魚類の生態か らみた漁法 の検討 (上)(有 元) 33 魚類 の生態 か らみた漁法 の検討 ④ 魚 はどうして光に集まるのか ( 上) 有 元 貴 文 本 まき網の灯船 1 は て ?」 とい う2つ の問いかけに答えなが ら,集 魚 灯漁法 の集魚効果 と漁獲過程を検討 してい きたい。 じめ に 魚類 の生活 に光 は重要 な意味 を もってい る。 も 2 魚 は なぜ 光 に 集 ま るのか ちろん これ は魚類 に 限 った こ とではな く,植 物 , 動物 を 問わず ,あ らゆ る生物 の生活 に光 は さまざ 「 魚 に訊 いてみなければわか らない」 とす るの まな形 で関与 し,生 理 的 に も生態 的 に も大 きな作 は私達 の立場ではない。また 「 魚が光に集 まるの 用 を及 ぼ して い る。 ‐ 般 に植 物 で は 光 の エ ネ ル は本能だJと い う答え も,現 代 においては科学的 ギ ーを利用 して光合成 を行 な い ′多 くの動物 の場 な もの とは認 め られない。 「 本能」 とい う言葉は 合 も昼 と夜 の生活 の リズ ム ,あ るいは季節的 な リ ズ ムが光同期 に よって決定 され てい る。 また視覚 果 たそ うとする者にとっては禁断 の麻薬 といえ よ は光が あ っては じめて機能 で き る し,十 分 な光 が う。すなわち ,本 能 とい う概念 は薄 っぺ らな看板 なければ色彩 も見分け られ な い。 ホ タルや ある種 で しか な く,そ の裏 には もっとつ きつ めた科学的 の水産 動物 にみ られ る生物 発 光 につ いて も興 味深 な説明が必要 となる。言 い換えれば ,本 能 とい う い問題 が 多 い。 言葉であらゆる現像が説明で きた と考え るのは間 一方 ,植 物 の花 が太 陽 の方 向を向 き,根 が地 Ⅲ に 向か うよ うに ,動 物 の空間的 な定位 の 問題 と し 動物 の行動 に興味を もち ,科 学的な探偵 の役害Uを 違 いで ,真 理 に近 づ くためには別 の問いかけを設 定す る必要が ある。 て光 に集 まる動物 と避 け る動物 とが あ る。 この う 前章 で述べ た よ うに 「 なぜ ?Jと い う設間自体 ち光 源 に 向か う性 質 を利用 した ものに ,身 近 な も の と しては誘蛾灯 が あ る。 「 飛 ん で 火 に 入 る夏 の がつ きつめた解答を得 るには遠回 りな道 になって 虫」の例 え どお り,昆 虫を光源 に集 め るための照 義 ′適応的意義 とい う形 で あれば ,こ れまでに多 明装 置 であ る。 くの解釈 が試み られて きてい る。そのなかか ら, 漁楽 で も漁具 の操作範 囲内に対象生物 を集 め , ■獲 の効率 を高め るために 「 集魚灯Jが 使われ て い る。刺激 と生物 の反 応 とい う基本 を考 え る魚群 しま う。 しか し′魚が光 に集 まることの生態的意 集魚灯 に魚が集 まる現象を説明する理論をい くつ か紹介 してみたい。 行動学 に とって ,漁 獲技術 へ の応用 が最 も成功 し た例 とい え よ う。 で ,光 に集 まって きたプラ ンク トンや小魚を郎 と それ では魚 は ど うして光 に集 まるのだ ろ うか。 い つ も の よ うに 「 な ぜ ?」 と 「ど の よ うに し →Aimoto TakaFumi東 索軒集群説 :生 態学 の食物連鎖 に基 づ く考 え してカマスやイカ,ア ジ,サ バ のよ うな高次精食 者 が集 まるとい う説明. 