せずには帰れない 電脳版 1 双葉社 せずには帰れない 島村洋子 Illustration /メグ・ホソキ 日はクロアチア戦でもあったが︵私はサントリーの 私を野球に連れてって。 2006年6月 ﹁僕が 歳になっても愛してくれるかい?﹂ときいていた若きポール・ ァンにとって軽く大切な日である。 山崎蒸留所で勉強していました。詳細は次回︶ 、この日はビートルズフ 18 マッカートニーが本当に 歳になってしまう日だった。 64 お互い生きてて良かったね。 り興味なかった︶とは離婚のポールだけど、私は愛している。 ジェーンはいなくなり、リンダは死んで、なんとかという女︵あんま 64 2 ジョージはいなくなったが、私は何とか生きている。 そして今年はビートルズ来日 周年。 日から銀座のソニー・ビルでビートルズ東京の浅井慎平写真展があ 40 るので、私は毎日、ちょっとでも行くと思う︵入場無料で家が近所だか ら︶。 ご興味ある方もない人も、仲が良かった最後あたりのビートルズを見 てね︵マハリシもヨーコもいなかった奇跡のような仲の良い瞬間だし︶ 。 さて私はたまにデートというのか二人で飲む人がいる︵野球選手と、 痛いことする人はクビになりました︶ 。 中古王子は加齢により眉毛が数本、村山富市っぽくなってるので、抜 いたりしているが、あと三人くらい。 中のひとり︵業界有名人みたいな人︶は、昔からなんとなく憧れの人 だった。 せずには帰れない 3 26 好 き で た ま ら な い と い う よ り、 な ん と な く 憧 れ の 人 み た い な︵ 年 が 二十くらい上なので︶感じ。野球好きな人なので、いつも野球の話をし ていたのだ 。 最近、知ったのだが、その人はお金持ちだったのだ︵何食っても飲ん でも値段と言うものを一切みないし︶ 。 アメリカンエキスプレスのブラックカードを持っているので︵年会費 十 八 万 円 の ア レ で す。 細 木 数 子 が 自 慢 し て る や つ ︶ 、いろいろきいてみ たが、特典盛りだくさんなのだ。 高級ホテルの小さいスイート借りたら、定価十二万のところが四万円 で朝食もランドリーもタダだったとか、他の高級ホテルで一泊の料金で 二泊できる と か 。 へーえ、とか言っているときに、 ﹁ファーストクラスをこれで頼むと、もう一席無料なんだ﹂ と言うの で 、 4 ﹁へーえ、うらやましいですね﹂ と返事し た 。 パリにオペラを見に行くのはべつにどっちでもいいけど、大リーグと なれば話は 別 で し ょ う 。 ﹁これでいつも大リーグ見に行ってたんだよ。今、松井がケガだから行 ってないけ ど ﹂ ﹁いいなあ。楽でしょうね。ファーストクラスなら﹂ と言った ら 、 ﹁じゃあ、 一 緒 に 行 く ? ﹂ と言う。 CMでよく聞いた、どうするアイフル∼、みたいな音が私の脳で響い た後、これまたCMでよく見るライフカードみたいなものが私の脳裏に 三枚。 私の好きなのはいったいなに? せずには帰れない 5 ﹁目の前のこの人﹂﹁ファーストクラスで大リーグ﹂ ﹁アメックスのブラ ックカード﹂のいったいどれ? それより、私、行くの、行かないの? なんか送ってくるメールがガンガンラブリーな感じになって来たし ︵絵文字がはいるようになりました︶ 。 ライフカード、続く!てな感じです。 6 ︻著者略歴︼ 島村洋子︵しまむら ようこ︶ 1964年、大阪市生まれ。帝塚山学院短期大学を卒業後、証券会社勤務などを経て、 1985年にコバルト・ノベル大賞を受賞し、小説家としてデビュー。 ﹃せずには帰れない﹄﹃家ではしたくない﹄ ﹃へるもんじゃなし﹄等のエッセイの他、 ﹃王 子様、いただきっ!﹄﹃ポルノ﹄﹃てなもんやシェークスピア﹄﹃色ざんげ﹄など多数。 また﹃メロメロ﹄﹃ブスの壁﹄﹃ザ・ピルグリム﹄他、最新刊﹃恋ひらり﹄が絶賛発売中。 せずには帰れない 7
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