平成17年 企画総務委員会 管外行政視察 調 査 報 告 書 1 期 間 平成17年11月8日(火)から11月11日(金)まで 2 視察目的・理由 本区では、現在、幅広い視点から千代田区の観光まちづくりを目指して、 観光ビジョンの策定を進めている。観光施策の推進については、従来から議 会内においても区政の重要課題であるとの認識があり、これまで国内外の特 色ある都市について調査を行ってきた。本年5月には、観光ビジョンの策定 及び観光まちづくりに向けて、特別委員会を設置し、調査研究を行なってい る。企画総務委員会においても、昨年、千代田区の観光をテーマに、区民生 活環境委員会との連合懇談会を行うなど、観光施策について論議を重ねてき たところである。 石垣市では、「一度訪れた観光客がもう一度来てみたい、住んでみたいと 思ってもらえるような魅力あるまちづくり」をめざしている。平成9年には 「観光立市宣言」を行い、以来、石垣島観光のあるべき姿を理念として明確 に打ち出し、その理念の実現に向け、様々な施策に取り組んでいるところで ある。なお、大濱長照石垣市長は「『住んでよし、訪ねてよし』の地域づく りの実践」で、国の「観光カリスマ百選」に選ばれている。 竹富町の西表島では、地域と行政が一体となり、沖縄の中でも特に原生的 で貴重な自然と共生しつつ地域振興を図るという新しい観光への取り組みが 進められている。(地域の活動の中心「西表島エコツーリズム協会」の設立 時の責任者である竹盛氏は国の「観光カリスマ百選」に選定) 本委員会では、このような観光まちづくりの様々な取り組みについて、幅 広い視点で調査を行い、今後の論議の参考としていきたい。 また、沖縄県では「マルチメディアアイランド構想」のもと、情報通信産 業の集積・発展に取り組んでいる。このなか、石垣市では、「八重山マルチ メディアセンター」を設置し、次世代のマルチメディア社会を担う子どもた ちの情報リテラシ(情報や情報機器を活用する能力)向上と、情報通信産業 - 1 - を担う人材育成を目的として、最新のマルチメディア機器を整備し、広く市 民が利用できる環境を提供している。さらに、市では、ネットワークとマル チメディア技術を活用した効果的かつ効率的な情報提供を行うことで、観光 産業の振興や地域の活性化に貢献することを目指す「とぅもーるネット整備 事業」を進めている。 加えて、石垣市には、国連憲章にもとづいた平和の希求の運動の一環であ る「世界平和の鐘」が設置されている。これは、国連本部をはじめ世界十数 カ所、日本では、最北端の都市稚内市と最南端の都市であるこの石垣市に設 置されており、世界平和を実現させるために、国連を本部として世界へアピ ールするためのものである。市では、この「世界平和の鐘」をはじめ「非核 平和都市宣言」、「平和港湾宣言」の理念に基づき、平和行政を進めている。 本委員会では、これらの取り組みについても調査を行い、今後の委員会論 議の参考としていきたい。 3 視察先及び調査事項 (1)沖縄県石垣市 (石垣島) ①観光施策について ②とぅもーるネット整備事業について ③八重山マルチメディアセンターについて ④平和事業について (2)沖縄県竹富町 (石垣島・西表島) ①観光施策について ②西表島のエコツーリズムへの取り組みについて - 2 - 4 視察参加者 【委 員】 (◎議長、○副議長) 委 員 長 鳥 海 隆 弘 (自由民主党議員団) 副委員長 桜 井 た だ し (自由民主党議員団) 委 員 林 委 員 嶋 委 則 行 (自由民主党議員団) 秀 彦 (自由民主党議員団) 員 小 山 み つ 子 (ち よ だ の 声) 委 員 小 林 た か や (ち よ だ の 声) 委 員 ◎戸 張 孝 次 郎 (自由民主党議員団) 委 員 ○中 村 つ ね お (区民ネットワーク) 委 員 崎 鈴 木 栄 一 (日本共産党区議団) 【随行理事者】 政 策 経 営 部 長 藤 江 賢 治 和泉橋 出 張 所 長 細 越 正 明 まちづくり推進部建築指導課長 木 下 あ か ね 【区議会事務局】 事務局次長 鈴 木 秀 人 議 事 主 査 久 保 俊 一 【視察実施決定の経過】 □ 9 月14日 委員会の諸課題を調査研究するため視察を実施するこ と、視察内容については、正副委員長で案を作成し提 示するが、委員からも提案があれば受ける旨を確認。 □ 9 月29日 正副委員長案の概要を提示し、その内容で準備を進め ていく旨を確認。 □10月14日 調査理由、調査事項及び調査日程等の詳細を確認。 □10月17日 委員長から議長あて国内派遣承認要求書を提出し、承 認を得る。 - 3 - 5 調査概要 (1)沖縄県石垣市 ①とぅもーるネット整備事業について 【石垣市:西村情報システム課長】 「とぅもーるネットセンター」は観光センター。「とぅもーる」は八重 山地方(石垣市、竹富町、与那国町の1市2町)の方言で海のことをいう。 昔から島の人は海を漁業・生活の場所として、いろいろと利用していると いうことから、それを英語の「明日=トゥモロー」にかけて「とぅもーる ネットセンター」と命名している。 この「とぅもーるネット整備事業」は沖縄米軍基地所在市町村活性化特 別事業として国の助成(補助率10分の9)を受けている。石垣市に関し ては、石垣本島の中には米軍基地はないが、尖閣諸島の中に米軍の射ばく 撃場に指定されている島があり、それが米軍基地としての位置付けられて いるため、この助成事業の要件を満たしている。 国の事業認可、とぅもーるネット整備事業を開始したのが平成13年度。 13年度に基本調査を行い、14年度に基本設計、16年度に実施設計、 17年度は整備を行っており、18年の4月にはオープンを予定している。 設置予定場所は離島桟橋に建設中の離島旅客ターミナル内である。 とぅもーるネット整備事業は、地元の若者たちでチーム未来という組織 をつくり、地域の人に何が求められているのかということを調査、検討し た結果、観光情報センターが一番必要ではないかという結論に達したため、 導入を決定したものである。 ○事業目的 石垣・八重山地域の観光産業の更なる振興ひいては地域の産業活性化 に貢献することを目指す。 ○事業概要 石垣・八重山地域の環境情報、独自の文化、歴史、芸能、特産等とい った地域情報、観光を支える素材としての自然環境に関する環境情報な どを一元化し、情報流通の活性化を図るプラットホームを構築し、ネッ トワークとIT技術を活用した効果的かつ効率的な情報提供を行う観光 情報流通センターである。 - 4 - ○事業背景 当地域は、沖縄県のさらに遠方にあり、情報という面では非常に遅れ ている。都市圏・中央に追い付くために、まず情報インフラ整備が必要 であるとのことから、長年かけて国や県の方に要望し、光ファイバーが 17年3月から利用できるようになった。今後、いかに情報を確保して 発信していくかというものが求められている。 ○提供するサービス: 石垣島を訪れる70万人の観光客は、そのほとんどが竹富島や西表島 といった離島に観光に行くため、離島ターミナルに集中する。そのため、 この施設で情報を提供していきたいと考えている。 施設に来た方に直接提供するサービスとしては、まず、シアターにお ける情報提供がある。これは大型スクリーンで、八重山地方の文化、歴 史、郷土芸能、各島々の特長を紹介し、現地に行く前の情報提供を行う もの。また、地域にある自然環境、生態、動植物など電子図鑑でいろい ろと検索できるようにする。そのほか定点カメラ、観光情報、あるいは インターネット体験、インフォメーションなどを予定している。 間接提供サービスとしては、「いしがき・ファンクラブ」というもの がある。これは、観光客だけではなくて、全国の石垣あるいは八重山の 出身者にもできるだけ情報を届けることをめざし、石垣の現況や祭りの 情報など、インターネットで発信していくもの。石垣に対して興味のあ る皆さんが現地に来なくても何らかの情報を得られる、この地域の何ら かの活動に参加していくという仕組みをつくっていくことを考えている。 そのほか、ECモールという電子取引を利用したモールを予定している。 ○今後の課題 とぅもーるネットセンター整備は国の補助事業でやっているが、今後、 どういう形で利益を生み出すかというのが1つの大きな課題である。E Cモールでの地域特産品の提供サービスやバナー広告の中で財政的に赤 字にならないような取り組みを考えている。 【主な質疑応答】 問:離島旅客ターミナルとセンターの経費面の関係はどうなっているか。 - 5 - 答:港湾ターミナルは、市の特別会計、起債でやっている。