ニュース詳細 中国 新たな空母の保有計画表明 4 月 24 日 15 時 57 分 K10041554111_1304241933_1304241939.mp4 中国海軍の高官は、「われわれの空母は1隻にとどまらない」と述べ、去年初めて配備し た空母に続く新たな空母を保有する計画を明らかにし、中国の軍備増強に対する周辺国 などの警戒が一段と強まりそうです。 中国国営の新華社通信によりますと、中国海軍の宋学副参謀長は23日、「われわれの 空母は1隻にとどまらない」と述べ、中国が、去年9月に初めて配備した空母「遼寧」に続 く、新たな空母を保有する計画を明らかにしました。 宋副参謀長は、新たな空母は、「海洋権益の保護に十分なものにする」とも述べ、すでに 配備している「遼寧」よりも大型になることを示唆しました。 さらに、「1隻の空母には、少なくとも2つの飛行団を配属させる」と述べ、ロシアの戦闘機 を参考に中国が開発したとする艦載機「殲15」を増やすなどして、艦載機の部隊を強化 する方針も示しました。 ただ、宋副参謀長は新たな空母の具体的な建造時期などは明らかにせず、上海の造船 所ですでに建造が進められていると一部で報道されていることについては、「事実と違う」 と否定しました。 中国は、東シナ海や南シナ海の島々の領有権の主張を強めており、今回の計画を明ら かにした背景には、日本やアメリカなどをけん制するねらいもあるとみられていて、中国 の軍備増強に対する周辺国などの警戒が一段と強まりそうです。 ピックアップ@アジア 「中国新指導部下の軍事力~日米の課題」2012 年 11 月 27 日 (火) 津屋 尚 解説委員 (冒頭V) 中国では習近平氏をトップとする共産党の新たな指導体制が発足しました。急速な経 済成長を背景に軍拡路線をひた走ってきた中国。新たな指導部も引き続き軍事増強 を続ける方針を明らかにしています。その狙いは、世界一の軍事大国アメリカにも対 抗できる軍事力の構築とみられています。アメリカは、この中国がおしすすめる“ある 戦略”を強く警戒しています。中国が進める軍事戦略とはどんなものか? 日本とその同盟国アメリカが直面する安全保障上の課題について考えます。 (Q&A) Q 吉井歌奈子キャスター:きょうは津屋尚(つやひさし)解説委員とともにお伝えしま す。 ■中国軍事費増加の実態 中国は軍備増強を続けていると言われますが、軍備はどのくらい増えているのです か? A 津屋尚解説委員:まずは軍事費の推移をグラフでみてみましょう。 これは、中国が自ら公表した国防費です。毎年すさまじい伸びを示しています。 2009 年までは 21年連続して二桁の増加率で、その後も増え続けています。 この結果、中国の現在の国防費は、24 年前の実に30倍にも膨れ上がっています。 5 年前と比べても倍の規模となっています。このままのペースで増え続けると、2025 年ごろまでにはアメリカを抜いて世界最大の軍事大国になる可能性があるとの予測 もあります。 ■習近平体制でも軍拡路線続く Q 吉井:中国新体制になっても、この傾向は続くのでしょうか? A津屋:その可能性は高いと思います。 今月 16 日に中国共産党の中央軍事委員会拡大会議という会議が開かれたのですが、 この席で新たな指導者になった習近平総書記が重要な演説を行いました。 この中で習総書記は、胡錦涛国家主席の業績を高く評価した上で、「胡錦涛主席が 決めた軍隊建設の大方針と戦略的な諸政策を確実に実行すべきだ」と述べ、引き続 き軍事力の強化を進めていく考えを示しました。 ■中国の軍事力増強の狙い Q 小堺翔太キャスター:莫大な軍事費を使って中国はいったい何をしようとしているの ですか? A津屋:それを理解するために中国にとっての脅威とは何かを考えてみましょう。 中国が最も恐れているのは、アメリカが日本など東アジアに配備している軍事力です。 具体的には横須賀などにいる海軍や沖縄にいる海兵隊や空軍の戦力などです。 中でも中国は、空母を強く警戒しています。中国が長年続けてきた軍事力の整備は、 アメリカの空母の存在を意識して行われてきたと言っても過言ではないと思います。 Q 吉井:中国がアメリカの空母を強く意識するようになったきっかけは何ですか? A 津屋:(96年中国軍の台湾海峡演習V) 1996 年に台湾で初めて直接投票による総統選挙が行われたのですが、この時、中国 は、台湾海峡で大規模な軍事演習を行って台湾をけん制しました。