松島麻衣 - 経済学研究科

平成17年度
卒業論文
企業の経営理念とその成果
―シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー の 事例 ―
所属ゼミ 上野ゼミ
学 籍 番 号 1023020747
氏名
松嶋麻衣
大阪府立大学経済学部
要約
「 企 業 の 経 営 理 念と そ の 成 果 ― シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー
の事例―」
1023020747
松嶋麻衣
本論文では 、ショッピングセンターの開発・運営・管理を手がけるディベロ
ッパー企業数社を研究対象として、
「 公 表 さ れ 明 文 化 さ れ た 組 織 の 価 値 観」で あ
る経営理念が実際の企業活 動にどのように反映され、定性的・定量的に成果を
生んでいるかを 検証している。また、この研究を通して改めて経営理念の重要
性を示している。
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 は 、21 世 紀 に 入 り 、都 心 周 辺 部 や
郊 外 に 大 型 商 業 施 設 を 多 数 開 発 し て い る 。 大 阪 に も 2004 年 に ダ イ ヤ モ ン ド シ
テ ィ ・ プ ラ ウ 、2005 年 に イ オ ン り ん く う 泉 南 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー が オ ー プ ン
し、今後もわれわれの地域や生活と 身近な存在になっていくであろう というこ
とで、今回の研究で対象企業として とりあげた 。
論文の構成は 序 章 と 、 1 章から 5 章、終章となってお り 、序章では経営理念
の 必 要 性 お よ び 研 究 の 概 要 、第 1 章 で は 経 営 理 念 の 定 義 、 内 容 、 働 き 、 理 念 と
業 績 と の 関 係 、 理 念 浸 透 の 重 要 性 等 の先 行 研 究 を ま と め て い る 。
第 2 章では、1 章の枠組みの中でショッピングセンターディベロッパー企業
である株式会社ダイヤモンドシティ、イオンモール株式会社、株式会社パルコ
の 3 社 の 経 営 理 念 を分 析 し 、 共 通 点 や 相 違 点 を 考 察 し て い る 。
第 3 章からは 、対象を株式会社ダイヤモンドシティと株式会社パルコの 2 社
に絞り、顧客やテナント、株主に対する理念の成果を、財務データと店舗見学
か ら 得 ら れ た デ ー タ を も と に検 証 し た 。 第 4 章 で は ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ プ ラ
ウ の 周 辺 地 域 商 店 会 へ の 聞 き 取 り 調 査に よ っ て 地 域 社 会 に 対 す る 理 念 の 成 果 を
検証した。
第 5 章 で は 、3・4 章 で の 調 査 を も と に シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー
企 業 の 経 営 理 念 の 在 り 方 に つ い て 考 察す る 。
以 上 の こ と を 踏 ま え 、 終 章 で は 改 め て 経 営 理 念 の 重 要 性 を 考 え、 結 び と し て
いる。
序章
第1章
は じ め に ..................................................................................... 1
こ れ ま で の 経 営 理 念 に 関 す る 研 究 に つ い て ................................... 2
第1節
経 営 理 念 の 定 義 ....................................................................... 2
第2節
経 営 理 念 の 内 容 ( 階 層 性 ・ 領 域 性 ) と そ の 働 き .......................... 2
第3節
経 営 理 念 と 業 績 の 関 係 お よ び 理 念 浸 透 の 重 要 性 .......................... 3
第2章
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 の 経 営 理 念 ................... 5
第1節
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー と は ....................................................... 5
第2節
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 の 経 営 理 念 の 分 析 ...... 6
第1項
株 式 会 社 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ................................................. 6
第2項
イ オ ン モ ー ル 株 式 会 社 ........................................................... 9
第3項
株 式 会 社 パ ル コ .................................................................. 11
第4項
3 社 の 共 通 点 ・ 相 違 点 ......................................................... 12
第3章
ショッピングセンターディベロッパー事業を通じての経営理念の成
果 に 関 す る 調 査 ......................................................................... 16
第1節
財 務 デ ー タ に よ る 分 析 ・ 比 較 .................................................. 16
第2節
店 舗 見 学 に よ る 実 現 度 の 調 査 .................................................. 19
第1項
ハ ー ド 面 に つ い て の 調 査 ..................................................... 21
第2項
ソ フ ト 面 に つ い て の 調 査 ..................................................... 22
第3項
サ ー ビ ス 面 に つ い て の 調 査 .................................................. 24
第4項
店 舗 見 学 の ま と め ............................................................... 25
第4章
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ プ ラ ウ 周 辺 地 域 商 店 会 へ の 聞 き 取 り 調 査 .... 27
第5章
調査結果から見るショッピングセンターディベロッパー企業の経営
理 念 と 成 果 の 関 係 ...................................................................... 30
終章
お わ り に ................................................................................... 32
参 考 文 献 ................................................................................................ 33
i
序章
はじめに
企業は意思を持った生身の人間で構成されている組織である。しかし、おの
おのの人の考えは十人十色 である。個人的な価値観だけしか持っていなかった
ら企業は組織ではなくなる。では企業に属している人は何をもってつながりを
持 っ て い る の だ ろ う 。 そ れ は 共 通 の 価 値 観 、 す な わ ち 経 営 理 念 で あ る 。も と は
バラバラな個人であっても 、経営理念によって企業に属する人々は企業への帰
属意識・一体感を持つことができる 。
また、企業の目的は利益の追求だけではない。 企業が長期的に発展・存続し
て い く た め に は 、顧 客 、 地 域 社 会 、 取 引 先 、 株 主 、 従 業 員 な ど の ス テ ー ク ホ ル
ダーとの関係も考慮しなければならない。経営理念の中ではステークホルダー
との関係についても述べ、 自社がどんな存在でありたいかという目標を持って
いる。
本論文では、われわれに身近な存在であるショッピングセンターを運営する
ディベロッパー企業に焦点を当て、理念に沿った行動が成果をあげているかど
うかを検証することにより 、改めて経営理念の重要性を述べていく。 定量的な
側面である財務データだけでなく、店舗見学・聞き取り調査から得られた定性
的 な 側 面 も 用 い て 研 究 し て いく 。
第 1 章では経営理念に関する 先行研究について述べ、第 2 章ではショッピン
グセンターの概要と、先行研究の枠組みを利用して、ショッピングセンターデ
ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 3 社 の 経 営 理 念 を 捉 え て 比 較 ・ 分 析 を 行 っ て い る 。第 3 章 で
は研究対象を株式会社ダイヤモンドシティと株 式会社パルコに絞り、財務デー
タ・店舗見学による経営理念の成果の測定・比較を行うことにより、顧客・テ
ナント・株主に対する理念が達成されているかを検証する。第 4 章ではダイヤ
モンドシティ・プラウの周 辺地域商店会への聞き取り調査による地域社会貢献
の成果を検証する。
第 5 章 で は 3・ 4 章 で の 調 査 結 果 を も と に シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ
パ ー 企 業 に お け る経 営 理 念 の在 り 方 を 考 察 し て い る 。 終 章 で は 改 め て 経 営 理 念
の重要性を考える。
1
第1章
第1節
これまでの経営理念に関する研究について
経営理念の定義
「 経 営 理 念 と は 何 か 」 と い う 定 義 づ けの 問 題 に つ い て は さ ま ざ ま な 研 究 が な
さ れ て い る 。 梅 澤( 1994)は「 経 営 活 動 に 関 し 企 業 が 抱 い て い る 価 値 観 で あ り 、
企業が経営活動を推進していくうえでの指導的原理であり、指針である」
( p.2)
と定義している。その他には「企業経営について、経営者ないし会社あるいは
経 済 団 体 が 公 表 し た 信 念 」( 奥 村 , 1994, p.2) や 、「 公 表 さ れ た 個 人 の 信 条 、
信念そのもの、もしくはそれが組織に根付いて、組織の基づく価値観として明
文化されたもの」
( 北 居 ・ 松 田,2004,p.94) と い う 定 義 づ け が な さ れ て い る 。
し か し 経 営 理 念 の 語 句 が 社 長や 創 業 者 、 経 営 者 な ど の 個 人 が 述 べ た 信 条 や 信
念であったり、それが組織に根付いて制度化したものであったとしても、
「経営
理念は組織としての思想や価値観であって、経営者がいだいている個人的な企
業観や経営観と同じというわけではない」
( 梅 澤 ,1994 ,p.4)の で あ る 。また、
自社の存在意義を示し公表 する こ と に よ り 社 外 のステークホルダーに 社 会 的 に
受 け 入 れ て も ら い、 自 分 た ち の 活 動 の 正 当 化 を は か る こ と が で き る 。 そ し て 明
文化されたものであることによって組織で働く人に伝わり 共有され行動や判断
の拠り所となるため、経営理念に基づいた経営に結びつくと考えられるであろ
う。
以上のことを踏まえて、本論文では経営理念とは、