条件反射説 :日 出 ・日没時 の照度 が急激 に変化 京水産大学助教授 ―-33-― 34 水産の研究 7巻 6号 (37)1988 これ を餌 とす る魚 に照度変化 を刺激 とす る条件反 走性 (Tax、)と は生物 が外 界 か らの 刺 激 に 反 応 して一 定 の方 向性 を もった行動 を とる こ とで , 射 が形成 され る。 また ,稚 魚 が光 に よ く集 まる こ 刺激 に対 して定位 す る運 動 と定義 され てい る。 こ とか ら,餌 村 プ ランク トンと光刺激 を結 びつ けた こで定位 (0占entat10n)と は生物 が体 の 向 きを能 条件反射 が成 魚 にな ってか らも発 現 して い るとす 動的 に定 め ることで ,特 に移動運 動 で あ る必要 は る考 え もあ る。 な く,あ る方 向に体 の 向 きを変 えるだけで成立す 探求反射説 :本 能説 ′好奇心説 を行 動学 的 に言 る。 走性 は刺激源 に対す る移動運 動 を意味す るた いか えた もので ,見 なれぬ新 しい刺激 が提示 され た ときの探求反射 (なんだ ろ う反射)に よって光 め ,定 位 とい う大 きな カテ ゴ リーの なか に含 まれ る こ とにな る。 かつ ては趣 1性 (Tropism)と 呼 ば 源 に接近 す る とい う説。 れた こ ともあ ったが ,そ の後 ,植 物 の移動性 を と 好適照度説 :生 理的 あ るいは 生態的 に最 も適 し もなわな い性質 を屈性 あ るいは 向性 と呼び テ移動 た明 るさが あ り,そ の 明 るさの光域 に集 まる とい 性 の あ る動植物 の性 質 を走性 とす る考 えが一 般 的 う説。 日中 の遊泳層 の 明 るさ と,夜 間 に集魚灯 に に な って い る。 集 まった ときのそ の遊決層 の明 るさが 同 じであれ 走性 は対応す る刺激 の特性 に よって分類 され る。 走 も に 関 さ も 4 る 葉 走 p と 間 に 版 で の あ 言 の い す る時間帯 に水面近 くで プ ランク トンが密集 し, 屈ロ リ動 メ ば絶対 的な 好 適 照 度 が あ る と決 定 で き る。 しか 例 えば光が行動 を制 御 してい る場合 を走光性 (P 右 の】 し,明 順応時 と暗順応 時 では反 応 も異 な る告 で , hoto↓ axls),水 流 に対 しては走流性 (Rheotaxほ), の幼 : 暗域 か ら明城 まで の広 い範 囲 の なか で ,相 対的 な 化学物質 に対 しては走化性 (Chemotaxヽ)な どで に 曲メ 好適照度域 に集群 す る と考 え る説 もあ る。 あ る。 いずれ の場 合 も,刺 激源 に 向か って接近す い る。 るものを正の走性 ,遠 去 か る ものを負 の定性 とい 伝『 惑い説 :太 陽 や月 を光源 とす る 自然光線 は地 上 に ,そ して水 中 に平行 に入 射 してい る。 一 方 ,集 う。 右 の月 魚灯 に よる人工光線 は光源 が太 陽 に くらべ て近距 走性 についての説 明が長 くな ったが ,魚 が光 に 離 に あ るため ,発 散 光 と して入射す る。 自然光 に 集 ま るの は 正 の 走 光 性 に よる もの で あ る と し , にこヨ よる水 中 の照度変化 に対 して魚類 は適 当な照度環 「 なん のために ?Jと い う心理 的なあ い まい さを 3し 日 出 El 境 を選択 で きるが ,人 工 光 の場合 には定位 がで き 除 き,「どの よ うに して ?」 とい う行 動 の仕組 み , た ず に光源 に 向か って接近 して しま うとい う説。 あ るいは機構 を説 明 してみた い。 に対 1 もちろん魚 の光 に対す る反応 をす べ て機械論的 ヽヽ 卑髄 . ― 目1 これ らの うち ,索 餌集群説や好適照度説 は 「 何 に説 明す るのは 困難 で あ る。