第4回 公開講座

第4回 公開講座
開催日時
1. 外来動物を考える~アライグマは日本を征服するのだろうか~
平成 25 年 6 月 15 日(土)
受付/12:30 開講/13:00
先端技術総合研究所 教授 宮下 実
会場
御坊商工会館(大会議室)
和歌山県御坊市薗 350-28
13:10~14:00
定員
※定員 120 名先着順とさせていただきます。
※定員を超える場合は、申込を締め切らせて
いただきますのでご了承ください。
司会
WBS 和歌山放送パーソナリティ 奥田 智子
農作物や文化財に被害を与え、日本の在来の野生動物にも大きな影響
を与えている外来動物。日本のタヌキが絶滅して、アライグマに替わる
日が来てもいいのでしょうか。
プログラム
2. 衝突と衝撃~加速度と力と人体~
人間工学科 教授 渋江 唯司
後援
和歌山県教育委員会・御坊市教育委員会
14:05~14:55
身の回りで起こる身近な事故を取り上げ、そこでどんなことが起きている
かについて考え、最新の自動車の技術や津波対応救命艇の概要につ
いても紹介します。
1.外来動物を考える~アライグマは日本を征服するのだろうか~
先端技術総合研究所 教授 宮下 実
外来動物とはもともとその地域には生息していなかったのに、人間の活動によって原産地から持ち込まれ、そこで定着し繁殖している
動物のことです。北米原産のアライグマはアライグマ・ラスカルのテレビアニメ―ションが放映されて人気を集め、1990 年前後には数多
くのアライグマの幼獣がペット用として海外から輸入されました。しかし、家庭で飼育されて半年も経つと手に負いかねて、捨てられるケ
ースが後を絶たないようになりました。日本の気候や環境にうまく合ったのでしょう、日本全国の野山にはアライグマが住み着き、その
数をどんどん増やしています。スイカやトウモロコシなどの農作物を食べ、神社やお寺の文化財に被害を与え、日本の在来の野生動物
にも大きな影響を与えています。そのうち日本のタヌキが絶滅してアライグマに取って替わるかもしれません。「カチカチ山」や「ぶんぶく
茶釜」の主人公であるタヌキがアライグマに替わる日が来てもいいのでしょうか。
2.衝突と衝撃~加速度と力と人体~
人間工学科 教授 渋江 唯司
自動車の衝突事故という身の回りで起こるたいへん身近な事故を取り上げて、そこでどんなことが起きているか?について改めて考
えてみましょう。衝突する前に自動車が持っている運動エネルギーが衝突の瞬間にゼロになり、その分が人体や自動車の部品を変形
させるためのエネルギーに変わってしまうのです。このエネルギー変換が短時間で起きると一瞬で大きな衝撃力が発生することになり
ます。このようなエネルギーを通して交通事故を見ることで、いろいろな対策が考えられてきました。最新の自動車で使われている、け
がを避けるための様々な技術について、どんな技術があるのか?についても調べてみましょう。また、自動車の安全性を確認するため
にいろいろな実験が行われているので、実験の概要と人体が安全かどうかの評価がどのように行われるかを知って、人体の思いがけ
ない強さと弱さについての改めて認識を深めたいと思います。最後に、このような技術を生かして開発された、津波から人命を守る津波
対応救命艇の概要についてもご紹介します。
受講された方からの質問と回答
◆宮下先生◆
Q
アライグマが嫌って近寄らないものはないのでしょうか?モグラにも困っているのですが、何か良い方法はありませんでしょう
か?
A
アライグマが嫌うものが見つかれば駆除も楽なのですが、現在のところまだありません。2か月ほど前に米国でアライグマが
寄り付かなくなるゴミ袋「MINT-X」というものが米国、カナダで発売されました。まもなく手に入りますので、どの程度効果があ
るのか実験してみたいと思います。モグラは捕獲するしかないでしょうね。
Q
和歌山城公園のタイワンリスが減少したように個体群密度が上がれば、日本のアライグマも減少するのではないでしょう
か?最近はホンドタヌキも農産地では減少しても都市部では増加しているという話もあります。ズーノーシスや病気の媒介が
心配です。アライグマ回虫の人体への感染経路を教えてください。また、イヌの疥癬や狂犬病をアライグマは媒介しますか?