「公表され明文化された組
織の価値観である」と定義する。
第2節
経営理念の内容(階層性・領域性) とその働き
経営理念は複数の要素から構成されており、抽象的な理念から具体的な方針
というように階層をなしている場合が多い。たとえば社是・社訓の形であらわ
さ れ て い た り 、経 営 理 念 ・ 経 営 方 針 ・ 行 動 指 針 と い う 構 成 に な っ て い た り す る 。
奥 村 ( 1994) に よ る と 、「 理 想 と し て の 上 位 概 念 か ら 実 践 原 理 と し て の 下 位 概
念 に 至 る 階 層 が 構 成 さ れ て い る 」( p.8) と い う 。
2
また、経営理念の内容は企業の存在、企業環境、管理・行動という三領域に
ついての信念を述べているという。経営理念では企業の本質や存在意義を明確
にしたり、追求する価値や事業領域・活動を表明したり、ステークホルダーと
の関係を述べたり、企業の管理・運営や従業員の行動基準を示したりしている
( 奥 村 , 1994, pp.9-20)。
では経営理念の階層性・領域性はどのような働きをしているのであろうか。
ま ず 北 居 ・ 松 田 ( 2004) は 、 経 営 理 念 の 階 層 性 に よ り 柔 軟 性 を 発 揮 す る こ と が
で き る と 述 べ て い る( pp.94-95)。上位概 念 は 不 変 で あ り 、 下 位 概 念 が 企 業 環 境
の変化によって柔軟に変化するのである。つまり上位概念にあたる理念の部分
は価値観であるのでそう簡単に変えるべきではないが、変化する環境に対応す
るために理念を柔軟に解釈して下位概念を変化させる必要があるのだろう。そ
うすることによって理念(上位概念)が行動(下位概念)に結びつくと考えら
れる。
次 に 奥 村 ( 1994) に よ る と 、 先 述 し た 三 つ の 領 域 性 の 働 き に つ い て は 次 の 通
り で あ る 。 企 業 の存 在 に つ い て の 理 念 に よ り 企 業 の バ ッ ク ボ ー ン ( 指 針 ) を 形
成 す る こ と が で き 、 企 業 環 境に つ い て の 理 念 は 経 営 価 値 と 社 会 価 値 と を 一 致 さ
せステークホルダーとの信頼関係の形成に役立ち、経営方針や行動指針などの
管理・行動についての理念は経営戦略や長期計画などの経営技法の基盤や経営
実践の根幹を形成し、経営成果をあげ経営基盤を確立し企業が存続することに
役 立 つ ( pp.161-163)。
第3節
経 営 理 念 と 業 績 の 関 係 お よ び理 念 浸 透 の 重 要 性
Collins& Porras( 1994) は 、 ビ ジ ョ ン を 持 っ て い る 企 業 、 未 来 志 向 の 企 業 、
先見的な企業、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きな
インパクトを世界に与え続けてきた企業をビジョナリーカンパニーとしている
( p.1)。 そ し て こ の ビ ジ ョ ナ リ ー カ ン パ ニ ー は 利 益 を 超 え た 基 本 的 価 値 観 や 目
的といった基本理念を持ち、利益を最優先させる傾向が強い比較対象企業と比
べ て 利 益 を あ げ て い る と い う ( p.8)。 こ こ で 、 理 念 が 業 績 に 結 び つ い て い る と
い う こ と が わ か る。
3
ま た 、Collins& P o r r a s( 1994)は「 理 念 の 内 容 で は な く 、 理 念 を い か に 深 く
『信じて』いるか、そして、会社の一挙一動に、いかに一貫して理念が実践さ
れ、息づき、現れているか」
( 翻 訳 ,1995,p.13 )が 重 要 で あ る と 述 べ て い る 。
経営理念が組織の価値観として機能するためには、企業を構成しているメン
バーに経営理念を浸透させなければならない。そして組織の構成メンバーが経
営 理 念 を 受 け 入 れ 意 思 決 定 や行 動 の ひ と つ ひ と つ に 結 び つ け る こ と に よ っ て 成
果 を う む の で あ る。 企 業 と し て 、 企 業 の 一 員 と し て 行 動 す る と き は 、 理 念 に 沿
った行動をしなければならないのである。
図 表 1‐ 1 は 、 松 岡 ( 1997) が 経 営 理 念 の 浸 透 の レ ベ ル に つ い て 段 階 づ け た
ものである。これは個人における浸透レベルである。理念が従業員に十分に浸
透している状態を理念が確立されているといえるので、理念が確立された企業
はレベル3∼4の従業員が多い企業であり、その企業は理念を行動に結びつけ
ることができていると考えられる。
表 1‐ 1
経営理念の浸透レベル
レベル
浅い
1
内容
言葉の存在を知っている。
言葉を覚えている。
2
理念を象徴するような具体例を知っている。
実際に自分で経験したことがある。
3
理念の意味を解釈できる。
自分の言葉でいえる。
深い
4
理念を行動に結びつける。
行動の前提となる。こだわる。
出 所 : 北 居 ( 2001) p .55, 図 表 3‐ 1 を も と に 著 者 作 成 。
4
第2章
ショッピングセンターディベロッパー企業の経営理念
第1節
ショッピングセンターとは
社 団 法 人 日 本 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー 協 会 ( http://www.jcsc.or.jp/) で は シ
ョッピングセンターを「ディベロッパーと呼ばれる一つの経営体が中心になっ
て計画、開発した建物にキーテナントといわれる大型小売店(通常は大型スー
パ ー 、百 貨 店 )と テ ナ ン ト と 呼 ば れ る バ ラ エ テ ィ に と ん だ 小 売 専 門 店 、飲 食 店 、
サービス業が入り、地域の生活者に多種多様な商品、サービスを提供する商業
施 設 の こ と 」と 定 義 づ け て い る 。 ま た 、 「 キ ー テ ナ ン ト が 入 ら な い 専 門 店 だ け で
構 成 さ れ て い る シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー、 例 え ば フ ァ ッ シ ョ ン ビ ル 、 駅 ビ ル 、 地
下街といったショッピングセンター」もある。
日 本 に お い て は シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー の 開 発 は 1960 年 代 か ら 駅 ビ ル を 中 心
に 進 ん だ 。1970 年 以 降 、毎 年 数 十 も の シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー が 開 業 し て き た が 、
大型店を規制し 中小小売業の事業確 保を目的とされていた 大規模小売店舗法の
規 制 が 1990 年 以 降 に 緩 和 さ れ た た め 、1992 年 か ら 2000 年 ま で 毎 年 1 0 0 件 以 上
のショッピングセンターが開業した。また、ショッピングセンター1 店舗あた
りの売場面積が増大したことや、モータリゼーションを背景として郊外に大型
のショッピングセンターの開業が増えたことも特徴である。
同 協 会 の 調 べ で は 、シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー の 総 数 は 年 々 増 加 し て お り 2004 年
12 月 末 で 2,660 と な っ て い る が 、新 規 開 業 件 数 の 伸 び は 2000∼ 2002 年 に か け
て 大 幅 に 減 少 し た。そ の 要 因 と し て は 2000 年 6 月 の 大 規 模 小 売 店 舗 法 の 廃 止 ・
大規模小売店舗立地法の施 行により 、大型店舗の出店が新たに規制されたこと
が考えられる 1。
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー は 商 圏 、形 態 に 応 じ て 主 に 3 つ に 分 類 で き る 2 。商 圏 人
口 15∼ 30 万 人 の 広 域 商 圏 を 想 定 し 、 GMS( 総 合 小 売 業 ) や 百 貨 店 、 デ ィ ス カ ウ
ン ト ス ト ア な ど 二 つ 以 上 の キ ー テ ナ ン ト と 専 門 店 モ ー ル で 成 る RSC( Regional
Shopping Center ) と 、 5 ∼ 7 万 人 の 商 圏 で 主 に G M S が キ ー テ ナ ン ト の
CSC(Community Shopping Center)と 、 3∼ 4 万 人 の 小 商 圏 で ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト
や ホ ー ム セ ン タ ーが 主 な キ ー テ ナ ン ト で 日 常 性 の 高 い 商 品 を 取 り 扱 う テ ナ ン ト
5
の 多 い 住 宅 隣 接 型の NSC( Neighborhood Shopping Center ) で あ る 。 店 舗 面 積
は RSC で は 35,000 ㎡ 以 上 、 CSC は 10,000∼ 35,000 ㎡ 、 N S C は 10,000 ㎡ 以 下 と
さ れ て い る 。 日 本 で は NSC が 一 番 多 い と さ れ て い る 。
第2節
ショッピングセンターディベロッパー企業の経営理念の分析
ショッピングセンターディベロッパー企業の主な業務内容は、ショッピング
セ ン タ ー の 開 発 ( 施 設 の 企 画 か ら 出 店 候 補 地 の 検 討 、 テ ナ ン ト 誘 致 、 建 築 等 )、
管 理 、 運 営 を 行 う こ と で あ り 、 小 売 業 と 言 う よ り は 不 動 産 業と 言 え る 。 ま た 資
産 を 保 有 せ ず に 運 営 ・ 管 理 を 行 う P M( プ ロ パ テ ィ ・ マ ネ ジ メ ン ト ) 業 務 を 行
うディベロッパーも増えている。
そのステークホルダーとしては、顧客、地域社会、株主、投資家、取引先、
従業員だけでなく、テナントが挙げられる。ディベロッパーは建設するための
用 地 を 確 保 し て シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ーを オ ー プ ン し 、 入 居 す る テ ナ ン ト を 誘 致
する。テナントに対しては店舗運営までをサポートし、売り上げなどに応じた
家 賃 収 入 を 得 る こ と に よ っ て事 業 は 成 り 立 っ て い る 。
では実際のショッピングセンターディベロッパー企業がどのような経営理念
を 掲 げ 実 践 し て い る の か を 、株 式 会 社 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ イ オ ン モ ー ル 株 式
会社・株式会社パルコの 3 社を取り上 げて見ていく。
第1項
株式会社ダイヤモンドシティ 3
株式会社ダイヤモンドシティ(以下ダイヤモンドシティ)の経営理念は、
「私
達は商業専業ディベロッパーのパイオニアとしての誇りを持ち、地域社会の発
展とお客様の生活文化の向上に貢献する企業として、ショッピングセンターの
創 造 に 挑 戦 し 続 け ま す 」 で あ る 。1969 年 3 月 、 ジ ャ ス コ 株 式 会 社( 現 イ オ ン 株
式 会 社 ) と 三 菱 商 事 株 式 会 社の 共 同 出 資 に よ っ て 日 本 初 の デ ィ ベ ロ ッ パ ー 専 用
会社として設立されたダイヤモンドシティは、 商業専業のディベロッパー事業
に 専 念 す る こ と を 理 念 で 表 し て い る 。ま た 「 地 域 社 会 の 発 展 と お 客 様 の 生 活 文
化の向上」という価値を追 求し、ステークホルダーの中でも特に顧客と地域社
6
会に役立ち、奉仕する存在でありたいという考えが示されている。
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は子 ど も を 連 れ て 都 心 で 買 い 物 を す る こ と に 抵 抗 を 感 じ
る 団 塊 ジ ュ ニ ア フ ァ ミ リ ー 4 を タ ー ゲ ッ ト に 、 都 市 近 郊 の 郊 外 地( 半 径 5 ㎞ に