過 去 の経験や周 囲 の 光のヨ のために魚 が光 に集 まるのかJを 説 明す る理 論 で 環境 に よって反応 は変化す る し,ま た 光だけ では うと, あ り,あ る魚種 につ いて ,あ る条件 の もとでは確 な く複数 の外 的刺激 に反応 してい る場合 もあ り, ヽヽ か`, か にそ うい った現象 が認 め られ てい る。一 方 ,条 高次 中枢 に基 く動物 の行動を単純 に解釈す るのは Fを 「 件反 射説や探 求反射説 ,惑 い説 では 「どの よ うに あ る意味 では危険 な ことで もある。 しか しァプ ラ 定め , して光 に集 まるのかJと い う問 いに対す る解答 に ンク トンや稚 魚 の光 に対す る反応 の よ うに ,単 一 され タ もな って い る。 こ うい った考 えの基礎 とな るのが 刺激 に革純 に反応す る場 合を基礎 と して走光性 の 性のと 走 光性 とい う定位運 動 の機構 で あ る。 仕組 みを考 えてみ よ う。 か う。 3 刺 激 に 対 す る反 応 一 走 性 と定 位 4 魚 は どの よ うに して 光 に 集 ま る の か ―-34-― 保拒 して, 魚類の生ほからみた漁法の検討 (上)(有元) 35 ,こ 走光性 の機構 については近代生物学 の始 ま りと 性質。体軸 と光源 のなす 角度 に よって直線運動 , ともに研究が進 め られ ,19世 紀後半か ら半世紀 の 円運動 ,あ るいは うず まきを描 くよ うに らせ ん状 日にa性 学 ,走 性学 として完成 され ,動 物 の行動 に関する研究の重要な位置を占めていた。現在出 に接近 す る。 ほ されてい る動物行動学 に関す る多数 のテキス ト 動物 が光 に集 まる機構 と しては ,こ れ ら 4つ の で も先ず最初に走性 についての記述 が あ り′以下 走性 につ いての説 明 のほかに ,無 定位運 動性 (K― の 4つ の説明が あげ られてい る。なお ,こ こで光 あるいは光源 とした ものを ,刺 激 ,刺 激源 とい う inesも )と 呼 ばれ る もっと単 純 な刺 激 源 へ の反 応 言葉に置き換えれば ,走 流性や定 化性 とい った他 関係 が な く,刺 激 の強 弱 または変化 に対 して一 定 の走性 について も適用 で きる ことはい うまでもな の運動 を示 す性質 で ,運 動 の速度 が変 わ る変速 無 にヽ もあ る。 これは刺激 の方 向 と体軸 の 向 きに一 定 の 定位運動性 (Orthokinesお )と 運 動 の 方 向 が変 わ る変 向無定 位運 動性 (KinokineSs)の 2つ が知 ら 屈 曲走性 (Kinotaxも,偏 走性):動 物 が体 を振 れ てい る。 ■る。 り動 か して感 覚器 に受け る光 の強度 を比較 し,左 (P 右の刺激 を等 し くす る方 向に運 動す る性質。 ハエ 用 いた実験結果 を もとに進 め られ て きてお り,そ s ) , の幼虫 (ウジ)の 負 の走 光性 につ いて ,ジ グザ グ の成果 と して ここに述 べ た よ うな走性 と無定位運 どで に 曲が ったllL路 で光源 か ら遠去か る例 が知 られ て 動性 についての詳細 な分類 が確立 され て きた。 し こす い る。 か し,魚 が光 に集 まる機構 と して この なか の どれ こ↓ヽ 伝 向走性 (TrOpotaxヽ ′刺激相称性):光 を左 走性 につ いての研究 は主 に単細胞 の原 生動物 を が あては まるのかは まだ難 しい問題 を合 んでい る。 