造血器腫瘍に合併した深在性真菌症に対する カスポファンギンの有用性

造血器腫瘍に合併した深在性真菌症に対する
カスポファンギンの有用性に関する
多施設共同臨床第Ⅱ相試験
Caspofungin Safety investigation
in Gifu Hematology Study Group trial
(GHSG 1401)
2014 年 2 月 6 日 Ver3.1
目次
1. 研究背景
2. 目的
3. 評価項目
4. 研究デザイン
5. 対象
6. 試験方法
7. 終了・中止基準
8. 検査、評価スケジュール
9. 安全性報告
10. 臨床効果判定
11. 補償
12. 倫理的事項
13. 研究成果
14. 試験実施期間
15. 目標症例数
16. 試験組織
17. 参考文献
18. 参考資料
2
1.研究背景
急性白血病や悪性リンパ腫、骨髄異形性症候群などの造血器腫瘍の患者においては、
疾患自体による免疫能の低下や抗癌剤投与による好中球数の減少のため、重篤な真菌
感染症の合併が多くみられる。好中球減少患者における初期の発熱はほとんどが細菌
感染症であるが、広域スペクトルの抗細菌薬に数日間不応性の発熱や好中球減少が遷
延した際に菌交代現象として真菌感染症の発症が認められる。真菌感染症の診断は真
菌の証明が最も確実ではあるが、臨床上困難な場合も多く、診断が確定してからでは治
療のタイミングを逃すこととなる。抗菌薬不応の発熱性好中球減少症に対しては、早期よ
り経験的及び先制攻撃的抗真菌療法を行うことが様々なガイドラインで推奨されている
1
。
キャンディン系抗真菌薬カスポファンギン(カンサイダス®)はカンジダ属及びアスペル
ギルス属に対して優れた抗真菌活性を示し、カンジダ症、アスペルギルス症および発熱
性好中球減少症に対する経験的及び先制攻撃的抗真菌療法の初期治療として推奨さ
れている薬剤である 2-4。腎機能障害を有する患者に対しても通常量での投与が可能とさ
れているが、腎機能別での有効性や安全性に関する詳細な検討は行われていない。
また、医療技術の進歩に伴う医療の高度化や高齢化の進展によって、医療費は高額と
なる一方であり、医療資源の効率的な活用は今後の大きな課題のひとつである。抗真菌
薬は一般に高価であるため、抗真菌療法に必要な費用も高額となる傾向にある。カンサ
イダス®は既存の抗真菌薬と比較して費用対効果が優れるとされており、医療費軽減に
寄与する事も期待される。
そこで今回、造血器悪性腫瘍患者で深在性真菌症ならびに抗菌療法不応等による深
在性真菌症疑い症例を対象に、カスポファンギンの有効性・安全性および治療に必要な
医療費の検討を行うこととした。
2. 目的
1) 造血器悪性腫瘍患者に発症した深在性真菌症ならびに抗菌療法不応等による深在
性真菌症疑い症例に対するにおけるカスポファンギンの有効性・安全性を検討す
る。
2) カスポファンギン投与後の血中濃度測定を行い、腎機能障害がカスポファンギンの
有効性、安全性に与える影響を検討する。
3) カスポファンギンによる深在性真菌症ならびに疑い症例治療に必要であった直接医
療費を算出し、過去の報告を用いて他の抗真菌薬との比較を行う。
3. 評価項目
3.1 主要評価項目
深在性真菌症および疑い症例に対するカスポファンギンの有効性。
3.2 副次評価項目
1) 有害事象発生率。
2) カスポファンギン血中濃度。
3
3)
4)
5)
6)
腎機能別のカスポファンギンの有効性および安全性。
死亡率(全死亡率、感染症関連死亡率)
治療期間に必要であった直接医療費。
他の抗真菌薬を用いた過去報告とのヒストリカルな比較検討。
4. 研究デザイン
オープン
5. 対象
5.1 対象患者
1) 文章による同意が得られた 18 歳以上の造血器腫瘍患者。
2) 真菌学的検査又は病理組織学的検査により原因真菌が証明された患者。
3) 臨床症状・所見から感染症状を認め、かつ真菌の血清学的検査所見又は胸部
X 線・CT・内視鏡検査等の画像所見から深在性真菌症と判断された患者。
4) 抗細菌薬不応性の発熱(腋下体温 37.5℃以上)を有し、かつその他の臨床症
状・所見から深在性真菌症が疑われた患者。
5.2 除外基準
1) 本剤およびキャンディン系抗真菌薬に過敏症の既往歴のある患者
2) 重篤な肝障害を伴う患者(Child-Pugh スコア10以上)
