フィリピン台風被災者支援事業 活動進捗報告 (活動期間:2013 年 11 月~2014 年 4 月) 発災から半年が経ち、フィリピンの人々は復興の過程にいます。 “CARE の取り組みに対する世界中からの支援に心から感謝!!!” 2014 年 7 月 公益財団法人ケア・インターナショナル ジャパン Ⅰ はじめに 2013 年 11 月 8 日、史上最強の台風がフィリピン中央部を横断するように襲った。時速 250km の破壊的 な風と豪雨が未曾有の大被害をもたらした。約 1,610 万人が被災し、110 万世帯の家屋が全壊または半 壊、410 万人が家を失い避難生活を余儀なくされた。この数は 2004 年のインド洋津波の避難生活者の 4 倍である。少なくとも 6,300 人が亡くなり、590 万人が生計手段を失った。 発災から半年が経ち、状況はかなり改善し安定してきた。支援活動は台風後数か月間の緊急支援フェ ーズ(例:食糧配布)から現在までの復興支援フェーズ(例:緊急住居、収入創出支援)まで、それぞれの 時期の支援ニーズに応じて変化し、成果を上げてきた。現在、復興に向けた支援が軌道に乗っているが、 被災者の辛抱強さと政府、国際、地元の人道支援団体等、様々な団体からの支援の協働に寄るところが 大きい。しかしながら、被害の規模や被害範囲が大きいため、最も脆弱な立場に置かれた何百万もの 人々の多くが、継続的な人道支援を、特に住まいや生業の分野で、この先何か月、何年も必要とすること が予想される。この状況を改善すべく、CARE は各世帯がより安全な住居を再建していくことと、地域経 済と生業の復興を引き続き支援していく。 Ⅱ CARE の支援活動 発災直後から、CARE は被災地にスタッフと地元の協力団体を派遣し、人道的ニーズに応えてきた。世 界各国からの支援を受け、発災から半年の間に、当初の支援対象者数の 40,000 世帯、200,000 人を超 える被災者に対して、フィリピン中央部で最も被害の大きかった 3 地域:レイテ (20,000 世帯)、サマール (10,000 世帯)、パナイ (10,000 世帯)において、支援した。2014 年 6 月現在、CARE は 314,124 人の被 災者を対象に、食糧配布、緊急住居用建材の提供、そして生業の復興を支援している。 1.支援概要 252,115 人が食糧支援を受け取り、3,700 人が地元の市場で食糧を購入するための現金の支給 を受けた。全体として、CARE と地元の協力団体は 1,115,000kg に相当する食糧を配布した。 59,984 人が緊急住居用建材(防水シート、工具、調理用具を含む)を受け取った。CARE が配 布した防水シートの総面積はバスケットボールのコート 4,040 面分に相当する。 57,451 人が高品質で充実した緊急住居用修理道具セットを受け取った。修理道具セットとともに、 家屋の修理に要する費用の足しとするべく約$70 の現金を支給した。また、より安全な住居を再 建するための技術研修を通じた技術的支援も行った。 19,549 人が現金支給と、被災する前に従事していた仕事を再開するか新たな仕事に就く助けと なる専門的な研修を受けた。 1)食糧支援 発災直後、特に壊滅的被害を受けた地域では、食糧の入手が最大の懸案事項であった。CARE は地元 の 7 つの協力団体と協働で、パナイ州、レイテ州、サマール州において、緊急食糧配布を実施した。遠 隔地へのアクセスの悪さにもかかわらず、米、豆、乾燥魚、缶詰の肉と油が入った食糧支援セットの最初 の配布を、発災後 6 日目に実施した。 CARE はパナイで 3 回にわたり食糧配布を実施した。3 回目の配布時には被災者が再開した市場で食 糧を購入するための現金も支給し、地域経済を支援できるようにした。パナイでの当初の支援対象者数 は 10,000 世帯であったが、CARE は地元団体と協働し、18,100 世帯を支援した。 2 レイテでは、最大の協力団体である ACCORD とともに、8 つの自治体、24,301 世帯、108,565 人に食糧を配布した。 西サマールでは、バセイ地区で食糧を配布 し、11,883 世帯、52,050 名を支援した。これ らの食糧支援では、各世帯 2 週間から 4 週 間程度の食糧をまかなうことができるよう対 応した。支援に際しては、高齢者、妊婦、障 がい者等の脆弱度の高い人々への支援を 優先的に行うなど、配慮した。 