右 の感覚器 で 同時 に受け て比較 し,両 側 か ら等 し 種 に よって ,環 境条件 に よって ,そ して光 の性質 に応 じてそれ ぞれ つ きとめて い く努力が必 要 か も し, い強度 を受 け る よ うに体軸 を光 源 に 向け ,直 線的 に運動す る性質。単 一 光源 の場 合 は光 に 向か って Sを 直進 し,2つ とに み, しれ な い。 あ る と きは そ の 中 間 に 向 か う。 ま 一 た す 方 の感覚器 を使 えな くした場 合 には ,光 源 5 走 に対 して 円運 動 を とる。 光 性 理 論 の 限 界 と これ か ら 魚 は正 の走光性 に よって光 に集 まる。 これ は一 常的 目壊 走性 (Tebtaxも,保 目標性):左 右 か らの 見科学 的な説 明 で あ る よ うで ,実 は本能 とか好奇 Bの 光 の強度 が等 し くな る よ うに直線 的 に光源 に 向か 心 とい う言葉 を別 の説 明概念 で言 い直 したに過 ぎ iヤ ま う性 質.単 一 光源 に対 しては転 向走性 と変 わ りな いか ,2つ の光源 に対 す る とき どち らか一 方 の光 ) ′ な い とい う見 方 もあ る。 しか し同 じ説 明概 念 で あ って も,本 能や好気心 とい う概念 は数量化 に な )“ ま 事 を 目標に定 めて接近す る。網膜 の一 点 に 目標 を じまな いのに対 し,走 性 は も う少 し理 論的 な内容 ′ラ 定 め ,そ れが ずれ な い よ うに移動す ることで説 明 一 の を含 んでい る。 すなわ ち ,刺 激 に対す る動物 の行 され る。片側 の感覚器 を使 えな くして も,転 向走 動 を現象 と して観察 し,そ の機構 を解 明す るため 性 の よ うに 円運動 とはな らず ,一 直線 に光源 に 向 かヽう。 に絞 密 な実験 が行 われ て きた ので あ り,現 代科学 保 留走性 ( M e n O t a x も , 対 刺激性 ) : 光 源 に 対 して体軸 と一 定 の角度 を保 ちなが ら接近 してい く の研究 の発展 も期待 で き る。 の世 界 で も十分 な妥 当性 を合 んでお り,こ れか ら ―-35-― 例 えば ,刺 激源 に対 して接近 してい く過程 につ 水産の研究 7巻 6号 (37)1988 いて ,左 右 の刺激 を 同一 に し,あ るいは体軸 が刺 激源 となす角度 を一 定 にす る とい った幾 つ か の仮 る と,あ る明 る さの と ころに滞留 した り,直 線 的 定 を もとに数学 モデル をたて ることが で き る。 こ に光源 に近 づ い て きた もの が 途 中 で 円運 動 に 変 の モデル で時間経過 や刺激 の強 さを変 えて ,動 物 わ った り,ま たは光源近 くで行動性 を失 って漂 い の動 きを ヨンピ ュー タの なかで再現 させ る こ とも 可能 で あ る。 この よ うな シ ミュ レー シ ョン (数値 始 めた り,空 中 に跳ね た りす る。 この よ うな行動 実験)の 結果 と実際 の動物 の行動 を比 較す る こ と で ,モ デ ル式 の妥 当性 を検討 し,パ ラメー タの決 現象を単純化 し,走 性 とい う基礎 的 な考 えに戻 る 定 を行 っていけ ば ,魚 が光 に集 まる機構 につ いて 起 こす ときの生理学 的な裏付けを解 明す る こ とも 新 しい見方 がひ らけ て くるで あろ う。 必要 とな って くる。 実 際 に集魚灯 に集 まって きた魚 の行動 を観察す の多様性 に対応 した解釈 を行 うためには ,複 雑 な ことが近道 で あろ う。 