ターミナル の一部のとぅもーるネットセンターの部分として、県の補助の中か ら負担金を出している。 問:管理運営の主体はどこか。管理運営に必要な人員はどのくらいか。 答:とぅもーるネットの部分については、財産管理は市で行う。実際の 施設の管理運営は、指定管理者制度を予定している。必要な人員は 12名ぐらいと想定している。 問:この事業で、利益をあげるような部分はどういったところか。 答:施設の部分では、観光を兼ねた民間企業の社員研修の際のホールの 貸し出しなどを考えている。インターネットの関係では、ECモー ルからの手数料、バナー広告などが考えられる。 問:とぅもーるネットセンターというのは、今後の石垣島の観光産業の 発展のほか、センターそのものの観光地化として期待できるものと 考えているのか。 答:観光客に対するアンケート調査の結果、最も望まれているのは観光 情報への要望。観光情報が不足により、時間が有効に使えないとい うこと。この施設は、旅行に行く際の事前の行動計画を立てるため の利用と、各島々すべてを見るのは難しいため、各地の情報を、こ こに来れば、検索しながら、それも年間を通じて見ることができる 施設と考えている。 問:県の補助がなければ大変な経費がかかる事業、そこはどのように考 えているか。 答:本事業そのものについては、やはり金がなければできない。港湾タ ーミナルの中に本施設をつくろうとすると年間1,200万円の賃貸 料が発生する。それでは経営に困る。県補助金については、今後も 認めてほしいと考えている。事業の中では、できるだけ収益を確保 するもの、あるいは支援事業となり得るものを優先的に整備してい く。そういった収益は、3年後、5年後の機器更新に回すというこ とで明確に担保していく。 - 6 - ②八重山マルチメディアセンターについて 【石垣市:大田情報システム課主事】 マルチメディアセンターは平成12年5月11日、沖縄県がマルチメデ ィアアイランドの実現に向けて、21世紀の基幹産業として期待される情 報通信産業の集積、発展に取り組むために、次世代を担う人材育成として、 児童・生徒の情報リテラシー、教育等を目的として設置した。 ○事業の柱 ・先進的なCG制作・編集機器を配備し、研修や自由環境での学習によ り高度な知識を持った技術者・クリエーターを育成する。 ・マルチメディア機器を配備し、児童生徒・父母・先生等を対象とした 研修や自由環境での学習により情報リテラシの向上を図る。 ・県内企業が制作したコンテンツ・ソフト等成果物の常設展示や3Dシ アターによる実演等を行うことにより、成果物の評価試験やビジネス チャンスの開拓を図る。 ○事業効果 ・沖縄県において、CGコンテンツ制作は、沖縄県の優位性を生かせる マルチメディア産業として期待されている。センターでは、このCG コンテンツ制作に必要な人材育成を促進するとともに、次世代を担う 児童等の情報リテラシ向上を図ることにより、マルチメディア産業振 興に必要な人材の継続的確保が期待できる。 ・情報通信研究開発支援センター(研究開発)及びデジタルメディアセ ンター(企業家支援)との連携により、人材育成・研究開発から製品 化・企業化へ、さらに製品展示・ビジネス化へのプロセスを着実に推 進することが可能となり、より一層、マルチメディア産業の育成・振 興が期待できる。 ○施設の概要 ・総面積223平方メートル、総事業費が約9千万円で、郵政省の自治 体ネットワーク施設整備事業により2分の1補助で沖縄県が設置した。 ・パソコンは、CG制作研修コーナーに5台、CG制作用のコンピュー - 7 - タグラフィック関係機器5式を設置している。本機能を使用して自由 学習やCG関係研修会の実施によりCG関係の技術者、クリエーター 等の人材を育成するという形態になっている。同じフロアのマルチメ ディア研修コーナー、パソコンが12台、マルチメディア用にマルチ メディア関連機器12式を設置している。本機器を使用して自由学習 やマルチメディア研修会の実施し、インターネット等の活用方法を学 習する。合計で17台のパーソナルコンピュータを設置して、自由に 利用ができるという機器類の構成になっている。 ・もう一つは、3Dシアター、3次元映像を映写できる施設である。C G制作研修機能で制作したCG映像等を実演・展示する、また研修室 として活用する。