停電への備え パソコンや周辺機器を守る方法

停電への備え パソコンや周辺機器を守る方法
フリーライター 竹内 亮介
2011/3/16 7:00 日本経済新聞 電子版
東日本巨大地震の影響で、東京電力が地域ごとに順番に電力供給を止める計画停電(輪番停電)を
開始した。16日からは東北電力も管内の4県で実施する。停電中は家庭やオフィスで電気製品が一時
的に使用できなくなる。特にデリケートなパソコンや周辺機器などにどう影響するかを整理した。
パソコンのハードやソフトを管理する基本ソフト(OS)は、きちんとした終了手順を踏まずに電源を切
断すると障害が発生する可能性が高い。OSが起動しなくなったり、長期的に何らかの不具合が発生し
やすくなったりする。
OSが起動しなくなった場合、「再セットアップ」により復旧することは不可能ではない。ただし、再セット
アップを実行すると、パソコンは購入時の状態に戻ってしまう。作成した文書や画像、送受信メール、パ
スワード、インストールしたソフトなどはバックアップを事前に取っておかないとすべて消えてしまい、元
に戻すには膨大な時間がかかる。
もう1つ、電源が突然切れることで障害が発生しやすいのは各種データを保存するハードディスク装
置(HDD)だ。HDD内部には1分間に7200回転、あるいは5400回転と非常に高速に回転するディスク
が組み込まれている。このディスクに書き込まれたデータは、「磁気ヘッド」が非接触状態で読み込むの
だが、ディスクと磁気ヘッドの隙間は現行製品だと数マイクロメートル(1ミリの1000分)しかない。
ディスクと磁気ヘッドが接触するとディスクの盤面に傷が付く。このためパソコンの電源を落とす際
は、磁気ヘッドがディスクに影響を与えない位置まで自動的に移動するようになっているが、突然電源
が切れるとこの機能も働かない。磁気ヘッドがディスクに衝突すると、最悪の場合、OSはもちろん保存
したデータも読み込めなくなることがある。一見普通に動いているようで、HDDのどこかに傷が生じて
いる可能性もある。
■ノートパソコンは「スリープモード」が便利
どちらもぜひ避けたいトラブルだ。「使用中に突然電源が切れる」という事態を招かないように、電力
会社の計画停電の予定をよく確認し、余裕を持ってパソコンをシャットダウンしておくと安心だろう。
ノートパソコンならシャットダウンの代わりに、「スリープモード」を利用してもいい。使用中の状況がメ
モリーに保存されOSやHDDの動作がいったん止まる。スリープ状態を維持するには微量の電力が必
要だが、ノートパソコンにはバッテリーが付いているので、満充電からならスリープ状態のまま2~3日
程度は余裕で持つ。マイクロソフトの「ウィンドウズXP」「ウィンドウズビスタ」「ウィンドウズ7」などほとん
どのOSで使える。
http://www.nikkei.com/news/print-article/g=96958A9C93819499E3E7E2E3848DE3E7E2E1E0E2E3E3E2E2...
