抄録PDF

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病理検査のイノベーション
新たな業務支援システムの構築とペーパーレス化を目指して
◎中西 昂弘 1)、石田 誠実 1)、西上 圭子 1)、中村 純子 1)、糸山 雅子 1)、岡村 義弘 1)、鳥居 良貴 1)、戌角 幸治 1)
兵庫医科大学病院 1)
【はじめに】当院では 2012 年の電子カルテ稼働に伴い、新
力でき、画像は電子カルテ上での閲覧も可能にすることが
たな病理業務支援システム PATH Dimension(フィンガルリ
できる。包埋作業時は包埋確認画面にてカセットのバーコ
ンク社)を導入し、検体依頼から結果報告までをシステム
ードを一つずつ読み込ませ、包埋作業終了後にチェックリ
化したので報告する。【新しい構築方針】①電子カルテ画
ストを確認する。病理医への標本提出時にはスライドのバ
面上での検体依頼・結果報告の閲覧を可能にし、依頼箋・
ーコードを読むことで、薄切もれや紛失、印字ミス等の防
結果報告用紙を廃止、②検体受付から診断入力までをバー
止策をとっている。特殊染色や免疫染色の依頼も切り出し
コード一元管理、③免疫染色・特殊染色のシステム画面上
画面からできるようにし、Leica 社の BOND-MAX と接続し
での依頼・管理、④内視鏡検体カセットへの事前バーコー
て、スライドに印字されているバーコードにより管理をし
ド印字。【システム概要】従来、検体と依頼書が病理検査
ている。内視鏡検体は以前にはバーコードの無いカセット
室に提出されていたが、現在は依頼時に発行されたバーコ
に詰められた状態で提出されていたが、事前にバーコード
ードが貼られた検体のみが提出されている。到着確認画面
を印字した空のカセットを配布、到着確認時に病理番号と
にて検体容器のバーコードを読み取ると、患者情報や臓器
マッチングさせることで作業の効率化と全検体を管理でき
名等の情報が表示され、受付処理を行うことにより病理ラ
るシステムを構築した。【まとめ】新しい病理業務支援シ
ベルと検査用紙が発行される。シェーマは病理システムに
ステムの導入に伴い、ペーパーレス化によるコストの削減
も内蔵されているが、手書きシェーマもスキャンして切り
と迅速な結果報告が出来るようになった。さらにインシデ
出し情報に取り込んでいる。発行された病理ラベルを検体
ント発生時にはログ解析による原因究明が可能となり、早
容器に貼り、切り出し処理を行う。写真撮影装置も連動し
急に対策がとれるようになった。
ており、撮影にて取り込まれた画像には切り出し情報を入
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リアルタイムカセット印字を試みた切り出しシステムの提案
◎河野 哲也 1)、中村 啓子 1)、大木 麻衣 1)、細田 健太 1)、猪山 和美 1)、佐々木 勝一 1)
自治医科大学附属さいたま医療センター 1)
【はじめに】近年,病理検査分野にもシステム化が進み,
ムに印字(ベッセルおよびスロープカセットの対応,スタ
施設毎に様々な取り組みが行われている.標本切り出し工
ンプ入力に連動したカセット印字,1 カセットの印字時間
程においてもスケッチや複写機を利用した用紙への書き込
は約 2 秒,病理番号・カセット番号・検体番号・臓器名・
みから,システムに取り込んだ臓器撮影画像を用いた切り
QR コードを刻印)④サンプリング検体と使用すべきカセ
出し図の処理が主流となっている.その際,準備されるカ
ットの組み合わせが明確(検体とカセットの入れ間違い対
セットは手書きであったり,カセット印字機を導入したと
策)⑤スタンプ入力に使用したカセット番号はシステム内
しても予測した個数の印字や切り出し確定後の一括印字な
に自動登録される(HE 染色は自動登録)⑦登録されたカ
どにより対応していることが多い.
セット情報に指示特染を入力する(カセットの QR コード
今回我々は,リアルタイムにカセットを印字しながらの切
により作製すべきスライドガラスの印字機能に対応)
り出しシステムを構築したので報告する.
【まとめ】作製個数の決定しているカセットの印字はもと
【導入機器】病理支援システムは松浪硝子工業社 Path
よりカセットを印字しながらの切り出し作業が可能となっ
Window を用い,カセット印字機はアイアールメディカル
た.手書き作業に比べ情報の書き間違いがなく,準備の軽
社レーザーカセットプリンター LCP-101 を採用した.
