平成21年度 NIE 実践報告 ICT を活用した学問調べ 情報検索スキルとしての新聞の活用 北海道函館稜北高等学校 教諭 藤島 尚子 1 はじめに 本校は今年度はじめて、NIEの実践校に認定され、おもに1学年(5クラス 200 名)における総合的な学習の時間の中の「ICT を活用した学問調べ」の中で情報源の 1つとして新聞を活用することとした。 (1)本校の概要 函館市北部に位置する5間口600名の普通科高校である。生徒は落ち着いている。 平成18年度に北海道教育委員会の北海道学力向上対策事業「Academy プロジェクト」 の推進校として指定を受け、平成20年度までの3年間にわたり、読解力・思考力・ 表現力を基礎とした確かな学力の向上に取り組んできた。平成 21 年度以降は文部科学 省の学力向上実践研究推進事業の推進校に指名され、本校では「Wisdom プロジェクト」 との名称で引き続き、確かな学力の向上に取り組んでいる。 (2)確かな学力と総合的な学習の時間 本校のめざす「確かな学力」とは、教科学力と総合力(見えない学力)から成る。 確かな学力向上は、この2つの力を同時に高めることにより、相乗効果によって実現 できるものととらえ、各種実践に取り組んでいる。中でも、総合的な学習の時間にお いては、1学年で「ICT を活用した学問調べ」2学年で「小論文論理構築」3 学年で 「小論文テーマ学習」を柱として取り組んでいる。総合学習をこの3つの柱で行うよ うになって今年で3年目であり、毎年工夫改善しながら深化させている。この取組に よって生徒の進路意識も高まり、思考力や表現力も高めている。今年度は、初めての 取組として、1学年で新聞の活用を取り入れた。 2 総合的な学習の時間「ICT を活用した学問調べ」とは (1)目的 ①学問分野を調査することで、物事の表面から学問的本質へと思考を深める。 ②検索スキルと身につけるとともに、より深く進路や学習についての認識を深め、進 路に対する視野を広げる。 この2点である。最初のオリエンテーションや節目ごとに生徒に確認している。 (2) 「学問調べ」の課題設定の背景 ア)生徒が持っている「専門性のレベル意識」を修正する必要がある。例えば、情報 技術者になるためには、ワープロを上手に扱うことよりも数学を勉強することが重 要であると理解できていない。また、建築デザインに興味があっても、土木科で建 築を勉強できることや、数学や物理が大切なことに気づかず、建築デザイン学科で しかそれを勉強できないという誤解も解消されない。 イ)インターネットの検索では、単純なキーワード検索では、生徒の人気に敏感な専 門学校の学科名ばかりが検索されてしまい、進路検索の入り口において、選択肢を 狭める可能性が高い。 (3)実施方法 まずはじめに、この活動の目的と背景を生徒に説明し、クラスごとに4~5人の 班をつくり、その班で理系文系の指定された学問分野を2~3名で担当し、調べ、 まとめてクラスで発表し、優秀な発表をクラスで2~3分野を生徒の投票で選び、 学年で発表会を行う。生徒は自分の進路希望とは関係なく、担当分野を振り分けら れる。任意に担当を振り分けられることで(あえて希望は取らない) 、生徒は意外な 発見をする。他の生徒の発表を聞くことで、学問分野に対してもっていたイメージ を変えられたり、思ってもいなかった学問分野に興味を持ったりする。 (4)実施の流れ 組 1回目 3~8回目 2回目 1 体育館 教室で 組 オリエンテ 班分け 2 ーション と担当 組 活動の目的 決め 3 新聞の見方 図書室 図書室 PC教 10回目 一 新聞活 各クラス 体育館で 斉 用 ごとに発 学年発表 PC教 新 進路室 表会 会 室 聞 進路室 ス 進路室 パワーポイ 図書室 ント使用 ク 組 室 4 進路室 図書室 組 5 9回目 進路室 図書室 ラ PC教 ッ 室 プ 図書室 組 学問分野を調べるにあたって、情報源としたものは、新聞・インターネット、図書 館資料、進路資料(本校資料の他、進研プレス「学べる大学探せる辞典」を活用) である。表面的な情報にならないように、本質的キーワードをみつけ、参考図書を 検索し、新聞で最新の動向を調べるようにした。 まとめシー オリエンテ ーション ト 3 新聞の活用方法 NIEで届く新聞は、北海道新聞・朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経 済新聞の8紙。毎日届く新聞8紙を1学年の学習室に新聞社ごとに箱を置き、その箱に貯 めていった。休み時間等は学習室で自由に新聞を閲覧してもよいことにした。時期的に衆 議院議員選挙で政権交代が実現したときであり、各紙読み比べる生徒もいた。ここで何か 実践ができたかもしれないが、新型インフルエンザで学級学年学校閉鎖が続いた時期でも あり、機会を逸してしまった。 NIEの新聞はもともと「学問調べ」のために活用する予定たったので、今年度は「学 問調べ」に焦点を絞ることにした。 (1) 一斉新聞スクラップの実施 ア)月に1度、体育館に学年全員が集まり、8紙の1ヶ月分の新聞の中から1人 一紙持ち、 「学問調べ」で使えそうな記事を切り抜き、スクラップする。 イ)スクラップは学習室にまとめて置き、「学問調べ」の「新聞活用」の回で自 分の担当分野に関する記事を活用する。 【一斉スクラップの活動の様子】 体育館に200名が思い 思いに新聞を広げる 普段あまり新聞に接することのない生徒も、隅々まで新聞をめくり熱心に記事を探して いた。200名が新聞を広げる姿は壮観であった。 4 発表 クラス発表 メモをとりなが ら熱心に聞いて います。 「ICT を活用した学問調べ」の目的を生徒は理解し、意欲的に調べ、まとめて発表して いた。学年全体の発表では、各クラスの代表が冬休み期間にPC教室でパワーポイントを 作成してプレゼンテーションを行った。選ばれた生徒は大変な作業であったが、充実した 経験となった。 (1)プレゼンテーション作成の流れ クラス発表後、代表者が決定 ↓ ↓ ストーリーの組み立て スライドの作成 ・学べる大学と ↓ ↓ 学部 内容の点検と読み合わせ ↓ ・最新の研究 担当の先生からのアドバイス ・高校の教科と ↓ 修正 の関連 ↓ リハーサルと微調整 ↓ 本番 【体育館での学年発表会】 パワーポイント(スライド)を作 成し、発表を行う。代表の発表を 聞くことにより、新たな学問分野 への興味が広がった。(生徒の感 想より) 5 まとめ 新聞記事は、自分の担当する分野とは関係なくても、「誰かの学問調べに役立ちそう」と いう目的意識を持って探すことで生徒の視野を広げることができた。インターネットのよ うに手軽ではないが、じっくりと深く考えるためには新聞記事が役立つと生徒も理解した ようである。情報検索スキルの取得という目的はほぼ達成できたのではないかと思う。 次年度は授業や日常の活動でも活用できる方法を研究していきたい。 【生徒の自己評価】 自己評価:未知のものを調べるスキルを習得出来たか。 評価 計 1× 2△ 3 31 3○できた 114 4◎ スキルを習得できたか 150 100 47 50 0 1 2 3 4
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