第 5 学年 国語科学習指導案 1 単元名 宮沢賢治の世界へ 「雪わたり」 2 単元について 教材文「雪わたり」は美しい雪の野原を背景に、人間の子どもと子ぎつねの心の交流を描いた作品 である。自然の美しい情景が比喩表現を使って巧みに描かれ、リズミカルな文体により楽しく読者を 惹きつける物語である。また、擬態語や擬音語・言葉の響きの楽しさ、七五調で書かれた歌や足踏み の表現などからイメージ豊かに読み味わうことができる。 雪わたりは2月~3 月のころ、前日の夜から朝にかけてぐっと冷え込んだ日にできる。 「雪がすっか りこおって大理石よりもかたくなり、空も冷たいなめらかな青い石の板でできているらしい」の描写 の通り、そんな朝は雪わたりをするのにかっこうな時である。「こんなおもしろい日が、またとある でしょうか。 」と、ふだんは歩けないきびの畑の中やすすきで一杯だった野原の上でも好きな方へど こまででも歩いて行ける。これは、1 年に一度か二度あるかないかの貴重な、そして特別な、それで いて楽しい日である。この物語は特別な日の「雪わたり」が背景となって成り立っていることを、念 頭に置きながら読み進めていきたい。 こんな特別な雪わたりの日に、四朗とかん子はふだんは行くことのできない森の入り口できつねの 紺三郎と出会う。初めはきつねの登場にぎょっとする二人であったが、紺三郎との歌のかけ合いが始 まり、言い合い、楽しくなっていく。紺三郎は、次の凍った月夜の晩の幻灯会に二人を招待し、二人 も行くことを約束する。ここで四朗とかん子がなぜ幻灯会に行くことになったのかを考えさせ、四朗 とかん子の心の変化や幻灯会に二人を誘った紺三郎の心情など、お互いの心の交流をしっかり理解さ せていきたい。 そして、四朗とかん子は初めて紺三郎と会った日と同じ寒水石のようにかたく凍った日に、森の中 の幻灯会に行く。太右衛門や清作が悪い物を食べた写真を見た後に、しかもきつねの生徒たちがじっ と見つめている中でだんごをすすめられる。そんな中で二人は紺三郎が自分たちをだますはずがない と言ってだんごを口にする。その行為は「もうあんまり喜んで、みんなおどり上がってしまいました。 」 の通り、きつねの生徒たちを感動させ、きつねたちの歌へとつながっていく。そして、人間に対して 「きつねの生徒はうそ言うな。」 「きつねの生徒はぬすまない。」「きつねの生徒はそねまない。」と約 束するのである。これらのことから、四朗とかん子がだんごを食べたことに対して、いかにきつねた ちが喜び、うれしかったのかがうかがえる。更に、紺三郎の「これから大人になってもうそをつかず、 人をそねまず、きつねの悪い評判をすっかりなくしてしまうだろうと思う」という閉会の辞やきつね の生徒がワーッと立ち上がり、キラキラなみだをこぼしたことからも彼らの固い決意が感じ取れる。 ここでは、四朗とかん子がだんごを食べ、あんまりうれしくてなみだをこぼした気持ちについて考え させていきたい。そして人間ときつねの子ども同士が将来に向けて互いによりよい世界を作っていこ う、ひいては人間と動物が互いに理解しあい、協力し合っていきたいという願いも読み取らせていき たい。 最後に雪わたりのこの日は本当に特別な日であり、ふだんは絶対に行くことのできないきつねの世 界に足を踏み入れることができるような日でもある。そして、きつねたちにも人間と同じような世界 があり、二度と出会うことのない奇跡の日であったことなどにも気づかせていきたい。 この単元をとして、宮沢賢治の世界に触れてほしい。その入り口として「雪わたり」を読み、表現 の楽しさや願いを味わった後、賢治の作品を多数読み、読書発表会を行う。話し合う中で宮沢賢治の 世界から、賢治独特の感覚や表現のすばらしさ・作品にこめられた作者の願いなどに気づいていって ほしいと考える。 3 児童の実態 本学級の児童は、素直で、自分の仕事はしっかり果たそうとする。ただ、自分の意見を発表したり、 人前に立って行動することを苦手にしている子が多く、発言する子は限られており、話し合いが深まら ない。本を読むことは好きで、自分の思いをノートに書き表すことは苦手意識が少ないので、ノートや ワークシートに書かせてから発言させるようにして、少しでも多様な意見交換ができるようにしたい。 雪国の情景や使われる道具など、知識や体験のある児童は少ない。本教材では雪わたりのできる情 景、わらぐつで雪の上を歩くなど、とても重要な場面であるので、まずは情景をしっかりイメージで きるような手立てが必要になる。絵や写真で情景を紹介したり、わらぐつの実物を見せたりという活 動を取り入れていく。 きつねに関しては、ずるがしこい、だます等、どうしても悪いイメージがあり、本教材の中でも大 人のきつねに対しては同様のイメージで書かれているが、子どものきつねに対しては心の優しい、素 直な姿が描かれている。同じ子どもとして、共感的に読めるようにしていきたい。 4 単元の観点別目標 ・同じ作者の作品に興味を持ち、進んで読もうとする。 【関心・意欲・態度】 ・表現の優れているところや、その効果を考えながら読み味わう。 