アレイ部品の取り扱い アプリケーションセンター 梅村哲也 2006.July.26 AN-SEAT06A002_ja はじめに とになります。「SEAT」では、[製品リスト]で部品を選択すると、フ 部品特性解析ソフト「SEAT」には、アレイ部品としてフェライトビ ローティングされている小さな[ポート番号]フォームにその部品の ーズアレイや 3 端子フィルタアレイなどが収録されています。例え ポート番号が表示されます。例えば、[製品リスト]でフェライトビー ば、フェライトビーズアレイは、単品のフェライトビーズがひとつの ズアレイ MZA3216R121A を選択すると、図 2-1 のような[ポート番 素子の中に複数構成されている部品のことですが(図 1-1)、 号]フォームが表示されます。端子は 8 個あり、左上をポート 1 とし 「SEAT」ではそのうちのひとつを代表特性として表示するのでは て、反時計回りにポート 8 まで番号をつけています。 なく、ひとつひとつの素子を S パラメータを使って別々に評価でき るようになっています。つまり、個々の素子の特性の違いや、クロ ストークなども評価することができます。 図 2-1 フェライトビーズアレイのポート番号 ★伝送特性 それでは、フェライトビーズアレイの中に構成されているそれぞ れのフェライトビーズの伝送特性を見てみることにしましょう。 伝送特性は普通|S21|特性のことを指します。しかし、図 2-1 の ようにポート番号がつけられているマルチポート部品の場合は、 図 1-1 フェライトビーズアレイ |S81|、|S72|、|S63|、|S54|がそれにあたります。もし、|S21|を見てしまう と、導通していない端子間の伝送特性、つまりクロストークを評価 執筆時の段階で、対象となるアレイ部品は、「フェライトビーズア することになってしまいますから、注意が必要です。 レイ」「コモンタイプフェライトビーズアレイ」「3 端子フィルタアレイ」 フェライトビーズアレイに内蔵されているそれぞれの素子の伝 「コモンモードフィルタアレイ」の 5 種類が収録されています。本ア 送特性を図 2-2 に示します。「SEAT」はすべて実測のデータを用 プリケーションでは、これらの部品の取り扱いについて解説しま いていますから、それぞれの素子の特性は微妙に異なっているこ す。 とがわかりますが、ほぼ同じ素子が 4 つ入っていると考えて問題 ないレベルでしょう。 フェライトビーズアレイ、3 端子フィルタアレイ ここでは、フェライトビーズアレイと 3 端子フィルタアレイの S パラ メータの見方を解説します。(なお、一般的な S パラメータの解説 は、最終ページに記載の参考文献やアプリケーションノート 「SEAT を使ったフェライトビーズの評価例-1」などを参照してくだ さい。) アレイ部品を取り扱う際にもっとも注意すべき点はポート番号で す。これを間違えて解釈すると、間違った特性を表示してしまうこ -1- *参考:インピーダンス特性 フェライトビーズアレイは、先に述べたような S パラメータで評価 する以外にもちろんインピーダンスでも評価できます。S パラメー タではすべてのポート間で評価ができますが、インピーダンスは アレイ品の中に内蔵されているひとつの素子の特性を代表値とし て収録しています。 コモンモードフィルタアレイ コモンモードフィルタアレイもフェライトビーズアレイ同様に単品 図 2-2 フェライトビーズアレイの個々の素子の伝送特性 のコモンモードフィルタが複数構成されている部品のことです(図 3-1)。コモンモードフィルタはもともと 4 つの端子を備えた部品で ★クロストーク特性 すから、図 3-1 のコモンモードフィルタアレイは 2 つのコモンモード 次にクロストークを評価してみます。少し前までは信号の周波 フィルタが内蔵されているということになります。(なお、コモンモ 数はそれほど高くなかったので、クロストークがあまり問題になる ードフィルタの評価方法や Mixed モード S パラメータについての解 ことはありませんでした。しかし、近年の高速化に伴って、素子間 説は別のアプリケーションノート「SEAT を使ったコモンモードフィ の少しの結合で、簡単に信号が漏れ伝わることが問題になってき ルタの評価例-1」などを参照してください。) ています。特に、素子を一体化したアレイ部品では注意が必要で す。 図 2-1 を見ると、ポート 1 から信号を入射したときのクロストーク は、近端クロストーク(NEXT : Near End Cross Talk)としてS21、 S31、S41、遠端クロストーク(FEXT : Far End Cross Talk)として S51、S61、S71 が存在します。今回は物理的な位置関係からもっ とも差が顕著に出ると思われる|S21|と|S51|を図 2-3 に示します。例 図 3-1 コモンモードフィルタアレイ えば 1GHzで見てみると、|S21|特性は約-20dBになっていて、ポー ト 1 から入射した信号の 10%(電力では 1%)が漏れることになりま フェライトビーズアレイと同様に、コモンモードフィルタアレイでも すが、|S51|特性は約-60dBとなっていて、0.1%(電力では 0.0001%) 注意しなくてはならないのはポート番号です。さらに、コモンモード しか漏れないということになります。 フィルタの場合は、端子番号に対応した「物理ポート」と、平衡信 号を扱う際に使う「論理ポート」があります。図 3-2 はコモンモード フィルタアレイを選択した際の[ポート番号]フォームです。 単品のコモンモードフィルタの場合と違って、ディファレンシャル モードの伝送特性は|Sdd41|、|Sdd32|となり、コモンモードの伝送特性 は|Scc41|、|Scc32|となります。単品のコモンモードフィルタのように 図 2-3 フェライトビーズアレイのクロストーク特性 |Sxx21|を見てしまうと、近端クロストークを評価してしまうことになり ますので、注意が必要です。 -2- まとめ アレイ品を評価する場合でも基本的な操作方法は、単品の素 子を扱い場合とまったく同じです。ただし、ポート番号に注意して 評価するようにしてください。 <<<技術支援ツールのホームページ>>> http://www.tdk.co.jp/TST <<<部品特性解析ソフト「SEAT」のホームページ>>> http://www.tdk.co.jp/SEAT -3- ご注意 本アプリケーションノートで表示されている特性データ、シミュレーション結果および部品特性解析ソフト「SEAT」で表示される特性 などは、製品の特性を保証するものではありません。 本アプリケーションノートおよび部品特性解析ソフト「SEAT」に掲載された内容によっておきる損害については、TDK は一切の責任 を負いませんので、その旨ご了承ください。 本アプリケーションノートに記載されている社名・製品名などは各社の登録商標です。 本アプリケーションノートで使用している画面およびデータは 2006 年 7 月現在のものを使用しています。 改良その他により予告なく変更する場合があり、実際のものとは異なることがあります。 「SEAT」は TDK 株式会社の登録商標です。 -4-
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