50 万 人 の 商 圏 人 口 を 想 定 )で 全 国 18 の 大 型 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー( 主 に RSC)
を 運 営 し て い る 。シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー は た だ モ ノ を 売 る 場 所 で は な く、 単 に
必要なものを購入する場所から地域のコミュニティ拠点として双方向的に機能
する場になる必要があると し、ただの商業施設をつくるのではなく“まち”づ
くりをしているという考えを持っているため、地域社会を重視している。三菱
商事からの物件情報が多かった工場跡地や遊休地といった土地を再開発し、回
遊性の高いモール型のショッピングセンターを 創ることによって、顧客に新し
い休日の過ごし方などの生活提案や地域経済の活性化ができると考えている。
ここで、ダイヤモンドシティが自社の事業領域を“まち”づくりとしているこ
と は 、 セ オ ド ア ・ レ ビ ッ ト が 述 べ た「 近 視 眼 的 マ ー ケ テ ィ ン グ 5 」 に 陥 ら な い
ようにしているということであろう。
こ こ で 具 体 的 に ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ が顧 客 や 地 域 社 会 に 貢 献 す る 活 動 と し て
い る も の を 紹 介 す る と 、 ま ず各 店 舗 に 「 お 客 様 の 声 ボ ッ ク ス 」 を 設 置 し 顧 客 の
意 見 に 耳 を 傾 け て い る 。 店 舗 の あ る 各 地 域 の 地 方 銀 行 や 信 用 金 庫 、 JA の ATM
が設置されており、地域に密着している。また 「ダイヤモンドシティ」の名が
つ く 10 店 舗 中 、 7 店 舗 に 歯 科 、 7 店 舗 に 眼 科 、バ リ ュ ー ( 熊 本 県 宇 城 市 ) に
は 内 科 ・ 小 児 科 ・ 皮 膚 科 ・ 整 形 外 科、ハ ナ ( 京 都 府 京 都 市 右 京 区 ) に は 内 科 ・ 循 環
器科もあり、歯 科 ・ 眼 科 と 共 に 日 曜 日 も 診 療 し て い る 小 さ なクリニッ クモール
となっている。
ソ レ イ ユ ( 広 島 県 安 芸 郡 府 中 町 ) に は 「 ふ ち ゅ う 情 報 プ ラ ザ つ ば き 館」 と い
う住民票の交付等が受けられる行 政 サ ー ビ ス が あ り 、 ル ク ル(福岡県 糟屋郡粕
屋町)には派出所を誘致している。 他には、地域住民が参加できるような植樹
祭・育樹祭や、地元名産物 の展示即売会、地域発の店舗をテナントに入れるこ
と も し て い る 。ル ク ル で は 約 25% が 地 域 の テ ナ ン ト で 、テ ラ ス ( 兵 庫 県 伊 丹 市 )
で は 大 阪 ・ 兵 庫 の 地 元 テ ナ ン ト が 約 20% と な っ て い る 。
次にダイヤモンドシティの経営理念の階層性を見てみると、理念を達成する
た め の 行 動 規 範 が あ る ( 表 2‐ 1)。
7
表 2‐ 1
ダイヤモンドシティ の行動規範
1、 私 達 は 、 テ ナ ン ト 各 位 を パ ー ト ナ ー と し て 、 お 客 様 の 安 全 を 心 が け お 客
様にご満足いただける商品とサービスを提供します。
2、 私 達 は 、 地 域 社 会 に 根 ざ す 企 業 市 民 と し て の 責 任 を 果 た し ま す 。
3、 私 達 は 働 き 甲 斐 の あ る 職 場 環 境 づ く り に 取 り 組 む と と も に 常 に 高 い 目 標
を追求します。
4、 私 達 は 、 公 正 ・ 透 明 な 取 引 を 行 う と と も に 社 外 と の 健 全 か つ 正 常 な 関 係
を保ちます。
5、 私 達 は 、 株 主 に 正 確 な 企 業 情 報 を 適 正 か つ タ イ ム リ ー に 開 示 し 、 経 営 の
透明性を高め開かれた企業をめざします。
6、 私 達 は 、 こ の 規 則 に 反 す る 行 為 を 発 見 し た 場 合 ま た は 不 注 意 に よ り 自 ら
行った場合を問わず、速やかに上司、社内関係部署、コンプライアンス 6
委員会事務局またはコンプライアンス担当顧問弁護士のいずれかに報告
します。また会社は、報告者が不利益を被ることがないようにします。
出 所 :「 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ 行 動 規 範 」 カ ー ド を も と に 著 者 作 成 。
行動規範の中では顧客、地域社会、 テナント、職場環境、取引先、株主に対
す る 行 動 の あ り 方 が 書 か れ て お り 、 第 5 条 以 外 は 更 に 3∼ 6 つ の 具 体 的 な 内 容
が 書 か れ て い る 。 た と え ば 第1 条 の 顧 客 に 関 す る 行 動 規 範 の 中 に は 「 ② 清 潔 で
衛生的な店運営、適正な商品表示と広告宣伝を行い、お客様の安全と安心を実
現 し ま す 」、 第 2 条 の 地 域 社 会 に 対 す る 行 動 規 範 に は 「 ① 地 域 行 事 へ の 参 画 、 福
祉・ボランティア等の支援活動を通じ地域社会との交流を図り、社会貢献に努
め ま す 」 と い う も の が あ り 、行 動 規 範 の 中 で も 2 つ の 階 層 性 が 見 ら れ る 。
ダイヤモンドシティでは全社員に「 ダイヤモンドシティ行動規範」 カードの
義務づけることによって、経営理念の浸透を図っている。具体的な言葉で行動
規 範 が 表 現 さ れ て い る た め 、 個 人 レ ベ ル で の 理 解が 可 能 だ と 考 え て い る と 思 わ
れ る 。カ ー ド の 中 に は 3 つ の セ ル フ チ ェ ッ ク と い う 項 目 が あ る 。
「私が行おうと
し て い る こ と は 法 律 ・ 社 内 規 則 に 触 れ て い な い だ ろ う か 」、「 私 が 行 お う と し て
い る こ と は 当 社 の 価 値 基 準 に 合 っ て い る だ ろ う か 」、「 私 は 、 正 し く な い と 知 り
8
ながら行動していないだろうか。また社内の他の人の同様な行動を見過ごして
いないだろうか」というように、自分が会社の価値観に沿った行動を取ってい
るかをチェックできるようになっている。
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は 2004 年 に 鯛 洋 三 社 長 が 就 任 し 、 組 織 再 編 が 行 わ れ 、
2004 年 11 月に「 PM 事 業 本 部 」 の 設 置 、2005 年 3 月 に は 本 社 が 大 阪 か ら 東 京
へ移動した。職場環境の改善も組織再編の一環として重視され、東京・大阪の
事務所には社員の悩み・相談を受ける「なんでも相談室」 が設けられている。
また全社員が同じ気持ち・同じ方向性で仕事ができるかを実践するために、社
長 は 常 に 現 場 に 出 向 き 話 し 合 い を し てい る と い う 。 従 業 員 を 大 事 に し 、 経 営 理
念を浸透させる場を作っている。
第2項
イオンモール株式会社 7
ダイヤモンドシティと同様にイオングループに属し 、大規模ショッピングセ
ン タ ー ( RSC) の デ ィ ベ ロ ッ パ ー 事 業 を 行 っ て い る 企 業 に イ オ ン モ ー ル 株 式 会
社 ( 以 下 イ オ ン モ ー ル ) が あ る 。 も と も と は 1973 年 か ら 保 険 代 理 店 事 業 を 行
っ て い た の だ が 、 1989 年 10 月 イ オ ン 興 産 株 式 会 社 に 社 名 変 更 し 、 新 た に 大 規
模 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー 事 業 を 開 始 し た 。 1992 年 11 月 に 第 1
号 店 と し て 当 時 人 口 お よ そ 5000 人 と い う 青 森 県 柏 村 に 「 イ オ ン 柏 シ ョ ッ ピ ン
グ セ ン タ ー 」 を オ ー プ ン さ せ た 。2001 年 6 月 に イ オ ン モ ー ル 株 式 会 社 に 社 名 変
更 し 、 現 在 は 全 国 で 21 の シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー を 運 営 し て い る 。 イ オ ン モ ー
ル は 半 径 10 ㎞ に 40∼ 50 万 人 の 商 圏 を 想 定 し 、地 方 中 核 都 市 お よ び そ の 周 辺 の
市町村または複数の中小都市が集まって、合計で大きなマーケットが設定でき
る場所にショッピングセンターを創っている。 ダイヤモンドシティよりも比較
的郊外に立地する。
同社は、イオングループとしてイオンの基本理念「お客さまを原点に平和を
追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」 や行動規範 を大事にするととも
に 、 イ オ ン モ ー ル独 自 の 経 営 理 念 を 表 2‐ 2 の よ う に 掲 げ て い る 。
9
表 2‐ 2
イオンモールの経営理念
基本理念「お客さま第一」
一、当社は環境保全ならびに社会貢献を企業活動の基軸として積極的に
推進する
一、創造的ショッピングセンターの開発と運営を通して地域社会の生活
と文化の向上ならびに商業の発展に貢献する
一、時代の変化に対応したリスクマネージメントとサービスの提供をは
かり顧客並びに社会の発展に貢献する
出 所:2005 イ オ ン モ ー ル
サスナビリティレポート p.6 をもとに 著者作成。
イオンモールが 特に大事にしているステークホルダーはダイヤモンドシティ
と同様、顧客と地域社会である。追求する価値としては「環境保全」
「社会貢献」
を、またそれを基軸として活動することを述べている。第 1 号店のある青森県
柏村は、イオンの岡田卓也名誉会長の「タヌキやキツネの出るような場所にシ
ョッピングセンターを創れ」という指示にぴったりの立地だったと言う。自然
を壊して創るという意味ではなく、自然と共生することを考えているのであろ
う。また地域の活性化への貢献するための言葉とも考えられる。これは理念の
中で「地域社会の生活と文化の向上ならびに商業の発展」という価値も追求し
ているためである。
次に自社の事業活動を「時代の変化に対応したリスクマネージメントとサー
ビ ス 」 と 定 め て い る の は 、 た だ の 保 険 代 理 店 事 業と し て 保 険 加 入 者 を 増 や す と
い う こ と で は な く顧 客 や テ ナ ン ト 企 業の 安 心 と ゆ と り の た め に リ ス ク 管 理 を す
るという立場をとり、ショッピングセンターではモノを売るだけでなくサービ
スを提供すると考えているからであろう。
イ オ ン モ ー ル で も シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー を 単 な る 店 舗 の 集 ま り で は な く「 街 」
と し て 捉 え 、 街 の 機 能 と し て医 院 や 行 政 の サ ー ビ ス も 提 供 し て い る 。 イ オ ン モ
ー ル 21 店 舗 中 17 店 舗 に 歯 科 、 7 店 舗 に 眼 科 、 3 店 舗 に 内 科 、 4 店 舗 に 行 政 サ
ー ビ ス コ ー ナ ー 、4 店 舗 に 福 祉 の 店 、 そ の 他 に も 銀 行 ・ 信 用 金 庫 出 張 所 、 警 察
官 立 寄 り 所 、 市 情 報 コ ー ナ ー、 献 血 コ ー ナ ー 、 人 材 派 遣 ・ 職 業 紹 介 な ど の サ ー
ビ ス が あ る 。 青 森 県 の 下 田 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー内 に は お 年 寄 り ・ ハ ン デ ィ キ
10
ャップを持っ た 人も シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー を 快 適 に 利 用 で き る よ う に 設けられ
た デ イ サ ー ビ ス のサ ポ ー ト セ ン タ ー が あ る 。
語句だけを見てみると基本理念は非常に抽象的である。階層性が見られるが