最大24名、3Dを体感できるような偏光グラスを かけて、海の中の生物や惑星のCGとか、そういうものを立体的に体 験できる映像がある。その体験をしたり、また実際にコンピュータを 実演で操作しながら研修会をする、両方をあわせ持った施設。 ○関連施設との連携 沖縄県が設置したマルチメディアセンターは、平成11年に那覇市に 沖縄県マルチメディアセンター、12年には石垣市に八重山マルチメデ ィアセンター、13年には宮古島市に宮古マルチメディアセンターが設 置され、3施設で、いろいろと情報交換ができるような、住民や学校と インターネットを通じてのネットワークができる施設になっている。 ○利用の状況 ・利用時間には2時間という制限を設けている。 ・利用者数は年間約1万2、3千人。1日平均60名から100名。利 用者の特長としては、小・中学生が半分以上を占めているということ。 ・毎週木曜日に台湾からのクルーズ船が定期的に停泊する。4、5時間 の停泊の時間に、乗組員やクルーズ船の利用者が来所し、当日は、中 国語と英語が飛び交うような形で利用されている。 【主な質疑応答】 問:小中学校におけるIT教育はどうなっているか。 答:経費の関係があり、環境がなかなか整備できないのが実情。なお、 - 8 - 教育委員会では、95%の教師が授業でIT活用して教育する技術 力が確保されているとしている。 問:遠隔授業やテレビ会議など、具体的な実施事例はあるのか。 答:授業の中でテレビ会議の仕組みを利用するということは、現在はや っていない。ただし、奄美大島と石垣の中学生の交流会を、テレビ 会議の仕組み利用して行うなど、イベントにあわせての実施は行っ ている。 問:マルチメディアセンターの事業目的の「3Dシアターによる成果物 の評価試験やビジネスチャンスの開拓」の実績はどうか。 答:現在、八重山マルチメディアセンターに関しては、実際に県内企業 が作成したコンテンツや成果物の評価試験やビジネスチャンスの開 拓という部分の実績はない。那覇市内にある沖縄県マルチメディア センターの方では、そういうプロジェクトチームがボランティアで 発足し、自由に集まった制作者たちによるCGの研究等を行ってい る。 問:事業の目的を達成し、さらに前進させていくために、何か考えてい ることはあるか。 答:石垣市では、平成12年のセンター設置時、ITという言葉がどれ ぐらい浸透してきたか、地域住民に対して、どれぐらいまでそれを 理解してもらうかという、初歩的なものからスタートしなければい けなかった。それがセンターの役目だったと考えている。したがっ て、都市圏で考えるITと石垣のような離島で考えるITというの は全く別のもの。パソコンの普及、あるいはインターネット利用率 は、都市圏と比べて、かなり低い。沖縄県ではマルチメディアアイ ランド構想の推進に取り組んでいるが、石垣ではまだ先の話という ことになる。 - 9 - ③観光施策について 【石垣市:宮良観光課長】 石垣市では、「一度訪れた観光客がもう一度来てみたい、住んでみたい と思ってもらえるような魅力あるまちづくり」をめざしている。平成9年 には「観光立市宣言」を行い、以来、様々な施策に取り組んでいる。 ○石垣市の産業構造 石垣の産業別人口は、60%以上はサービス業である。市制50周年 に観光立市宣言を行った。観光でまちおこしをするということ。観光総 合産業ということで、地産地消という、第1次産業と第2次産業をドッ キングした出し物ができないかと考えている。 ○石垣島観光の現状 ・昭和30年、石垣島一周道路が完成した。観光は快適でないといけな い。アクセスが整備されるにしたがい、石垣の観光は伸びてきた。 ・平成元年からは、就航する航空会社が増えたことで、フライト便数の 増加や価格の低廉化が進み、観光客数が伸びてきた。 ・観光客数は、沖縄県が本土復帰した昭和47年には3万6千人、平成 4年に40万人、平成11年には60万人、平成16年は71万人を 突破した。平成17年には73万人に達すると思われる。 ・観光の形態は滞在型となっている。平成14年度の調査では、観光客 の平均宿泊日数は3.8日で、その約5割がリピーター、7割がもう 一度訪れてみたいと回答している。 ・石垣島の観光が追い風を受けたのは、テレビのドラマの効果が大きい。 