3) 妊婦および授乳中の患者
4) 造血幹細胞移植期の真菌感染予防を目的とした投与
5) 起炎菌が同定され、細菌感染症あるいは本剤の適応菌種外であるクリプトコッカ
スやムコール症の原因真菌(接合菌)による真菌症であると確定された患者
6) その他、主治医が本試験の対象として不適当と判断した患者
6. 研究方法
6.1 研究薬剤
注射用カスポファンギン(カンサイダス®、MSD株式会社)
6.2 用法・用量
カスポファンギンは投与初日に 70 ㎎を、投与 2 日目以降は 50mg を 1 日 1 回、1 時
間以上かけて点滴静注する。なお、中等度の肝機能障害を有する患者に対しては
添付文書の用量調整に準じて減量を行う。また、相互作用により血中濃度低下が予
想される薬剤を併用している場合、1 日 70 ㎎投与の継続を検討する。効果が不十分
と判断した場合には、他の真菌薬の併用あるいは変更を考慮することとする。
6.3 併用薬剤
本研究に影響を及ぼすと考えられる他の抗真菌薬の併用を禁止する。なお、抗真菌
薬以外の抗菌薬を含む併用薬については特に規定しないが、その詳細 (種類、投
与量、投与期間など) を記録することとする。
4
7. 終了、中止基準
次の項目のいずれかに該当する場合、研究担当医師の判断で中止する。この場合
は投与中止時点で所定の検査を実施し、中止・終了の年月日、理由および中止後の
経過・処置について調査票に記載する。
1) 投与の終了
治療の目的が達成されたと判断した場合。
2) 投与の中止
以下の項目に患者が該当した場合はその時点で投与中止とする。
① 研究薬剤の効果が期待できないと判断した場合。
② 患者が同意を中止を申し出た場合。
③ 副作用または臨床検査値異常が発現し、継続投与が困難と判断された場合。
④ 対象から除外すべき条件に該当する事が投与開始後に判明した場合。
⑤ その他、研究担当医師が継続投与を不適当と判断した場合。
8. 検査、評価スケジュール
8.1 患者背景
登録時に以下の各項目について調査を実施する。
患者識別番号、性別、登録時年齢、体重、基礎疾患名および重症度、合併症、臨
床症状および所見、一般状態 (ECOG Performance Status)、真菌学的検査、血清
学的診断(β-D-グルカン値、カンジダ抗原、アスペルギルス抗原)、腎機能 (24
時間クレアチニンクリアランスまたは eGFR)、X 線など画像診断、静脈内留置カテ
ーテルの有無および挿入部位、前治療内容。
8.2 臨床症状の経過
発熱、その他の各疾患に特有の自・他覚症状については、登録時、登録後、投与
終了時の経過を観察する。
8.3 真菌学的検査
本剤投与前、投与終了後に血液、咽頭拭い液、喀痰、尿などの検査材料について
直接検鏡、真菌の分離培養・同定を行う。喀痰/尿/便/咽頭ぬぐい液、中心静
脈カテーテル先などのいずれかの部位から監視培養で真菌の検出を検査する。
8.4 血清学的検査
本剤投与前、投与中、投与終了後に血清を採取し、β-D-グルカン、カンジダ抗原、
アスペルギルス抗原を測定する。
8.5 画像検査
本剤投与前、投与終了後に胸部 X 線、胸部 CT、腹部 CT あるいは腹部エコー等画
像検査による評価を行う。
5
8.6 臨床検査
本剤投与前、投与終了後に、血液学的検査、血清学的検査を行う。なお、臨床検査
値の異常変動がみられた場合には、本剤投与との因果関係を検討することとする。
また、可能であれば投与中にも検査を実施する。
①血液学的検査項目
赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、好中球数、血小板、CRP
②血液生化学的検査項目
AST(GOT)、ALT(GPT)、AL-P、総ビリルビン、総蛋白、アルブミン、BUN、
血清クレアチニン、血清電解質(Na、K、Cl)
8.7 カスポファンギン血中濃度
各試験参加施設にて、事務局より送付した指定の採血管に患者識別番号を添付し、
10ml 末梢血をカスポファンギン投与後 0.5、24、48、72 時間に採取する。液体クロマト
グラフィー法で血中濃度測定い、残余血清は破棄する。
8.8 評価スケジュール
投与開始前
患者背景
○
臨床症状
○
真菌学的検査
○
血清学的検査
○
画像検査
○
臨床検査
○
投与中
投与終了後
○
○
○
(○)
