〈発行〉国公労連 国公労連速報 [email protected] [email protected] 2014 年 4 月 11 日《No.3043》 民主的公務員制度実現と 民主的公務員制度実現と 労働基本権回復に向けて引き続き奮闘しよう 労働基本権回復に向けて引き続き奮闘しよう ~公務員制度改革関連法案が成立~ 昨年秋の臨時国会から継続審議となっていた公務員制度改革関連法案は、参議院内閣委員会で 13 時間弱の審議を経て、4 月 10 日の委員会において賛成多数で可決されました。 法案は 4 月 11 日の本会議に付され、賛成多数で可決・成立しました。国家公務員労働者の労働基 本権回復や、国民本位の行政運営実現の観点からも重大な問題を残しながら、衆議院と併せてもわず か 35 時間という短時間の審議で成立させられたものです。 国公労連は、4 月 10 日、同日実施された中央行動と並行して参議院内閣委員会の傍聴行動にとりく み、5 人が参加するとともに、法案の成立を受けて国公労連記長談話を発表しました。 人事行政の変質は公務員のあり方も変質させ 人事行政の変質は公務員のあり方も変質させる 変質させ る 4 月 10 日は午前と午後、4時間半にわたって政府に対する質疑が行われました。自民党・山崎力議員 は、「制度ができても実際の運用で大きく左右される。悪用されれば公務員制度を揺るがしかねない危険 性があることを認識すべきだ。例えば各省大臣から上げた人事を官房長官や総理のところでダメとなり対 立すると深刻な事態を招きかねないのではないか」と述べ、これに対し、稲田公務員制度改革担当大臣 は、「運用が大事という点は確かにそうだ。任免協議で各省大臣と官房長官が仮に当初の意見が異なる ように見えても同じ内閣の一員として協議の中ですりあわせるので表面化するようなことはほとんどないと 考えている。そうした弊害に留意しつつ府省横断的な柔軟な幹部人事の一元化を実現することで縦割り 行政の弊害を排していきたい」などと応えました。 自民党・石井正弘議員は、「自律的労使関係制度を措置するとある公務員制度改革基本法 12 条につ いて、自律的労使関係によって、職員の意欲と能力を高めて優位な人材を確保・活用することができるな どという説明があったが、極めて抽象的で具体的な根拠がなんら示されていない。自律的労使関係制度 を新しく作る意義が見い出せない」と指摘。原人事院総裁は「自律的労使関係は労使双方が当事者能 力を持って交渉に臨み真摯な交渉によって合意に達し、その合意を労使が責任を持って実行する。この 積み重ねで労使の信頼関係が生まれる。多くの民間企業でも長年の労使の積み重ねによって信頼関係 を作っている。ただ公務の場合は過去の国鉄など三公社五現業での賃金交渉はまったく機能しなかった 歴史的事実があり、今後も慎重に検討すべきだ」と述べました。 自民党・上月議員は、「幹部人事の一元化は官邸の方ばかり見る人間が増える困った事態にもなりか ねない。抜擢人事と恣意的人事は紙一重ではないか」と疑問を呈し、後藤田内閣府副大臣は、「そした 懸念を払拭するために適格性審査、任免協議など幹部人事の一元管理のプロセスについては、能力・ -1- 実績主義の下、いずれも各省大臣の任命権を前提とする仕組みだ。適格性審査も内閣官房長官が各省 大臣が実施する人事評価等の客観的な資料によって審査対象者が必要な標準職務遂行能力を持って いるか客観的な基準により確認する」などと応えました。 共産党・山下芳生議員は、「法案では人事院が持っている人事に関する権限が内閣人事局に移管さ れるが、その中には人事評価制度の企画等の事務も含まれている。国家公務員の能力業績主義による 人事評価制度が導入されて5年が経過。公務は国民の権利を保障する仕事で利益を上げるための民間 とは違って数値目標にできないことや、短期の成果になじまないことが多い。国公労連の人事評価アンケ ート結果で、本来求められる仕事は何なのかという視点を失い、あらかじめ定めた数値目標だけが重視さ れるという回答が 60%で一番多く、次いで、短期の評価で判定されることが業務実態に合わない 37%と なっている。また評価者自身の目標を達成するために被評価者に目標を強要しているなどの事例もあ る」と述べ、これについて、稲田担当大臣は、「公務に数値目標はなじまないというのは確かにそうだ」と はしつつも「人事評価の実施にあたって、評価者と被評価者のコミュニケーションが必須で職員の心身両 面の健康状態を上司が確認できる重要な機会にもなっている」などと、評価制度の問題点や職場の実態 をふまえない答弁を行いました。 