鋼構造物変位の 3D 画像表示システムの開発

2003 年 電子情報通信学会総合大会
D-11-137
鋼構造物変位の 3D 画像表示システムの開発
Development of Three Dimensional Picture Display System of Steel Tower Transformation
三橋 龍一*1
五十嵐 和博*1
扇 彰宏*1
吉野 巧*1
米田 俊*2
青木 由直*3
Ryuichi Mitsuhashi
Kazuhiro Igarashi
Akihiro Augi
Takumi Yoshino
Syun Yoneta
Yoshinao Aoki
*1
北海道工業大学
Hokkaido Institute of Technology
*2
(株) ハイデックス・和島
Hidex Wajima
1. はじめに
無線鉄塔などの鋼構造物には、地震などの大規
模な地盤変動以外にも、立地箇所周辺の大規模な
土木工事や斜面の影響など、環境変化による構造
物自体の不規則な変位を伴った変形が発生する場
合がある。そこで各所管の機関では、これら変形
による鋼構造物への影響を把握するため、変位の
監視を行っている。
この変位観測の手法は、目視による検査やボル
ト間の距離測定から、精密な指定ポイントの 3 次
元測定によるデータ解析まで、さまざまなものが
あり、中でも精密な 3 次元測定による変位測定が、
もっとも信頼性が高いと言える。しかし、現在は
この測定データをボルト間の距離データに変換し
て管理しており、3 次元測定データが有効に活用
されているとはいえない。
そこで本稿では、3 次元測定データから鋼構造
物の 3 次元像の再構成を行い、鋼構造物の変位状
態をわかりやすく可視化して表示するシステムの
研究を主体に、部材の変位量から危険度を推定し、
高度で正確な鋼構造物の診断システムの構築につ
いて検討する。
2. 鋼構造物の変位測定
レーザ光を使用した 100m の距離で標準偏差
0.9mm 以内という高精度な測定装置を用いて、鋼
構造物の指定ポイントにターゲット反射シールを
貼付して測定を行った。鋼構造物の変位を測定す
る場合、通常は上部までのデータを取得する必要
が無いとされていることから、測定は下層部のみ
を対象に行った。
従来は、測定ポイントを示す測定データ番号を、
測定現場で鋼構造物の図面に書き入れる方法を用
いていた。その方法で得られた測定データから、3
次元像を構築するためには、測定時の図面と見比
べながらの膨大なデータ変換の手作業が必要であ
った。また、一般に鋼構造物の設置場所は険しい
山の中など、測定作業自体が過酷であることが珍
しくない。そこで、測定現場での作業負担の増加
を最小限に抑えて、コンピュータでの自動データ
処理のため、基準点や基準方向を統一した上で、
部材番号に基づいた一般化したデータ表現方法を
開発した。
*3
北海道大学大学院工学研究科
Hokkaido University
3. 鋼構造物の 3D 画像表示
鋼 構 造 物 の 3D 画 像 表 示 は 、 Windows 上 で
DirectX の 3D グラフィックス機能を利用して行っ
た。表示は図 1 のように行われ、鋼構造物をディ
スプレイ上で自由自在に回転や拡大縮小の操作が
可能になり、数値データからでは専門家以外には
困難であった空間的な変位の把握が可能になった。
図 1 鋼構造物の表示例(時間差測定データ)
また、危険度の評価は、現在は従来から用いら
れている各部材の測定ポイントの変位から求める
計算式をそのまま使用して判定している。
実際に試用してみると、測定ミスも視覚的に容
易に判別できることが明らかになり、この効用も
かなり大きいことが判明した。
4. おわりに
今後は部材の応力計算に基づいた、より高度な
危険診断を行う予定である。また、ユビコンチッ
プの鋼構造物への取り付けによるデータ管理や、
無線鉄塔で必要とされる信号ケーブルの経路を求
めることなどへの応用も検討する。
謝辞 本研究の一部は、平成 14 年度文科省「札幌
IT カロッツェリアの創成」研究費により行われた。
ここに謝意を表する。
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