放射・対流・デシカント空調の評価に関する研究

平成 25 年度 風工学研究拠点 共同研究成果報告書
研究分野:室内環境
研究期間:H25~ H26 [平成 26 年度も研究継続]
課題番号:132006
研究課題名(和文):放射・対流・デシカント空調に関する評価
研究課題名(英文)
:Evaluation of the radiant panel air-conditioning system, the desiccant air
conditioning system and the conventional air conditioning system
研究代表者:加藤信介
交付決定額(当該年度)
:970,000 円
※平成 25 年度で終了となる研究課題は最終成果報告書となりますので,下記項目について詳細
な報告をお願いします。
※ページ数の制限はありません。
※成果等の説明に図表を使用していただいて構いません。
(カラーも可)
※提出して頂いた成果報告書をホームページでの公開を予定しております。
1.研究の目的
近年、快適な冷暖房システムとして、放射冷暖房システムが注目されている。放射暖房方式と
しては、床暖房が最も代表的であるが、最近は、天井に放射パネルを設置して冷暖房を行う、天
井放射冷暖房システムも増加しつつある。
放射空調システムは、従来の対流式空調方式に比較して、静か(ファンや吹き出し気流による
騒音なし)で、ドラフト(人体に不快感を与える気流)がなく、上下温度差が小さいといった長
所がある反面、立ち上がり時間が遅いことや水漏れ・結露の心配があること、湿度制御ができな
いこと等の短所もある。
一方、デシカント空調はシリカゲル、ゼオライト等を吸湿材とし、湿度の高い空気と接触させ
て水蒸気を吸着させ、除湿する空調方式である。この方式は、吸着した水蒸気を脱着・再生する
ために高温の熱源が必要となり、また、脱着・再生用に加えた熱のために、送風空気が高温にな
ってしまうという問題点がある。
そこで、放射空調方式・対流式空調方式・デシカント空調方式の問題点を解決する方法につい
て検討するとともに、各方式の人体温冷感や快適性の違いを明らかとし、省エネルギー性能やイ
ニシャルコストを含めた総合的な評価指標を提案することを目的としている。
2.研究の方法
改良型放射空調システム、改良型デシカント空調システムを試作し、その運転特性を明らかに
する。また、人工気候室にて各種空調方式を模擬した室内環境を再現し、被験者実験により温冷
感や快適性に違いが生じるメカニズムを明らかとする。また、エネルギーシミュレーションによ
り、各種空調方式のエネルギー消費量を比較し、イニシャルコストを含むライフサイクルコスト
を算出して、快適性・省エネ性・経済性を総合的に評価する指標を提案する。
(1)各種空調システムの改良
改良型放射空調システム、改良型デシカント空調システム等を試作し、その運転特性を明らか
にする。
(2)被験者実験
人口気候室(前室)に放射パネル及び、デシカント空調機を組み込み、各種空調方式下での室
内環境を模擬した被験者実験を行い、温冷感及び快適性を申告させるとともに、人体の部位別表
面温度及び熱移動量を計測する。
図1 人工気候室
図2
被験者実験状況
図3 放射冷房時の熱画像
(3)エネルギーシミュレーション
放射空調やデシカント空調方式(図4・図5)を組み込んだエネルギーシミュレーションツー
ルを作成し、モデル建物にて、各種空調方式を採用した場合のエネルギー消費量を算出する。
図4 ヒートポンプ式デシカントシステムの運転例
図5
吸着材を塗布した熱交換器
(4)総合的評価指標の提案
各種空調方式の快適性を知的生産性と関連付けてコスト化し、エネルギー消費量(ランニング
コスト)とイニシャルコスト(減価償却費)、メンテナンスコスト等を加えた総合的な評価指標
を提案する。
3.研究成果
改良型放射空調システムとして、放射と対流の良い点を併せ持つ放射対流併用空調システム
を考え、そのための水・空気併用型放射パネル(図6)を開発した。開発した放射パネルの放熱
特性を測定した結果(図7)、水式と空気式を併用する方が、水式単独よりもパネル放熱量が増
加することがわかった。また、パネル面から送水温度に近い空調空気を吹き出すことによって、
パネル面の結露を防ぐ効果が得られる可能性が確認された。
放熱量[W]
300.0
250.0
冷房時パネル放熱量
放射成分(送風なし)
対流成分(送風あり)
対流成分(送風なし)
放射成分(送風あり)
200.0
150.0
100.0
50.0
0.0
室温 24℃25℃26℃27℃28℃
24℃25℃26℃27℃28℃
冷水16℃
24℃25℃26℃27℃28℃
14℃
12℃
図6 改良型放射空調パネル
図7 改良型放射空調パネルの放熱量
また、改良型デシカント空調システムとして、吸着材直接加熱・冷却型デシカント空調機(図
8)の試作を行い、その運転特性を測定した(図9、図10)
。
20.0
B
A
B
A
B
A