そこまで具体的ではない。 企業の管理や従業員の行動についてはほとんど述べ
ら れ て い な い 。 し か し こ の 経 営 理 念 は具 体 的 な 戦 略 に 結 び つ き 、 従 業 員 は 自 分
た ち の 活 動 が 理 念 の 実 践 に な っ て い る こ と が わ か る よ う に な っ て い る 。例 を 挙
げ る と 、“ 地 元 の 専 門 店 3 分 の 1、 地 域 初 出 店 の 専 門 店 3 分 の 1、 ナ シ ョ ナ ル ブ
ラ ン ド 3 分 の 1” い う 基 準 を 設 け 、 地 域 の 特 性 を 活 か し た シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ
ー創りに取り組んでいる。また、地域雇用としてりんくう泉南ショッピングセ
ンターの専門店の従業員の約7割が泉南市・阪南市・泉佐野市の近隣に住んで
いるという。
第3項
株式会社パルコ8
株 式 会 社 パ ル コ ( 以 下 パ ル コ ) で は 「訪 れ る 人 々 を 楽 し ま せ 、 テ ナ ン ト を 成
功に導く、先見的、独創的、かつホスピタリティあふれる商業空間の創造」と
いう経営理念を掲げている。株式会社パルコのホームページによると、人材価
値 を 通 し て 、「 商 業 空 間 の 創 造 」 と い う 事 業 領 域 で 、「 訪 れ る 人 々 を 楽 し ま せ 、
テナントを成功に導く」という顧客価値と「先見的、独創的、かつホスピタリ
ティあふれる」という業務価値を追求し、成果としての財務価値の向上を目指
しているという。ステークホルダーの価値と自社の価値を明確に一致させてい
る。ステークホルダーの中では訪れる人々すなわち顧客とテナントを重視して
い る 。“ PARCO” は イ タ リ ア 語 で 「 公 園 」 と い う 意 味 で あ り 、 パ ル コ が「 人 々
が 集 い 、 時 間 と 空 間 を 共 有 し 、 楽 し ん だ り く つ ろ い だ り す る 場 ( 空 間 )」を 提 供
する存在である、という思いを社名に託している。そしてその主役は、その場
( 空 間 ) に 集 う 人 々 、 す な わ ち お 客 様 と テ ナ ン トだ と し て い る 。
パ ル コ は 都 市 型 商 業 施 設 の 開 発 ・ 運 営 を 中 核 事 業 と し て い る 。1953 年 2 月 に
池 袋 ス テ ー シ ョ ン ビ ル 株 式 会 社 を 設 立 す る が 、1954 年 10 月 株 式 会 社 丸 物 の 資
本 参 加 を 得 て 、 事 業 目 的 を 駅 ビ ル 運 営 か ら 百 貨 店 業 に 変 更 し た 。 し か しダ イ ヤ
モ ン ド シ テ ィ の 誕 生 と 同 じ 年 で あ る 1969 年 6 月 に 東 京 丸 物 百 貨 店 を 閉 店 し 、
11
11 月 に は 「 20 歳 ・ OL、 フ ァ ッ シ ョ ン 」 を コ ン セ プ ト に 専 門 店 集 積 ビ ル 「 池 袋
PARCO」 を オ ー プ ン さ せ た 。 以 後 、地 方 を 含 む 都 市 部 の 駅 な い し 商 業 集 積 地 を
中 心 に 全 国 19 ヵ 所 の 「 PARCO」 を 運 営 す る デ ィ ベ ロ ッ パ ー 事 業 の 他 、 専 門 店
事 業 、 総 合 空 間 事 業 、I T 事 業 、 ホ テ ル 運 営 事 業 、な ど も 展 開 し て い る 。 パ ル コ
・ ・
は多角化事業を目指す「都市型 総合ディベロッパー」としてではなく「都市型
・ ・
商業ディベロッパー」とし、自 社の本業であるディベロッパー事業をコアビジ
ネ ス と し て 経 営 資 源 を 集 中 し 強 化 し て い く た め 、1999 年 に こ の 経 営 理 念 を 制 定
した。
パルコの経営理念は、先程紹介した理念と、理念を行動に結びつけるための
10 の 行 動 指 針 、理 念 を 浸 透 さ せ 現 実 の も の に し て い く た め の 5 つ の 活 動 と い う
階 層 性 を 見 せ て い る 。10 の 行 動 指 針 で は 経 営 理 念 に 基 づ く 行 動 指 針 5 つ( 顧 客
第 一 主 義 、 テ ナ ン ト と の イ コ ー ル パ ー ト ナ ー 主 義 、 先 見 性 、独 創 性 、 お も て な
しの心)と企業人としての行動指針 5 つ (責任・誠実 、挑戦・情熱 、個性・共
有 、 ヒ ト ・ 協 力 、 発 展 ・ 成 長) を 挙 げ て い る 。 行 動 指 針 の 中 で は 、 顧 客 、 テ ナ
ント、従業員というステークホルダーを重視している。5 つの活動では全社で
共 有 で き る 価 値 観 ・ 行 動 基 準を つ く り 、 そ れ ら を浸 透 さ せ て い く こ と に よ っ て
暗 黙 知 を 形 式 知 に 昇 華 さ せ る た め の 方 法 を 述 べ て い る 。例 え ば 、「 PARCO ハ ン
ド ブ ッ ク 」 を 制 作 し 全 社 員 に 配 布 す る 、社 内 Web を 通 じ て 意 識 づ け を行 う 、全
社 員 ミ ー テ ィ ン グで 経 営 理 念 に つ い て 話 し 合 う 機 会 を 設 け る 等 で あ る 。
第4項
3 社の共通点・相違点
経営理念の中で自社の事業領域・事業活動を ダイヤモンドシティは「商業専
業 デ ィ ベ ロ ッ パ ー 」「 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー の 創 造 」、 イ オ ン モ ー ル は 「 創 造 的
ショッピングセンターの開発と運営」
「時代の変化に対応したリスクマネージメ
ン ト と サ ー ビ ス の 提 供 」、 パ ル コ で は 「 商 業 空 間 の 創 造 」 と 定 義 し て い る 。ダ イ
ヤモンドシティは自社がディベロッパー企業の草分けであるということに誇り
を持ち「パイオニア」という言葉を入れている。イオンモールとパルコは自社
の事業領域・事業活動を物理的にではなく機能的に表現している。
ダイヤモンドシティ、イオンモール、パルコの3社が共に理念の中で特に1
12
番 大 事 に し て い るス テ ー ク ホ ル ダ ー は 、 顧 客 で あ る 。 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー は
お客様が来て、モノを購入してこそ 、その機能を発揮するため、まず何より顧
客第一主義でなければならないと言えよう。
他 の 2 店 と は 違 い 、 パ ル コ は理 念 の 中 で テ ナ ン ト の こ と も 顧 客 と 同 様 に 特 に
重 視 し て い る 。 デ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 に と っ て テ ナ ン ト の 成 功 ・ 成 長 が 、自 社 の
成 功 ・ 成 長 を も た ら す か ら で あ ろ う 。パ ル コ は 1977 年 、 社 内 お よ び 全 国 の パ
ル コ に 出 店 す る テ ナ ン ト 各 社に 向 け て フ ァ ッ シ ョ ン ビ ジ ネ ス 情 報 誌 と し て マ ー
ケ テ ィ ン グ 雑 誌 『 月 刊 ア ク ロ ス 』を 創 刊 し た 。こ れ が 2000 年 10 月 に ウ ェ ブ マ
ガ ジ ン 『 W E B ア ク ロ ス 』 と し て 創 刊 さ れ る。 テ ナ ン ト の 成 功 を 考 え て い る と
いう姿勢が見られると言える。また パルコではコンセプトを提案しそのコンセ
プト通りにテナントをリーシング 9できる力が強みとされている。
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ と イ オ ン モ ー ル で は 郊 外 型 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ーを 運 営
しているということで、ステークホルダーの中で地域社会を重視することは欠
かせないものとなっている。
「 郊 外 型 の 場 合 は 駅 ビ ル と 違 っ て 、周囲に色々な施
設が充実しているわけではないので、最寄り品も買い回り品も購入でき何でも
用が足せるように業種を増やし大型化する必要がある。場合によっては銀行や
郵便局、マンションといった施設が 周りに立地していき、ショッピングセンタ
ー を 中 心 に し た 街 づ く り が 進 ん で い く 」1 0 と 考 え ら れ 、シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー
が地域社会に与える影響は大きいのである。大規模小売店舗法のとき には目的
は中小小売業の事業確保とされていたが、大規模小売店舗立地法では生活環境
の 保 持 が 法 の 主 旨で あ る 。 そ の 中 で 交 通 や 騒 音 ・ ゴ ミ の 問 題 だ け で な く 、 地 域
の小売店舗と共存していくかというところも考えていかなければならないので
あろう。
追求する価値としては、ダイヤモンドシティでは「 地域社会の発展とお客様
の 生 活 文 化 の 向 上」、 イ オ ン モ ー ル は 「 環 境 保 全 な ら び に 社 会 貢 献 」「 地 域 社 会
の 生 活 と 文 化 の 向 上 な ら び に 商 業 の 発 展 」、 パ ル コ は 「 訪 れ る 人 々 を 楽 し ま せ 、
テナントを成功に導く」という顧客価値と「先見的、独創的、かつホスピタリ
ティあふれる」という業務価値を掲げている。
企 業 の 管 理 ・ 行 動 に 関 す る 理 念 は、 行 動 指 針 や 行 動 規 範 と し てど ん な 行 動 を
とるかが表されている。ダイヤモンドシティ行動規範では具体的な内容まで記
13
してある。イオンモールは文章が長いが内容は抽象的であ り、理念を解釈して
行 動 す る 必 要 が あ る 。 曖 昧 な 表 現 を し て い る こ とで 従 業 員 が 理 念 と 行 動 の 関 連
について考え、 主体的な理念への意味づけを行うことになるため、理念の新鮮
さ が 失 わ れ な い 1 1 こ と を ね ら っ て い る と 思 わ れ る 。パ ル コ は 端 的 な 表 現 で あ る
が、企業人としての行動指針は従業員が企業を構成する一員として行動するた
めの価値観になっている。また、理念を実践するための5つの活動を掲げて経
営理念の浸透に力を入れているとい える。
日 本 リ テ ー ル フ ァ ン ド 投 資 法 人 (h ttp://www.jrf -reit.com/sector/)よ り 引 用 。
有 限 会 社 ク オ ー ル エ イ ド (http://www.quolaid.com/index.htm)お よ び ま ち づ
く り ス テ ー シ ョ ン(http://www.udit.co.jp/www02.htm)を 参 照 し た 。
また、ここでは議論しないが、この類型だけでは全てのショッピングセンタ
ー を 分 け る こ と が で き な い 。駅 周 辺 に あ る 駅 ビ ル や 地 下 街 は 車 や 徒 歩 だ け で な
く 電 車 で 来 る 客 も お り 、商 圏 が 幅 広 い も の に な っ て し ま う と 考 え ら れ る 。その
他 に は 商 圏 で は な く 商 品 構 成や 顧 客 の 来 店 頻 度 な ど で 類 型 を 試 み て い る 例 も
ある。
3 こ の 項 を 書 く に あ た っ て 、株 式 会 社 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ H P
( http://www.diamondcity.co.jp/)、 ユ ニ ー ク 商 業 人 列 伝 鯛 洋 三 氏
( http://www.shogyo-shisetsu.jp/article/retsuden/retsuden066.html)、
お よ び ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ CSR レ ポ ー ト 2004 を 参 照 し た 。
4 団 塊 ジ ュ ニ ア と は 「 1970 年 代 前 半 に 生 ま れ た 、 団 塊 世 代 の 子 供 に 当 た る 世
代の総称」