そ して ,こ うい った行動 を ―-36-― (つづ く) 魚類 の生憲か らみた漁法の検討④ (有元) 39 連 載 魚 類 の生 態 か らみた漁法 の検討 魚 は ど うして光 に集 ま るのか ( 下 ) ② 有 元 貴 文 * まき網の灯船 6 魚 相 当す る水 晶体 で物 体 を像 と して とらえ ,フ ィル の 光 感 覚 とそ の 機 能 ムに相 当す る網膜 上 に焦点 を合わ せ て結像す る。 水界 にすむ動物 の形態や生理 は 多種多様 で あ ただ し,哺 乳動物 の多 くは レンズ の 出率半径 を変 り,光 感覚器官 も例外ではない。イ カ ・タ ヨは人 えて焦 点距離 を調節す るが ,魚 類 では レンズ を前 間とほぼ同 レベル のよ く発達 した眼球を もち,魚 後 に移動 させて遠近 調節 を行 な って い る。 類 で も若子 の機能的な差具はあるものの視覚情報 この よ うに ,魚 類 は一 般 に発達 した構造 の眼 を の入力装置 として眼球 が重要な役割を果 た してい る ことは同様 で あ る。一方 ,他 の動物 の場合は眼 もってお り,光 の波長 の違 いか ら色を見分け る色 彩感覚 ,物 体 の形態 や構 造 を識別す る形態視覚 , 球 に相当す る入 力装置をもたない もの もある。 こ そ して動 い てい る物体 に対 して運動 の速度 や方 向 れ らは光の有無 ,強 弱な どを受ける分散光覚や皮 を見定 め る運 動視覚 とい った複雑 な機 能 を もち , 膚光覚 といわれる もので ,眼 球 のよ うに形態視覚 餌 を と り,あ るいは敵 か ら逃 げ る とい う多様 な生 や運動視覚,そ して色彩視覚 とい った発達 した機 活 の 中 で活用 され てい る。 更 に光 の強 さにつ いて 能 は もっていな い。し か し,単 純 に光 の強弱だけ は 明暗視覚 とい う″Uの機能 が あ り,明 るさを見分 を感受す るナマヨや フジツボ ,あ るいは二枚貝の け ,ま たは光源 の位置 を知 り,光 に対す る様 々な 仲間で も,体 を縮めた り殻を閉 じるとい った防御 反応や活動 リズムの上昇または低下,そ して走光 性 とい った様 々な光に対す る反応を示 し,生 活 の なかでの光感覚 の重要性 が認 められ る。そ して , 光感覚器官 が体表全体 に分散 している ものか ら, 体 のある部分に局在 し,さ らに光感覚器官 として の眼点 と呼ばれ る形態へ と分化 が進んでい く。 ま た 甲殻類 は 人 間 の 眼 とは 構 造 の 異 な る限 球 を も ち ,十 数個 か ら数 百個 の個 眼 が集 まって構成 され てい る ことか ら複 眼 と呼ばれ る。 人間 の眼は光学系 と して最 も進化 が すす んだ も の とされ ,イ カ ・タ ヨ とい った頭足類や 魚類 をは じめ とす る者椎 動物 に共通 な特徴 と して カメ ラの 構造 に例 え る こ とがで きる。 す なわ ち ,レ ンズ に 田 1 硬 々点 の1文の断面性式 劇 ・Aヽm航 o Takarurni東 京水産大学助教授 十-39-― 水産の研究 8巻 1号 (範)1989 反応 を起 こす上 での重要 な役害1を果 た してい る。 きで この 2種 類 の視細胞 が網膜上 での位置 を交替 お 実1 し,そ れ ぞれ の 明 る さの条件 に あ った機能 を発 揮 i す る。 これ と同時 に 色素顆粒 の移動 も観察 され , 点, と も上生体 (松果体)と い う間脳 の背側 に位 置す る 光 を遮 断す る フ ィル ターの役 目をつ とめてい る。 この反応 は一 日のなかでの環境照 度 の変化 に対 別│ 器 官 が知 られ てい る。