溶解・沈殿反応 【天然水の化学組成】 天然水の特徴 ・天然水の金属

溶解・沈殿反応
【天然水の化学組成】
大陸地殻表層
(mg kg-1)
河川水
(mg kg-1)
77.4
30.9
29.4
25.7
28.6
13.5
0.05
0.04
13.4
5.2
1.3
3.4
Al
Fe
Ca
Na
K
Mg
天然水の特徴
・天然水の金属イオンは主に岩石の風化に
より生じる。
・ただし、地殻と天然水の元素組成に大差
がある。
Andrews et al. (2003)
An introduction to Environmental Chemistry
・天然水の主要金属成分はCa、Na、K、Mg。
【イオンの水分子の反応】
陽イオン
水分子
電荷(z) 小、イオン半径(r) 大。 電荷(z) 大、イオン半径(r) 小。 電荷(z) 大、イオン半径(r) 小。
水和イオンをつくる
水からOH-を奪い水酸化物
例:Na、K、Mg、Ca
Al3+ + 3H2O = Al(OH)3 + 3H+ S(VI) + 4H2O = SO42- + 8H+
例:Fe(III)、Al、Mn(IV)
水によく溶ける。
水に溶けにくい。
水からO2-を奪いオキシ陰イオン
例:S(VI)、N(V)
水によく溶ける。
5-1
とけやすさ・沈殿しやすさの尺度、溶解度 (solubility)
【溶解度積 (solubility products)】
AaBbであらわされる鉱物の溶解反応式:
AaBb = aA + bB
[ A]a [ B]b
平衡定数 K =
[ Aa Bb ]
この反応は平衡に達したとき、溶存種AおよびBの濃度は、純粋な固体の濃度は1
なので、溶解度積(Ksp)によって規定される。
K sp = [ A]a [ B]b
1
log K sp
a
b
1
log[ A] = − log[B] + log K sp
a
a
反応が平衡にあるとき、濃度AとBの関係は、
勾配-b/a、切片1/a logKspの直線であらわされる。
言い換えると・・・鉱物AaBbと平衡にある溶液の水質
は、右直線上にプロットされる。
log[A]
対数をとり展開すると、
b
−
a
b
a
log[B]
5-2
【25℃でのジプサム(CaSO4.2H2O)の溶解度】
0
-1
-2
C
飽
和
2+
B
未
-3
[Ca2+]をy軸、[SO42-]をx軸に平衡関係を作図せよ。
-4
A
-5
-5
-4
2−
対数をとり展開: log[Ca ] = − log[SO4 ] − 4.36
E
和
K sp = [Ca 2+ ][SO42− ] = 10−4.36
log[Ca2+]
飽
質量作用の法則:
過
溶解反応式: CaSO4.2H2O = Ca2+ + SO42- + 2H2O
【ジプサムの生成環境や安定性を予測する】
D
-3
-2
-1
0
log[SO42-]
以下の水質のなかで、ジプサムを生成しうる溶液はどれ?
水A
:Ca2+ 0.1 mM、SO42- 0.1 mM
未飽和
水B
:Ca2+ 10 mM、SO42- 10 mM
平衡
水C
:Ca2+ 0.1 M、SO42- 0.1 mM
未飽和
水D
:Ca2+ 0.1 mM、SO42- 0.01 mM
未飽和
水E
:Ca2+ 0.1 M、 SO42- 0.1 M
過飽和
5-3
【飽和指数】
0
イオン活量積(IAP):現実のイオン濃度の積
過
2+
-1
2−
4 現実
SI < 0 → 未飽和
C
B
-3
和
SI > 0 → 過飽和
-2
飽
SI = 0 → 平衡
和
飽和指数(SI) = log (IAP) – log (Ksp)
E
未
log[Ca2+]
飽
IAP = [Ca ]現実 [ SO ]
-4
A
-5
-5
-4
D
-3
-2
-1
0
log[SO42-]
log (IAP)
SI
水A
:Ca2+ 0.1 mM、SO42- 0.1 mM
-8
-3.64
未飽和
水B
:Ca2+ 10 mM、SO42- 10 mM
-4
0.36
平衡
水C
:Ca2+ 10 mM、SO42- 0.1 mM
-6
-1.64
過飽和
水D
:Ca2+ 0.1 mM、SO42- 10 mM
-6
-1.64
平衡
水E
:Ca2+ 0.1 M、 SO42- 0.1 M
-2