配布場所での登録事務を手伝ってくれた女 性や、トラックから支援用の食糧を荷卸しし てくれた男性など、地域のボランティアの尽 CARE は地元団体と協働して、台風直後の緊急支援 力もあり、前述した地域での食糧配布を実 フェーズに、25 万名以上の被災者に食糧を配布した。 施・完了することができた。食糧を運ぶのは 負担の大きな作業であるが、ボランティアの 助けのおかげで、被災世帯には家の修理と生業の回復に専念してもらうことができた。食糧配布は 2014 年 3 月に終了し、CARE は合計で 54,284 世帯、252,115 人の被災者に食糧を届けた。 2)緊急住宅支援 発災後、最初の数週間で、CARE は緊急住居用建材及び修理道具(防水シート、釘、金槌、斧、ショベ ル、くわ、手のこぎり、針金)と台所用品(調理用具、プラスチックマット、毛布、照明、蚊帳)をレイテの 13,905 世帯、59,984 人に配布した。約 70 ドルの現金支給は、被災世帯が家を再建する際に追加の材 木を購入したり、大工を雇う資金として役立った。 さらに本支援を受けた世帯は住居再建の技 術研修にも参加することで「より安全な再建」 技術を身に付け、再建場所や丈夫な基礎工 事、柱、屋根、壁のデザインについても学ん だ。 被災世帯が自ら復興する力を支援し、同 じ場所、または必要であれば浸水しやすい地 域から離れたよりよい土地での住居再建の支 援を目的としている。 今日まで、CARE は現金支給と併せて緊急住 居用修理道具セットを 13,592 世帯、57,451 人に配布し、現在までに半数以上が修理・再 建を果たした。 全般的に CARE は、支援地域の関係者によ る全面的協力を受け、支援活動を展開してい 被災世帯は現金や研修と共に、高品質の住居用修理道具 セットを受け取り、より安全な住居の再建を実践している。 る。CARE は地域の再建を支援しているが、 その活動は、大工、地域のボランティア、モニ タリングスタッフとしてサポートしてくれている地元住民に支えられている。彼らは、追加の技術支援を必 要とする世帯等についての情報提供も行う。この共助的行動はフィリピン人特有の「バヤニハン」という、 お互いを助け合う精神の現れであり、地域は高齢者世帯や母子または父子家庭など、最も脆弱性の高 い人々への支援に尽力している。 3 3)生業支援 CARE は 2014 年 3 月に、初期復興支援の 重要な柱として、生計向上支援を開始した。 生業支援では、最も被害が大きかった世帯 の家長を対象に起業計画研修と現金管理セ ミナーを開催し、小規模の現金創出が可能 な活動を開始するにあたっての知識と技術 を習得する機会を提供した。 また現金 68 ドルを前もって受け取ることです ぐに現金創出活動が開始できるようにし、研 修参加者は実施計画を立て、台風以前に就 いていた仕事を再開するか、もしくは、新た な収入創出活動に従事した。説明責任を明 確にするため、現金を受け取った人々は、 CARE の生業支援を受けたグループの1つは、受け取った 現金を貯めて、サマール州バサイに小間物店を開店した。 CARE との間で覚書を交わし、受け取った現 彼らは開店から 2 か月以内に 500 ドル以上の収益を上げた。 金は生業確保の目的のためだけに使うことを 書面で約束している。この活動には、菜園作 り、田んぼの復旧、養鶏、村の小間物店の開店などが含まれる。 現在までに、CARE はサマールとパナイで実施した現金支給と技術研修を通じ、19,549 人(約 4,000 世 帯)を支援した。生業支援は 2014 年 3 月から 2014 年 6 月末までの最初のフェーズの間に合計 25,000 人を支援する予定である。 2.今後の活動予定 緊急住居用修理道具セットの提供と生業支援は地域の触媒となり、地域住民の再建と復興を促している。 今後の半年間(2014 年 5 月~10 月)、CARE はこの次の 2 つの活動を拡大展開する計画である。 1)緊急住宅支援 CARE の緊急住宅支援は、災害直後の数か月間の緊急支援における重要な活動の一つである仮設住 居に対する、実行可能な代替案となった。例えば、仮設住居を建設する代わりに、修理セット、研修、現 金の支援を受けた多くの世帯は、新しい終の住まいの建設に取り掛かった。住宅再建の支援を受けた世 帯への追加支援として、CARE は少なくともその 30%、約 4,500 世帯に追加の 113 ドルを支給し、材木 や建設資材、大工の工賃などの支払いに充ててもらった。雨季が近づいており、台風で被災した地域が 再び脆弱な状態になりかねない中、より安全な再建技術を用いて早期に住居を再建支援することの意義 は大きい。