小浜島は「ちゅらさん」、与那国島の「ドクターコトー」、波照間島 の「瑠璃の島」など、イメージがとても良かった。 ・SARSやテロによる外国旅行離れの際、安全な観光地として、観光 関連業界と行政が一体となり積極的に誘客活動を展開したことにより、 各航空会社や旅行会社もこぞって石垣島ツアーの企画、販売競争をは じめたことも大きな観光客増につながっている。 ・現石垣市長は3期目、市長になってすぐに観光協会の会長にも就任し、 ずっと続けている。市長が会長もやることで、官民が一体の力を最大 限に生かすのも1つの方法である。 - 10 - ・航空路線の新規開設と輸送能力の増加がまたれる状況である。 ○新石垣空港 ・現在の石垣空港は滑走路も短くあくまで暫定的な空港にすぎない。駐 機場も不足し、フライトスケジュールも満杯状態である。 ・新石垣空港は国際空港にしたいと考えて取り組んでいる。現在、台湾 や韓国のチャーター便を誘致し、実績づくりを行っている。 ○観光客誘致事業 八重山圏域は一市二町(石垣市、竹富町、与那国町)で11の有人島 で成り立っている。観光振興については三市町の官民が一体となって取 り組まなければその効果が上がらない。 石垣島だけでは、これだけの観光客がくるとは思っていない。八重山 の中に、竹富島があり、西表島があり、その他いろいろな島々がそれぞ れの個性を持っている。アクセスが良いところと悪いところで、それぞ れの魅力を混ぜながらやっていこうと思っている。 ・「観光感謝のつどい」は各旅行業者、航空各社を招いて開催している。 やはり旅行代理店があっての観光事業である。 ・「修学旅行誘致対策」 ・「ダイビングフェスティバル」石垣市のダイビングポイントを広く国 内外のダイバーに紹介する。全国のダイバーが選ぶベストダイビング エリア日本一に5年連続選ばれる。 ・「ITUトライアスロンワールドカップ&石垣島大会」 ・「南の島の星まつり」日本でも有数の星空環境誇る八重山の星空を観 光資源としてとらえ、旧暦の七夕に島中をライトダウンして、星空を 全国にPRする。今年で4回目、3回目にふるさと大賞を受賞した。 ・「Jリーグのキャンプ誘致」 ・「プロ野球キャンプの誘致」 ・「エコツーリズム」恵まれた自然の環境保全を図るとともに、自然と 観光レジャーの共生を目的とするエコツーリズムを積極的に推進し体 験滞在型観光地を目指している。 ○今後の課題 現在の観光は好調だが、好調なときこそ、さらなる誘客のための宣伝 活動が必要である。多くの観光客を誘客するからには、あらゆるニーズ - 11 - に対応するサービスの向上やハード、ソフト両面からの受け入れ体制・ 設備の改善と充実が求められている。 特に、ボランティアガイドの充実、体験滞在プログラムの作成、各種 インストラクターの養成は不可欠の課題となっている。八重山の大きな 観光資源は美しいサンゴ礁含めたきれいな海にあることから、赤土流出 や生活残排水による河川・海岸の汚染を未然に防ぐことは、将来に向け て石垣の観光に大きく影響を与える課題となっている。 ・新石垣空港の早期開港 ・受け入れ体制の確立(観光施設の充実、島の美化、もてなしの心) ・観光行政の充実(観光関連計画) ・観光産業と他産業との実効性かる提携 ・官民一体となった観光客誘致活動の継続実施 ・自然環境の保護 【主な質疑応答】 問:自然環境の保護が重要な課題であるようだが。 答:自然の保全、景観の保全・創出は市の総合計画の中にうたっている。 川平の周辺の海岸線は、ほとんど内地の企業が持っている。そのた め、市では、それらを農業振興地域として指定し、農業以外には使 えないこととして指導するということでカバーしてきた。しかし、 農業以外に使えないというのは、個人、企業の財産であるため、い かがなものかというのも一方である。幸いなことに、景観法ができ たため、今後はそちらから取り組む。これからは自然環境の保全と 開発の兼ね合いが重要。 問:ビーチの所有も企業なのか。またビーチの管理はどこが行うのか。 答:ビーチの所有はできない。ビーチの前は実際にはその土地の所有者 が主に使うことになってしまうが、ビーチへのアクセスを制限して はならない。管理は県が行うが、実際には県の負担で市が委託され て行っている。 - 12 - 問:観光客の過ごし方について、スポーツだけではなくて、ゆったり、 のんびりしてもらうための対策みたいなものは考えているか。 答:自然豊かないやしの島であるということから、必ずしもスケジュー ルを組んで観光するということではなく、計画性があまりない方が いいのではと考えている。 問:航空運賃についての考えはどうか。 答:国内線の航空運賃は高い。どうにかならないものかと考えている。 旅行費用は基本的には交通費と宿泊料となる。誘客は航空運賃にか かってくる。 問:台湾との交流について特に考えていることはあるか。 答:台湾の台北の国際空港と石垣とを航空路線で結ぼうということで、 台湾の官僚と経済界の方たちとフォーラムをした。18年の春には 暫定でできるかもしれない、強く要請している。そうすると、石垣 から入り、台北経由で帰るとか、オプショナルツアーがつくりやす い。「石垣島に行くときはパスポートを持っていく」というような キャッチフレーズはどうかと考えている。 問:台風を観光に取り入れられないかということも考えられているよう だが、台風にあたった際の観光というのは具体的にどうなるのか。 答:台風と観光はまだつながっていないが、港の近くなどでは、ホテル から、危険ではない状況で、台風による大きな風や波が実際に見る ことができる。そういうようなイメージづくりをしている。また、 ホテルの延泊サービスはないが、台風のときは割引したり、ロビー で伝統芸能をお見せしたりというような工夫はしているようだ。 ④平和事業について 【石垣市:宇保広報広聴課長】 石垣市の平和事業としては、昭和59年3月29日、非核平和都市宣言 を行っている。それをもとに様々な平和行政施策を推進してきている。全 国で非核、平和の自治体宣言を行っているのは1,600。石垣市も日本非 - 13 - 核宣言自治体協議会に加入して、非核についての取り組みをしている。 平成8年からは、中学生、高校生を対象にして平和を考える作文を募集 している。最優秀を受けた生徒には、中学生、高校生各1人、長崎平和大 使として委嘱し、毎年行われる長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典、あわせ て同時に開催される青少年ピースフォーラムの2つの式典と行事に平和大 使ということで参加している。生徒だけではなく、市の担当の職員も参加 して平和について勉強をしている。 今年、戦後60年にあたり、石垣市長による平和宣言を行ったほか、石 垣ではさまざまな事業を行っている。その中で「終戦60年・ばがー島へ の平和メッセージ・回想とぅばらーま」の歌詞の募集をした。「とぅばら ーま」とは八重山地方の代表的な民謡のこと。今年は太平洋戦争・沖縄戦 終結から60年の節目に当たるということから、悲惨な戦争の教訓を継承 し、後世の人々に正しく伝え、世界の恒久平和を実現することは私たちの 使命であるということから、広く愛唱されている無形文化遺産であるとぅ ばらーまの歌詞を公募して、とこしえに平和を求めてやまない石垣市民の 心を歌詞に想いを込め、内外へ発信しようという趣旨。 沖縄戦終結の日にあたる6月23日には、全戦没者追悼式と平和祈念式 典を行っているが、あわせて八重山戦争マラリア犠牲者追悼式を行ってい る。石垣は、地上戦はなかったものの、山に避難させられた住民にマラリ アによる高熱で亡くなられた方々が3,000名余りいた。 また、世界平和の鐘という組織があるが、沖縄県支部が石垣にある。こ の支部の活動の事務局を市の広報広聴課の平和・国際交流の中に置き、世 界平和の鐘の会の支援をしている。世界平和の鐘は、市内の新栄公園に昭 和63年に設置し、平和の鐘をならし世界の恒久平和を訴えるものである。 国内では日本の最北端の稚内市にもあり、北と南から平和の鐘を鳴らす取 り組みをしている。現在は、国内で4カ所、国外では、ニューヨークの国 連本部の中庭に世界平和の鐘が設置してある。なおこの鐘は、世界中の人 々から寄付いただいたコインをもとにつくられたというものである。 【主な質疑応答】 問:戦争マラリアの犠牲の大きさは。 答:当時の八重山地域の人口が3万1,000人、そのうちマラリアで亡く なった方が3,647名。 - 14 - 問:慰霊の日に毎年平和都市宣言のようなものを行うのか。 答:非核平和都市宣言を再度行うことはない。