オーストラリア英語 映画タイトル Australia 山口美知代 (オーストラリア) 製作年 2008 年 監督 バズ・ラーマン DVD 情報 映画について 日本で入手可/英語字幕あり (166 分) 2008 年 11 月にオーストラリアで公開され『クロコダイル・ダンディー』 に続く史上第2位の興行収入を得た大ヒット映画です。南北戦争期のア メリカ南部を描いた『風と共に去りぬ』を意識しており、第二次世界大 戦直前期からの激動の時代を背景とした大河ロマンです。映画のなかで 日本軍がダーウィン空襲に続いて上陸するところが史実と違う(実際は 空襲のみ)ということが日本では話題になりました。 主要キャスト ニコール・キッドマン(サラ役)、ヒュー・ジャックマン(ドローヴァ ー役)、デイヴィッド・ウェナム(ニール・フレッチャー役) 、ブライア ン・ブライン(カーニー役) 、ブランドン・ウォルターズ(ナラ役) あらすじ 1939 年イギリス人貴族のサラは夫が所有する牧場を売却するためにオ ーストラリアのノーザン・テリトリーの奥地にやってくるが、夫が急死 したため、代わりに牧場経営に携わることになる。地元の畜産業を支配 している大牧場主のカーニーや、牧場の乗っ取りを狙う管理人フレッチ ャーの妨害を受けながらもサラは、牛追いのドローヴァーたちの助けを 借り牧場を経営する。やがてサラが可愛がっていたアボリジニの母親と 白人の父親を持つ少年ナラが、政府の混血児隔離・同化政策により強制 収容されてしまう。一方で日本軍が迫ってくる… 英語の特徴 主人公のサラはイギリス貴族の女性で、イギリスの標準英語を話しま 発音・文法・語 す。ドローヴァーはオーストラリアの奥地で牛追いをして暮らす自由人 彙 です。オーストラリア英語(ブロード・オーストラリア英語と呼ばれる、 発音特徴のはっきりした英語)を話します。ブロード・オーストラリア 英語を話すのは他に、牧場管理人のフレッチャーや、大牧場主のカーニ ーなどです。一方、カーニーの娘のキャサリンやダットン大尉などはオ ーストラリア英語独特の発音特徴の少ない英語を話します。 この映画の中ではオーストラリア特有の語彙も多く用いられていま す。たとえば、船でダーウィンに到着したサラが桟橋を渡っているとこ ろを男たちが遠くから眺めている場面のカーニーの台詞は “A bit pale. Not a bad-looking sheila, but what’s the story on the luggage? Wants to settle down in the outback, does she?” (青白いな。いい女だ。でもあの荷物は (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/ いったいどういうつもりだ?奥地に住みつこうっていうのか?)です。 ここでは、sheila (若い女) 、outback(奥地)など、オーストラリア特有 の語がつかわれています。映画のなかではこのほかにも、ナラの台詞で balanda(白人。アボリジニが白人を指して呼ぶ言葉)や billabong(川の 分流)、go walkabout(奥地を放浪する。特にアボリジニが一定期間放浪し て大地のインスピレーションを受けること)などが使われます。アボリ ジニに対する白人による蔑称 boong(アボリジニ、黒人、有色人)は、 ダーウィンでパブを経営するアイヴァンの台詞 “No boongs in here.”(ア ボリジニはお断りだ)で聞かれます。ドローヴァーが使う語では、crickey (おやまあ。) 、digger(オーストラリア兵) 、get cracking (仕事を始め る) 、grog(酒)などがあります。 また、ナラの英語はアボリジニの英語(アボリジナル英語)の特徴を 備えています。 “My grandfather King George, he take me walkabout, teach me black fella way. Grandfather teach me most important lesson of all. Tell’em story. . . . See, I not black fella. I not white fella, either.”は冒頭近く のナラの台詞です。文法特徴として、三人称単数現在の s がない(take, teach)、be 動詞が省略される(I not black fella. I not white fella, either.)、 名 詞 句 の あ と に 代 名 詞 を 主 語 と し て 二 重 主 語 が 用 い ら れ る ( My grandfather King George, he take me. . . ) 、他動詞を表す im や em の使い 方(Tell’em story.)などがあります。’em は間接目的語を指しているのでは なく、tell が他動詞であり直接目的語 story を取ることを示す標識です。 Story は複数形になっていませんが複数を表しており、’em は複数目的 語に先行しています。目的語が単数の場合は代わりに’im が用いられま す。例えば、 “Don’t make’im that policeman take away my boy.”(警官に 息子を連れて行かせないでください)はナラの母であるアボリジナルの 女性の台詞で、ここでは that policeman とく単数の目的語をとる他動詞 make に’im が付加されています。 映画のみどこ 主人公の恋人役のドローヴァーはオーストラリアの奥地で野生的に暮 ろ らしながらも、ここぞというときには白いタキシード姿でパーティにさ っそうと現れるいかにも格好よい男性です。一方で主人公に敵対するニ ールは、地主であるイギリス貴族への羨望や嫉妬、アボリジニへの蔑視 という負の感情に双方向で捕らわれていますが、どこか憎めない造形と なっています。ドローヴァーの粗野な口調、ニールの鼻音の際立つ話し 方が、サラのイギリス英語と対比されて際立っています。 その他 『世界の英語を映画で学ぶ』第5章で詳しく論じています。 (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
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