入しているが、女性管理職比率などは依然低いままだ。ダイバーシティやワークライフ
バランスに詳しいアパショナータ代表のパク・スックチャ氏は、優秀な女性社員が何年も育
休・時短勤務などを続け、キャリアアップの妨げになっていることが、女性活用が進まない大
きな原因と考える。今後、早急に検討しなければいけないのは女性の労働時間を減らす各種
社内制度を充実させるのではなく、きちんと仕事ができる環境を整備することだという。特に
大手企業では、法定以上の育児休業や短時間勤務を導入する企業が大幅に増え、現在で
は 2、3 年間の育児休業や、子が小学 3 年まで利用できる時短勤務制度を提供する企業も珍
しくない。
専門家の指摘によれば日本の両立支援は、戦力化につながっていないようです。
大和総研の主席研究員、河口真理子氏は、現在のワークライフバランス政策は「家
庭責任が主で、会社では、補助的な仕事を行う女性社員を大量に作り出した」と指摘
しています。
大半の企業は、女性の活躍を期待して両立支援を充実させたにもかかわらず、女
性が単に辞めなくなっただけという「定着」にとどまり、戦力化にはつながっていない
のが現状のようです。女性が出産後も仕事を続けることが当たり前になりつつある過
程で、育児休業者や時短勤務者が増加しており、この問題は今後より大きくなってい
くことが予想されます。
米国では、女性が企業の両立支援を勝ち取ったといわれています。国民負担率の
低い米国は政府の支援が手薄な分、企業が両立支援を担わなくてはなりません。そ
のため、従業員に高い生産性などの見返りを求めるようです。終身雇用がなく、低パ
フォーマンスを理由とした解雇もありえるので、従業員は制度に甘えられません。そ
のような状況下で、米国の女性たちは期待された成果を出し、両立支援を勝ち取って
いったのです。
海外企業が両立支援に取り組む目的は「従業員が家庭責任を果たしながらも、仕
事上の成果が出せるように、障害となるものを取り除くこと」。そして、企業と従業員の
Win-Win 関係を達成するには双方に責任が生じる。単に「従業員が子育てをしながら
仕事を続けやすくするため」ではないのです。この認識のギャップが日本のワークライ
フバランスのガラパゴス化が進む要因の一つといわれています。
日
本
米
国
香
港
シンガポール
台
湾
中
国
出産休暇
14 週間
12 週間
10 週間
16 週間
18 週間
98 日間
育休
○
△
×
×
△
×
時短
○
△
×
×
×
×
○:あり、△:限定的、×:なし。
(注)大和総研主席研究員河口真理子氏調査、作成
米国では政府が無休の産前産後 12 週間の休暇を提供するのみで、育児休業は
個々の企業に任せられ、一般的に産後 3~6 カ月前後で職場復帰します。企業はさま
ざまな柔軟な勤務形態を調えているが、従業員が時短勤務を利用できるのは、あく
までも仕事に支障がない場合にのみ許可され、「全社員に平等」には提供されるわけ
ではありません。制度は権利ではないとされています。また、主なアジア諸国では一
般的に育児休業と時短勤務がないため、8~16 週間の出産休暇後、フルタイムで復
帰します。タイでは出産の翌週から働く人もいるようです。米国やアジアでは終身雇
用がないので、家庭責任があっても、企業は給与に見合ったパフォーマンスを期待し、
働く側も雇用やキャリアロスを心配して、保障される出産休暇直後に復帰するので
す。
欧州と違い、米国や主なアジア諸国は、日本の育休や時短勤務制度のような手厚
い制度はありません。一方、終身雇用がない分、労働市場は流動化しており、自分の
能力レベルの転職市場での職場選びは、それほど難しいことではないようです。
このように米国やアジアでは育児休業や時短勤務はないし、またあったとしても非
常に限定的ですが、日本のような問題は起こっていません。つまり「育休・時短勤務
による仕事への支障」は、日本だけが抱えている特有の課題なのです。与えられた権
利ではなく、勝ち取った権利こそ知恵の結晶として機能するものなのでしょうか。甘え
社会の日本では益々権利意識が強くなっていき、結局は本来の目的に見合った結果
を得られないような気がします。今後は、アマチュア社員ではなく、プロ社員としての
意識改革が女性だけでなく男性社員にも益々必要となってくるでしょう。