新産業金融事業グループ

Mitsubishi Corporation
Annual Report 2011
新産業金融事業グルー プ
グルー プ CEO メッセージ
当グループは、
「モノ」
への目利き力・ノウハウに加え、全産業
その中でも、当グループ全体にまたがっていた不動産金融事
領域との接点やグローバルネットワークを有するという当社の
業をより機動的に推進していくため 、2010 年 10 月にグル ープ
強みを活かし、商社型産業金融ビジネスに取り組んでいます。
CEO 直轄組織として「不動産金融事業ユニット」を新設し、中長
主な事業は、リース事業、バイアウト投資 *1 事業、アセットマネ
期の不動産ポートフォリオを構築して、金融商品化していく体制
ジメント事業、不動産金融事業などで、従来の金融モデルを発展
させた三菱商事ならではの新たな金融仲介ビジネスを展開して
を構築しました。
2011 年3 月期は、グループ発足以来取り組んできた事業の枠
います。また、商業・物流施設・分譲住宅などの不動産開発や、
組みにも一定のめどが立ち、本格稼働に向かいました。金融市
物流分野・保険分野でのソリューション提供も推進しています。
場は、金融危機からの回復の流れを受けて、総じて堅調に推移し
ました。これらのことから、当グループの当期純利益は 116 億
中期経営計画 2012 の目標と進捗状況
円となり、前期の 76 億円の損失から192 億円改善しました。
『 中期経営計画 2012 』の下、当グループでは、優良資産ポー
トフォリオの構築とアセットマネジメント機能の強化に加え、中国
をはじめとする新興国の成長の取り込みに注力しています。
重点戦略として、
「不動産を対象とした不動産金融事業と海外
(中国など)
での不動産開発事業」
、
「航空機・自動車・総合のリー
2012 年 3 月期の事業環境・業績見通し
当グル ープを取り巻く事業環境は 、東日本大震災による影響
を引き続き注視する必要がありますが 、金融危機による一時的
な落ち込みからはすでに脱却したものと判断しています。
ス事業」
、
「インフラ分野を金融事業として取り組むインフラ関連
2012 年 3 月期の当期純利益は、リース事業からの堅調な収益
金融事業」
、
「国内外企業へのバイアウト投資事業」
、
「船舶等の
貢献などにより、前期比 14 億円の増加となる130 億円を見込ん
物流資産を対象とした物流金融事業」
の五つの事業領域を
「伸ば
でいます。
す」
分野と定め、実物資産や実業をベースにした金融仲介を実現
する
「商社型産業金融ビジネス」
を、グローバルかつ総合的に展
*1 バイアウト投資:既存企業に出資し、経営をサポートすることで、企業価値向上を通じ
てリターンを得る投資手法
開することを目指していきます。
常務執行役員
新産業金融事業グループ CEO
武内 英史
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組織
新産業金融事業グループ
新産業金融事業グループ
CEOオフィス
新産業金融事業グループ
管理部
不動産金融事業ユニット
産業金融事業本部
開発建設プロジェクト本部
物流本部
従業員数
連結 . . . . . . . . . 2,431 名
単体 . . . . . . . . . 383 名
連結対象会社数 . . .
宮原 一郎
佐々木 伸
執行役員
産業金融事業本部長
執行役員
開発建設プロジェクト本部長
理事
物流本部長
村田 弘一
新産業金融事業グループ CEO 補佐
(不動産金融事業担当)
80 社
当期純利益
(単位 : 億円)
廣本 裕一
社会・環境価値の創造に向けて
〈低炭素型マンションの開発を促進〉
開発建設プロジェクト本部は 、環境配
慮型マンションの開発を積極的に進めて
います 。2011 年 1 月に竣工した
「テラス
東陽町ネクスタワー (
」 東京都江東区)
は、
CASBEE 評価(建築物総合環境性能評価
システム)
における CO 2 排出量基準値に
対し、大幅な削減を実現するなどの成果
を上げています 。
09.3
10.3
11.3
12.3
実 績
実 績
実 績
見通し
■ 第 1 四半期 ■ 第 2 四半期 ■ 第 3 四半期 ■ 第 4 四半期
具体的には 、①エネルギ ー効率に優れ
た設備を導入し、地球温暖化の原因とさ
れる CO 2 排出量を削減、②緑化面積を増
やし、住環境と地域環境の向上を図る、
③再生材や節水型設備を積極的に採用
〈主な変動要因〉
2009 年 3 月期∼ 2010 年 3 月期
〈増加〉
• 株式減損の前期比減
•ファンド投資関連収益の改善
2010 年 3 月期∼ 2011 年 3 月期
〈増加〉
• 株式減損の前期比減