民主党・神本美恵子議員は、「公務員制度改革基本法には男女共同参画社会の形成に資することと 書かれているが、今回の法案はどのように具体化されているのか」と迫りましたが、これに対して稲田担当 大臣は、「今回の法案であらたに仕事と生活の調和をはかるための指針を採用昇任等基本指針の閣議 決定の中に加えることを法律上規定している」と述べるにとどまりました。 その他の野党議員も、幹部人事の一元管理に関わって、幹部候補育成課程のあり方や公募、官民人 材交流などについて質問を行いましたが、いずれも人事行政に対する政治的介入を強めることが必要と いう立場のものでした。 採決にあ 採決にあたっての討論は日本共産党山下議員のみ たっての討論は日本共産党山下議員のみ こうした質疑の後、反対討論に立った共産党・山下議員は、法案が国家公務員の労働基本権回復を先 送りしたまま、人事権を内閣人事局に集中し、いっそう中央主権的な官僚制度に作り変えるものであるこ とや、官邸による幹部職員人事への恣意的な介入を可能とする一元管理を導入し全体の奉仕者として の公務員のあり方を変質させるものであると表明しました。 その後、委員会採決が行われ、法案は賛成多数で可決されるとともに、最後に以下の附帯決議が確認 され内閣委員会は終了しました。 国家公務員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 平成 26 年 4 月 10 日 参議院内閣委員会 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切に対応すべきである。 一 職員の公募について、実施状況を検証し、その結果を踏まえて、内閣総理大臣が幹部職員の公募 を実施すること等必要な推進方策を検討すること。 二 自律的労使関係制度について、国家公務員制度改革基本法第 12 条の規定に基づき、国民の理 解を得た上で、職員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること。 -2- 三 内閣総理大臣補佐官及び大臣補佐官について、その運用状況を踏まえ、増員の要否及び内閣総 理大臣や大臣を支えるスタッフの拡充について検討すること。 四 国家公務員法に定める再就職規制について、再就職等監視委員会の監視を含む運用状況を見 つつ、あっせん規制に対する刑事罰の対象の拡大の可否について検討すること。 五 幹部候補育成課程について、専門性を高めるなど、その運用において、内閣総理大臣が主体的か つ中心的な役割を積極的に果たすことができるよう、基準において必要な事項を定めること。 六 公務外からの幹部職員への任用に当たっては、第三者の意見の聴取など公正な適格性審査の仕 組みを検討すること。 右決議する。 参議院本会議でも 参議院本会議でも与党、民主党などの賛成多数で可決 本会議でも与党、民主党などの賛成多数で可決 4 月 11 日の参議院本会議では、法案に対する委員会での審議状況について報告があったのみで、 討論は行われませんでした。法案は賛成 193、反対 41 で可決・成立させられました。 国公労連は同日、以下の書記長談話を発表しました。 公務の中立・公正性の確保、労働基本権の全面回復をめざす ~「改正」国家公務員法の成立にあたって(談話) 2014 年 4 月 11 日 日本国家公務員労働組合連合会(国公労連) 書記長 鎌 田 一 本日(11 日)、国家公務員法等の一部を改正する法律(以下、「改正」法)案が参議院本会議で可決・ 成立した。 国公労連は、法案の検討過程から問題点を指摘してきたが、それらがまったく修正されないままで法 律が成立したことに、重大な懸念を禁じ得ない。衆議院での法案審議の過程で与党と民主党で法案修 正等の合意書が交わされた(12 月 3 日)が、附則に政府が定年の段階的引き上げと再任用制度の活用 の拡大などの措置について「検討する」という条文を付け加えただけで、法案審議を加速させたことも禍 根を残した。 国公労連は、法案の提出時(昨年 11 月 5 日)に所見を公表しているが、改めて主要な問題点を指摘 する。 