慰霊の日には、市長の平 和メッセージという形で行っている。 問:世界平和の鐘の会としての具体的活動の内容は。 答:会の運営は、会員からの会費で行っている。 平和の鐘を鐘打して平和に対する祈念をする活動。慰霊の日、終戦 記念日、国際平和の日、元旦の日の鐘打など市民に参加してもらっ て実施をしている。稚内市と友好都市になっているため、互いの事 業に呼応して鐘打している。 ※平和施策関連施設を現地調査 ■八重山平和祈念館 沖縄戦や戦争マラリアの悲劇、平和施策への取り組み関しての説 明を祈念館職員から受け、館内展示を視察した。 平和祈念館は国のマラリア慰謝事業として、平成11年に沖縄県 により設置された。戦争マラリアの実相を後世に正しく伝えるとと もに、人間の尊厳が保障される社会の構築と、八重山地域から世界 に向けて恒久平和の実現を訴える「平和の発信拠点」の形成を目指 している。 - 15 - (2)沖縄県竹富町 ①観光施策について ②西表島のエコツーリズムへの取り組みについて 【竹富町:大城商工観光課長】 ○竹富町の観光の概要 竹富町の観光入域者数は、年々右肩上がりで伸びてきている。平成1 5年が92万人余り、平成16年は台風の影響で86万人と減っている が、平成17年は、現在のところ前年度比で大体5%ぐらいの伸びてお り、最終的には平成15年度の数値を上回ると考えている。 竹富町の人口は、昭和25年あたりは人口が9,980名。その後、過 疎の波を受けて3,300から3,500の数値で横ばい状態であったが、 昨年10月に人口が4,000名を超え、平成17年9月末現在で4,17 4名ということになっている。県全体で人口の増加率が一番顕著な自治 体は竹富町であった。その大きな要因は、小浜島や西表島で観光事業に 従事する人の数が増えているということが大きな要因。経済活動の純生 産比から換算すると、1次、2次、3次産業の比率が1対3対6になり、 6割は観光産業だと言っても過言ではない。市では観光産業をリーディ ング産業と位置付けて推進していきたいと考えている。 ○今後の観光事業の取り組み ・現在、平成13年度に策定をした観光振興基本計画の見直しを行って いる。県の一島一物語事業による離島振興の取り組みや、平成16年 11月の国の観光立国宣言、ビジット・ジャパンキャンペーンの実施 などにより観光の機軸が少し変わったきていることにともない、竹富 町の観光振興基本計画もそれに整合性を持って対応していくために、 見直しを進めている。 ・基本計画の見直しの方向性の基本は、特に外国人の観光客に質の高い 観光資源を提供していくということ。現在クルーズ船で入ってくる外 国の観光客は1万9,000人ぐらい。そのうち約6,000名が竹富島 を訪れている。そのあたりを踏まえて基本計画の見直しを行っていき たい。 - 16 - ・「観光立町宣言」の検討も来年度に行うこととしている。 ・世界遺産登録への取り組みもこれから検討していく。姉妹町である北 海道の斜里町が知床の世界遺産登録をされたということもあり、取り 組みを強化していきたいという考えを持っている。 ・新石垣空港の開港に伴って約200万人の観光客の来ることが予想さ れる。収容能力と環境負荷の問題が心配である。そこで、一島一物語 事業の中で、そのルールをつくっていこうと考えている。一島一物語 事業は、本来は各地域の特産品をそろえていくものだが、特産品では なく、西表島の秘境イメージをブランド化する方向で考えている。そ の中で環境負荷の問題についても検討していく。 ・日帰り観光主体から滞在型観光主体へと転換していこうと取り組んで いる。それには宿泊施設を拡充しなければならないという大きな課題 がある。 ・観光は非常にすそ野の広い産業なため、1次産業や2次産業とどのよ うにリンクをしていくかが重要。竹富は2次産業、特に製造業が弱い。 製造業の推進が観光と直接かかわってくる。 ○西表島について 西表島は竹富町で一番大きな島。県内では沖縄本島に次いで2番目に 大きい。島の9割は西表島国立公園に指定をされている。西表島は珊瑚 礁が非常に発達しており、グレートバリアリーフ内の珊瑚の数よりも多 いと言われている。したがって、海面も含めて公園の区域に指定されて いる。西表島は人口が2,000名余り、年に110名ぐらいのペースで 人口が増えている。