• 海外不動産売却益の計上
•リース関連事業収益の改善
し、限りある資源の節約を図る、という三
つのテー マで開発を推進しました 。
また 、三 菱 自 動 車 工 業 の「 i-MiEV 」を
カーシェアリングに採 用するなど 、ソフ
ト・ハード両面から環境に優しい住まいづ
くりに貢献しています 。
テラス東陽町ネクスタワー
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新産業金融事業グルー プ
産業金融事業本部
金融企画ユニット
▶
日本政策投資銀行と共同で、アジアのプライ
リーマンショック以降、日本国内の不動
ベート・エクイティ・ファンドを投資対象とす
産取引は大幅に落ち込み 、景気の低迷も
る新ファンドを設立しました。今後も同ファ
あって回復が遅れていましたが、2011 年
▶
インフラ・事業金融ユニット
ンドのほか、投資家のニーズに合ったファン
3 月期にようやく底打ちの兆しが見られま
▶
リース事業ユニット
ドの組成・販売などを通じて、資産運用ビジ
した。しかし、東日本大震災が不動産マー
▶
エアラインビジネスユニット
企業金融ユニット
ネスの強化・発展に取り組んでいきます。
ケットに与える影響は複雑で、見極めに時
▶
リース事業では 、当社関連会社である
三菱UFJリースや三菱オートリースにおけ
新興国と先進国の株価指数の推移(07.4 ∼ 11.3)
(単位:MSCI 指数、先進国)(単位:MSCI 指数、新興国)
1,500
2,100
1,000
1,400
500
700
る業績は回復基調にあります。また、航空
2007
0
■
■
2008
2009
MSCI 指数、新興国 ■
■
2010
2011
MSCI 指数、先進国
MSCI 指数/先進国・新興国:先進国・新興国それぞれ20カ
国以上の株式を対象とする株価指数
出所:Morgan Stanley Capital Inc. Emerging Market Index
リーマンショックを機に大きく落ち込ん
注目しています。
当本部では、総合商社ならではの幅広い
機リース事業においても 、旅客需要の回
産業分野へのアクセスやグローバルなネッ
復を好機と捉え、当社100% 子会社である
トワークを活かし、国内外で付加価値の高
MC アビエーション・パートナーズでは優
い不動産の開発や建設・不動産分野での高
良資産の積み増しを図っています。
度なソリューション提供を行っています。
バイアウト投資事業では 、当社と三菱
UFJフィナンシャルグル ープの合弁企業
0
間を要するものも多く、今後の取引動向に
2010 年 7 月に欧州の投資家に売却した
ロンドン・シティの
「 Bow Bells House 」
である丸の内キャピタルが運営するファン
は当社がパ ートナーと共同で開発したオ
ドを通じ、高品質食品スーパーマーケット
フィスビルで、金融危機によりマーケット
を運営する
「成城石井」など新たに 2 件の
に不透明感が広がる中にあっても、投資対
投資を実行しました。また、2010 年9 月に
象として高い評価を得た開発事業の一例
は、国内のメガバンクと共同で事業再生を
です。
必要とする企業を投資対象としたファンド
国内では 、当社子会社の三菱商事都市
だ世界経済も底を打ち 、回復基調を保っ
運営会社「ジャパン・インダストリアル・ソ
開発が武蔵野市開発公社から大手百貨店
ています。中でも先進国を上回る成長を
リューションズ」
を設立し、事業再編・再生
が退店した商業ビルを借り上げ
「コピス吉
続けている中国やインドをはじめとした新
における資金ニーズに応えることを目指
祥寺」
として 2010 年 10 月にリニューアル
興国では、インフラ整備や産業育成に伴う
しています。
オープンするなど、都市型商業施設の開
資金需要が旺盛であり、当本部の投資機
会やビジネスチャンスも増えています。
当本部では、
“産業金融”
の視点に立ち、
今後、海外のインフラファンドへの新た
な取り組みなどを含め、産業金融ビジネス
のさらなる拡充を進めていきます。
業、③バイアウト事業の 3 分野を中心に、
アセットマネジメント事業においては、当
社子会社であるエー・アイ・キャピタルが
発機会をグローバルに追求しており、成長
への取り組みを本格化させているほか 、
開発建設プロジェクト本部
最大の不動産マーケットであるアメリカ
資家へのさまざまな投資機会の提供を通
じて、金融仲介機能を果たしています。
当社では 、付加価値の高い不動産の開
著しい中国で住宅や商業施設、物流倉庫
①アセットマネジメント事業、②リース事
産業界へのリスクキャピタルの提供や、投
発・運営に力を入れています。
で、学生アパートなどのユニークな成長分