第一は、国家公務員の労働基本権を制限したままで、労働条件の決定にかかわる権限を人事院から 使用者機関に移管したことである。「改正」法では、内閣人事局を設置(内閣法第 21 条)して、そこに人 事院の級別定数の設定・改定と任用・試験・研修の企画等の権限の移管、総務省の人事行政と機構・定 員管理等の移管、新設される幹部人事の一元管理や総人件費の基本方針を含めて多くの権限を内閣 人事局に移管・集中(国公法第 18 条の 2)し、強大な使用者機関が設置される。 法案では、級別定数の設定・改定にあたって人事院の意見を尊重する(給与法第 8 条)ことが盛り込ま れ、国会審議では級別定数の勤務条件性が争点となった。稲田担当大臣は、12 月 3 日に「個々の官職 -3- の職務の級の格付け自体は、突き詰めれば、勤務条件に関連する側面はない。しかし、当該官職に個 人を当てはめた場合及び個々の格付けの結果の積み上げは、勤務条件に関連する」などとする「級別定 数関係事務に関する見解」を示した。見解では、権限を内閣人事局に移管する姿勢は崩さなかったもの の、勤務条件と密接に関連することを認めざるを得なかったこと、運用にあたって人事院との協力や連携 を強調したことなどは、まったく不十分ではあるが、私たちのたたかいの反映である。法律の運用にあた って、労働基本権制約の代償機能が十全に確保されるよう政府・人事院への追及を強化する必要があ る。 他方で労働基本権については、衆参内閣委員会での附帯決議で自律的労使関係制度について「職 員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること」が盛り込まれたが、国会の討論でも政府・ 与党はこれに真摯に向き合う姿勢をまったく示していない。引き続き、憲法と国際条約に沿った労働基本 権の全面回復を求めていかなければならない。 第二は、幹部職員(本府省の部局長以上。約 600 人)の人事について、内閣総理大臣が適格性審査 を実施した上で幹部候補者名簿を作成するという、人事配置に官邸の意向を色濃く反映する仕組が盛り 込まれたことである(国公法第 61 条の 2)。また、幹部職員の降任に関する特例(国公法第 78 条の 2)を 新設して、本人の意に反する降任を可能とする要件を拡大した。これらは、各府省の適材適所を基本と した人事配置から、時の政権による恣意的な人事を許すこととなり、「全体の奉仕者」という公務の公正・ 中立性が損なわれかねない。 さらに、内閣総理大臣が案を作成して閣議決定する採用昇任等基本方針(国公法第 54 条)の基本的 事項に、「職員の公募に関する指針」が新設された。これは、幹部職員の政治任用を可能とする仕組み であり、附帯決議では、「幹部職員の公募を実施すること等必要な推進方策を検討すること」(衆参両院) が盛り込まれた。他方で「第三者の意見の聴取など公正な適格性審査の仕組みを検討すること」(参院) も附帯決議に盛り込まれたが、政治任用が具体化された場合、公務の公正・中立性を損ない、行政の専 門性の確保さえも困難となりかねない危険性がある。 「改正」法成立後は、政令や指針、人事院規則などが具体化されることから、これまで指摘してきた問 題点の解消を求めるとともに、労働者・国民の権利を保障する公務・公共サービスの拡充をめざし、民主 的な公務員制度の確立を求めていく必要がある。また、新設された「登録された職員団体は、人事院規 則の定めるところにより、職員の勤務条件について必要があると認められるときは、人事院に対し、人事 院規則を制定し、又は改廃することを要請することができる」(国公法第 108 条の 5 の 2)の規定の活用も 必要に応じて検討する。 憲法で保障されている労働基本権が不当に制約されている国家公務員労働者にとって、給与などの 労働条件決定に関わる人事院の代償機能を使用者機関に移管したことは、権利が奪われるに等しいも のである。したがって、新たな労使関係のもとで、国家公務員労働者の権利を確保するために、国公労 連との交渉・協議等を十全に保障する対等な労使関係の確立に向けて全力をあげる。 国公労連は、引き続き憲法 15 条(全体の奉仕者)に基づく公務員の中立・公平性の確保、国家公務 員労働者の権利の回復を求めて奮闘するものである。 以 上 -4-
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