2.36
過飽和
5-4
【飽和指数の練習問題】
問題
Aはデンマーク、Bはインド、Cはエチオピアのある池の水質を示す。濃度は
mmol/lで与えられる。
溶液はカルサイトに関して未飽和か?過飽和か?飽和指数を計算せよ
ただし CaCO3 + H+ = Ca2+ + HCO3-
log Ksp = 1.71
H2CO3= HCO3- + H+
log K1 = -6.36
HCO3- = CO32- + H+
log K2 = -10.33
5-5
酸化物やケイ酸塩の溶解・沈殿反応
地球表層を構成する鉱物のほとんどは酸化物、水酸化物およびケイ酸塩鉱物
単一の金属からなる酸化物、水酸化物およびケイ酸塩鉱物
石英SiO2、アモルファスシリカSiO2、
ヘマタイトFe2O3、ゲータイトFeOOH、アモルファス鉄酸化物(フェリハイドライト)Fe(OH)3、
ギブサイトAlOOH、アモルファスアルミニウム水酸化物Al(OH)3
2つの金属からなる酸化物、水酸化物およびケイ酸塩鉱物
カオリン鉱物Al2Si2O10(OH)4
3以上の金属からなる酸化物、水酸化物およびケイ酸塩鉱物
雲母KAl3Si3O10(OH)2、明礬KAl3(SO4)2(OH)6
5-6
[酸化物やケイ酸塩の溶解・沈殿反応式]
石英・アモルファスシリカ
SiO2 + 2H2O
=
H4SiO4
ヘマタイト
Fe2O3 + 6H+
=
2Fe3+ + 3H2O
ゲータイト
FeOOH + 3H+ =
Fe3+ + 2H2O
アモルファス鉄酸化物
Fe(OH)3 + 3H+ =
Fe3+ + 3H2O
ギブサイト
AlOOH + 3H+
=
Al3+ + 2H2O
アモルファスAl水酸化物
Al(OH)3 + 3H+ =
Al3+ + 3H2O
カオリン鉱物
Al2Si2O10(OH)4 + 6H+ = 2Al3+ + 2H4SiO4 + H2O
ほとんどの溶解反応式はH+を含む
→ 酸化物やケイ酸塩鉱物の溶解・沈殿反応はpHに依存する。
→ これらの鉱物の溶解・沈殿平衡は溶液のpHと金属イオン濃度によって規定される。
5-7
【25℃での石英の溶解度曲線】
H4SiO4、H3SiO4-、H2SiO42-
水溶液中に存在しうる溶存シリカ種
溶存シリカの脱プロトン化の化学反応式
H4SiO4 = H3SiO4- + H+
(1)
H3SiO4- = H2SiO42- + H+ (2)
[ H 3 SiO4− ][ H + ]
= 10−9.9
K1 =
[ H 4 SiO4 ]
[ H 2 SiO42− ][ H + ]
−11.7
K2 =
=
10
[ H 3 SiO4− ]
pHに伴う溶存シリカ種の変化
100
H4SiO4、
H3SiO4-
存在%
80
H2SiO42-
60
H3SiO4-:pH9から12で優勢
40
H2SiO42-:pH12以上で優勢
20
0
2
H4SiO4:pH9以下で優勢
4
6
8
pH
10
12
14
5-8
25℃での石英の溶解反応(pH9以下)
−4.0
SiO2 (石英)+ 2H2O = H4SiO4 (3) K
=
[
H
SiO
]
=
10
sp , 3
4
4
log[H4SiO4] = -4.0
25℃での石英の溶解反応(pH9から12)
−
+
SiO2 (石英)+ 2H2O = H3SiO4- + H+ (4) K sp , 4 = [ H 3 SiO4 ][ H ]
この反応式は、(3)式+(1)式と等しい。
0
-]
log[H3SiO4 = pH -13.9
25℃での石英の溶解反応(pH12以上)
SiO2 (石英)+ 2H2O = H2SiO42- + 2H+ (5)
K sp ,5 = [ H 2 SiO42− ][ H + ]2
この反応式は、(4)式+(2)式と等しい。
したがって、Ksp,5 = K2×Ksp,4 =
log[H3SiO4-] = 2pH -25.6
10-25.6
log 全溶存シリカ濃度
したがって、Ksp,4 = K1×Ksp,3 = 10-13.9
-1
-2
過飽和
-3
-4
未飽和
-5
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
pH
全溶存シリカ濃度=[H4SiO4]+[H3SiO4-]+[H2SiO42-]
5-9