寄 稿 田園都市産業ゾーン (圏央道沿線産業基盤づくり)の推進について 埼玉県都市整備部田園都市産業ゾーン推進室長 古里 実 田園都市産業ゾーンイメージパース はじめに これにより、圏央道のインターチェンジ周 辺などでは企業立地のポテンシャルが飛躍的 埼玉県内では、首都圏3環状の一翼を担う に高まることが期待され、産業集積を目指す 「圏央道」の整備が、平成2 4年度の開通を目 本県にとって絶好のチャンスが訪れることと 標に進められています。圏央道は首都圏の主 なりました。 要都市を環状に結ぶとともに、関越、東北、 そこで、県では平成1 8年1 0月に「田園都市 常磐の各高速道路と接続し、その開通に伴い 産業ゾーン基本方針」を策定し、圏央道沿線 県内では近県に先駆けて高速道路ネットワー 地域において豊かな田園環境と調和した産業 クの骨格が完成します。 基盤づくりを積極的に推進しています。 ぶぎんレポート No. 11 6 200 8年11月号 7 寄 稿 ■ 基本方針の適用範囲 基本方針は、圏央道のインターチェンジか ら5�の範囲を基本に適用します。この範囲 の中で、圏央道と広域幹線道路との結節点や、 広域幹線道路の沿道などに限定して、田園環 境と調和した産業基盤づくりを誘導・支援し 支援1 公的機関が参画・支援 公的機関が参画・支援することで、官の信 用力を活かした事業を展開します。 支援2 ています。 関連公共施設の早期集中整備の 実施 適用の期間は圏央道の県内区間の開通目標 アクセス道路等の関連公共施設の整備を早 時期である平成2 4年度までとして、その間に 期集中的に実施することにより、企業活動の 集中して産業基盤づくりに取り組んでいます。 ポテンシャルを高めます。 ■ 土地利用及び環境配慮の方針 圏央道沿線地域における土地利用及び環境 配慮の方針を定め、風土と調和した秩序ある 支援3 事業化スピードアップ、 開発コスト軽減を支援 事業のスピードアップや開発コスト負担の 土地利用を誘導します。 軽減につながるように、 「官」と「民」のつ �計画に基づく土地利用 なぎ役を果たします。 インターチェンジ周辺など新たな産業集積 のポテンシャルが高く、土地利用上合理的な 一定の区域に限り、 「計画的な開発に基づく 2 先導モデル地区の選定 市街化区域編入」を基本とし、また、市街化 先導モデル地区は、選択と集中の考え方に 調整区域の地区計画を積極的に活用するなど 立ち、 「モデル地区としての先導性」 「 、土地利 して、計画的に産業基盤づくりを誘導します。 用から見た開発適性」及び「事業としての実 �環境に配慮した土地利用 現性」の3つの視点を基本に選定しています。 圏央道沿線に広がる豊かな田園環境を次世 選定に当たっては、地元調整や各種法手続 代に残し、地域空間の価値を保つため、田園 など、地元の市町が果たすべき役割について 環境と産業基盤づくりの両立と調和を目指し 積極的に取り組むことを前提にしています。 ます。 ■ 先導モデル地区の選定と進捗状況 �田園空間に配慮した緑地空間の創出 一定規模以上の産業基盤づくりにおいては、 平成1 8年度は、第1次先導モデル地区とし て川島 IC 北側地区、菖蒲白岡 IC (仮称) 地区 埼玉の原風景である屋敷林をイメージさせる 及び川越工業団地拡張地区の3地区を選定し ような緑地空間を創出することとしています。 ました。川島 IC 北側地区ではこれまでにな いスピードで土地区画整理事業が進み、平成 ■ 埼玉県3つの支援 2 1年3月にまちびらきが予定されています。 産業基盤づくりを推進するにあたっては、 また、他の2地区も予約分譲が行われ、順調 先導モデル地区を選定し、県が重点的に支援 に造成工事が進んでいます。