( 株 式 会 社 マ ッ プ ス http://www.mapscom.co.jp/worddankaiJr.html
より引用)であり、この世代が世帯主となる家族を団塊ジュニアファミリーと
呼ぶ。
5 Levitt(1960) は “ Marketing Myopia ” の 中 で 企 業 視 点 か ら の 物 理 的 な 事 業
規 定 を「 近 視 眼 的 マ ー ケ テ ィ ン グ 」だ と し て 非 難 し 、 顧 客 志 向 で 機 能 的 な 事 業
規定をすべきだとした。
6 コンプライアンスとは「法令遵守」のことで、企業などが法令や規則をよく
守 ろ う と す る こ とで あ る ( 独 立 行 政 法 人 国 立 国 語 研 究 所 H P
h ttp://www.kokken.go.jp/public/gairaigo/Teian3/Words/compliance.gen.ht
ml よ り 引 用 )。
7 こ の 項 を 書 く に あ た っ て 、 イ オ ン モ ー ル 株 式 会 社 HP
( http://www.aeon-mall.net/ )、イ オ ン モ ー ル 2005 サ ス ナ ビ リ テ ィ レ ポ ー ト 、
イ オ ン モ ー ル 2004 笑 顔 の 街 づ く り レ ポ ー ト 、 お よ び bp special リ ア ル タ イ
ム・リテール「特集:スペシャルリポートでの イオン浜松志都呂ショッピング
セ ン タ ー ゼ ネ ラ ル マ ネ ー ジ ャ ー 鈴 木 真 琴 氏 へ の イ ン タ ビ ュ ー」
( http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/special/04/)を 参 照 し た 。
8 こ の 項 を 書 く に あ た っ て 、 株 式 会 社 パ ル コ HP を 参 照 し た 。
( http://www.parco.co.jp/)
9 リーシングとは「ショッピングセンターに入店するテナントとの交渉から契
約 ま で を 行 う 」 こ と ( 株 式 会 社 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ 入 社 案 内 よ り 引 用 )。
10 リアルタイム・リテール「インタビュー」日本ショッピングセンター協会
会長岩崎雄一氏へのインタビューより要約して引用した。
( http://prem ium.nikkeibp.co.jp/retail/interview/08/index.shtml)
1
2
14
11
北 居 ( 2001) pp. 57‐ 58 参 照 。
15
第3章
ショッピングセンターディベロッパー事業を通じての
経営理念の成果に関する調査
企業の主な目的は、事業活動を通じて経済的利益を生むことである。ショッ
ピ ン グ セ ン タ ー デ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 に お い て は 、 シ ョ ッ ピ ングセンター の開
発 ・ 運 営 を 通 じ て、 テ ナ ン トか ら よ り よ い 製 品 ・ サ ー ビ ス を 顧 客 に 提 供 し 、 利
益を生み、株主に還元することが一番の目的だと考えられる。
ここで対象を、郊外型ショッピングセンターを手がけるダイヤモンドシティ
と都市型商業施設を運営するパルコの 2 社に絞り 、
( 1) 財 務 デ ー タ に よ る 分 析 ・ 比 較
( 2) ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ プ ラ ウ ( 大 阪 府 堺 市 ) と 大 津 パ ル コ ( 滋 賀 県 大 津
市 ) お よ び 心 斎 橋 パ ル コ ( 大 阪 府 大 阪 市 中 央 区)の 店舗見学による実
現度の調査
の 2 つの方法での調査結果を示し、ショッピングセンターディベロッパー事業
を通じて経営理念が成果をうんでいるのかを検 証する。
理 念 の 成 果 と い う の は( 1)の よ う な 定 量 的 な デ ー タ だ け で は 測 定 で き な い も
のである。顧客満足は数字では表せない成果なのである。そこで本論文ではオ
リ ジ ナ ル の デ ー タで あ る ( 2 ) の 定 性 的 な デ ー タ も 利 用 し て 成 果 を 測 定 し た 。
第1節
財務データによる分析・比較
財務データによって分析するときの最も重要な視点は収益性である(桜井,
2004,p.232)。 今 回 用 い る 指 標 の ROA と R O E は 次 の よ う に 定 義 さ れ る 。ROA
( R e t u r n O n A s s e t) は 企 業 に 投 下 さ れ た 総 資 産 ( = 自 己 資本 と 他 人 資 本 の 合
計である総資本)が利益獲得のためにどれほど効率的に利用されているのかを
見 る 総 合 的 な 収 益 性 指 標 で あ る 総 資 産 経 常 利 益 率 と し 、 R O E ( return on
equity ) は 株 主 の 出 資 分 で あ る 株 主 資 本 ( ま た は 自 己 資 本 と い う ) を 元 手 と し
て 1 年間でどれだけの利益をあげたかを見るための経営効率を測定する指標で
ある株主資本当期純利益率とする。
表 3‐ 1 は パ ル コ の 過 去 5 年 間 ( 2000∼ 2004 年 度 ) の 売 上 高 ・ 営 業 利 益 ・ 経
16
常利益・当期純利益を示したものである 1。
表 3‐ 1
パルコの過去 5 年間の業績(百万円)
2000
2001
2002
2003
2004
307,482
310,624
297,614
281,478
257,625
営業利益
7,587
8,325
8,348
8,894
8,441
経常利益
6,205
7,082
7,328
7,792
8,079
当期純利益
683
2,454
2,373
2,791
1,742
ROA( % )
2.5
3.0
3.2
3.7
4.1
ROE( % )
1.5
5.0
4.4
5.1
3.0
年度
売上高
出 所 : パ ル コ 会 社 案 内 2005 よ り 著 者 作 成 。
パ ル コ で は 2000 年 3 月 に 就 任 し た 伊 東 勇 社 長 が 2001 年 4 月 よ り 経 営 構 造 改
革 を 実 施 し 、“ 第 二 次 創 業 ” を 行 う と い う 気 持 ち で 経 営 理 念 に 基 づ い た意 識 改
革 ・ 業 務 改 革を 強 く 進 め て き た 。1997 年 度 か ら 4 期 連 続 で 売 上 が 前 期 を 割 っ て
し ま っ て い た が 、改 革 着 手 以 来 、 売 上 高 は 伸 び て い な い が 、3 期 連 続 し て 前 期
を 上 回 る 利 益 を あ げ 、2004 年 2 月 期 に は 過 去 最 高 益 を 達 成 し た 。こ れ は 経 営 理
念の実践が業績に結びついていると言えるだろう。
2004 年 度 に は 売 上 も 利 益 も 落 ち て お り 、郊 外 型 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー の 影 響
が 1 つの要因であることは避けられない。中心市街地の空洞化や、ダイヤモン
ドシティあるいはイオンモール等の広域商圏を想定した郊外型ショッピングセ
ンターのオープンが宇都宮や広島、 名古屋、岐阜、大津のパルコへ及ぼす影響
は 大 き か っ た と 考 え ら れ る 。2005 年 7 月 の ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ バ リ ュ ー の リ
ニ ュ ー ア ル と 10 月 の ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ ク レ ア ( 熊 本 県上 益 城 郡 嘉 島 町 )
のオープンが熊本パルコに及ぼした影響も大きいと見られる。しかし今年度の
パ ル コ の 全 店 合 計 の 月 次 売 上 は 、 2005 年 12 月 21 日 現 在 で 3 ∼ 11 月 の 全 て の
月 で 前 年 比 100% を 超 え て い る 。
次 に 、表 3‐ 2 は ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ の 過 去 5 年 間 の 経 営 成 績 を 示 し た も の で
あ る 。 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は 2004 年 に ハ ナ 、 ソ レ イ ユ 、 ア ル ル ( 奈 良 県 橿 原
市 )、 ル ク ル 、 キ リ オ ( 愛 知 県 一 宮 市 )、 プ ラ ウ の 6 つ の シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー
17
を オ ー プ ン さ せ た 。 そ の た め 2004 年 度 の 数 値 が 大 幅 に 上 昇 し て い る 。
表 3‐ 2
ダイヤモンドシティの過去 5 年間の業績(百万円)
2000
2001
2002
2003
2004
16,532
18,667
20,429
18,854
39,305
営業利益
2,622
4,007
4,630
4,008
10,134
経常利益
2,011
2,697
3,447
3,513
10,003
当期純利益
799
1,034
1,511
2,343
4,754
ROA( % )
2.0
2.8
3.5
3.4
9.4
ROE( % )
4.7
5.9
7.6
10.3
16.4
年度
売上高
出 所 : ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ア ニ ュ ア ル レ ポ ー ト 2005
お よ び ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ H P の IR・ 決 算 情 報 よ り 著 者 作 成 。
ダイヤモンドシティでは新規ショッピングセンターを開店させるだけ でなく、
既存店舗のリニューアルも図っているが、営業収益が上がらない老朽化した店
舗 の 閉 鎖 も 行 っ て い る 。 2004 年 10 月 に は 1970 年 に 第 一 号 店 と し て オ ー プ ン
し た 東 住 吉 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー ( 大 阪 府 大 阪 市 平 野 区 ) 2が閉 店 し た 。ダイ
ヤモンドシティ・プラウが 東住吉ショッピングセンターの商圏を引き継ぐ店舗
とされ、また大規模店舗のほうが収益が上がるため閉店に至ったのだと考えら
れ る 。 今 年 度 は 2005 年 6 月 に 名 西 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー ( 愛 知 県 名 古 屋 市 )
が閉店となった。
こ こ か ら は 2 社 の ROA と ROE に つ い て 見 て い く 。 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は
2003 年 度 ま で 開 発 に 力 を 入 れ て き た 店 舗 を 2004 年 か ら 一 気 に オ ー プ ン さ せ 、
そ の 成 果 が R O A と ROE に 顕 著 に 表 れ て い る 。株 主 資 本 を 有 効 に 活 用 し 高 い 利
益 を 上 げ て 、 株 主 に 貢 献 し てい る 。
パ ル コ は 既 存 店 舗 の 改 装 や 新 館 オ ー プ ン に 力 を 入 れ 、毎 年 春 と 秋 に 7∼ 9 店 舗
の改装を行い中心市街地の空洞化や郊外型ショッピングセンターに対抗して営
業 の 活 性 化 に 努 め て い る 。経 営 構 造 改 革 が 始 ま っ た 2001 年 度 は ROE が 特 に 前
年 か ら 大 幅 に 数 値 が 上 が っ て い る 。 パ ル コ は 2005 年 度 か ら 「 中 期 経 営 5 ヵ 年
計 画 」 を 掲 げ 、 そ の 中 の 経 営 目 標 で ROE8.2% と い う 目 標 を 掲 げ て い る 。 ROE
18
という指標が企業にとって目標となっているのは、経営理念が業績という成果
に繋がったときに指標となるからであろう。