○
○
(○)
○
9. 安全性報告
副作用発症時は適切な処置を行なう。併せて、薬事法等法規(医薬品感染症・副作用
報告制度他)に従って報告等の対応を行なう。研究対象薬剤投与に因果関係が認め
られる若しくは疑われる場合、報告を行なう。
9.1 安全性評価指標に関する評価、記録の方法と時期
安全性の評価としての副作用に関する評価/記録は研究終了後までに速やかに主
治医により完了する。
9.2 予想される副作用
医薬品情報概要(添付文書)を参照の事
9.3 有害事象の取り扱い
6
1) 有害事象の評価には有害事象共通用語規準 v4.0 日本語訳 JCOG 版を用いる。
2) 有害事象とは医薬品が投与された際に起こる、あらゆる好ましくない、あるいは
意図しない徴候(臨床検査値異常を含む)、症状、または病気のことであり当該
医薬品との因果関係の有無は問わない。
3) 有害事象の内、研究薬剤投与との因果関係が認められるまたは疑われる患者
にとって不利益な症状および臨床検査値異常を副作用とし、可能な限り追跡を
行なう。その発現時期、内容、程度、処置、転帰および被験薬との因果関係など
を記録するが、以下項目を含むものとする。
① 自他覚症状及び身体徴候の発現又は悪化
研究薬投与前には見られず、投与後に新たに発現した自他覚症状及び身
体徴候あるいは、投与前に見られた自他覚症状及び身体徴候が明らかに
悪化したものを有害事象とし、研究対象薬剤との因果関係が疑われるもの
を記録する。
② 臨床検査値異常
研究期間中に実施した臨床検査値で認められた異常変動(正常範囲から異
常値への有意な変動及び異常値の有意な増悪)について、臨床的に問題
があると考えられる異常変動を有害事象とし、研究対象薬剤との因果関係
が疑われるものを記録する。
9.3 副作用等の記録
症状の程度、重篤度、研究薬との因果関係を評価し、その内容、発現日、処置(研
究薬の投与及び対症療法)及び転帰について、出来る限り記録する。
10. 臨床効果判定
10.1 経験的・早期抗真菌薬投与の有効性評価
発熱性好中球減少症時における経験的・早期抗真菌治療の有効性評価は下記の5
項目すべてを満たした時を有効とする 5
1) 薬剤投与終了時におけるベースライン真菌感染症の治癒。
2) 薬剤投与終了後 7 日目までにブレークスルー真菌感染症を来さない。
3) 薬剤投与終了後 7 日目までの生存。
4) 投与薬剤の効果不十分または毒性による投与中止がない。
5) 薬剤投与終了後 7 日目における解熱
10.2 深在性真菌症を発症した症例の有効性評価
10.2.1 侵襲性アスペルギルス症に対する治療の有効性評価 6
完全寛解あるいは部分寛解に到達した症例を有効と判定する。
1) 完全寛解: すべての臨床症状の消失と画像での 90%以上の縮小。
2) 部分寛解: 臨床症状の改善と 50%以上の縮小。
10.2.2 侵襲性カンジダ症に対する治療の有効性評価 7
完全寛解あるいは部分寛解に到達した症例を有効と判定する。
7
1) 完全寛解: すべての臨床症状の消失と血液培養の陰性化(カンジダ血症
以外の侵襲性カンジダ症の場合は臨床症状がすべて消失して、かつ画像
上の異常所見が消失していれば、生検や培養の検査を行わなくてもカンジ
ダの消失とみなす)。
2) 部分寛解: 臨床症状の改善と血液培養の陰性化
11. 補償
本試験により何らかの健康被害が生じた場合には、必要な治療を含めた適切かつ最
善の対処を行う。補償内容は医療の提供とし、健康被害に対する金銭的補償はない。
本試験における健康被害は一般診療で対処され、保険診療と同様な自己負担となる。
入院費、生活費、あるいは交通費など特別な金銭的補償はない。
12. 倫理的事項
12.1 患者の保護
本試験に関係するすべての研究者等はヘルシンキ宣言、臨床研究に関する倫理指
針に従って本試験を実施する。
12.2 インフォームドコンセント
本研究実施に先立ち、研究担当医師は対象患者又は法定代理人に下記事項を別
紙説明文書に基づき十分に説明し、原則として文書にて 2 部、患者の自由意志によ
る同意を取得する。同意が得られた場合には 1 部はカルテに保存し、他の 1 部は患
者が保管、研究終了後も回収しない。
1)本研究の目的および方法。
2)予想される効果および危険性。
3)研究への参加に同意した場合でも、随時中止を申し出る事ができる。