A
和歌山城公園のタイワンリスが減少した原因は個体密度ではなく、食べる餌が少ないからだと考えられます。リスの食料となるドングリな
どの実のなる木が公園内にはほとんどありません。アライグマ回虫の感染経路ですが、アライグマ回虫に感染しているアライグマが排便
すると、その中には肉眼で見えない直径 50 ミクロンくらいのアライグマ回虫の虫卵がいっぱい含まれています。この虫卵が外界で 3 週間
ほど経つと虫卵の中で感染能力をもった幼虫が生育し、この虫卵を誤ってヒトが口から飲み込んでしまうと、虫卵の殻が胃液でとかさ
れ、幼虫(300 ミクロンくらい)は小腸の粘膜から侵入します。幼虫はヒトの体全身に移行し、5 倍くらいの大きさに成長します。脳や中枢神
経に入り込めば致死的な影響を与えますし、目に入り込めば失明の危険性も高まります。
イヌの疥癬はセンコウヒゼンダニという種類で、タヌキがこの 5 年ほどの間に野生で数多く感染しています。アライグマにはこの種はかか
らないと思われます。ネコが感染するショウセンコウヒゼンダニには感染するようです。狂犬病は決してイヌだけの病気ではなく哺乳類が
感染するウイルス性疾患です。北米ではイヌよりもこのアライグマが狂犬病ウイルスを媒介することで恐れられています。
Q
町から捕獲用の檻の貸し出しもしているようですが、この効果はどのようなものでしょうか?
A
市町村で有害鳥獣駆除の目的で捕獲檻を貸出ししていますが、現在これが一番効果的な方法です。和歌山県でも年間 1500
頭ほど捕獲し処分しています。日本全体では 1 年間で 1 万 4 千頭にもなります。
Q
アライグマの避妊薬の実用化はいつですか?また、開発費はどれくらいかかりましたか?
A
アライグマの避妊薬を作るためには、まずアライグマを実験的に飼育し、どのくらいの量の黄体ホルモンと卵胞ホルモンを与
えることで避妊効果があるのかを研究しなければなりません。ホルモンの量、与える時期、回数などこれらの研究を積み重ね
てやっと実行に移せると思います。開発費はどのくらいかわかりませんが数千万円はかかるでしょう。
Q
人が住んでいない荒屋があり、そこにアライグマが住んでいます。作物にも被害があり、困っていますので良い方法をアドバ
イスください。
A
無人の住居はアライグマにとって格好の住家です。無住職のお寺や廃屋でアライグマは外敵に襲われる心配もなく出産した
りしていますので、このような住家を減らすこともアライグマ防除の一つです。農作物の被害はアライグマを捕獲して処分する
のが一番ですが、発想を変えてアライグマの好まない作物に転換する方策はどうでしょうか。私の研究室で、動物園で飼育し
ているアライグマの嗜好性試験というのをしたことがありますが、甘みのある果実、野菜は大好きでした。反対に酸味のある
柑橘系(温州ミカンは食べましたが)は好まない傾向が認められました。野菜のキャベツ、ホウレンソウなどの葉物類、ネギ類
は食べませんでした。ニンジン、サツマイモ、レンコンは食べますし、トウモロコシは大好物でした。ご参考までに。
Q
僕はよく用水路や田んぼで生物を観察するのが好きです。アライグマと出くわした時、どう対処したらいいのですか?
A
アライグマは夜行性動物で主な活動時間帯は夜の 7 時ころから明け方の 4 時くらいまでです。そんな時間には生物観察はさ
れないと思いますので、まず普通ではアライグマには出くわしません。もしアライグマに出くわしても、彼らのほうから攻撃して
くることはありませんので、大きな声で威嚇し、睨みつけることです。
Q
日本の在来種とうまく共存している外来種はいますか?また、日本の外来種が海外で害を及ぼしている例はあるのでしょうか?
A
ウシガエルやアメリカザリガニは日本の在来種と一見うまく共存しているように見えるかもしれませんが、彼らは在来種を食べ
ています。住家を奪っています。外来動物は在来種に大きな影響を与えており、共存できるものはありません。日本産生物で
海外において大きな問題を起こしている動物はそれほど多くはありません。カブトムシ、ゴマダラカミキリ、キンギョ、コイ、タヌ
キ、ニホンジカなどが少し問題となっているようですが、植物では日本でも困っているクズが北米で定着し、ある地域では大問
題となっています。変わったところではワカメ、日本では食用のなりますが、海外では食べないため茂り放題で船舶が動けなく
なって困っているところもあります。
Q
最近、外来種の「ハクビシン」を見かけた、被害にあったと話を聞きます。アライグマに次ぐ繁殖が懸念されるのでしょうか?