パルコは経営理念に基づいた改革を行ったときから業績が上がっており、ダ
イヤモンドシティは 「ショッピングセンターの創造に挑戦し続け」 3た結果、
2004 年 の 6 店 舗 オ ー プ ン の 年 に 好 業 績 を あ げ た 。し た が っ て 経 営 理 念 の 実 践 は
定量的な成果につながっているといえる。
第2節
店舗見学による実現度の調査
シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ーデ ィ ベ ロ ッ パ ー 企 業 は ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 中 で も 顧 客
第 一 主 義 で あ る こ と は 前 章 4 項 で 述 べ た 。顧 客 第 一 主 義 が 行 動 に 表 れ て い る の
が よ く 表 れ て い る の は 、シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー そ の も ので あ ろ う 。そ こ で 2004
年 10 月 に オ ー プ ン し た 大 阪 府 堺 市 北 花 田 に あ る ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ ・ プ ラ ウ
(以下プラウ)と、近畿圏にある パルコの郊外型店舗の 1 つである大 津パルコ
および都市型店舗である心斎橋パルコの3店舗の店舗見学を行い、それぞれの
店舗で理念がどのような形で表されていたかを調査した。
郊 外 と い っ て も 大 津 と 北 花 田 と で は タ イ プ が少 し 違 う 。 北 花 田 は商 圏 人 口
400 万 人 を 有 す る 都 心 ( 阿 倍 野 ・ 心 斎 橋 ) の 直 下 型 の 郊 外 と 考 え ら れ る 。 大 津
は滋賀県の県庁所在地で地方都市とも考えられ るが、広く大阪や京都の郊外と
捉えられる。
3 店 舗 の 施 設 概 要 は 表 3‐ 3 の 通 り で あ る 。心 斎 橋 パ ル コ で は 駐 車 場 は 設 け ら
れ て お ら ず 、 大 半 が 公 共 交 通 機 関 で 来 る 顧 客 だ と 考 え ら れ る 。 プ ラ ウ は地 下 鉄
御 堂 筋 線 梅 田 駅 か ら 約 30 分 、 天 王 寺 駅 か ら 約 15 分 の 北 花 田 駅 を 降 り て す ぐ の
と こ ろ に あ る 。 郊 外 RSC で あ り 駐 車 ス ペ ー ス が 非 常 に 広 い 。 大 津 パ ル コ は テ ィ
ー ン ズ 、 ヤ ン グ の 他 、30 代 と そ の 家 族 を タ ー ゲ ッ ト と し 、 ま た 近 隣 の 京 都 な ど
も 商 圏 だ と 考 え て い る 。 電 車 で 行 く と JR 京 都 駅 か ら 約 11 分 の と こ ろ に あ る J
R 膳 所 駅 か ら 徒 歩 10 分 で あ る 。 JR 大 阪 駅 か ら 京 都 駅 ま で 約 30 分 な の で 、 大
阪駅から大津パルコまで約 1 時間で行けてしまう。また逆に、大津から大阪ま
で 1 時間もあれば出られるため、滋賀県の人たちは大阪まで買い物に出てくる
19
ことも考えられる。店舗面積に関しては、大津パルコは都市型の心斎橋パルコ
に比べると広いが、テナントがひしめきあっている印象を受ける。プラウは大
津パルコの 2 倍以上の店舗面積となっており、テナント1店舗の広さがゆった
り広い。ダイヤモンドシティは横に広いのに対し、パルコは縦に長い。
心斎橋筋商店街には多数の路面店や百貨店、ファッションビルが存在し、主
に フ ァ ッ シ ョ ン の 店 舗 が 目 立 つ 。そ の 中 で 心 斎 橋 パ ル コ は 2001 年 11 月 に 、パ
ルコにとって初めて衣料品以外に特化した「雑貨大型店集積の小型ビル」とし
てリニューアルオープンした。それ以降も数回改装が行われ、昨年もロフトの
1フロア増床し地下店舗が新しくなった。
表 3‐ 3
3 店舗の施設概要
名称
所在地
出店店舗 数
店舗面積(㎡)
駐車台数
階
オープン
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ
ィ・プラウ
大阪府堺市東浅香山
町
ジャスコ、堺北花田
阪 急 、 専 門 店 160 店
約 55,000
約 2,800 台
地 上 4 階 ( 1∼ 6 階 の
立体駐車場)
2004 年 10 月
大津パルコ
心斎橋パルコ
滋賀県大津市打出
浜
テ ナ ン ト 約 120 店 、
映 画 館 、 FM ス タ ジ
オ
27,793
306 台
地上1∼ 8 階
サテライト
1996 年 11 月
大阪府大阪市中
央区心斎橋筋
4 店 、ク ラ ブ ク ア
トロ 4
4,703
なし
地下 1 階
地上 9 階
1991 年 5 月
出所:ダイヤモンドシティ・プラウ HP
( http://prou.diamondcity.co.jp/index.html)、
JAPAN SHOP On Line( http://www.ssss.or.jp/new/shop/parco.htm)、
大規模小売店舗立地法による届出(心斎橋パルコ)
( http://www.osaka.cci.or.jp/Oshirase_Link/Sonota/todokede/daiten3
3.html) よ り 著 者 作 成。
店舗見学によって調査した経営理念の成果に関する 項目は以下の通りである
( 調 査 結 果 は 2005 年 12 月 現 在 )。
①ハード面…入口、トイレ、エレベーター、エスカレーター、床等につ
いて。
②ソフト面…テナント、フロアのコンセプト等について。
20
③サービス…インフォメーション、他のショッピングセンターとは違う
+αのサービスはあるか。
第1項
ハード面についての調査
表 3‐ 4 は ハ ー ド 面 に 関 す る 3 店 舗 の 調 査 結 果 を 示 し た も の で あ る 。
表 3‐ 4
項目
入口
ハード面についての調査結果
プラウ
段差なし 。
店内案内のインタ
ーフォン設置 。
車 椅 子対 応ト イ レ
全トイレにあり
(多 目 的 ベ ッ ド付
き 、オ ス ト メ イ ト 5
対 応 )。
ベビーシート
多目的トイレ(各
階)
・ベビールーム
( 2 階 に 2 ヶ 所 )に
あり。
こども用トイレ
あ り (2 階 に 2 ヶ
所 )。
エレベーター
全エレベーター車
椅子対応。
エスカレーター
2 人 乗 り 。乗 り 口 で
アナウンス。
床(カーペット?) ○
喫煙
分煙(喫煙室が 9
ヶ 所 )。
一部レストランで
分煙 。
特徴
・4 層 吹 き 抜 け の モ
ール。モールの道
幅 は 広 い 。長 さ 2 5 0
メートルであり行
きたい店にすぐ行
けないし歩き疲れ
そうである。
・ところどころに
ベンチが設置。各
フロアのモールの
真ん中あたりにカ
フェのテナントが
入っている。
大津パルコ
心斎橋パルコ
スロープあり 。
段差なし 。
あ り ( 2 ・ 6 階 )。
あ り ( 4 階 )。
あ り ( 3 階 )。 男 性
もオムツ替えでき
る。
車椅子対応トイレ
にベビーシート付
き。
あ り ( 3 階 )。
なし。
車 椅 子 対 応 ( 2∼ 3
機 に 1 機 )。
1 人乗りと 2 人 乗
り。
×
禁煙。一部レスト
ランで分煙。
車椅子対応( 1 機)
2 階に停まらない。
2 人乗り。
・ 3 階 FAMILY &
KIDS の フ ロ ア の
天井が子ども向け
のデザインになっ
て い る と い う 工
夫。
21
×
禁煙(クラブクア
トロも禁煙、スタ
ーバックステラス
席 の み 喫 煙 可 )。
・エレベーターが 2
階に停まらないた
め、エスカレータ
ー横に 「車椅子や
ベビーカーで 2 階
へお越しのお客様
は従業 員までお気
軽にお申し付けく
ださい」と書かれ
たステッカーが貼
られている。
障害を持った人、高齢 者、妊婦 の人に対するバリアフリー 6だけでなく、誰
もが利用しやすいユニバーサルデザイン7を推進しているのはダイヤモンドシ
ティであった。ユニバーサルデザインはバリアフリーよりも比較的新しい考え
方であり、この考え方に基づいた建物づくりがされているというのは、人々に
対して新しい文化を普及させることにも繋がり、
「 お 客 様 の 生 活 文 化 の 向 上 」に
役 立 つ こ と で あ る。
だからと言ってパルコが特別利用しにくい店舗だというわけではない。
「訪れ
る人々を楽しませ」るための天井の工夫や、
「ホスピタリティ」が感じられるエ
スカレーター横のステッカーも目に留まる。車椅子対応トイレやベビールーム
も備わっている。
しかしバリアフリーは今や当たり前の時代であり、 その設備が整っているだ
け で は 顧 客 志 向 で あ る と は い え な い 。ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は そ れ 以 上 に 配 慮 し
ている部分が多く、設備が整い利用しやすくなっているところが顧客満足に繋
がると考えられる。
第2項
ソフト面についての調査
次 に 、 表 3‐ 5 に 示 し た の は テ ナ ン ト の 特 徴 や フ ロ ア の コ ン セ プ ト 等 の ソ フ
ト面に関する調査結果で あ る。
プラウに関西初出店・大阪初出店のテナントや ダイヤモンドシティが運営す
るショッピングセンターでは初出店というテナントが多いのは、新しい文化を
取り入れ顧客に提案しているのであろう。また、大規模のフードコートでは家
族連れや友達と来たときに、全員が食べたいものを別々の店で買いながらも一
緒 に 食 べ る こ と が で き 、 そ れ も 19 も の 店 舗 か ら 選 べ る 。 こ れ は 顧 客 へ の 新 し
いライフスタイルの提案だと考えられる。
大津パルコのテナントを見てみると、ダイヤモンドシティの中にも入ってい
る 店 舗 が 多 い と 感 じ る の は 、パ ル コ の 中 で も 郊 外 型 で あ る ゆ え の こ と で あ ろ う 。
先述したが公共交通機関を使えば大津からは1時間もあれば大阪の都市部に出
られる。車を使えば京都にも大きな駐車場を持つダイヤモンドシティ・ハナへ
22
も す ぐ 行 け る 。 大 津 パ ル コ が 他 の シ ョッ ピ ン グ セ ン タ ー と 同 質 的 な も の に な っ
てしまうならば、顧客はそちらへ流れるかもしれない。
3 店舗全てに入っている唯一のテナントはスターバックスコーヒーである。
しかし同じテナントでも立地する環境に合わせ、営業時間などにおいてそれぞ
れで違う戦略がとられている。
表 3‐ 5
ソ フ ト 面 につ い て の 調 査 結 果
項目
プラウ
大津パルコ
心斎橋パルコ
テナントの特徴
・1店舗あたり面
積が広い。
・関西・大阪初出
店が多い。
・地 元 店 が 少 な い 。
・大型テナントばか
りである。
最寄り品、買い回
り品の品揃え 8
どちらも揃う 。
・店舗どうしの間
隔が狭い。
・オープン当時か
らはテナントがが
らり と変わってい
るようである。
主に買い回り品。
食料品なし。
席数少ない。テナ
ント 9 店 舗 。
・性別や年齢 、ア
イ テ ムに よ っ て フ
ロアを分けてい
る。
フードコート
フロアのコンセプ
ト
スター
バックス
コーヒー
階
営業
時間
特徴
800 席 。 テ ナ ン ト
19 店 舗 。
・基本的に 性別 や
年齢だけで売場を
分 け て い ない 。
1 階 に 2 ヶ 所( 入 口
付近のテラスと本
店 舗 )。
専門店街と同じく
10:00∼ 22:00 。
・メイン入口付近
にサテライトとし
て小さいテラス席
があり、1階のモ
ール中心あたりに
本店舗が存在。
サテライト 1・2
階。
平 日 8 : 3 0∼ 22: 00
( 土 日 祝 9: 00 ∼ )
・パ ル コ 自 体 は 10
時オープンだが、
パルコ内の映画館
で朝 9 時台から上
映があるため一足
早くオープンして
いると考えられ
る。
主に買い回り品。
食料品なし。
なし。
・クラブクアトロの
1つ下の階に楽器
店。
・ア イ テ ム 別 の フ ロ
ア。
1・ 2 階 と 外 の テ ラ
ス席。
平 日 7:30 ∼ 翌 1 : 0 0
( 土 日 祝 8:00 ∼ )
・駅 か ら す ぐ の 目 に
付きやすい絶好な
立地のため、席数が
多い。
・心 斎 橋 が オ フ ィ ス
街だから朝早く、ま
た繁華街だから夜
遅くまで営業して
いると考えられる。
どんなテナントが入っているかというだけでなくサービス内容によって特性