▶
不動産開発事業ユニット
▶
都市・住宅開発ユニット
▶
建設・設備ユニット
▶
海外不動産ユニット
野に積極的にリソースを投入しています。
日本の証券化の対象となる不動産取引額、
不動産取引件数
(単位:兆円、件)
新興国における自動車ファイナンス事業のニーズを取
り込むべく、当社と三菱 UFJリースと共同でトルコ大手
自動車リース会社Ekim Turizm Ticaret Ve Sanayi A.S
(ブランド名:Intercity )
に資本参加しています。
40
07.3
08.3
■ 不動産取引額 09.3
10.3
■■
*J-REIT を含む
出所:国土交通省
不動産取引件数
11.3
三菱商事都市開発がリニューアル・運営管理を手掛け
る複合商業施設「コピス吉祥寺」
。
Mitsubishi Corporation
に減少し、2011 年 3 月期はそれ以前の水
物流本部
準に回復しつつある状況です。
こうした環境下、当本部は 、当社各グ
Annual Report 2011
会社 NEW CENTURY INSURANCE の
運営を通じて、各種保険事業を幅広く推進
しています。
▶
保険ユニット
▶
物流事業ユニット
ループの商流と一体となり、総合的・一体
▶
不定期船事業ユニット
的物流サ ービスを提供し、①物流事業、
▶
ターミナル事業ユニット
物流開発ユニット
②不定期船事業、③保険事業の 3 分野を
象としたファンド事業、さらに、物流機能
▶
中心に着実な実績を上げています。
を切り口とした事業再構築や企業投資など
また 、新産業金融事業グループの一員
本邦輸出入海上コンテナ貿易額
今後は、新たなビジネスモデルの展開と
して、物流不動産ビジネスや物流資産を対
も推進していきます。
として、金融機能を組み込んだ、商社らし
(単位:兆円)
いユニークな物流金融事業モデルの構築
40
にも取り組んでいます。
30
物流事業では 、当社子会社である三菱
商事ロジスティクスが国内外での倉庫・輸
20
配送、国際複合一貫輸送、自動車船の船
10
舶保有運行事業を展開。さまざまな顧客
0
2006
2007
2008
2009
2010
■ 輸出 ■ 輸入
ニーズに対応しています。
不定期船事業では、石炭、穀物などの原
料輸送における外航船舶の保有と運航、
出所:財務省貿易統計より当社作成
港湾ターミナルの運営など総合バルク物
本邦輸出入海上コンテナ貿易額は2008
流事業に取り組んでいます。
年 3 月期まで増加傾向でしたが 、2008 年
保険事業では 、保険代理店である三菱
に起きたリーマンショックの影響で一時的
商事インシュアランスとキャプティブ保険
不動産金融事業ユニット
れている部分はいまだ 1% 程度に過ぎ
ず 、今後、アメリカ並みの 5% 規模への
成長も期待されます。
東証 REIT 指数の推移
新産業金融事業グループ全本部にま
(2010 年 4 月∼ 2011 年 5 月)
たがっていた不動産ビジネスを金融事
1,200
大黒町物流センター
開発型証券化手法を用いて2010 年3 月に竣工した大型
物流センター。
(横浜市)
組成・運営事業などを行っています。
今後、国内事業基盤の拡充とともに、
国内外の投資家と、主に中国・アメリカ
の不動産を縦横につなげるべく海外事
業構築を図る方針です。
業として推進していくために、
「不動産
1,000
金融事業ユニット」
を 2010 年 10 月 1 日
800
付で新設。産業金融事業・開発建設プ
600
ロジェクト・物流の既存 3 本部の融合組
織として、関連事業や資産の移管と人材
400
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5(月)
■
■
東証 REIT 指数 ■
■
TOPIX
投入を行い 、グループ CEO 直轄の下、
より機動的に不動産金融ビジネスを推進
していく体制を整備しました。
リーマンショック以降低迷した不動産
当ユニットでは、金融仲介につなげる
市況にも底打ち感が出始め 、安定収益
ための収益不動産の中長期保有を前提
を生み出す上場 REIT や不動産私募ファ
とした、自己資金によるポートフォリオ運
ンドへの投資家ニーズも確実に回帰傾
営事業、ならびに、不動産アセットマネジ
向にあります。2,200 兆円と言われる
メント事業子会社を通じて、第三者資金
わが国の不動産市場の中で 、証券化さ
・私募ファンドの
活用による公募
( REIT )
mozo wondercity( モゾワンダーシティー )
当社が保有する大型ショッピングセンター。
(名古屋市)
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