いじめに関するアンケートの集計結果と考察

いじめに関するアンケートの集計結果と考察
平成 28 年 1 月
いじめ対策担当
1. 概要
1)実施期間
平成 27 年 12 月 7 日~10 日
2)対象児童
墨田区立業平小学校第 1 学年~第 6 学年の全児童(特別支援学級を除く)
3)実施方法
各学級において、担任の説明後にアンケートを実施した。
4)有効回答数
第 1 学年…72 名 第 2 学年…56 名 第 3 学年…59 名
第 4 学年…56 名 第 5 学年…54 名 第 6 学年…63 名
2. 結果
図 1 は、アンケートの各項目に対して、
「ある」もしくは「あると思う」と答えた児
童の割合を、学年ごとに示したものである。
(%)
100
80
60
40
20
0
Q1
Q2
1年生
2年生
3年生
Q3
4年生
5年生
Q4
6年生
Q1:あなたは、業平小学校にいじめがあると思いますか。
Q2:あなたはこれまでに、いじめられている人を見たことがありますか。
Q3:あなたはこれまでに、いじめられたことがありますか。
Q4:あなたはこれまでに、だれかをいじめたことがありますか。
図1 各学年における「ある(と思う)」と答えた児童の割合
この図から、いずれの質問項目においても、
「ある(と思う)」と答えた児童の割合が
第 2 学年もしくは第 3 学年で最も多くなっていることが分かる。また、Q4「あなたは
これまでに、だれかをいじめたことがありますか。
」に対して「ある」と答えた児童の割
合は、どの学年でも、その他の質問項目に比べて低かった。
3. 考察
アンケートの結果、以下のことが明らかとなった。
① どの質問項目においても、
「ある(と思う)」と答えた児童の割合は第 2 学年もしく
は第 3 学年で最も多くなっている。
② Q4 に対して「ある」と答えた児童の割合は、どの学年でも最も低くなっている。
以下、これらの結果について考察する。
① について
どの質問項目においても、
「ある(と思う)
」と答えた児童の割合が第 2 学年もしくは
第 3 学年で最も多くなった理由として、
「いじめ」
を具体的にイメージし始める時期が、
第 2 学年から第 3 学年であることが考えられる。その後、学年が上がるに連れて減少
していく理由としては、学年が上がるに連れて「いじめ」のイメージが具体化し、「い
じめ」とそうでないトラブルとの区別が明確になってくる可能性があると考えられる。
もしそうであれば、特に中学年において、何が「いじめ」にあたるのかを考える授業を
実施することが重要になってくると考えられる。
しかしながら、この点については、学年や学級の特徴にも左右される可能性があるの
で、経年的に同様のアンケートを実施し、一般的な傾向があるのかどうかを明らかにす
る必要がある。
② について
自分がいじめたことが「ある」と答える児童が、他の質問項目と比べて、どの学年で
も減少する理由としては、大きく 2 つの可能性が考えられる。
1 つ目はいじめの隠蔽性である。いじめの多くは、大人や他の児童・生徒の目の届か
ないところで行われるという特徴を持っている。したがって、
「いじめたことがあるか」
との問いに対しても、心当たりがある場合でも、
「ない」と答える傾向があると推察さ
れる。このことは、一方で、加害側に罪悪の意識があることを示しているといえる。
2 つ目は、加害側の無自覚性である。いじめは、ちょっとしたからかいや冷やかしか
ら発展する場合もある。この場合、被害側が既に「いじめ」として認識していても、加
害側にはその自覚がない、もしくは極めて低い可能性がある。この場合、加害側には罪
悪の意識がほとんどないと考えられる。
4. まとめ
アンケートの結果から、児童がいじめを意識し始めるのが第 2・3 学年頃であり、い
じめのイメージが具体化するのが第 4 学年以降であることが示唆された。いじめが「あ
ると思う」
、いじめられている人を見たことが「ある」と答えた児童の割合が学年が上
がるに連れて減少していくことは、いじめの発生件数そのもの減少を示しているわけで
はない。先述のように、より下の学年では、いじめと日常的なトラブルの区別が明確で
はなく、いじめでないものまで「いじめ」として捉えている可能性がある。そのように
仮定すると、より上の学年の回答の方が、本校のいじめの実情をより正確に反映してい
ると考えられる。また、一般的にも、学年が上がるに連れていじめの固定化、悪質化、
隠蔽性が高まる事が指摘されている。特に近年では、SNS 等、ネットワークを通じて行
われる、いわゆる「ネットいじめ」が社会的な問題となっている。
「ネットいじめ」は、
加害側と被害側の物理的な距離に影響されずに発生、持続するという点で、その他のい
じめとは異なった特徴を有している。また、外部からの発見がほぼ不可能である事から、
隠蔽性が極めて高い。さらには、いわゆる「さらし」といった行為が行われると、ネッ
トワーク上に拡散した画像や動画の完全消去は実質上不可能となる。したがって、「ネ
ットいじめ」は、発見も解決も再発防止も、非常に困難ないじめであるといえる。これ
らの事からも、特に高学年においては、いじめの発生を抑える日常的な環境づくりと、
いじめの発生に気付くための組織的な観察、情報交換が重要になるといえる。
また、今回の調査から、どの学年でもいじめの隠蔽性や無自覚性があることが明らか
になった。いじめの存在は認める一方、自身をいじめの加害側と捉える児童が被害側と
捉える児童よりも少ないという現象は、一般的な傾向とも考えられる。しかしながら、
いじめの機序を考えると、被害側よりも加害側の人数が少ないということは、まずあり
得ないといえる。したがって、この結果も、いじめの隠蔽性や無自覚性を表すものであ
ると考えられる。いじめの隠蔽性や無自覚性は、いじめの早期発見を遅らせる原因とな
る。また、被害側と加害側の認識のずれは、いじめの解決や再発防止の妨げとなり得る。
この課題を改善するためには、被害側や周辺(傍観も含む)からの情報開示が重要とな
る。したがって、いじめを隠さない雰囲気の醸成や、大人にいじめを報告する事の正当
性を理解させるような指導が必要であると考えられる。
今回のアンケートは、児童が何を「いじめ」として捉えているのかによって、結果も
その解釈も大きく変わってくる。このため今後は、いじめの質的な部分、つまり、各学
年の児童がどのような行為を「いじめ」として捉えているのかを調査する必要がある。
その上で、何をしたら「いじめ」になるのか、いじめられた時、いじめられている人を
見た時、自分が誰かをいじめてしまった時にどのように行動していくのか、という事を、
常なる課題として学校全体で考えていきたい。また今後、保護者を対象に同様のアンケ
ートを行い、保護者の意識を調査するとともに、アンケートを行う事で保護者の意識を
高め、学校と家庭が連携しながらいじめ防止に取り組んでいけるようにしたいと考える。