N0.10 コミュニケーションの構造Ⅰ - 「伝達」

NO.10
H20.2.8
香川県立善通寺養護学校
今回のテーマは自立活動の中で大きなウェートを占める
についてです。
さて、皆さん。「コミュニケーションって何?」と質問されたとき、
あなたならどう答えますか?
「意思の伝達?」 「情報の伝達かな~」 「やりとり」
「会話のこと?」 「意思疎通のことでしょ。」
など、様々な答えが返ってきますが、
<伝達>ということが基本となったものが多いでしょう。
辞書を引いてみても、同様のことが書かれています。
けれども、コミュニケーションの語源である
【コミュニカーレ】(ラテン語原義)の意味が
「共有する・共通の場に置く」ということから考えると、
もともとの素朴な古い意味では
「伝え手と受け手の間である観念や思考が《共有されている》」
という意味合いが強いようです。
「発達心理学」の世界では、右下の図に示すように、
「伝えること・伝達」に力点をおいた今日の辞書的な意味は、
コミュニケーションという事態全体の中の一部分に
焦点化したものと考えられています。
つまり、コミュニケーション全体として見てみると、
《伝達のコミュニケーション》の背後には、
常に《共有のコミュニケーション》が存在していると考えます。
例えば、ある要件を「伝達」するために話しかけるときでも
相手を単なる役割存在と捉えずに、一個の人格として捉えているならば、
その「場」(共有の場)をつくること自体に配慮が働き、
「○○さん、すまんけどちょっと・・」とか
「時間をとらせて悪いんやけど・・」
あるいは、要件とは直接関係のない
「(風邪の後の)体の具合はもうええんな?」
というような話しかけが冒頭にきて、相手を巻き込もうとするはずです。
そして、そのちょっとした巻き込み方の違いに
その人の人間性が表れてきますし、
良好なコミュニケーションが成立するかどうかという
「コミュニケーションの質」の良し悪しがでてきます。
さて、あなたは「共有」コミュニケーションに、どの程度配慮していますか?
*もう少し、じっくりとコミュニケーションについて考えたい人は、下の図を見てください。
ことばの一義的な意味を利用しながら、
正確に情報を相手に「伝達」し、
相手から正確に理解されることを目指す
コミュニケーション
気持ちや感情、情動などの
「共有」 「分かり合うこと」が目指される
コミュニケーション
●力動的な「情動」のコントロール
●力動的な「情動」から《悲しみ・
驚き・恐れ・幸せ・喜び・怒り・嫌
気・興味・感動・羞恥心》といった
カテゴリー的な「感情」への分化
● 人が何を考えているのか、
感じているのかを想像する力
●人間が根源的に特定の他者
と繋がれることを希求すること
● 気遣い・配慮性・思いやり
● 人への根源的な関心
一般的にコミュニケーションの学習というと、言葉や文字・会話等の学習を想像しますが
様々な障害のある子ども達に合わせて、いろいろなコミュニケーション・エイドが開発され、
意思を伝達し、受け取ることが可能になってきています。VOCA(Voice Output Alternative
Communication)やコミュニケーションカードなどが代表的なものです。
発語が不明瞭な子どものためには、パソコンとスイッチを組み合わせた物や、様々なタイ
プの音声出力装置が販売されています。携帯電話のメールだって活用できます。
「これらを利用しない手はありません!」
言葉や表情、ジェスチャーなどが十分に活用・理解できない子ども達のためには、PISや
PCSといったコミュニケーションカードの利用なども有効です。伝え手として自分の意思を
伝達するだけではなく、受け手として理解しやすくなるという利点があります。
しかし、《共有のコミュニケーション》という視点を配慮して導入しないと、要求行動ばかり
になったり、コミュニケーションそのものを楽しむということを忘れがちになったりします。
ということで、次回のテーマは、コミュニケーションの醍醐味である《共有のコミュニケーション》についてです。