並列接続された積層セラミックコンデンサの合成インピーダンス

並列接続された積層セラミックコンデンサの合成インピーダンス
評価・解析センター 梅村哲也
2009.June.1 AN-SEAT09A003_ja
はじめに
電源回路のデカップリングコンデンサとして使用される積層セラ
ミックコンデンサは、インピーダンスが低い領域を広げるために自
己共振周波数の異なる複数のコンデンサを並列に接続して使用
することが一般的になっています。
本アプリケーションノートでは、部品特性解析ソフト「SEAT」で複
数のコンデンサを並列に接続したときの合成インピーダンスを表
示する方法を解説します。
図 1 ユーザ定義フィルタ
合成インピーダンスの計算
<「SEAT」で 10uF、4.7uF、1uF のコンデンサを組み合わ
せる>
今回はコンデンサを並列に接続しますので、コンデンサのイン
ピーダンスをZ1、Z2とし、合成後のインピーダンスをZpとすると、式
手順 1. メニューの[ツール]-[ユーザ定義フィルタ]を選択する。も
1 から求めることができます。
しくはツールバーの
Zp =
Z1 ⋅ Z 2
Z1 + Z 2
をクリックする。
(1)
手順 2. [並列接続(1 ポート)]タブを選択する。
また、並列接続なので、アドミタンスからも簡単に計算すること
ができます。コンデンサのアドミタンスをY1、Y2とし、合成後のアド
手順 3. 合成する製品を製品リストで選択し、ユーザ定義フィルタ
ミタンスをYpとすると、Zpは式 2 で求めることができます。
の [ 適 用 ] ボ タ ン を ク リ ッ ク す る 。 今 回 は 10uF に
Zp =
1
1
=
Y p Y1 + Y2
C2012JB0J106K(M) 、 4.7uF に C2012JB1C475K(M) 、 1uF に
(2)
C2012JB1C105K(M)を選択します(図 2)。
ただし、Z も Y も複素数です。
ユーザ定義フィルタ
SEAT には複数の部品を組み合わせて、仮想的にひとつの部
品を作成する機能-ユーザ定義フィルタがあります(図 1)。ユーザ
定義フィルタには、今回解説する 1 ポート(インピーダンス)の並
列接続のほかに、1 ポートの直列接続、2 ポートと 4 ポートの縦続
図 2 合成する製品の選択
接続があります。
手順 4. 周波数ポイント、スイープタイプの設定をする。周波数範
囲は現在選択されている製品の周波数範囲が自動で設定され
る。
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手順 5. コメントを入力して、出力先を設定する。合成後の仮想部
品として 10 個まで作成することができる(図 3)。
図 3 出力先の設定とコメント入力
手順 6. [作成]ボタンをクリックすることで、出力先に仮想部品が
図 5 各コンデンサと合成後の仮想部品のインピーダンス特性
作成される。
図 5 ではインピーダンスの周波数特性を表示しましたが、通常
の 1 ポート部品と同様に、ESR や ESL、Q なども表示することがで
<合成した部品のインピーダンス特性を表示>
きます(図 6)。
手順 1. 製品リストで今回作成した「1PortFilter-1」を選択する(図
4)。
図 4 製品リストでの選択
手順 2. メニューの[特性グラフ]-[インピーダンス]-[絶対値 | Z |]
を選択する。もしくはツールバーの
図 6 各コンデンサと合成後の仮想部品の ESR 特性
をクリックする。
図 5 には、今回合成した 10uF(赤)、4.7uF(青)、1uF(紫)の各コ
まとめ
ンデンサと、合成後の仮想部品「1Port-Filter1」(緑)のインピーダ
ンスの周波数特性を表示しています。電源回路に用いられるデカ
今回の例では、3 つのコンデンサの合成インピーダンスを表示
ップリングコンデンサは、共振周波数の異なるコンデンサを組み
する方法をご紹介しました。「SEAT」のユーザ定義フィルタでは、
合わせて、低インピーダンスの領域を広くする手法がよく用いら
一度に 5 個までの部品を組み合わせることができます。また、組
れます。
み合わせた仮想部品をさらにユーザ定義フィルタで用いることで、
無限の組み合わせで仮想部品を作成することができます。
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ご注意
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本アプリケーションノートで表示されている特性データ、シミュレーション結果および部品特性解析ソフト「SEAT」で表示される特性
などは、製品の特性を保証するものではありません。
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本アプリケーションノートおよび部品特性解析ソフト「SEAT」に掲載された内容によっておきる損害については、TDK は一切の責任
を負いませんので、その旨ご了承ください。
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本アプリケーションノートに記載されている社名・製品名などは各社の登録商標です。
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本アプリケーションノートで使用している画面およびデータは 2009 年 6 月現在のものを使用しています。
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改良その他により予告なく変更する場合があり、実際のものとは異なることがあります。
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「SEAT」は TDK 株式会社の登録商標です。
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