4)研究への参加に同意しない場合であっても、不利益を受けないこと。
5)当該疾患に対する、他の治療法の有無およびその内容。
6)その他、被験者の人権の保護に関し必要な事項。
12.3 個人情報の保護と患者識別
症例報告書の作成、取り扱い等においては、被験者の機密保護について順守する。
登録は患者識別番号で行う。患者名など、第三者が当該施設の職員やデータベー
スへの不正アクセスを介さずに直接患者を識別できる情報が、研究事務局のデータ
ベースに登録されることは無い。データの保管は研究事務局において保管保存す
る。
12.4 プロトコールの遵守
本試験に参加する研究者は、患者の安全と人権を損なわない限りにおいて本研究実
施計画書を遵守する。
8
12.5 施設の倫理委員会(IRB)の承認
本試験は本試験実施計画書および患者への説明文書の妥当性についてはじめに岐
阜大学大学院医学系研究科医学研究等倫理審査委員会にて審議される予定である。
本試験への参加に際して,各施設の倫理委員会あるいは施設審査委員会(IRB)で承
認が必要である。また,希望する施設に対しては岐阜大学大学院医学系研究科医学
研究等倫理審査委員会の承認書の写しを各研究参加施設へ送付する。
13. 研究登録と研究結果の発表
13.1 臨床試験登録
本研究は、登録開始後 6 ヵ月以内に臨床試験登録(U-MIN への登録)を実施する。
13.2 結果の公表
研究結果については学会ならびに論文で発表する。
13.3 知的財産権の帰属
研究から生じる知的財産権は研究代表者等に帰属し、被験者には生じない。
14. 試験期間
平成 26 年 2 月~平成 28 年 3 月
症例が集まらなかった場合は研究期間の延長をおこなう。
15. 目標症例数
60 例
9
17. 試験組織
17.1 研究代表者
鶴見 寿
岐阜大学医学部附属病院 血液内科
〒501-1194 岐阜市柳戸 1-1
TEL: 058-230-6308 FAX: 058-230-6310
17.2 研究事務局
代表: 原 武志
岐阜大学医学部附属病院 血液内科
〒501-1194 岐阜市柳戸 1-1
TEL: 058-230-6308 FAX: 058-230-6310
17.3 参加予定施設
岐阜大学医学部附属病院 血液内科
岐阜県総合医療センター 血液内科
岐阜市民病院 血液内科
岐阜赤十字病院 血液内科
高山赤十字病院 内科
一宮市立木曽川病院 内科
10
18. 参考文献
1. Freifeld AG, Bow EJ, Sepkowitz KA, et al. Clinical practice guideline for the use of antimicrobial agents in neutropenic patients with cancer: 2010 update by the infectious diseases society of america. Clin Infect Dis 2011;52:e56-93. 2. Mora-Duarte J, Betts R, Rotstein C, et al. Comparison of caspofungin and amphotericin B for invasive candidiasis. N Engl J Med 2002;347:2020-9. 3. Maertens J, Raad I, Petrikkos G, et al. Efficacy and safety of caspofungin for treatment of invasive aspergillosis in patients refractory to or intolerant of conventional antifungal therapy. Clin Infect Dis 2004;39:1563-71. 4. Walsh TJ, Anaissie EJ, Denning DW, et al. Treatment of aspergillosis: clinical practice guidelines of the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis 2008;46:327-60. 