理科を学ぶのは何のため?

長崎市教育委員会学校教育部
あじさい通信
№10
平成27年2月27日
理科を学ぶのは何のため?
「理科は好き?」と聞くと、
「実験は好きだけれど、理科は苦手」という声をよく聞き
ます。これは、子どもも大人も大差ありません。もちろん、
「理科が好き」とはっきりと
答える人もいます。
よく若者の「理科嫌い」
「理科離れ」ということが問題視されていますが、実際には「理
科が嫌い」なのではなく、
「考えることが嫌い」という「知離れ」が深刻なのだそうです。
しかし、この考える力は非常に大切で、私たちが直面していく、いろいろな問題に対応
できる力「問題解決能力」の育成が、今求められているのです。
1
生活科、理科で伸ばす力
表1 理科で育てる「調べる力」
小学3年生
小学4年生
小学5年生
小学6年生
生活科、理科で伸ばす力として、科学的な知識や
思考力、観察・実験の技能が求められることは当然
です。しかし、もっと大事なことがあります。それ
が、問題を解決する力です。
中学生
小学校理科の目標の中には、
「問題解決の能力を育
てること」と明記されており、表1にあるように学
年ごとに段階的に調べる力を身に付けさせるよう示されていま
す。
また、その前段階である小学1・2年生での生活科では気づ
く力を身に付けさせます。さらに、中学校ではそれらを総括し
てさらに力を伸ばし、分析・解釈する力を伸ばすようになりま
す。
そして、授業では表2のように、問題解決の過程を8つのス
テップを通して、身に付けさせていきます。
これらの問題解決能力は、生活科・理科だけの力ではなく、
全ての教育の中で活用できる力であり、日常生活の中や将来社
会に出てからも必要な力です。
その基礎を生活科や理科で育てているのです。
2
「気づく力」を伸ばす魔法のことば
比較しながら調べる
関係付けながら調べる
条件に目を向けながら調べる
推論しながら調べる
小学校で身に付けた問題解
決の能力をさらに高め、分
析・解釈しながら調べる
表2 8つのステップ
【 問題解決の過程 】
① 自然事象への働きかけ
② 問題の把握・設定
③ 予想・仮説の設定
④ 検証計画の立案
⑤ 観察・実験
⑥ 結果の整理
⑦ 考
察
⑧ 結論の導出
先日開催された国立教育政策研究所教育課程研究センター指定の生活科の実践発表会
の中で、
「気づきの質を高めるには、どのような言葉かけが有効か」という協議があり、
指導者である田村調査官から次のような話がありました。
「生活科には、魔法の言葉というのがあります。それは『いいね。すごいね。なるほ
どね。』です。この3つの言葉を適切に使うことで、子どもからどんどん気づきを引き出
すことができます。そして、この魔法の言葉は、生活科だけでなく、どの教科でも通用
する言葉です。子どもの気づきや発言を認めることで、自己肯定感を高め、意欲を高め
ることが大事です。」というものです。ぜひ、実践につなげたい話でした。
3
生活科・理科の研究指定校
鳴見台小学校の取組
鳴見台小学校には、平成25・26年度の2か年で、生活科・理科の学習指導法研究
を進めていただきました。「自然を愛し、科学的な見方や考え方ができる子どもの育成」
を研究主題に取り組み、「『理科の学習が嫌い』という児童が0%」というすばらしい実
績を挙げています。では、どのような取組をしてきたか。一部を紹介します。
(1)「なぜ?」「どうして?」を重視した授業
教員側からめあてを示すのではなく、生活場面を想起させたり、科学に関する事
象を提示したりすることで、子どもからめあてを引き出し、授業を進めています。
(2)体験活動を重視
授業での体験活動はもちろん、学校内に自作の
教材や掲示物を展示し、日常生活のなかで科学に
触れる機会を増やしています。
(3)魅力ある教材開発
教員同士で、積極的に相談したり、協力したり
しながら、魅力ある教材開発を行い、実験での成功体験を増やす取組をしています。
他にも、様々な取組をしていただきました。生活科・理科の授業の質を高めたいとい
う学校は、ぜひ鳴見台小学校を参考にしてほしいと思います。
4
子どもにもっと関心・意欲を!!
今後の授業のあり方として、子どもが課題の発見と解決に向けて主体的・能動的・
協働的に学習する「アクティブ・ラーニング」を充実させていくことが求められます。
そのため、子どもたちのその教科への関心や意欲を高めることも大事です。理科部会
では「は・か・せ」をキーワードにお願いしています。
「発見・感動・生活場面への接
続」を大事にすることで、より一層の学習への関心・意欲が高まると思います。
(1) 発見
気づかなかったことに気づく。知らなかったことを知る。思い込んでいたことを
ひっくり返す。知的好奇心をくすぐる授業を展開しましょう。
(2) 感動
子どもの理科が好きな理由の一つに観察・実験があります。観察や実験など体験
的な学習を行う中で、感動や驚きを味わわせる授業を展開しましょう。また、ICT
機器の活用も、手立てとして有効です。
(3) 生活場面への接続
生活場面の中で疑問に感じていたことが授業で解決されたり、また授業で学んだ
ことを生活の中に生かしたりすることで、その学習の有用性が認識されるような授
業を展開しましょう。
さいごに
すでにご存知のとおり、平成 27 年度全国学力・学習状況調査では、3年ぶりに理科
の調査が実施されます。平成 24 年度の調査から、私たちの3年間の授業がどのように
実を結び、どのような子どもの変容があったのか。考える力が伸びたのか。その成果を
見ることができます。理科担当の先生だけでなく、全職員で共通理解し、より一層の「考
える力」「問題解決能力」の育成をお願いします。
(担当:学校教育課教育指導係 川口)