【読む能力】 ・情景の美しさを想像させるのに効果的な、擬声語・擬態語・擬人法などの表現について知る。 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 5 単元の観点別評価 ・興味を持って作品を読み、表現の優れたところに気づき、作品を味わおうとしている。 【関心・意欲・態度】 ・登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読んでいる。 【読む能力】 ・文章中の工夫された表現に気づいている。 6 【言語についての知識・理解・技能】 指導計画(8 時間扱い) 第一次 (4 時間) ○単元について話し合い、学習についての見通しを持つ。 ・宮沢賢治(の作品)について知る。 ・語句調べをする。 ・物語の概要や登場人物について、設問に答えながら確認をする(一人読みプリント) ・全員で読み合わせをする。 ・ 「雪わたり」を読んで感想を書く。 ・感想を話し合う。 第 2 次 (4 時間) ○その一(子ぎつねの紺三郎) ・・・ (本時) ・ 「雪わたり」の日はどんな日だったのだろう。 ・四朗とかん子はどうして幻灯会に行くことになったのだろう。 ○その二(きつね小学校の幻灯会) ・四朗とかん子も、涙がこぼれるほど何がうれしかったのだろう。 ・紺三郎は、なぜ四朗とかん子を幻灯会に招待したのだろう。 ○美しい情景描写や子どもたちの楽しそうに弾んだ掛け合いの歌を朗読する。 ○第二次感想を書き、話し合う。 第3次 (課外) ○宮沢賢治の作品を読む。 ○作品の紹介や感想文を書き、交流する。 7 本時の指導(5/8) (1)本時の観点別目標 ・四朗とかん子が幻灯会に行くことを約束するまでの気持ちの変化を読み取ることができる。 【読む能力】 (2)展開 過程 時配 導入 5 学習内容と活動 1 ○指導上の留意点と◎評価 学習のめあてをつかむ。 四朗とかん子はどうして幻灯会に 行くことになったのだろう。 ・紺三郎との歌や踊りなどのやり取りが楽 しかったから。 ・紺三郎が熱心に誘ったから。 ○自分の考えはあらかじめノートにまとめ ておく。自分の考えに対しては、必ず根拠 となる言葉や文章も書き出すようにする。 ・紺三郎の言っていることを信じるように なったから。 展開 35 2 「雪わたり」の日の四朗とかん子が紺 三郎と互いに打ち解けあっていく様 子について考える。 ○なぜ紺三郎に出会えたのだろう。 ・いつもは行けないところへどこまででも 行ける「雪わたり」ができたから。 ○「雪わたり」のできる日の情景などイメー ジができるような具体物を提示する。 ・ 「雪わたり」の日は、獣の住む森へ、人 ○「雪わたり」のできる日は、特別な日であ 間の住む里から行くことができる日だ ることを押さえる。また、この日が出会え から。 たことの必要条件であることを確認する。 ○四朗とかん子の気持ちはどう変わって いったのだろう。 ・初めは、四朗がかん子を後ろにかばって ○歌のかけ合いや踊りから四朗とかん子が 足をふんばってさけんでいたけれど、だ きつねに対する先入観が少しずつ揺らぎ んだん歌がおもしろくなっていった。 始め、紺三郎が言ったことを信用するよう ・かん子は、 「きつねのだんごはうさのく になり、警戒心が解け始めている様子を文 そ」と言っているから初めは信じてはい 中から読み取らせる。 ない。 ・四朗も、 「この次およばれしようか。」と 言っているので、心の中では少し信じて いなかったと思う。 ・幻灯が楽しそうだったから行こうと思っ たのではないかな。 ○四朗、かん子と紺三郎との歌のかけ合いや 踊りから、楽しい様子を味わわせる。 ・お兄さんたちは行けなくても、特別席を 用意してくれるというので楽しみにな った。 ・歌ったり踊ったりして、仲間意識が生ま れたんだ。 ・紺三郎のしっかりした言葉づかいや態度 に「信じられる」と思った。 ・三人で楽しそうに林の中に入っていった のは信じたからだと思う。 まとめ 5 3 四朗とかん子はどんな話をしながら ◎四朗とかん子が幻灯会に行こうと思うよ 森から帰っていったのか、ノートに書 うになった心の変化を理解することがで く。 きたか。 (ノート・発表) (3)板書計画 子 ぎ つ ね 紺 三 郎 信 じ て 行 こ う ! だんだん 歌 踊 り が 楽 し い 「 火 を け い べ つ す べ か ら ず 」 「 わ な に 注 意 せ よ 」 「 お 酒 を 飲 む べ か ら ず 」 仲良し 幻 灯 が 楽 し そ う こ の 次 に ・ ・ ・ ・ お な か が 減 ら な い 初 め は う た ・ ・ が う き か っ さ つ ん て の ね 子 く の を そ だ 後 ん ろ ご に は か ば っ て 雪わたりの情景 四 郎 と か ん 子 行 く こ と に な っ た の だ ろ う 。 四 朗 と か ん 子 は ど う し て 幻 灯 会 に 雪 わ た り 宮 沢 賢 治
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