両眼 を除去 した 魚 の光 に対 応 してお り,昼 に 明順応 状態 ,夜 には暗順応 状態 分│ す る反応 につ いての実験結果 か ら これ が光 を感受 とな る。 また ,昼 間 に暗黒状態 に おいて も絹 膜 の す る器官 と してはた らいてい る こ とは古 くか ら認 完全 な暗順 応 状態 は得 られ な い こ とか ら,生 物 の て め られ ていた ものの ,実 際 の機能 と特性 につ いて 体 内時計 に よる 日周性 を示 す こ と も知 られ てい る。 と 詳 しい こ とは分 か って いな い。 そ こで ,魚 類 の 明 この よ うな網 膜 の順応状態 を観 察す るためには , 網1 暗感 覚 につ いて 眼球 の網膜 の構 造 とそ の変化 に話 眼球 を摘 出 してネル マ リンで 固定 し,こ れ を パ ラ を しぼ ってい きた ぃ。 フ ィンで包埋 した後 に厚 さ 4∼ 5〃 mの 薄 い組織 1よ 7 魚 の 網 膜 の 構 造 とは た ら き 魚類 が 明 る さを感受 す る器 官 と しては 眼以外 に 網膜 上 の光受容器 には錐体 (cone)と 埠 体 (r 切片 を作 り,染 色 を施 してか ら顕徴鏡 で鍾体 と標 を od)の 2種 が あ り,そ れ ぞれ構 造 と機 能 が異 な っ 体 の位 置や色素類粒 の移動状態 を調 べ て判定す る。 ,こ │ て い る。錐 体 は 明 るい と きに働 き,色 彩弁別能力 が あ り,視 精度 がす ぐれ てい る。 一 方 ,埠 体 は晴 それ では ,集 魚灯 の よ うに夜 間 に人工 的 に作 り 出 され た 明 るさに対 しては対象生物 の網膜 は どの 実│ い条件 で働 き,色 彩弁別能力 が な く,視 精度 が 分 よ うな変 化 を示 す のだ ろ うか。 また ,こ の よ うな か る。 そ して ,外 界 の 明 る さに よって この どち らの 生理 学 的知見 を基 に ,集 魚灯 の適 正光力や 漁具操 な│ 光受容器 が働 くかが変化す る。 これ は網膜運 動反 作方法 のガイ ドライ ンを決定 で きな いだ ろ うか。 応 と呼ばれ ′明 るい条件 では錘体 が光 の入射 す る 集魚灯 漁法 の漁獲過程 との関連 で網膜運 動反応 側 に一 列 に並 び ,晴 い条件 では後 方 に移動す る。 を研 究 した例 はそれ ほ ど多 くは な いが ,こ れ まで 得 体 はそ の逆 の変 化 を示 し,明 るい とき と暗 い と に ゴマサ バ ,マ ア ジ ,ス ル メイ カにつ い ての研究 て に て き の成 果 が報告 され てい る。 これ らは網膜運動反 応 脈結膜 色素上皮層 得体鮭体 層 につ いての水槽実験 と,漁 獲物 の網膜 の順応 状態 の判定 とい う 2段 階 の方法 か らな ってい る。 集 魚 灯漁法 で漁獲 の成否 を決定 す る要素 は対象 魚群 が どの よ うな時間経 過 で集魚灯 の近 くに集 まって く 外限界膜 外類粒 層 外網状層 内頼粒 層 に集 ま ってい るのか で あ り,こ れ を漁獲 され た個 内網状層 体 の網膜 の順応状態 か ら明 らか に しよ うとす る も 神経細胞層 神経繊維層 内限界膜 │ 光 の 入射 方 向 写 真 1 明 順 応 時 のマ ア ジの綱 膜組 織 るのか ,そ して水 中 で どの よ うな明 るさの と ころ 宮 どう ので あ る。す なわ ち ,夜 間 に暗順応 の状態 に あ っ た ものが集魚灯 に集 まって くる過 程 で どの よ うに 明順応 に移行す るか を調 べ る ことにな る。 