プロヴァンスの贈りもの

フランス英語
映画タイトル
A Good Year(プロヴァンスの贈りもの)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (118 分)
小林めぐみ
製作年
2006 年 (アメリカ)
監督
リドリー・スコット
映画について
『グラディエーター』でアカデミー作品賞を受賞したリドリー・スコッ
ト監督とラッセル・クロウのコンビによる作品。大きな話題を集めた映
画ではないですが、イギリス人である監督自身がプロヴァンスにワイン
農園を所有していて、撮影も監督所有の農園からほど近いところで行わ
れたとのこと。また、ラッセル・クロウの少年時代を『チャーリーとチ
ョコレート工場』のフレディ・ハイモアが演じています。
主要キャスト
ラッセル・クロウ(マックス・スキナー役)
、アルバート・フィニー(ヘ
ンリー・スキナー役)、マリオン・コティヤール(ファニー・シュナル
役)
、トム・ホランダー(チャーリー・ウィリス役)
、フレディ・ハイモ
ア(マックス少年時代)、アビー・コーニッシュ(クリスティ・ロバー
ツ役)
、ディディエ・ブルドン(フランシス・デュフロ役)
、イザベル・
カンディエ(リュディヴィーヌ・デュフロ役)ほか
あらすじ
ロンドンでゲームのように株の売買を指揮する辣腕トレーダーのマッ
クスは、ある日南仏プロヴァンスでワイン農園を営むおじヘンリーが亡
くなったという知らせを受ける。おじの遺産を相続することになったマ
ックスは、農園を売却するべく、急ぎプロヴァンスに向かう。しかし、
老朽化するシャトーや荒れた農園に手を入れていくうちにプロヴァン
スでヘンリーと過ごした幼い頃の大切な思い出が甦ってくる。このシャ
トーで長年働き、農園の仕事を生きがいとするフランス人夫妻の存在や
地元のレストランを切り盛りするファニーという女性との出会い、そし
てヘンリーの娘だと名乗るアメリカから来たクリスティーという少女
の出現などを通して、考えを改めるようになる。
英語の特徴
マリオン・コティヤールのフランス系英語は多くの映画で鑑賞すること
発音・文法・語
ができますが、この映画ではブドウ園で働くデュフロ夫妻の英語にフラ
彙
ンス語の響きが色濃く表れています。デュフロはヘンリーの娘を名乗る
クリスティーに会い、“The resemblance to Henry is unmistakable.”(ヘン
リー似なのは間違いないね)と言うのですが、resemblance はフランス語
風に「リザーンブランス」とやや鼻音の強い発音になっていますし、
Henry は「アンリ」とまではいかないものの「ハンリー」のように聞こ
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
えます。他にも、デュフロの父親がプロヴァンス語しか話せないという
話のくだりで“Very few still understands it. It is now practiced exclusively by
poets and sodomites.”(プロヴァンス語がわかる人はもうほとんどいない
さ。今じゃプロヴァンス語を使ってるのは詩人と男色家だけだよ。) と
コメントしているのですが、exclusively の/s/がフランス語式の発音と同
じく/z/となっています。このセリフはフランスには標準フランス語以外
の言語があることも思い出させてくれます。なお、この映画では、フラ
ンス系英語だけでなく、マックスやおじのヘンリーが話すイギリス系英
語、クリスティーが話すアメリカ英語、そしてマックスのアシスタント
のインド系英語など多様な英語に触れることができます。(ただし、マ
ックス役のラッセル・クロウはオーストラリア出身。クリスティー役の
アビー・コーニッシュもオーストラリア人でありながらアメリカ英語を
操り、マックスのアシスタント、ジェンマ役のアーチー・パンジャビは
イギリス育ちにもかかわらず映画では典型的なインド系英語を披露し
ています。
)
映画のみどこ
拝金主義の都会から人のぬくもりが感じられる田舎へ自然回帰を謳う
ろ
テーマははっきり言って平凡ですが、この映画の醍醐味は南仏のワイン
農園でのスローライフを疑似体験できることでしょう。ワインに関する
豆知識も嫌味でなくワイン初心者の興味を駆り立てる程度に仕上がっ
ています。ちなみに原題の a good year はワインの「当たり年」という意
味とのことです。また南仏にはサソリが出るらしく、サソリよけに効く
ラベンダーを窓際に置いておくなど、生活の知恵も得られます。
この映画は、リドリー・スコット監督の映画の中では唯一のコメディ
ーという異色の作品で、コメディーの要素としては、英仏米のステレオ
タイプが小気味よく取り入れられています。マックスはフランス人の蔑
称“frog”ということばを使ったり、シャトーを訪ねてやってきた初対面
のクリスティーに、「そんな白い歯をしている人はアメリカ人しかいな
い」とコメントをしたりと、そこかしこで「不適切」な発言をしていま
す。レストランでてんてこ舞いするファニーを手伝おうとマックスが即
席ウエイターを買って出るシーンでは、ファニーが“If there are any
complaints, remember, in France, the customer is always wrong.”と言って、
フランスでは「お客様は神様」ではないのだとマックスにくぎを刺しま
す。この後“Do you speak American?”などと聞き、本国にいるかのように
事細かいサービスを要求してくるアメリカ人観光客に対して、マクドナ
ルドならアヴィニオンにあるよ、とメニューを取り上げるシーンがあり
ますが、フランス文化とアメリカ文化の対立を表した典型的な例と言え
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
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るでしょう。
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