第 16 回野間国際絵本原画コンクール国際審査会 グランプリはコスタリカの イラストレーターに! グランプリを受賞した コスタリカのウェン・シュウ氏 文:松山 ACCU では、 アジア 太平 洋、 中 南 米、 アフリカ、アラブ地域の新進イラストレ 直子(文化協力課) 入賞作品と作家 ーターや画家を発掘し、作品発 表の場 グランプリ 「ナディとシャオ・ラン」ウェン・シュウ(コスタリカ) を提供しながら創作活動を奨励する事業 次席 として、野間国際絵本原画コンクールを 「王女」フェレシュテ・ナジャフィ(イラン) 「昼でも夜でもない時間」アラエルディン・エルジズーリ・ナイム(スーダン) 1978 年より隔年で開催しています。昨年 佳作 11 月 6 日に東京で開催した第 16 回コン 「ぼろきれと紙でできたあやつり人形」ビンカ・グルビック・セグーラ(チリ) 「少女とジャングル」エディ・サルウォノ(インドネシア) クールの国際審査会では、対象地域 50 「ユーソフとズライハー」レイラ・ファトヒザデ(イラン) カ国から寄せられた合計 440 点の作品の 「ブーツ」パラストゥ・ホダーパラスト・ハギ(イラン) 中から 33 作品が選出されました。 「魔法にかけられた都市」パリサ・アルタ(イラン) 「おおかみと人間」サバ・マアスウミアン(イラン) 「不思議なインタビュー」キム・ジョギュン(韓国) 「壁」パク・ソヒョン(韓国) 国際審査会に向けて 「プムラとにわとり」シェリー・ジョンソン(南アフリカ) 「姫君と望遠鏡」タ・ヒー・ロン(ベトナム) 他 奨励賞 20 作品 *作品タイトルは、仮訳です。 第16回コンクールでは、前回より多く の国から作品が寄せられました。前回同 様に国際審査会の前日に予備審査会を 願いしてきました。また、言葉の壁を出来 ごい!」 「2つの異なった手法のコンビネー 行い、作品を189点に絞込みました。国 るだけ低くするため、今回新たにアラビ ションが良い」等、2つの異なる技法が調 際審査では、2003年にBI B 審査員を ア語・韓国語・中国語・ロシア語の募集 和し、それぞれの文化的背景が融和して し、2004年にアンデルセン賞候補ともな 要項を、前回の英語・仏語・西語に追加 表現されている点などが高い評価を得ま ったブラジルのイラストレーター、アンジ して発行しました。 した。次席を受賞したスーダンの作品は、 ※1 ェラ・ラゴー氏や第13回次席受賞者であ る韓国のパク・チョルミン氏、そして武蔵 「見ているだけでその土地にいるような 応募作品と入賞作品の特徴 野美術大学の今井良朗教授を新たに迎 え8名が審査にあたりました。 さて、多くの途上国のアーティストにと って、大きな原画を日本まで送るのは経 済的にかなりの負担です。より多くの国 から才能あるアーティストに機会を与え たいという思いから、野間コンクール事 務局ではその対策として、今まで以上に 対象地域の協力機関や在日大使館に原 画の取りまとめと、アーティストに代わっ て作品を日本まで送ることを積極的にお 気持ちになる」 「匂いや国を感じさせる」 といった絵本として読み手に感覚的に伝 今回の応募作品の特徴は、中南米か わる要素が評価され、一方で同じく次席 らの応募が前回より大幅に増えたこと、 を受賞したイランの作品については、そ デジタル加工を施した作品が回を重ねる の高い技術力と個性的で独特な魅力が 毎に増えていることなどです。そんな中 評価されました。 からグランプリを受賞したのは、コスタリ その他、イスラムのミニアチュールと同 カのアーティストによる「ナディとシャオ・ じ手法で描いた作品や、開くと飛び出す ラン」 (本誌表紙)。中南米パナマに伝 絵本の原画、見ているだけで音楽が聞こ わる伝統手芸であるモラ というテキス えてきそうだと評価されるものなど、多種 タイルの技法と、中国を起源とする切り 多様な作品が佳作と奨励賞に選ばれま 絵の手法が、1枚1枚の原画の中で融合 した。 ※2 した色鮮やかな作品です。そ さて、今回の審査会ではアーティスト の物語の主人公は、中国人 の力量だけではなく、絵本として子ども とパナマ人の親 友同士の女 達の創造力を伸ばす作品や、様々な文化 の子。二人の遊びの中から、 を紹介する作品が多数入選しました。 ● 松本猛(安曇野ちひろ美術館館長) パナマと中国の身近にある多 欧米の絵本原画コンクールと違い、野 ● 杉浦範茂(イラストレーター ) 様な文化が、物語として自然 間コンクールは入賞することでその作品 な流れで紹介されています。 が出版されたり、大きな利益をもたらし 審査員からは「中国と中南米 たりするコンクールではないかもしれませ の文化を合 体させたのがす ん。しかし、出版事情が悪く、読書習慣 審 査 員 (敬称略、順不同) ● 今井良朗(武蔵野美術大学芸術文化学科主任教授 ) ● アンジェラ・ラゴー ( ブラジル、イラストレーター ) ● スズキコージ(イラストレーター) ● 大竹永介(野間国際図書開発基金代表、講談社児童局長) ● 佐藤國雄(ACCU 理事長) 8 ACCUニュース No.371 2009.1 ※1 Biennial of Illustration Bratislava ブラチスラバ国際絵本原画展 ※2 鮮やかな色の布を幾枚も重ね、切り絵とアップリケの手法を取り合わせてかがったもの。 次席「王女」フェレシュテ・ナジャフィ(イラン) 次席「昼でも夜でもない時間」アラエルディン・エルジズーリ・ナイム(スーダン) 佳作「壁」パク・ソヒョン ( 韓国 ) 佳作「プムラとにわとり」シェリー・ジョンソン(南アフリカ) が定着しないような地域から、出版のあ てもない作品であっても、一生懸命に子 奨励賞 「靴の物語」 ロサリオ・ロマン・アロンソ ( メキシコ ) ども達に伝えたいことを描いて応募して くるアーティストの作品が評価されること は、野間コンクールの大きな特徴と言え ましょう。様々な媒体に代わってデジタル 化されたものが発展している時代に、絵 本として大事な使命を果たす野間コンク ールの入賞作品が、今後より多くの人の目 に触れ、出版の機会へと繋がることを願 います。 入賞作品は、3月14日から7月5日(予 定)まで上野の国際子ども図書館で展 示されるほか、スロバキアのBI Bにおい ても展示の予定です。また、本年3月に作 品集として1冊の図録になって出版され、 野間コンクールのサイトにも掲載を予定 しています。 奨励賞「歌うおおかみ」 アテフェ・マレキジュ ( イラン ) 奨励賞「おばあちゃん」 クラウジオ・マルチンス ( ブラジル ) 入賞作品に関するお問い合わせ 受賞者を招いてシンポジウムを開催します! 作品の展示や出版にご興味がある方は、ACCU文化協力課まで。 グランプリと次席(スーダン)の受賞者が、3月13日開催のシンポジウ 電話:03-3269-4436 e-mail:[email protected] ムにパネリストとして出席し、絵本創作の現状や日本の子どもたちへ 野間コンクールサイト http://www.accu.or.jp/noma/ のメッセージを語ります。詳細は同封のちらしをご覧ください。 ACCUニュース No.371 2009.1 9
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