B
A
絶対湿度[g/kgDA]
0.034
0.034
18.0
0.033
0.033
16.0
0.032
0.032
0.031
0.031
14.0
0.030
u=dh/dx[kJ/kg] 熱水分比u=dh/dx[kJ/kg]
0.030
0.029
0.029
12.0
0.028
0.028
0.027
0.027
10.0
入口絶対湿度[g/kgDA]
空気h-x線図
0.026
0.026
出口絶対湿度[g/kgDA]
8.0
(101.325[kPa])
0.025
0.025
17:40
17:50
18:00
18:10
0.024
0.024
除湿運転:32℃60% 冷水10℃(温水60℃)
0.023
0.023
加湿水熱水分比=0[kJ/kg]
0.022
0.022
0.021
0.021
0.020
0.020
0.019
0.019
0.019
0.0181
0.0181
0.018
0.018
0.018
0.0179
0.0179
0.017
0.017
0.017
実験No1
実験No9
0.016
0.016
0.016
0.015
0.015
0.015
0.014
0.014
0.014
実験No6
実験No7
0.0145
0.013
0.013
0.0132 0.0132 0.013
0.012
0.012
0.012
0.011
0.011
0.011
0.0112
0.010
0.010
0.010
0.009
0.009
25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
29 30 31 32 33 34 35
0.008
0.008
乾球温度[℃]
0.007
0.007
0.006
0.006
0.005
0.005
0.004
0.004
0.003
0.003
0.002
0.002
0.001
0.001
0.000
0.000
3 13
4 14
5 156 1671781891910
1425
1526
1627
1728182919
2335
2436
2537
2638273928
3245
3346
3447
3548364937
7-18 09 110 211 12
2011
2112
2213
23 24
3020
3121
3222
33 34
4029
4130
4231
43 44
5038 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
乾球温度 t [℃]
0.790.77 0.8 0.780.81 0.79
0.82 0.8
0.83
0.81
0.84
0.82
0.85
空気線図上の空気状態変化
乾球温度 t [℃]
0.83
0.86
18:40
18:50
19:00
時間[t]
測定の結果、吸着材直接加熱・冷却型デシカン
ト空調機は、60℃以下の温水で再生でき、また、
20℃程度の冷水で除湿できるだけでなく、除湿後
の空気温度を低くできることが明らかとなった。
0.84 0.88
0.85 0.890.86
0.87
0.88
比容積v[m3/kg(DA)]
0.87
0.89 比容積v[m3/kg(DA)]
絶対湿度 x [kg/kg(DA)]
絶対湿度 x [kg/kg(DA)]
図10
18:30
図9改良型デシカントシステムの除湿側出入口絶対湿度変化
絶対湿度[kg/kg(DA)]
図8改良型デシカントシステム
18:20
4.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者には下線)
菊地原雅則、水谷国男、斎藤敏明、二ノ宮裕樹:放射対流併用空調システムに関する研究 その
1 気流・放射の有無と快適性の関係に関する検討、日本建築学会大会学術講演梗概集 D-2、
pp.969-970、2013.8
二ノ宮裕樹、水谷国男、岩瀬和夫:吸着材直接加熱・冷却型デシカントシステムに関する研究 そ
の2 回転式吸放湿ユニット切り替え装置の試作と性能検証、日本建築学会大会学術講演梗概
集 D-2、pp.927-928、2013.8
菊地原雅則、水谷国男、斎藤敏明、二ノ宮裕樹:放射対流併用空調システムに関する研究、空気
調和・衛生工学会大会学術講演論文集、pp.449-452、2013.9
二ノ宮裕樹、水谷国男、岩瀬和夫、中井拓也:デシカントシステムの吸放湿特性と省エネルギー
化に関する研究、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、pp.309-312、2013.9
〔雑誌論文〕(計0件)
〔学会発表〕(計4件)
〔図書〕
(計0件)
〔その他〕
産業財産権,ホームページ等
5.研究組織
(1)研究代表者
加藤信介
(2)研究分担者
大岡龍三、近本智行、小金井真、岩瀬和夫、桑原亮一、鬼頭則夫、岡崎紀臣、高木正尚、品田
直也、入部真武、山田哲司、柴田克彦、斉藤敏明、菊地原雅則、水谷国男(拠点内研究担当者)、
塚本健二