A
ハクビシンは静岡県で 1945 年に確認されたものが最初の確実な報告になっています。関東地方、長野県、岐阜県、最近では
滋賀県でも大きな被害が問題になってきました。和歌山県では 2 年前に捕獲されたものが正式な最初の確認例です。おそらく
これからずいぶん増えていくことでしょう。
Q
福島県でブタがイノシシと交雑してイノブタが生まれていることについて教えてください。
A
今年の 1 月に福島県内でイノブタの目撃例が確認されてインます。おそらく原発事故のために立ち入り禁止区域となった地域で飼
育されていたブタが、飼育場から逃げ出して野生化し、イノシシと交配して雑種のイノブタが誕生しているものと思われます。
Q
動物愛護を唱える人々の主張に対して、外来生物被害についてどう説明すれば良いですか?
A
外来動物問題では動物愛護団体の方たちも一定の理解をされています。ただ有害鳥獣駆除については、ヒトがこの外来動
物を意図的に国内に持ち込んでいることから、動物に罪はない、捕獲して処分することはかわいそうだから止めるべき、という
意見も出されています。
Q
小学校で野菜を育てています。子供たちでもできる対策はありますか?
A
子どもたちの育てている野菜を、外来動物のアライグマから守りたいということでしょうか。アライグマは夜に活動しているた
め、子どもたちに寝ずの番をさせるのは無理でしょう。菜園の周囲をフェンスで囲っても簡単にアライグマは乗り越えてしまう
ので、費用はかかりますが周囲を電気の策で囲うのが確実でしょう。
Q
市町村へ本日の講演資料を送って、金銭的な援助申請をされてはいかがですか?
A
アライグマの避妊薬作戦のことだと思いますが、避妊薬を作るためには、まずアライグマを実験的に飼育し、どのくらいの量
の黄体ホルモンと卵胞ホルモンを与えることで避妊効果があるのかを研究しなければなりません。ホルモンの量、与える時
期、回数などこれらの研究を積み重ねてやっと実行に移せると思います。開発費はどのくらいかわかりませんが数千万円は
かかるでしょう。市町村、和歌山県で負担してくれるようであれば申請してみたいですね。
◆渋江先生◆
Q
先生からご覧になって、一番安全性が高いと思われる自動車のメーカーや車種は?
A
これから購入を検討されている車が安全なのかどうかはとても気になると思います。判断基準となるのは、公開講座でご紹介
した自動車事故対策機構で実験を行った結果ですが、すべてのメーカー、車種について実験が行われているわけではありま
せん。たとえば、2012 年度には、わずか 14 車種のみの実験結果が公開されています。また、公開講座でご紹介した通り、同
じメーカーの製品でも、数値がずいぶん異なることがお分かりいただいたと思います。同じ車種でも、モデル(基本モデル、ハ
イグレードモデル、スポーティモデルなど)が異なると数値が大きく変わる場合もあります。衝突試験の際のわずかな衝突位
置のずれや、シートベルトの締め具合、着座時の姿勢などもかなり影響してきます。また、HIC の数値は低いが、頚に作用す
る力は大きいとか、大腿骨に作用する力は小さいが胸に作用する加速度は大きいとか特徴があります。したがって、これを全
体的に評価することは大変難しいということになります。
幸い、自動車事故対策機構では、実験を行った機種について総合評価点をつけて公表していますので、その数値を参考にな
さってはいかがでしょうか?昨年度実施された 14 車種の内で最も評価が高いのは、三菱自動車のアウトランダー24G Safety
Packeage という 2.4 リットルの自動車です。
Q
事故対応の件ですが、車に損害がないのに人体が被害があったと何か月も通院、入院される人が多くあり、保険金が多額に
なることが最近あります。医者もわからない為、良くなったと言われないためにいつまでも長引くことがあり不思議に思いま
す。
A
人体への被害は、外部から加えられる力の大きさや作用する時間の長さばかりではなく、被害にあわれた方の身体的な特徴
にも依存します。高齢者の人口に占める割合が増加しておりますが、同じ事故に巻き込まれたとしても、高齢者の方はより大
きな被害を受けることも考えられます。被害にあわれた方が受診して医者の判断のもとに保険金が決定されているものと思
います。統計上は、自動車の衝突事故に対する予防安全や衝突安全の機能は年を追って改良されてきており、これに伴って
交通事故で死傷する被害者の数も減少しております。保険金の支払額がどのように決定されているのかにつきましては、専
門外ですのコメントすることができません。ご了承ください。
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