を出すために、テナントとの良好な関係を築くことにより 可能にし、顧客満足
を与えている。この点でステークホルダーに貢献し、経営理念を実現している
と言えよう。
23
第3項
サービス面についての調 査
表 3‐ 6 は サ ー ビ ス 面 に 関 す る 調 査 結 果 を 示 し た も の で あ る 。プラウでは、パ
ルコではやっていない無料コインロッカーのサービスがあった。プラウのほう
が店舗の規模が大きく、食料品も取り扱っているからであろう。ロッカーは過
半数が使用されていて、顧客にとって便利なものとなっていると言える。
表 3‐ 6
サービス面についての調査結果
項目
プラウ
大津パルコ
心斎橋パルコ
無料のコインロッ
カー
お客様からのご意
見カード
インフォメーショ
ン
あり(冷蔵ロッカ
ー も 含 む )。
あ り (「 お 客 様 の
声 」 カ ー ド )。
・ス タ ッ フ 2 ∼ 3 人
常駐。
・ファッションの
相談も受付。
なし。
なし。
なし。
なし。
会員 カ ー ド
・プ ラ ウ専 門 店 街
で、利用金額に応
じてポイント→一
定のポイントがた
ま っ た ら 抽 選( ス
ロ ッ ト ゲ ー ム )、 買
い物券が当たる。
・駐車場料金のサ
ー ビ ス。
・クレジット機能
なし。全店共通で
はない。
・テナント主催
・行政主催
・地域の団体 協賛
・地元の学生参加
型のものがある。
イベント
・スタッフ 2 人。
・チケットぴあの
カウンターと一緒
になっている 。
・カウンターは な
し。
・ロフトのフロア
ガイドにアイテム
別のインデックス
が掲載。
・全 店 共 通 で 使 え る ク レ ジ ッ ト 機 能 の つ
い た カ ー ド ( P E C カ ー ド )。
・ポイントがたまる。
・駐 車 場 料 金 や 関 連 施 設 等 の 優 待 が 受 け
ら れ る。
・ PARCO で の 年 間 20 万 円 以 上 の 利 用
で、 翌 年 度 1 年間「PEC ノ ン ス ト ッ プ
メ ン バ ー ズ 」に な れ る ( 1 年 間 い つ で も
5% OFF 、 食 事 優 待 、 各 店 舗 で の 独 自 優
待 等 )。
・催事場でのバー
ゲ ン ( 4 階 )。
・三角広場・円形
広場でイベントが
たまに行われる。
・シーズンものや
バーゲンの特設コ
ー ナ ーが 1 階 に 設
けられている 。
プラウと大津パルコにはイベントのためのスペースがあり、地域との接点と
なる目玉のイベントが行われている。特に大津パルコは屋外の広場となってい
るため、フリーマーケットや商工会議所主催のイベントなど、多目的に利用さ
24
れている。
プラウの「お客様の声」カードは、プラウ側の回答を添えて店舗に貼り出し
てある。 過 去 1 ヶ月以内に投函されたカード 17 枚の内容を分類すると、お礼
が 1 件、要望が 7 件、苦情が 9 件であった。お礼の内容は、店内でのイベント
が楽しかったという内容であった。要望は入れてほしいテナントや商品の品揃
え に つ い て 等 で あ っ た 。苦 情 の う ち 1 件 は 駐 車 場 で の 他 の 客 の マ ナ ー に つ い て 、
1件は従業員のミスについて、3件は営業時間について、 4 件がテナント従業
員に対するクレームであった。営業時間については、プラウの店舗で働く従業
員が帰るときに大声で騒いでいたり駅前にたまっていたりして近所迷惑だとい
う 内 容 で あ っ た 。 テ ナ ン ト 従 業 員 に 対 す る ク レ ー ム は 「 愛 想が 悪 い 」 と い う の
が主な内容であった。テナント従 業 員の教育も ダイヤモンドシティの テナント
管理の一環であるが、実際 は従業員の末端のアルバイトたちまで行き届いてい
ない現状がある。
第4項
店舗見学のまとめ
ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ は 「 お 客 様 の 生 活 文 化 の 向 上 」という価値を 、ハード面・
ソフト面と今までのショッピングセンターになかった+αのサービスによって
魅力的なショッピングセンターを創り上げることで追求し、理念を達成してい
ると言える。更に顧客満足を与えるためには、テナントともっと距離を縮め、
末端の接客に関する教育にも力を入れるべきである。
パルコが自社をファッションビルという枠組みだけにあてはめずに心斎橋パ
ルコのような業態を展開したのは成功だと考えられる。4 軒の大型テナントの
ブランド力に頼っているような面もあるが、立地の良さ・集客力などを考える
とテナントとパルコのイコールパー トナー主義が見えてくる。
パ ル コ が こ れ か ら 一 気 に 増 え る で あ ろ う 郊 外 の RSC に 対 抗 す る に は 、既 存 店
舗を今以上に「ホスピタリティあふれる」空間にしていかなければならないで
あろう。しかしハード面においては既存店舗だと改装にも限界があり、新規郊
外 RSC よ り も 確 実 に 劣 る 。ソ フ ト 面 で パ ル コ の 強 み で あ る テ ナ ン ト リ ー シ ン グ
力を活かし、よりよいパートナーであるテナントを見つけることや、+αのサ
25
ービスで「訪れる人々を楽しませ」 ることができるように 、もっと顧客志向で
い な け れ ば な ら な い 。 パ ル コ に し か な い 、 パ ル コ だ か ら 入 っ て い る 「 先見 的 、
独創的」な店舗づくりをもっと売りにするのも一つの案である。
1
2
3
4
5
6
7
8
パルコ会社案内 2005 p.3「連結財務ハイライト」より引用。
東 住 吉 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー の 跡 地 に は 、2005 年 12 月 に イ オ ン 株 式 会 社 が
イオン喜連瓜破ショッピングセンターをオープンさせた。これはイオングル
ープのスクラップ&ビルド戦略(老朽化した店を潰し、新規店舗を建てる)
の一環である。
ダイヤモンドシティの経営理念より引用。
クラブクアトロは渋谷パルコ集積地や名古屋・心斎橋・広島のパルコ各店に
あり、パルコが運営するライブハウス。
人 工 肛 門 保 有 者 、 人 工 膀 胱 保 有 者 の こ と ( 社 団 法 人 日 本 オ ス ト ミ ー 協 会 HP
を 参 照 http://www.joa-net.org/)。
バ リ ア フ リ ー と は「 こ の 社 会 に は 高 齢 者 や 障 害 者 に と っ て の バ リ ア ー が 存 在
するから、それを取り除こうという考え方」のことである(埼玉県ユニバー
サルデザイン HP より引用
http://www.pref.saitama.lg.jp/A02/BP00/universal/ud/about_ud/barifree.
htm)。
ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン は「 最 初 か ら す べ て の 人 々 に 対 し 、 す べ て の 人 々 を 思
いデザインすることによって、結果的に、バリアーが最初から存在しないモ
ノ を 作 り 上 げ る 」 考 え 方 の こ と で あ る ( 同 上 H P よ り 引 用 )。
最 寄 り 品 と は 「消 費 者 が 商 品 を 購 入 す る 際 、 近 く の 小 売 店 で 購 入 す る 品 物 。
主に食料品・日用雑貨など 」のことであり、買い回り品とは「消費者がいく
つかの商店を回り、価格・品質などを比較検討した上で購入する品物。主に
耐 久 消 費 財 ・ 趣 味 品 な ど」 の こ と で あ る ( Yahoo!辞 書 http://dic.yahoo.co.jp/
よ り 引 用 )。
26
第4章
ダイヤモンドシティ・プラウ周辺地域商店会への聞き取
り調査
前章ではショッピングセンターという事業を通じての経営理念の成果を検証
し た 。こ の 章 で は 、 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ が 理 念 に 掲 げ て い る 「 地 域 社 会 の 発 展 」
への貢献がどれだけ実現されているかを、ダイヤモンドシティ・プラウの周辺
地 域 商 店 会 へ の 聞 き 取 り 調 査 に よ っ て明 ら か に す る 。
ダイヤモンドシティ・プラウの周辺地域1には3つの商店会が存在する。ま
ず 北 花 田 駅 の 東 側 に あ る 北 花 田 地 区 商 店 街 連 合 会 と 、 ダ イ ヤモ ン ド シ テ ィ ・ プ
ラウの南西に位置する奥本町商店会、それより更に西には東浅香山商店会であ
る。その 3 つの商店会の店舗を任意で抽出し、7 店舗に対して聞き取り調査を
行 っ た 。 調 査 日 時 は 2005 年 12 月 26 日 月 曜 日 の 15∼ 17 時 、 店 舗 の 業 種 は 飲
食 店 2、 惣 菜 店 1、 電 器 店 1、 衣 料 品 店 1、 書 店 1、 人 形 店 1 で あ る 。 回 答 者 は
経 営 者 が 3、 店 長 が 1、 従 業 員 が 1、 未 回 答 が 2 で あ る 。 1 店 舗 あ た り の 調 査 時
間 は 約 10∼ 15 分 で あ る 。
質問項目は計7項目とした。その項目と回答は以下の通りである。
( 1) プ ラ ウ が で き て か ら 、 店 に プ ラ ス の 影 響 、 マ イ ナ ス の 影 響 は あ っ た か 。
プ ラ ス の 影 響… 1 店 、 マ イ ナ ス の 影 響 … 5 店 、 特 に な い … 1 店
プラスの影響があったと答えた店は、ジャスコの従業員用のお弁当を
納品しているお店であった。マイナスの影響があったと答えた店の うち
4店舗はプラウ内に同じ業種の店があるため、
「 お 客 さ ん が 減 っ た 」、
「売
上が落ちた 」と答えた。残りの1店は「土日の車の渋滞のために客足が
遠のいた」と答えた。
( 2) プ ラ ウ が で き て 、 客 層 、 顧 客 の 購 買 行 動 に 変 化 が あ っ た か
ある…4 店、ない…3店
「女性・若い人が減った」と答える店があっ た。今まではプラウの西
側の北花田町の人たちが自転車に乗って東浅香山町・奥本町にある市
場・スーパーに行 き、その途中にある店舗に寄っていたが、プラウに流
27
れてしまっ た た め 奥本町商 店 会 の 店 舗の 前 の 人 通 り が 急 に 少 な く な っ た 、
商店街前のバス停で待つ人もいなくなったとい う。
な い と 答 え た 店 舗 は 「 も と も と 小 さ い 店 だ か ら 常 連 客 が 多 い 」、「 お 客
さんとの接点が強い」からだという。
( 3) そ れ に 対 し て 、 お 店 の 経 営 戦 略 、 経 営 方 針 、 品 揃 え 、 営 業 時 間 、 サ ー ビ
スを変更したか。
した…1 店
し て い な い …5 店
する予定…1 店
変 更 し た と い う衣 料 品 店 は 、 営 業 時 間 の 短 縮 と 若 者 対 象 の プ ラ ウ に 対
抗 し て わ ざ と お ば さ ん く さ い 商 品 や L、LL 寸 の 品 揃 え を 増 や し た と い う 。
また、する予定の書店は、棚割りを変えるとのことであった。
していないと答えた中には、
「 す る お 金 や元 気 が な い 」 と 答 え た 店 舗 が
あった。実 際 、 聞 き 取 り 調 査 に 行 っ た 店 の 経 営 者 の 半数 以 上は 年 配 の 方
で 、 3∼ 40 年 ま た は そ れ 以 上 続 い て い る 店 で あり 、 プ ラ ウ に 対 抗 す る だ
けのエネルギーを持ち合わせていないようである。
( 4) そ の 戦 略 の 変 化 は 成 果 を 上 げ た か 。
( 3) で 答 え た 衣 料 品 店 だ け に 質 問 す る と 、上 が っ て は い な い よ う で あ っ
た。
( 5) プ ラ ウ が で き て 街 に 変 化 が あ っ た か 。
ある…5 店、ない…2 店
プラウのオープンが直接的な要因であるかはわからないが、北花田駅
の 西 側 は 昔 は 一 帯 が 田 ん ぼ だ っ た そ う で 、こ こ 10 年 ほ ど で 大 き く 変 わ っ
た と い う 。プ ラ ウ に 来 る お 客 さ ん が い る た め「 交 差 点 周 辺 は 人 が 増 え た 」
という話も聞いた。
奥本町商店会のとある店舗の経営者の話では、
「以前はなんやかんや言
っ て も 商 店 街 は に ぎ わ っ て い た が 、今 は ク リ ス マ ス や 正 月 の 飾 り く ら い 」