そして家の再建は、大きな安心につながり、被災世帯がより多くの時間とエネルギーを、収入 創出活動に専念することを促す。また CARE と地元協力団体は、現金支給を受け取る被災者の選定作 業において、地域が主体的な役割を再び果たすようにしている。現金支給は今後数週間内に完了予定 である。 2)生業支援 最初の現金支給である 68 ドルを受け取り、小規模ビジネスを開始したり、傷んだ田畑を復興した世帯の 多くは、第 2 回目の現金支給を受け取ることができ、ビジネスをさらに拡充し、さらなる復興への歩みを進 めている。CARE は、女性のグループ、企業、その他地域主導の団体などが小規模、中規模ビジネスを 4 立ち上げるのを支援し、被災地と被災世帯のための持続可能な雇用機会の創出の一助としている。 CARE は、これらの草の根団体からの起業の提案書を受け付け、特に、地域の最貧層や最も脆弱な 人々が裨益し、災害リスク軽減に取り組むと同時に、男女平等の促進に寄与することを期待している。 CARE が支給する補助金は 1,000 ドルまたは 1,000 ドル以上で、提案を受けた起業内容によって補助金 額を決定する。事例は増えており、安定した付加価値のある農作物の生産と農作物加工品の改善に貢 献するビジネスなど、その内容も多岐に及んでいる。 Ⅲ 受益者の様子(現地からのストーリー) マイラ・ディアズ(41)は、忍耐強さで知 られている。彼女は2カ月間、毎日、夫 に、家族のために家を再建するよう説 得してきた。彼女の夫、リノ(40)は、建 築資材がないからできないと、静かに 答えるだけであった。 マイラの家族は、レイテ州サンタフェの 川沿いの村に住んでいた。昨年の11 月8日、フィリピン中央部を襲ったハイ エン台風の際に、彼女の家は完全に 吹き飛ばされた。台風の後、一家は村 の古いバスケットコートにたてられたテ ントで、他5家族と一緒に暮らした。 一緒に自宅を再建するマイラとリノ・ディアズ マイラは、常に咳と風邪に苦しむ7人の 子どものことを、特に心配していた。夜は家族がそろって眠りにつくことはできなかった。テントは9人が寝 るには狭すぎたのだ。そこで、ちょっとした工夫をしてみた。何人かが先に床で寝て、その間残りの人たち は地面に座って待つ、という入れ替え方式である。 「子どもたちにとっては本当に大変でした。雨が激しく降ると、泥がテントの中に入ってきます。でも、一番 嫌だったことは、テントの中が暗くなってくると子どもたちが怖がることです。たぶん、まだ台風の記憶がト ラウマとなり抜けないのでしょう」と、マイラは言った。 マイラの家族はCAREとその協力団体から食糧配布の支援を受けた。数週間後、彼女の夫は田んぼ仕 事に戻り、1日に200ペソ(約4.5ドル)稼ぐようになった。 マイラは「家族の1ヶ月分の食糧を賄えたCAREからの支援をとてもありがたく思います。食糧支援のおか げで、子どもたちが飢えてしまうのではないかという私の不安と恐れが消えました」と言った。 CAREの支援によって、マイラは1,500ペソ(約33.5ドル)を貯めることもできた。このお金は家の再建のた めに貯金した。 この間、マイラの家族は、CAREとその協力団体が村で配布した、充実した内容の住居用修理道具セット と現金を受け取った。このセットには、高品質の金属張りシート、アルミのスクリーン、様々な釘、その他建 築資材が入っていた。そして一緒に受け取った70ドルで、彼女は材木を買い足した。 CAREの緊急住宅支援によって、マイラの家族は、台風で破壊された以前の自宅があった川からは遠く 離れた土地に家を再建することができた。再建しながら、マイラは夫も彼女と同じように再建に意欲的に なっていることを知り嬉しく感じた。夫は大工仕事もできるので、田んぼ仕事が終わった後は大工仕事に 取りかかった。家族一緒に家を再建できることができ夫は幸せそうであった。 5 マイラは、新しい家で家族みんなが元通りの「睡眠スケジュール」で眠れるようになったことを話すとき、い つも笑顔で気分がよさそうだ。新しい家は子どもたちを守り、快適に過ごせる場となるだけではなく、夫婦 の固い絆の象徴にもなるだろう。 Ⅳ 終わりに フィリピンを襲った超大型台風ほどの災害を未だかつて世界ではほとんど経験していない。発災から半 年が経ち、フィリピン人は復興に向けて前進し続けている。現在、中長期的な復興支援フェーズに移行 する中、現在までに実施してきた緊急住宅支援や生業支援において成果を実感し始め、さらなる広がり を期待している。 以上 6
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