3地区でこれま します。 でにYKK AP�をはじめ2 7社の進出が決 ぶぎんレポート No. 11 6 200 8年11月号 9 1 田園都市産業ゾーン基本方針 この基本方針は、圏央道沿線地域への産業 ■ 埼玉県3つの宣言 宣言1 集積に向けた県の積極的な姿勢を内外に示す ものです。 また、圏央道の沿線地域には豊かな田園環 境が広がっていることから、この田園環境と 調和した産業基盤づくりを目指しています。 産業基盤づくりを進めるにあたっては、こ の基本方針に基づき先導モデル地区を選定し、 県が重点的に支援を行うこととしています。 地元市町との協働を前提に リーダーシップを発揮します 圏央道沿線地域を中心に、県がイニシアチ ブをとって産業基盤づくりを推進します。 宣言2 官民連携を推進します 民間の活力と官の信用力をつなぎ、スピー ド感のある産業基盤づくりを推進します。 宣言3 秩序ある土地利用を誘導します 豊かな田園環境と調和した産業基盤づくり を推進します。 田園都市産業ゾーンと誘導・ 支援エリアとの関係(イメージ) 圏央道のインターチェンジから 概ね5�の範囲を基本に適用 田園都市産業ゾーン内における誘導・ 支援エリアの条件(イメージ) �エリア条件 工業・研究施設 �インターチェンジ 周辺タイプ 圏央道と広域幹線道路との結節点、広域 幹線道路の沿道などに限定し、田園環境 と調和した産業基盤づくりを誘導・支援 ぶぎんレポート No. 1 1 6 2 0 0 8年1 1月号 IC 出口より概ね1. 5�以内 4車線以上幹線道路 �広域幹線道路沿道 幅員1 2m 以上 の沿道 タイプ (最低幅員9m)(交通処理上支障の (又はその道路からの の道路の沿道 な い 進 入 路 で 概 ね 距離) 5 0 0m 以内) �既存工業団地拡張 タイプ �面積要件 8 流通業務施設 5ha 以上の既存工業団地に隣接する 区域 開発面積が概ね5ha 以上 川島 IC 北側地区 菖蒲白岡 IC(仮称)地区 川越工業団地拡張地区 騎西国道1 2 2号沿道地区 定又は内定しています。 長・町長が一堂に会し、インターチェンジ周 平成1 9年度は、第2次先導モデル地区とし 辺地域の乱開発抑止に連携して取り組み、圏 て騎西国道1 2 2号沿道地区を選定しました。 央道沿線の緑豊かで美しい環境を地域の財産 同地区では、早期の造成工事着手に向けて各 として次世代に引き継いでいくことを宣言し 種の手続きを行っています。 ました。 これらに続く地区についても事業化に向け 積極的な育成支援に取り組んでいます。 年内に、乱開発抑止の重点抑止エリアを設 定して啓発活動や監視活動を実施するととも に、関係法令を厳格に運用して乱開発の抑止 3 乱開発の抑止 圏央道沿線には県民の貴重な財産である豊 かな自然環境、 田園風景が広がっており、 武蔵 野の原風景ともいえる地域を形成しています。 一方で、圏央道の開通により開発ポテンシ に努めていきます。 終わりに 景気は不透明感を増しており、産業立地の 動向も楽観視できない状況にあります。 ャルが高まるインターチェンジ周辺では資材 しかしながら、圏央道整備の効果を最大に 置場や残土置場などの乱立、いわゆる乱開発 活かす産業基盤づくりは、埼玉の社会経済の という美しくない土地利用の出現が懸念され 活性化を図る上で不可欠なものですので、今 ています。 後も、着実に進めていきたいと思います。 そこで、本年1月に知事と沿線1 6市町の市 10 ぶぎんレポート No. 1 1 6 2 0 0 8年1 1月号
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