そ のた めの第一 段階 と して水樽 実験 に よ り網膜 の明順応 過程 の基 準 とな る もの さ しを作 る必 要 が あ る。 まず ′暗室 内に おいた水槽 に実験 魚 を収容 す る。 ―-40-― 図 魚類の生態からみた漁法 の検討の (有元) 実験 に先立 って ,網 膜 が完 全 な暗順応状 態 に あ る よ う順応時 間や実験 時刻 を設定 し,次 いで照 明を 8 集 魚 灯 漁 業 の 現 状 と将 来 点灯 してそ の後 の時 間経過 を追 い なが ら実験 魚 を 現在 ,集 魚灯 を利 用 した 漁 法 と して は イ カ釣 と りだ し,眼 球 を固定す る。 これ を明 るさの条件 り,サ ンマ棒受網 を含 む各種 の敷網 ,イ ワシ ・ア 別 に行 な い ,ど れだけ の 明 るさで あれ ば点灯後 何 ジ ・サ パ の旋網 とい った と ころが代表 選手 と言 え 分間 で 明順応 に至 るのか ,ま た 暗順応 か ら明順応 るだ ろ う。 このほか に も沿岸 での釣 り漁法 で集魚 へ移行 してい く過程 を時間的 な変化 と して把握 し 灯 を使 うものは 多 い。 てお く。 この水糟 実験 での結果 を基 に ,第 二 段 階 この よ うな現在行 なわれ てい る操業方法 はす で と して実際 に集 魚灯 に集 まって漁 獲 され た個体 の に完成 された もので ,ず いぶ ん吉 か ら定着 してい 網膜 の順応状態 を比較 ,検 討 してい くことにな る。 たか の よ うに考 えが ちであ る。し か し,こ れは あ もち ろん ,集 魚灯漁法 の漁獲過程解 明 のために らゆ る漁業 につ いてい え る こ とで あ るが ,実 際 に t は生理学 的 な実験 だけ では不十分 で あ る。 集魚灯 は漁具漁法 が現在 の姿 にお ちつ いたのはせ いぜ い i を点灯 した ときの水 中 の 明 る さと ,そ れに対応 し 数十年 とい う時代 の流れ で しか な く,サ パ の タモ た対象 魚群 の分布状態 や 行動特性 につ いての現場 抄 い漁法 の よ うにはんの十数年 前 に跳 ね 釣 り漁法 での観察 が必要 で あ り,こ れ らを水槽 実験 ,生 理 か ら転換 したばか りの もの もある。特 に集魚灯漁 実験 と有機 的 に統 合 しては じめて漁 獲過程 の全貌 法 につ いては電灯照 明 の発達 と漁船 の動 力化 が進 ) と が解 明 され て くるで あ ろ う。 さ らに集魚灯漁法 の なかで も旋網や敷網 の よ うな網漁法 と釣 り漁法 と では漁具 の操作範 囲 が異 な り,集 魚灯 の利用方法 に も当然違 いが見 られ る。 これ らの全体 を見渡 し て比較検討 し,最 適化 を追求 してい く努力 が 今後 ます ます必要 な時代 にな って くるで あろ う。 写真 2 イ カ釣 り漁お の集魚灯配置 凹 2 経 過 時 間 夜 間 、高 照度 点灯 後 の経 過 時 間 とマ ア ジ網 膜 の 明順 応率 写真 3 出 港前のサ ンマ棒受網Flお -41- 42 水 産 の研究 3 を 1 号 ( 3 8 ) 1 瞬9 むなかでや っと戦後 にな ってか ら本 格化 した もの 大型 のイ カ釣 り漁船 を 中心 に普及 が進 んでい った。 で あ り,そ れ 以前 は手漕 ぎの漁船 で作 業灯 を転用 しか し,新 技術 の導入 は新 しい難題 を生み 出 し しただけ のわずか な光力 で魚 を集 め操業 していた てい く。放電灯 の普及 は少 しで も他船 よ り明 るい 時代 が長 くつづ いていた こ とを忘れ ては な らな い。 