アイルランド音楽と食文化 1.アイルランドとは イギリスの左隣にある小さな島国。26 の県から成り、首都はダブリン(Dublin)。気 候も大きさも北海道に似ている。緯度は高いが、暖流が流れる影響で冬でもあまり雪 は降らず過ごしやすい。そのため 1 年中緑に覆われ、 「エメラルドアイランド」とも 呼ばれており、アイルランドを象徴する色が「緑」になっている。また、岩場が多く、 木があまり育たない気候なので、冬は泥炭(ピート)を燃やして暖をとる。 島の北部は「北アイルランド」というイギリス領になっており、南部の「アイルラ ンド共和国」とは宗教対立していた過去がある。アイルランドにキリスト教を広める 時に、国中に生えていた Shamrock(シャムロック。三つ葉のクローバー)を用いて「三 位一体(父なる神、子なるイエスキリスト、聖霊)」を説いたため、広く国民に親しま れている。 2.食文化 穀物が育ちにくい気候と風土だったため、長い間主食はじゃがいもだった。その ため 1845 年頃じゃがいもの病気が蔓延し、 「じゃがいも飢饉」が起こると多数の餓 死者を出してしまう。この時に新天地を求めてアメリカやカナダへたくさんの移民 が海を渡った。現在でも食事の付け合せにフライドポテト(chips)とマッシュポテト の両方がつくこともある。また、重曹で膨らませたブラウンブレッドやオートミー ルを柔らかく煮込んだポリッジ(お粥にそっくり)もよく食べられている。農業や酪農 が盛んで、特に乳製品は抜群に美味しい。黒ビールのギネス(GUINNESS)やウィス キーの産地としても有名。 3.Irish Pub と音楽 アイルランドではどんなに小さな街にも必ず 1 軒は Irish Pub があり、毎日夜にな ると近所の人が集まって GUINNESS 片手に賑やかに過ごす。アイルランドの家庭料 理が気軽に楽しめる居酒屋のような場所である。伝統音楽の演奏が行われる Pub も 多く、演奏者は楽器を片手に集まり、細かな打ち合わせをせずに演奏(Session)が 始まる。 アイルランドの冬は風が強い日も多く、日が短い。そのため室内で楽しめる音楽が 盛んになったのではないかとも言われている。日本の民謡のように歌詞がある Song と、楽器演奏だけの Tune(チューン)に分かれ、jig(ジグ)、reel(リール)、polka(ポル カ)などの種類がある。アイルランドでは足だけを動かすステップダンスや 4 人 1 組 で踊るケーリー(Ceili)などが盛んで、ダンスの伴奏としても親しまれてきた。Enya の出身国でもある。伝統音楽の分野では Eileen Ivers,SOLAS など数多くの著名ミュ ージシャンを輩出している。 4.主な年間行事 3 月 17 日にアイルランドにキリスト教を広めた St.Patrick 牧師を偲んで ”St.Patrick's Day”(セントパトリックスディ)という祝日があり、アイルランド やその移民が多く住むアメリカで大規模なパレードが行われる。皆アイルランド を象徴する緑の衣装を身に着けたり、アイルランド国旗を振って楽しむ。日本で も数か所でパレードが行われており、特に渋谷のパレードが有名。 最近認知度が上昇している Halloween(ハロウィーン)もアイルランドが発祥だ と言われている。農業国であるアイルランドは紀元前、11 月 1 日が新年の始まり だった(Samhain。サウェン)。その前日の大晦日(Oiche Shamhna。イヘ・ハウ ナ)は現世と霊界の境があいまいになり、霊魂が彷徨いやすいと信じられていたの で、焚火や仮装してお払いをしたのがその起源だと言われている。日本では年越 しそばを食べるように、アイルランドでは Barm Black(バーンブラック)というレ ーズンパンに似たお菓子や、Colcannon(コルキャノン)というマッシュポテトに ゆでて刻んだキャベツを混ぜたポテトサラダに似た料理を食べる風習がある。 元々アイルランドではカボチャは手に入りにくく、身近にあるカブやじゃがい もをくりぬいてジャック・オ・ランタンにしていたが、アイルランド移民が多い アメリカではカボチャが入手しやすかったため、いつの間にかカボチャが主役に なった。 *アイルランド料理紹介* シェパードパイ(Shepard's Pie) *材料* (12cm ぐらいのグラタン皿 4 個分) <ミートソース> 合挽き肉 120g 玉ねぎ 80g(小 1 個) ケチャップ 大さじ 3 ハヤシライスルー 1 片 醤油 少々 砂糖 少々 塩コショウ 適量 水 100cc <ホワイトソース> 小麦粉 大さじ 1 バター 15g 牛乳 200cc <マッシュポテト> ポテトフレーク 70g (もしくはじゃがいも 3 個程度。茹でてよ く潰す。) 牛乳 350cc バター 10g コンデンスミルク 大さじ 2 *作り方* ①.まずミートソースを作ります。フライ パンを熱し、合挽き肉とみじん切りにし た玉ねぎを加えよく炒めます。お肉の色 が変わってきたら水と調味料を加え、玉 ねぎが柔らかくなるまで最低 10 分は煮 込みます。時間に余裕があるならここで 1 時間ぐらいおいて味を馴染ませるとさ らにおいしいです。また、水分が少ない ので焦がさないように。 ②.次にホワイトソースを作ります。フラ イパンで作ると失敗することもあるの で、レンジで作ります。耐熱性のボウル に小麦粉、バターを加え、レンジ(うちの は 700W です)で 1 分加熱します。そう するとルーができるので、そのルーを泡 だて器でよく混ぜ、きれいに混ざったら 牛乳を少しずつ加えてのばします。その 後、1 分×3 回レンジにかけ、その都度 泡だて器でよーく混ぜます。最後に様子 を見て 30 秒刻みでレンジにかけてトロ ミがついたら塩コショウ少々を加えて 完成です。 *バターをレンジにかけるとかなり高温 になり、容器を傷める場合もあるので、 耐熱性のガラスボウルがオススメです。 ③.最後にマッシュポテトを作ります。私 が買ったマッシュポテトフレークは「フ レーク 50g にお湯 200cc」で作るもので すが、フレーク 70g に熱した牛乳 350cc を加え、泡だて器で混ぜて柔らかめのマ ッシュポテトを作ります。そこにバター とコンデンスミルクを加えてマッシュ ポテト完成! ④.グラタン皿などのオーブン可能な器 に、ミートソース→ホワイトソース→マ ッシュポテトの順に重ね、余熱なしのオ ーブンで 250℃30 分焼いて完成です。器 やオーブンの大きさによって加熱時間 は調整してください。 フィッシュ&チップス (Fish&Chips) *材料*4 人分 じゃがいも 4 個 鱈(あれば甘塩) 4 切 小麦粉 100g ビール 150 ㏄程度 塩 1 つまみ *作り方* ①.じゃがいもはよく洗い、芽をとったら 皮付きのまま茹でるか、ラップにつつん でレンジで 5 分程度加熱しておく。粗熱 がとれたらくし型に切る。一度火を通し ておいたほうがカリッと揚がります。 ②.鱈はあれば甘塩のものを用意してく ださい。生の鱈の場合は軽く塩を振って 5 分ほど置き、出てきた水分をキッチン ペーパーでふきとります。一口大に切 る。 ③.小麦粉に冷たいビール、塩を加え衣を 作ります。目安は天ぷらの衣程度の生地 のゆるさです。天ぷらを揚げる時同様、 あまり混ぜすぎず、粉が残っているぐら いで揚げはじめます。1 のじゃがいもも 揚げて塩で軽く味をつける。 アイリッシュシチュー (Irish Stew) *材料* ラム肉(生 or チルドで。) 100g ぐらい じゃがいも 中4個 玉ねぎ 中1個 人参 1本 パセリ 適量 バター 5g ベーコン 1 枚分 塩 小さじ 1 醤油 少々 *作り方* ①.じゃがいもと玉ねぎは皮をむいて大 きめのみじん切りにする。ベーコンも 5mm 幅程度の短冊切りにする。 ②.鍋にバターを熱し、ベーコンを加え る。おいしそうな匂いがしてきたらラム 肉を加え、色が変わったらじゃがいも、 玉ねぎを加えて炒める。 ③.3 分ぐらい炒めて、全体に脂が回った ら水をヒタヒタになる程度加え、パセリ を加える。蓋をして野菜が柔らかくなる まで煮込む。最後に塩と醤油(隠し味程 度)で味を整えて完成! おすすめ本 もっとアイルランドのことやアイルラ ンド料理に興味がある方は「松井ゆみ子 (1998)『アイルランドのおいしい毎日』 東京書籍(1700 円)」がお勧めです。アイ ルランドの家庭料理や文化が分かりや すく紹介されており、アイルランド料理 のレシピがたくさん載っています 花巻国際交流協会 多文化理解サロン 2011 年 10 月 15 日
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