ガーナ第四共和制における二大政党制の軌跡

平和研究会
2007 年 10 月 30 日
ガーナ第四共和制
ガーナ第四共和制における
第四共和制における二大政党制
における二大政党制の
二大政党制の軌跡
六辻彰二
はじめに
(1)なぜガーナの民主化か?
.
アフリカの民主化:「アフリカ問題」の一つの極
ガーナ:民主主義の定着における比較的良好なパフォーマンス
民主主義の定着:「街で唯一のゲームになる状態」[リンス(2005: 24)]
(2)ガーナにおける民主主義定着の一側面としての政党政治
民主主義定着段階における政党の重要性
政党に期待される機能:
社会と権力を繋ぐ架橋機能
組織化
リーダーの補充機能
決定作成マシーンの
政治的社会化機能 など[岡澤(2002:142-144)]
「アフリカの政党は政治的有力者を中心とする徒党」[サルトーリ(1992: 423)]
アフリカと二大政党制:ヘゲモニー政党制(7) 一党優位制(5) 穏健な多党制(2)
二大政党制(2) [Erdmann & Basedau (2007: 9-10)]
第四共和制への
第四共和制への道程
への道程
(1)第五軍政(1981~1992)の特徴
.
プラグマティズム:「革命」から「IMF の優等生」へ
独裁的な意思決定:J.J.ローリングス=PNDC
幅広い国民からの支持
既存の政治組織との乖離
独立以来の二大政治潮流:会議人民党(CPP)系と進歩党(PP)系
経済復興と汚職撲滅の成果
公務員、ビジネスマンに対する人権侵害
PNDC 支持基盤のネットワーク化:革命防衛委員会(CDR)、地区議会(DA)、
12 月 31 日女性運動(DWM)など
(2)ローリングス・PNDC 主導の体制転換(1991~92)
冷戦終結と「第三の波」
「IMF の優等生」としての交渉力
国内民主化勢力(自由正義運動:MFJ など)の台頭
一般国民の PNDC 支持
ローリングス-NDC に有利な 1992 年大統領選挙の実施
憲法制定委員会、国民議会における人選の不均衡
行政府に権力が集中する第四共和制憲法の採択
国家予算や国営メディアなどの独占的使用
ローリングス-NDC による CPP の伝統のハイジャック
ローリングス大勝と野党の議会選挙ボイコット( 国際社会による結果承認)
二大政党制の
年選挙
二大政党制の顕在化?:
顕在化?:1996
?:
(1)与野党間の対立と妥協
.
野党による NDC 批判:司法、メディア、デモなど
1
ローリングス主導の与野党協議
ex)政党間諮問委員会(IPAC):調停役としての選挙管理委員会(EC)
選挙日程(同日選挙)、有権者登録のやり直し、写真付き ID カード発行など
=独裁的指導者による民主化の進展
(2)1996 年選挙
NDC 中心の進歩同盟(PA)対 NPP-PCP の大同盟(GA)+PNC
=対立軸としての親 NDC 対反 NDC
ローリングス-NDC への支持
GA 内部の統一性の欠如
選挙の不公正さの残存(国営メディアなど)
1996 年選挙の意義:議席の2/3を野党が確保(憲法改正が制度上不可能)
野党による選挙結果承認(「ゲームのルール」の承認)
. 二大政党制と
二大政党制と政権交代の
政権交代の同時実現:
同時実現:2000 年選挙
(1)与野党間の対立と妥協の継続
GA の解消と NPP の国民政党化の模索
議場での政府批判:憲法問題から経済問題と汚職へ 無条件対立の傾向(VAT など)
NPP の内部体制:大統領候補の J.クフォーと新党首の D.ボッツェ
選挙・政党のための取り決め(2000 年)
IPAC:「政党のための行動規範」(CCPP)締結
改訂政党法と公職者資産公開法の制定
NDC 内部の混乱
ローリングスの三選不出馬宣言と J.A.ミルズ後継指名 国民改革党(NRP)の離反
(2)2000 年選挙:投票行動の明確化
クフォー-NPP の辛勝
エスノ-リージョナルな投票分布
「一党偏向地域」:アシャンティ州、ヴォルタ州
「二大政党競合地域」:西部州、東部州、中央州、ブロン=アハフォ州、アクラ
「二大政党プラスアルファ地域」:北部州、上西部州、上東部州
二大政党化は全国レベルの現象ではない
社会経済的属性による投票パターン
NDC 固定票:農村住民、低所得層、未熟練労働者、民間セクター就労者、低学歴層
NPP 固定票:都市住民、高所得層、熟練労働者、公共セクター就労者、高学歴層
2000 年選挙:農村住民、低所得層、失業者、低学歴層の浮動票が NPP に流入
エスノ-リージョナルな要素と社会経済的要素の融合による僅差の政権交代
二大政党制の
年選挙
二大政党制の定着?:
定着?:2004
?:
(1)与野党逆転状況での対立と妥協
.
クフォー-NPP による政党間融和の取り組み
国民和解内閣の組閣、「統合移行チーム」(JTT)の設置など
PNDC-NDC 時代の遺産への挑戦
迅速審理裁判所(FTC)の設立、国民和解委員会(NRC)の設置、軍隊改革など
2
=背景としてのクフォーが置かれた環境(ローリングスとの対比)
ローリングス・ファクターの顕在化
NDC の脱ローリングス化:O.Y.アサモアの党首選出 民間メディアとの接近
IPAC での協議:CCPP の改訂、30 選挙区の増設など
(2)2004 年選挙
1996 年および 2000 年選挙における投票行動は基本的に継続:競争性の低下
クフォー-NPP の社会経済政策
HIPCs イニシアティブ申請と貧困削減戦略(PRS)
ex)国民健康保険導入 地方でのインフラ整備
NPP 大勝の要因:現職の優位、ミルズ-NDC の分裂、労働組合会議(TUC)の無策
2004 年選挙が示した可能性と危険性
NPP の包括政党化
.
NPP による一党優位体制化
おわりに
ガーナ第四共和制における二大政党制
二大政党が適合した背景
歴史的背景: CPP 系と PP 系の二大潮流 ローリングスによるハイジャック
エスニシティの人口比:アシャンティとエウェを中核とするグループ化
二大政党制の弊害
NPP と NDC の政策的差異の小ささ
無条件対立を演出するスタンドプレイ
地方レベルでのエスニック紛争との連関(ダグボンでの騒乱)
政党政治定着への課題
議員個人の能力構築
ex)情報収集能力 インターネットにアクセスできる:yes=14%
議会図書館に不満:yes=68% [Alemna & Skouby (2000)]
議会と政府の関係性:米国型大統領制+英国型議院内閣制
ローリングス・ファクターの解消
主要参考文献
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G.サルトーリ(1992)、岡澤憲芙・川野秀之訳『現代政党学』、早稲田大学出版部。
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