これによって中台 間で緊張が高まって軍事的にも危険な状況になりましたが、この時アメリカは、2 隻の 空母を台湾海峡に派遣して逆に中国を威嚇して事態をおさめたのです。中国はアメリ カの空母を自国の“のど元”とも言える海域になすすべもなく進入させてしまったわけ で、アメリカの軍事力を前に軟化せざるを得なかったんです。この経験は人民解放軍 にとって“トラウマ“のようなものになったと言われています。 Q吉井:なるほど。中国にはアメリカの空母に対して苦い経験があるんですね。 A津屋:アメリカ軍にとって空母というのは攻撃の要です。 (米空母ジョージ・ワシントンV) アメリカ軍は大規模な軍事作戦を行う場合、必ずと言っていいほど空母を作戦エリア に何隻も配置します。そして、ときにはあわせて何百機もの空母艦載機が空から地上 を攻撃します。これを恐れている中国は、空母の行動の自由を奪い、中国近海に近 づけない状況を作り出そうとしているのです。そのための戦略や能力は「接近拒否」と 呼ばれています。 ■中国軍の“接近拒否”戦略 Q 小堺:中国が空母の行動の自由を奪うなんてことができるのですか? A津屋:それはありえる事態です。 中国はそのためにまず、空母を直接攻撃できる能力を強化しようとしています。 具体的には、潜水艦の増強です。空母は水中からの攻撃には脆弱で、潜水艦は大 敵なんです。中国はまた、空母を攻撃できるミサイルの配備や開発も進めています。 (対艦弾道ミサイルCG) 中でも注目されているのが、中国が世界で初めて開発している「対艦弾道ミサイル」と いう兵器です。対艦弾道ミサイルというのは、いったん宇宙空間まで上昇した後、1 秒 間に数キロという物凄いスピードで落下していき、空母に着弾します。これには非常 に高度な技術が必要とされますから開発が成功するのかどうかはわかりませんが、 中国が本当にこうした攻撃能力を持つようになると、アメリカ海軍は簡単には中国本 土に近づけなくなります。 Q 小堺:こんな兵器で攻撃されたら確かにアメリカの空母も防ぎようがなさそうです ね。 A 津屋:さらに中国は、日本やグアムなどにあるアメリカ軍基地を射程におさめる中距 離弾道ミサイルも増強しています。 さらに。「新たな戦場」とも言われている“宇宙空間”や“サイバー空間”での戦闘能力 も強化しています。例えば、人工衛星を攻撃する兵器の開発やコンピューターネット ワークに対するサイバー攻撃の能力を強化しています。これらはアメリカ軍にとって 作戦の「目」や「耳」あるいは「神経」とも言える重要なものです。中国は有事の際、こ れらを麻痺させてしまおうとしているんです。 ■アメリカはどう対応? Q吉井:中国のこうした動きをアメリカはどう受け止めているのでしょうか? A津屋:アメリカは、中国の「接近拒否」の能力を強く警戒しています。 (米空母V) アメリカは、過去数十年の間、海軍力を世界のどこへでも抵抗にあうことなく自由に展 開させて、軍事作戦を行うことができましたが、中国の軍事力増強によって、「この自 由が初めて奪われつつある」という認識を持っています。アメリカ軍は、中国の「接近 拒否能力」を打ち破ることが最大の課題のひとつと位置付けています。 Q 吉井:その課題は克服できそうでしょうのか? A津屋:簡単ではありません。 アメリカは巨額の財政赤字を抱えていて、10 年間でおよそ 4800 億ドル(40兆円近く) もの国防予算の削減を迫られています。軍の規模縮小も進めざるを得なくなっていま す。このため、これまでのように世界各地の事態に対処しようとしてもお金も兵力も足 りないという状況になってしまうのです。 ■日本は・・・。 Q 小堺:隣国中国の軍拡は日本の安全保障にとっても影響が大きいと思いますが、 日本はどのように関わっていくのでしょうか。 A 津屋:アメリカは一国だけではもはや対応できないという状況です。そのため、日本 や韓国、オーストラリアといった同盟国に役割や能力の拡大を求めています。 (自衛隊演習 V) 中でも日本の自衛隊に対しては、中国の潜水艦への対処や、日本が得意とする海の 地雷ともいえる機雷戦などの分野で役割を期待しています。 これまで見てきたように、中国は習近平体制のもとでも、軍事力増強や海洋進出を加 速させていくだろうと思います。日本としても中国の軍事的狙いを主体的に分析して、 日米同盟としての抑止力をどのように強化していくか、しっかりと考えていく必要があ るのではないでしょうか。
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