減,作業の効率化と情報量及び文字認識性が向上した.ま
【方法】①システムに取り込んだ臓器撮影画像を用いてタ
た,病理システム上でバーコードによる管理が可能となり,
ブレット画面にて切り出し線を入力する(多機能な操作ツ
各ブロックに対したスライドガラスの印字や貸出・返却登
ール,実寸対応による計測機能)②サンプリングする箇所
録の省力化が図れた.医療安全の観点からも大いに期待で
に検体・カセット番号をスタンプ入力する(番号の自動繰
きる.短所としては,印字機が高価であること,カセット
り上げ機能 )③使用するカセットを選択してリアルタイ
単価の上昇が挙げられる.[email protected]
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検体取り違い防止に重点をおいた二次元バーコード管理病理検査システムの構築と問題点
◎戸村 弘樹 1)、本谷 友紀 1)、大﨑 美千子 1)、高野 託顧 1)、武田 幸恵 1)、大栁 政一 1)
大崎市民病院 1)
【はじめに】当院では 2014 年 7 月から検体取り違い防止に
置により、ラベルを別途貼ることなくそのまま染色が可能
重点をおいた病理検査システムを構築し運用を開始した。
である。染色標本はブロック合わせで最終確認がなされた
今回、病理システムと稼働後の問題点について報告する。
後、病理医に提出される。診断時、スライドガラスのバー
【システムと周辺機器】システム:EXpathⅢ(インテック)
コードを読み込ませることにより診断が確定される。
周辺機器:PrintMate(Thermo)、FineFrostPrinter mini(松
【結果】当院では 2013 年 1 月~2014 年 6 月の間に、13 件
浪硝子)、Autostainar Link 48(DAKO)
のスライドガラス書き間違いと1件のカセット書き間違い、
【作業工程】検体提出時、依頼書のバーコードにより受付
および 1 件の生検検体載せ間違い(すべてブロック合わせ
する。検体個数をシステムに入力し、検体用バーコードを
で訂正)が発生していたが、新システムに移行後、スライ
検体個数分出力し、当該検体に貼る。システムから、検体
ドガラスおよびカセットの書き間違いはない。しかし、生
番号とバーコード印字されたカセットを印字機より検体個
検検体の載せ間違い(同一標本上で①-③の順番載せ間違
数分出力する(当院では 1 検体、1 カセットが原則)。カ
い)が 1 件発生している(ブロック合わせで訂正)。
セット詰め込み時に依頼書、検体、カセットの各々のバー
【まとめ】今回、バーコードによる病理検査システムを構
コードを読み込み、3 点照合させる。薄切時に、カセット
築し、検体取り違いのリスクは大幅に減少し、作業効率も
のバーコードをシステムに読み込ませると、HEおよび免
上がった。しかし、生検切片を複数枚、スライドガラスに
疫染色等必要な枚数分、検体番号とバーコードが印字され
載せる当院の運用ではまだ不完全であることも問題点とし
たスライドガラスがフロスト印字機より自動出力される
て挙がった。今後の課題としたい。病理検査のリスクマネ
(当院では薄切と切片を拾う作業は、1 ブロック毎に完結)
ジメントはシステムのみでは不完全であり、運用でリスク
。免疫染色は、病理システムとリンクした自動免疫染色装
を減らすことも重要である。大崎市民病院 0229-23-3311
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バーコードによる照合確認システム「BSTS」ソフトウエアの開発 ◎磯﨑 勝 1)、中村 広基 2)、芹澤 昭彦 3)
小田原市立病院 1)、西尾市民病院 2)、東海大学医学部付属病院 3)
【はじめに】病理業務において検体の誤認や取り違えは重
理番号以外にも数値や文字列が含まれている.このために
大な事故につながる.ミスを誘発する要因としては比較的
文字列処理のプログラムが必要になった.また,照合後の
単純な要因の場合が多く,作業者の注意力不足や思いこみ
一致,不一致は画面表示のみだけでなく警告音でも注意を
があげられる.今回我々は,バーコードで運用している2
促すようにプログラミングを行った.
つのものが同一の番号であるか否かを確認するシステムを
【考察】このソフトウエア(以下 BSTS)は病理標本作製
開発したので報告する.
における検体の誤認防止を目的として開発され,バーコー
【設計】2つのバーコードを読み取り,同一番号であれば
ドで運用されている2つのものが同一であることを確認す
OKサインを表示する.不一致のときにはNGサインを出
るためのプログラムである.利用方法としては,病理技術
すようにプログラムを行う.作業記録としてログが作成で
における薄切作業においてバーコードで管理されている包
きるようにする.
埋カセットとバーコード印字済スライドガラスを1ブロッ
照合プログラム:2つの文字列が同一である時にはOK
クを薄切する毎に照合作業を行うことで切片貼りつけ時の
(image)を表示させる.それ以外の時にはNG(image)を表示
検体取り違えを防止する効果が期待できる.また,照合を
させる.
行った日時がログといて残るため,単純な2つのものの照
【開発環境】Microsoft(R) visual studio 2005, Windows
合作業の記録としても使用することが可能になる.なお、
VISTA(R)
このソフトウエアはフリーソフトとしてダウンロードが可
プログラミング言語:Microsoft visual basic(R) .NET
能である.連絡先 [email protected]
【結果】読み取られた文字列照合プログラムについては開
ダウンロード先(Windows のみ)
発に問題はなかった.通常,運用されるバーコードには病
http://senna.la.coocan.jp/softwere/kizunasoftwerer.zip