5. de Pauw BE, Sable CA, Walsh TJ, et al. Impact of alternate definitions of fever resolution on the composite endpoint in clinical trials of empirical antifungal therapy for neutropenic patients with persistent fever: analysis of results from the Caspofungin Empirical Therapy Study. Transpl Infect Dis 2006;8:31-7. 6. Herbrecht R, Denning DW, Patterson TF, et al. Voriconazole versus amphotericin B for primary therapy of invasive aspergillosis. N Engl J Med 2002;347:408-15. 7. Pappas PG, Rotstein CM, Betts RF, et al. Micafungin versus caspofungin for treatment of candidemia and other forms of invasive candidiasis. Clin Infect Dis 2007;45:883-93. 8. De Pauw B, Walsh TJ, Donnelly JP, et al. Revised definitions of invasive fungal disease from the European Organization for Research and Treatment of Cancer/Invasive Fungal Infections Cooperative Group and the National Institute of Allergy and Infectious Diseases Mycoses Study Group (EORTC/MSG) Consensus Group. Clin Infect Dis 2008;46:1813-21. 11
参考資料 1 侵襲性真菌症の診断基準
European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)/ Mycoses
Study Group (MSG)による改訂中の暫定診断基準を用いる*8。
侵襲性真菌症確定例 (Proven invasive fungal diseases)
深在性真菌症
糸状菌*1
針吸引や生検標本の病理組織学的検査または細胞病理学的検査*2 において菌糸
が検出され、関連部位に(鏡検上または画像検査上)*3 組織障害を認めるもの
または
本来無菌的である(臨床的または画像的に異常を認める)関連部位(気管支肺
胞洗浄[BAL]、頭蓋副鼻腔、尿を除く)から、無菌的手技によって得られたサ
ンプルでの糸状菌培養陽性例
酵母様真菌
粘膜以外の本来無菌部位からの針吸引や生検標本の病理組織学的検査または細
胞病理学的検査*2 における酵母様細胞の観察(カンジダは偽菌糸や真性菌糸を
示すことがある)
または
本来無菌的で臨床的または画像的に真菌感染症の病像所見を示す部位から無菌
的手技(留置後 24 時間未満の新規留置ドレーンを含む)によって得られたサン
プルの培養で酵母様真菌を検出
真菌血症
糸状菌
糸状菌感染に矛盾しない臨床症状があり血液培養で糸状菌が検出(例: Fusarium
spp.)*4
酵母様真菌
血液培養からの酵母(例: Candida)または酵母様真菌(Trichosporon)の検出
侵襲性真菌症推定診断例 (Probable invasive fungal disease)
宿主因子一つ以上+臨床的基準一つ+菌学的基準一つ
侵襲性真菌症可能性例(Possible invasive fungal diseases) * 5
宿主因子一つ以上+臨床的基準一つを満たすが菌学的基準なし
*1 可能ならば、培養検体の属または種レベルでの同定を付記する
*2 病理組織学的検査または細胞病理学的検査に供された組織および細胞は