で 、 商 店 街 と し て の 機 能 を 失 っ て し まっ た よ う で あ る 。
28
( 6) 今 後 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ に 期 待 す る こ と は 何 か 。
土日の交通渋滞の問題を解決してほしいという要望が 2 件あった。ま
た「価格を安くするだけではダメ、サービスが大事」という回答が 1 件
あったのだが、こ のような サービス によって地域店は量販店との差別化
をはかっているとも言えるため、期待することとは少しズ レているかも
しれない。それ以外はないという回答であった。
( 7) そ の 他
・は じ め は 地 域 店 が テ ナ ン ト と し て プ ラ ウ に 入 る 予 定 だ っ た と い う 。 し か
し プ ラ ウ の タ ー ゲ ッ ト が 若 者 で あ る こ と や 、1 テ ナ ン ト の 店 舗 面 積 が 広
く賃料が高くなるため、入店は実現しなかったという。
・ ジ ャ ス コ の 「 先 着 ○ 名 様 限 り 」 と い う 広 告 を 見 て 、電 器 店 に 常 連 さ ん か
ら 電 話 が か か っ て き た と い う 。そ の 広 告 の 前 日 に 電 器 店 で 買 っ た の と 同
じ 商 品 が 7,000 円 も 安 く 販 売 さ れ て い た か ら で あ る 。結 局 メ ー カ ー と の
話 し 合 い で お 客 さ ん に 何 千 円 か 返 金 す る こ と に し た そ う だ 。「 量 販 店 の
広 告 を 見 て 安 い と 思 う け ど 、い つ も の な じ み の 電 器 店 で 買 い た い と い う
お 客 さ ん に 心 を ひ っ つ け た 親 切 な 商 売を し た い 」と 、電 器 屋 さ ん はお っ
しゃっていた。
周辺地域商店会全体としては、マイナスの影響を受けていた。おそらく地域
の人々はオープン後どころかオープン前、プラウの開発が始まったときから影
響を受けていると思われる。
プ ラ ウ の よ う な RSC は 買 い 回 り 品 も 最 寄 り 品 も 揃 う し 、今 ま で な ら 商 店 街 全
体、街全体が担っていた機能をほとんど全て盛り込んでいるため、プラウ内に
同じ業種の店がある地域店は衰退し商店街の機能を失ってしまっている。ダイ
ヤモンドシティはこのような地域の現状と向き合うことをしなければ、地域社
会貢献は達成できないであろう。
1
資料 1 のダイヤモンドシティ・プラウの周辺図を参照。
29
第5章
調査結果から見るショッピングセンターディベロッパ
ー企業の経営理念と成果 の関係
企業は事業活動を通じて利益をあげることだけではなく、ステークホルダー
と良好な関係を築きあげて長期的に存続し発展していくこと、つまり自社の社
会的な存在意義を経営理念に示している。
各ショッピングセンターディベロッパー企業は、それぞれ個性のある理念を
示し、実践している。ダイヤモンドシティは「商業専業ディベロッパーのパイ
オ ニ ア 」 と し て 、ハ ー ド ・ ソ フ ト 面 は も ち ろ ん 、 今 ま で に な い サ ー ビ ス の 提 供
により、ショッピングセンターの創造に挑戦し続けている。パルコは リーシン
グ力を活かして「訪れる人々を楽しませ」るような 店舗創りをし、
「テナントを
成功に導」いている。
ス テ ー ク ホ ル ダ ー と の 関 係 に つ い て は、 特 に 事 業 活 動 で か か わ る 顧 客 ・ テ ナ
ン ト ・ 株 主 に 貢 献 し て い る 。テ ナ ン ト と 協 力 し て顧 客 満 足 に 繋 が る よ う な 魅 力
的 な シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー 創 り に 励 み、そ の 結 果 と し て 財 務 成 果 を あ げ て い る 。
経 営 理 念 に 掲 げ た顧 客 価 値 、 テ ナ ン ト の 価 値 、 株 主 価 値 と 経 営 価 値 と を 一 致 さ
せ、経営理念を実践し成果をあげていると言える。
しかし、前章での聞き取り調査の結果、ステークホルダーの中で「 地域社会
の発展」への貢献という理念は達成するに至っていない。 ショッピングセンタ
ーディベロッパー企業が行うべき地域社会貢献とは何を指しているのだろう。
ダイヤモンドシティが地域社会に対する行動規範の中で挙げていたその具体的
内容は、
「地域行事への参画、福祉・ボランティア等の支援活動を通じ地域社会
との交流を図り、社会貢献に努め」 るということであるが、地域商店会の人々
が考える地域社会貢献とのズレがあると考えられる。では、どうしてこのよう
なズレが生じるのかであろうか。
その理由として考えられるのは、地域社会とのコンセンサスがないというこ
とである。顧客からは意見カードによって要望や苦情の声を聞くことができて
い る 。 テ ナ ン ト と も 日 常 的 に 情 報 交 換 を 行 い 、 株 主 に も HP や 株 主 総 会 で 情 報
が交わされている。事業活動で常に関わりを持っているステークホルダーだか
らこそ、ステークホルダーが企業に期待することが理解でき、コンセンサスが
30
得られるのであろう。
し か し RSC で は 最 寄 り 品 も 買 い 回 り 品 も 購 入 で き 、警 察 や 病 院 な ど の サ ー ビ
ス が 充 実 し て い る 。 つ ま り あ ら ゆ る 機 能 を 内 在 化 し て お り 、こ れ が R S C の 長 所
で も あ る の だ が 、そ の 外 部 環 境 で あ る地 域 社 会 と の 接 点 が 非 常 に 小 さ いと い う
欠 点 を 生 ん で い るの で あ る 。地 域 社 会 の 情 報 の 取 り 入 れ が 少 な い た め 、 コ ン セ
ンサスがなく、 地域社会が望む「地域社会貢献」がどのようなものであるのか
がわかりにくくなっている。
ディベロッパー企業が追求すべき地域社会貢献という価値と地域社会が望む
地域社会貢献という価値を一致させるためには、地域社会とのコンセンサスが
重要であると考えられる。 情報の取り入れ口を広げることにより、企業側の一
方的な思いだけ を持つのではなく、地域社会との双方向的な情報交換を行うこ
とにより、コンセンサスを得ることができ、地域社会の理念達成に繋がってい
く と 考 え ら れ る 。ま た 、 こ の プ ロ セ ス に よ っ て 企 業 と 地 域 社 会 の 信 頼 関 係 が 形
成されていくであろう。
そして地域社会貢献という漠然とした理念を、自分たちの枠組みだけではな
く地域社会という環境からのフィードバックにより柔軟に捉え、解釈を修正し
て 行 動 し て い く ので あ る 。
前章の調査結果によると、地域商店会からの回答では、ダイヤモンドシティ
に期待すること は何もなかった。しかし、コンセンサスを持つことにより、ダ
イヤモンドシティは地域社会に期待される企業になるであろう。そうすること
により、企業と地域社会は共存していくのであろう。
地 域 社 会 を 知 る た め の 情 報 の 取 り 入 れ 口 を 広 げ る た めに は 、 地 域 の 色 を シ ョ
ッピングセンター内に持ち込む、すなわち地域店をテナントに入れることがま
ず必要であろう 。コテコテの地元店ばかりのテナントでは魅力的なショッピン
グセンターにはならないかもしれないが、地域店も入れることによって地域住
民により注目され、またそのテナントから地域の情報も入手でき、地域社会の
発展に貢献するきっかけが見つかるかもしれない。常に地域との接点 を持つこ
と が で き る の で 、地 域 店 の テ ナ ン ト 誘 致 は 特 に こ れ か ら の 郊 外 型 シ ョ ッ ピ ン グ
セ ン タ ー が 積 極 的 に 取 り 組 むべ き と こ ろ で あ る 。
31
終章
おわり に
本論文では経営理念の成果という定量的なデータだけでは評価しにくいもの
を 、 店 舗 見 学 や 聞 き 取 り 調 査 に よ っ て 収 集 し た 定 性 的 な デ ー タ を 用 い て分 析 し
た。
しかし、その成果というのは企業が何十年、何百年と同じ経営理念を持ち経
営活動をしていく中のほんの一部分での成果に過ぎない。 企業は経営理念をあ
らゆる方法で行動に移し実践しているが、達成してもしきれない、追求しても
し き れ な い も の で あ る と い う こ と だ 。だ か ら 企 業 は 不 変 の 価 値 観 と し て 経 営 理
念を持ち続けているのである。
こ こ で 企 業 が 同 じ 経 営 理 念 を 持 ち 続 け る こ と の 重 要 性 を 強 調 し た い 。そ し て 、
企業が大事にしているものが同じであり続ける限り、経営理念は形骸化せず生
き続けるのである。また、今後の研究課題としては、企業の経営理念 に沿った
行動を一時的な成果として見るのではなく、一定期間を設けて見ていく必要が
あるだろう。
ショッピングセンターディベロッパー企業も経営理念に掲げている ステーク
ホルダーの価値=経営価値を追求すべく開発・運営を行っているが、時代とと
もにショッピングセンターの在り方が変化していくので、それに伴って新たに
追求していかなければならない。そして現在も郊外へ着々と進出しているショ
ッピングセンターディベロッパーという業種においては、 特に地域社会などの
外部環境からのフィードバックによって、理念の解釈やときには理念そのもの
をも変更させ実践していく、これが 経営理念を追求することである。
今後もダイヤモンドシティやイオンモールは郊外型ショッピングセンターを
続々オープンさせる。パルコは再開発地区への新規出店や、今までのノウハウ
を 活 か し た PM 事 業 参 入 を 行 う 。 強 み を 活 か し た 事 業 に 取 り 組 み 利 益 を 生 み 出
しながらも、そればかりではなく、自社の長期的な存続のために事業活動に直
接 か か わ ら な い ス テ ー ク ホ ル ダ ー と の 関 係 も 重 視 し て 、 自 社 の 経 営 理 念を 実 践
していくべきであろう。
32
参考文献
Collins, James C.& Porras ,Jerry I.( 1994) Built to Last, Harper Business
Essentials( 山 岡 洋 一 訳『 ビ ジ ョ ナ リ ー・ カ ン パ ニ ー
時代を超える生存
の 法 則 』 日 経 BP 出 版 セ ン タ ー , 1995).
北居明( 2001)
「 経 営 理 念 の 確 立 」小 田 章 編『 経 営 学 へ の 旅 立 ち 』 八 千 代 出 版 。
北 居 明 ・ 松 田 良 子 ( 2004)「 日 本 企 業 に お け る 理 念 浸 透 活 動 と そ の 効 果 」 加 護
野忠男・坂下昭宣・井 上達彦編著『日本企業の戦略インフラの変貌』白桃
書房。
Levitt,T( 1960)
“ Marketing Myopia ”,Harvard Business Review ,Vol.38,
No.4: pp. 45-56.
松 岡 久 美 ( 1997)「 経 営 理 念 の 浸 透 レ ベ ル と 浸 透 メ カ ニ ズ ム − コ ー プ こ う べ に
お け る 「 愛 と 協 同 」 − 」『 六 甲 台 論 集 − 経 営 学 編 − 』 第 44 巻 第 1 号 ,
pp.183-203。
奥 村 悳 一 ( 1994)『 現 代 企 業 を 動 か す 経 営 理 念 』 有 斐 閣 。
桜 井 久 勝( 2004)「 財 務 諸 表 分 析 の 基 礎 」斉 藤 静 樹 編 著『 財 務 会 計 [第 4 版 ]』有
斐閣。
梅 澤 正 ( 1994)『 顔 の 見 え る 企 業 』 有 斐 閣 ビ ジ ネ ス 。
イ オ ン モ ー ル 株 式 会 社 H P ( http://www.aeon-mall.net/ )
株 式 会 社 ダ イ ヤ モ ン ド シ テ ィ H P( http://www.diamondcity.co.jp/)
株 式 会 社 パ ル コ H P( http://www.parco.co.jp/)
日 本 シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー 協 会 H P( http://www.jcsc.or.jp/)
33
資料1
ダイヤモンドシティ・プラウの周辺図
34