光 を使 いたい とす る漁船 間 の光力競争 に拍車 をか 集魚灯光源 の歴史 を振 り返 ってみ る と,江 戸時 け ,省 エ ネル ギ ー とい う本来 の 目標 は忘れ られ て 代 か ら松 明等 のかが り火を使 った イ カ釣 りや イ ワ い った。 そ の 当時 ,宇 宙衛 星 か らの夜 間撮影 で 日 シの敷網 が 行 な わ れ て お り,そ の 後 明治 後 半 に 本海 の まんなか に東京並 の大都市 に相 当す る不夜 な ってか らは石油 ラ ンプ ,ア セチ レン ランプ ,そ 城 が 出現 してい る とい った記事 が新 聞 を振わ せ た して大正 か ら昭和 にか け てパ ッテ ツーや 小型発電 の も記憶 に新 しい。 機 を使 った電球 へ と技術革新 が進 め られ た。現在 集魚灯 の基本 に戻 って考 えてみ る と,効 率 よ く 生活 の なか で普通 に使 われ て い るタ ングス テ ン ・ 漁獲 す るために船体周辺 に魚群 を濃 密 に集 め る こ フ ィラメン トの電球 が 開発 され たのは 明治39年の とが大 事 で あ り,こ のため には遠 方 テ深層 か らの こ とで あ り,こ れ を い ちはや く漁業 に応用 しよ う 広範 囲集魚 と,船 体 周辺 へ の滞留 とい う2つ の条 と した先 人 の努 力 は今 でい えば最 先端技術 の導 入 件 を同時 に満足 させ なけれ ばな らな い。 これ は あ とい って もよいだ ろ う。 る意味 では相反す る条件 で あ り,遠 方 まで光 を届 もちろん現在 も周辺技術 を漁 業 に導 入 し,漁 具 かせ るた めには ど うして も船体周辺 では過剰 な ま や 操業方 法 を改 良 してい く努 力 が続 け られ てい る。 での 明 る さにな って しまい ,こ れ が滞留効果 を妨 現在一 般 的 に使 われ てい る電球 は 白熱灯 ,ハ ロゲ げ る可能性 が あ る。今後 ,集 魚効果 と滞 留効果 に ン灯 とい った タ ングス テ ン ・フ ィラメ ン トを然 焼 つ いての詳細 な検討 が あ らためて必要 に な って く させ て発光 させ る方 式 の も の で あ るが ,近 年 に るだ ろ う。水 中 の魚群 の行動 を観察 す るための方 な って放電灯 (HID)と 呼 ばれ る高 出力 ,長 寿 命 法 と して水 中 テ レビカメ ラや ソナ ーの近年 の発達 の電灯 が急速 に普及 して きた。 これ は道路照 明等 は著 し く,こ れ ら の機 器 類 を駆 使 した 研 究 が 進 に使われ てい る方式 の電灯 で ,同 じワ ッ ト数 で あ み ,魚 は ど う して 光 に 集 ま るのか が 解 明 され れ れ ば 白熱灯 の数 倍 の 発 光 効 率 を もち ァ省 エ ネ ル ば ,集 魚灯 の利用方法 につ い ての新 しい ガイ ドラ ギ ー性 が 高 い とされ た。 そ のため ,オ イル シ ョッ イ ンを設定す る こ と も可能 とな って くるであろ う。 ク当時 の然費節減 が 呼ばれ た時代 に注 目を集 め , さ らに ,漁 獲行為 を対象 生物 の行動制御 の結果 で あ る とす る原 点 にか え って みれ ば ,色 灯 や 偏 光 ,そ して レーザ ー光 ,ス ト,ボ 光 や 光 フ ァイ バ ーの利用 とい うこれ まで漁業技術 の なか で成 功 してい なか った各種 の光刺激 につ いて も新 しい側 面 がみ えて くるか も しれ な い。 これ らが次 の時代 の操業技術 を確立す るため の新 しい光 とな る 日も 近 いか も しれ な い。 写真 4 放 電灯 の水中照度測定実験 ―-42-―
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