Grocott-Gomori methenamine 銀染色または Periodic Acid Schiff(PAS)染色によ
る菌体の精査が積極的に行われるべきである。検査が可能な施設では、侵襲性
真菌感染巣から乾燥していない標本を作製し封入検体を蛍光色素(例:Calcofluor
や Blancophor)で染色すべきである
*3 各菌種の侵襲性真菌症の診断(例:侵襲性アスペルギルス症確定例)には
培養と菌種の同定が必要である。そのいずれかが不能な場合は侵襲性糸状菌感
染症確定例(proven mold invasive fungal disease)とする
*4 他の糸状菌も真菌血症を起こしうるが、Fusarium spp.の場合が最も多い。ま
た侵襲性真菌症確定例(proven invasive fungal disease)の診断をつける前に、コ
ンタミネーションを除外すべきである
*5 侵襲性真菌症以外の原因について除外する努力を可能な限り行う
*6 真菌学的エビデンスがあれば症状は伴わなくてよい
宿主因子
宿主因子はリスクファクターと同義ではなく、どの宿主が侵襲性真菌症に罹患
しやすいかを認識できるという特徴である。主として治療中の担癌患者や、同
種造血幹細胞移植と臓器移植のレシピエントに適用される。その他にも、ステ
ロイドや T 細胞抑制薬の投与患者並びに原発性免疫不全者も宿主因子として適
用可能である
1) 真菌症発症時期に関連する遷延性の好中球減少(<500/µl が 10 日以上)
2) 同種造血幹細胞移植後
3) 平均投与量がプレドニゾロン換算で 0.3 mg/kg/日以上に相当するステロイド
を 3 週間以上使用(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症[ABPA]の患
者を除く)
4) 過去 90 日以内の細胞性免疫抑制薬(シクロスポリン、TNF-α 阻害剤、アレ
ムツズマブ、プリンアナログなど)の投与歴
5) 先天性重症免疫不全(例:慢性肉芽腫症、重症複合型免疫不全症)
臨床的基準
現在のエピソードと関連した、微生物学的所見のあることが必要で、真菌症以
外の原因について除外する努力を可能な限り行う。
● 下気道真菌感染症
A) CT における以下の“特異的な”画像所見のうち一つが存在
・辺縁鮮明な結節状影±halo sign
・楔状浸潤影
・Air-crescent sign
・空洞
B)新たな非特異的巣状浸潤影の存在+以下のうち一つ以上*6
・胸膜摩擦音
・胸痛
・喀血
● 副鼻腔感染症
副鼻腔炎を示す画像所見+以下のうち一つ以上
・急性局所痛(眼への放散痛を含む)
・鼻潰瘍、黒色痂皮
・副鼻腔から眼窩を含む骨性バリアを越える領域への進展
● 眼内炎
眼科的検査により決定される
● 中枢神経感染症
MRI または CT 所見での巣状病変あるいは髄膜増強像
● 慢性播種性カンジダ症
肝ないし脾内の末梢性の標的小膿瘍(新たな結節充満性欠損、Bull’s eye sign)
真菌学的基準
● 細胞診、直接鏡検、培養
1. 喀痰、BAL 並びに気管擦過検体で糸状菌(例:アスペルギルス、フサリウ
ム、接合菌種、スケドスポリウム)が培養陽性か細胞診または直接鏡検で菌糸
体を確認
2. 副鼻腔吸引物:培養で糸状菌が培養陽性か細胞診または直接鏡検で菌糸体
を確認
3. 皮膚潰瘍、分泌物を排出している軟部組織病変や、裂溝については鏡検所
見と培養陽性の両者が必要
● 抗原、細胞壁構成成分、または核酸の検出
4. ガラクトマンナン抗原 ELISA(プラテリア)
a) 一回の血漿または血清検体でガラクトマンナン陽性
b) 一回の BAL、胸水、脳脊髄液(CSF)検体がガラクトマンナン陽性
5.一回の血清検体で β-D-グルカン陽性
6. 核酸検出のための PCR
外部による評価がなされた PCR 系が開発されるまで、特定の真菌検査のための
血液、組織、気管支肺胞洗浄液(BALF)に対する PCR の陽性結果は侵襲性真
菌感染の微生物学的エビデンスとはみなされない
血清診断の陽性基準値
対象となる真菌症
血清学的検査名
侵襲性真菌症全般
ファンギテックGテスト MKII 20 pg/mL 以上
「ニッスイ」
アスペルギルス症
陽性基準値
β-D-グルカン テストワコー
11 pg/mL 以上
プラテリア アスペルギルス
0.5 ODI 以上
1