デスクトップパソコンにもスリープモードを備える製品がある。しかし、バッテリーを搭載しないデスクト
ップパソコンは、電源供給が止まるとスリープモードを維持できない。ビスタや7には、スリープモードへ
の移行と同時にHDDにも状態を保持する「ハイブリッドスリープ」という機能があるが、XPにはないの
で使わない方がよい。
またスリープモードは、キーボードやマウスを操作すると解除されてしまうので気をつける必要があ
る。特にマウスの挙動には敏感だ。停電中に復帰してしまい、知らぬ間にバッテリーを消費してしまうと
いう恐れもある。マウスに電源スイッチがあるなら切っておくか電池を外しておく。あるいはマウスをパ
ソコンから外した状態でスリープモードに移行するといい。ノートパソコンの場合は、液晶ディスプレーを
閉じておけばマウスが動いても解除されないことが多い。
周辺機器では外付けHDDやネットワークストレージ(NAS)など、内部にHDDを組み込んでいる機器
に注意が必要だ。パソコンと同じく電源が突然切れることでHDDにダメージが発生することが多いの
で、計画停電前にシャットダウンしておこう。ブロードバンドルーターなどの通信機器、スキャナーやプリ
ンターなどは電源が突然切れてもあまり影響はない。ただ、予期せぬトラブルが起きる可能性はゼロで
はないので、必要ない機器は電源を切っておいた方がいいだろう。
■停電中に使う場合の設定は
停電中はパソコンを利用しないのが一番確実だが、急ぎの仕事や用事で使わざるをえない場合もあ
るだろう。そうしたときは、ノートパソコンのバッテリー駆動時間を少しでも長くするためのテクニックがあ
る。
まず、液晶ディスプレーのバックライトを使用に支障のない範囲で下げてみよう。ノートパソコンの構
成パーツの中でも、液晶ディスプレーはかなり大きな電力を消費しており、バックライトの光量を下げる
ことでノートパソコンの消費電力を大きく下げることが可能だ。結果としてバッテリー駆動時間が延び
る。
もう1つ、パソコンの動作モードを「省電力モード」に変更するのも有効。ビスタや7は、コントロールパ
ネルから「ハードウエアとサウンド」→「電源オプション」とたどると動作モードを変更できる画面が表示
される。この画面で「省電力」のチェックボックスにチェックを入れる。また、XPではコントロールパネル
から「電源オプション」を選択して表示された画面の上にある「電源設定」のプルダウンメニューから「最
小の電源管理」を選択し、OKを押せば同じように省電力モードに移行する。
この省電力モードでは、必要のない部品への電源供給がカットされるほか、対応モデルではCPUの
動作周波数も低下する。その結果、システム全体の消費電力が低下してバッテリー駆動時間が延び
る。また、各メーカーが独自の省電力モードを用意していることもあるので、必要に応じて使い分けよ
う。
http://www.nikkei.com/news/print-article/g=96958A9C93819499E3E7E2E3848DE3E7E2E1E0E2E3E3E2E2...
計画停電に含まれない地域でも、こうした方法によって少しでも節電に協力したい。日常的にパソコン
を使っている人は、打ち合わせやトイレなど席を離れるたびにスリープモードに移行させるといった習
慣をつけることも大切だろう。
A4サイズの家庭用ノートパソコンは通常では20~30ワット、スリムタイプのデスクトップパソコンは液
晶ディスプレーも合わせて70~100ワット程度の電力を消費する。しかしスリープモードでは0.5~1W程
度へと激減する。しかも、時間のかかるシャットダウンと起動を繰り返すより、移行も復帰も数秒で済む
スリープモードの方が効率がいいだろう。
■使用中に停電、どうする?
では万が一、動作中に停電が起きたときはどうすればいいか。まず、あわてずに通電が回復してから
もう一度電源ボタンを入れ、起動するかどうか確認してみよう。普通にOSが起動するなら、再び計画停
電の時間に当たっていないことを確認したうえで、HDDの状況を確認する「チェックディスク」を実行す
る。「コンピュータ」を開き、ドライブアイコンの右クリックメニューから「プロパティ」を選び、「ツール」のタ
ブから「チェックする」ボタンを押すと、そのHDDの状況をチェックできる。手順はXP、ビスタ、7とも共通
だ。
普通に起動しない、あるいは不審な動作を示す場合は、すぐにシャットダウンする。損傷を受けたHD
Dを長時間動作させると、損傷箇所が増えていく可能性があるからだ。HDDが物理的に損傷している
場合は、ほぼ復活は不可能。専門のHDDサルベージ業者に頼めば書き込まれたデータを救えること
もあるが、個人ではコストがかかりすぎるので、あまりおすすめできない。
ただHDDのパーティション構造など、ユーザーがHDDをどのように使っているかという情報を記述の
部分がおかしくなった「論理構造の損傷」であれば、「完全ドライブ復元11」(ジャングル)といった「ドライ
ブ復旧ソフト」を使うことで、保存したデータをサルベージしたり、OSが起動できる状態まで戻せること
もある。
竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社な
どを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心
にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。
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