増えている要因は、本土からのいわゆるI(アイ) ターン。 由布島は非常に人気があり多いときは1,000名が訪れている。した がって、観光面では活気づいてきている。しかし、観光入域数が増えた ことに伴い、例えばレンタカーが大変増え、駐車場の状況が厳しいとい うような問題が出てきている。 エコツーリズムに関しては、沖縄県では竹富が一番歴史が古い。エコ ツーリズムも観光産業の中で重要な位置を占めているので、今後はその 取り組みもさらに検討していきたいと考えている。観光地の整備とカヌ ーやカヤック、シーカヤックの普及とその安全対策を今後推進をしてい きたい。 - 17 - 【主な質疑応答】 問:石垣島と竹富島はセットのように見えてしまう。石垣島や竹富島、 西表島が同じ雰囲気になってしまうという心配の中で、差別化とい ったことは考えているか。 答:観光協会でも同様の話が出ている。具体的にどうするという結論は 出していないが、18年度に作成する観光振興プランの中に、差別 化にについても入れるべきかと考えている。 問:石垣市と竹富町の意見交換や連携はどのような状況か。 答:八重山観光協会の組織の中に石垣市、竹富町、与那国町のそれぞれ の協会がある。八重山観光協会の中で、横の連携を保っており、例 えば観光感謝のつどいなど、各自治体が一緒になって東京へ行き、 旅行業者などに協力をお願いするといった活動はしている。しかし、 竹富町の観光については、竹富町独自のカラーを出していきたい。 問:本土からきている人の滞在のしかたの特徴はどのようなものか。 答:本土から来て、ダイビングを楽しみながら、そのまま住みついてい る人も多い。そういう方々がダイビングの事業を立ち上げたりとい うケースもある。島の人にとっては、珊瑚や熱帯魚は当たり前のた め、それで商売しようという発想がなかった。なお、石垣市内には 本土からの移住者が1万人近くいる。中には、住民登録はせず、長 期間アルバイトをしながら滞在する方もかなりいるようだ。 問:滞在する施設の整備はどうなっているか。 答:石垣市内では、アパートなどが足りない状況だが、最近、長期滞在 型のウィークリーやマンスリー型のマンションが増えている。 問:滞在型観光への転換についての課題は。 答:たとえば、観光客は石垣島のホテルに泊まって、日帰りで竹富島や 西表島に行き、ごみだけを落として、また石垣島へ帰っていく。こ ういう観光の現状を変えることが大きな課題である。まもなく西表 島の西部にホテルがつくられるが、そのような滞在型へ向けた事業 を誘致したい。 - 18 - 問:滞在客が増えることによる環境負荷についてはどう考えているか。 答:そのあたりは大変心配しており、うまく整備をしていきたい考えて いる。ちなみに、知床が世界遺産登録されて、観光客数が一気に増 えている。そういったことも踏まえ、検討していきたい。 問:石垣の新空港の開港による観光客増に向けた対策は。 答:観光は民間が主導で行う部分もあるが、駐車場やトイレの不足など、 行政の方でやらなくてはいけない部分もある。これは喫緊の課題で あるが、財政が厳しいことから、観光客に環境協力金をお願いでき ないかという考えも出ており、町の環境基本計画の中でも検討する こととしている。諸外国に例もあり、きちんと説明すれば、観光客 も納得してくれるのではないかと考えている。 問;(観光客にとって)あまり便利になってしまうのはいかがなものか。 答:リピーターからは、あまり人工的なものは面白くないという意見も ある。地元にはどんどんつくった方が良いという人もいる。その点 はバランスが重要なので、きちんと基本計画の中に取り入れていく。 ※西表島の自然と観光の共生をめざした事業などについて現地調査 ■仲間川 船で川をさかのぼりながら、原生的な自然に関して係員から説明 を受ける。貴重な資源を生かした観光事業を視察した。 全長17.5㎞、両岸に約300㌶にわたってマングローブ林が 広がる。 ■西表野生生物保護センター センターで、野生生物やその保護活動に関する資料展示など、エ コツーリズムとの関わりの視点から視察した。 センターでは、国の天然記念物にも指定されているイリオモテヤ マネコを中心に、西表島に住む野生生物の生態調査や研究、保護を 行っている。 - 19 -
© Copyright 2024 Paperzz