U. D. C. 628. 8, 889:697▲ 921. 2 西松建設技朝 vOL. 23 自然風 を利用 した24時間換気システム ( その1) ngOu t s i d eWi nd( Pa r t1 ) The2 4 ho u r sVe n t i l a t i o nS y s t e mByUs i 佐藤 健一* 石川 雄一** Ke ni c hiSa t oh Yui c hi I s hi ka wa 萩谷 吉日 宏三* ** Ko z oHa gi ya 城田 修司* 尚弘* Na ohi r oYos hi da Shuj i Shi r o t a 要 約 4 時間換気 システムを提 高気密住宅 における換気不足 を解決す る手法 として ,自然風 を利用 した2 案 した.この換気 システムは自然風 を利用 して換気す ることで ,換気に関わるエネルギー消費量の 削減および室内空気質の向上 を同時に図るものである.換気回数は次世代省エネルギー基準である 0. 5回/hの換気回数 を確保で きることを目的 としている.なお ,無風時および弱風時には,必要な 換気量 を確保するため,補助 フアンを稼動 させ る方法 を用いている.この補助 フアンは5 0%程度の 稼働率 を想定 してお り,これにより,当換気 システムの電力消費量は一般の2 4 時間換気 システムの 1 / 4 程度 と非常に小 さい ものとなることを予想 している. 目 次 確保 を両立 させた 『自然風 を利用 した2 4 時間換気 システ §1.はじめに ム』の開発 を行 っている.この換気 システムは,住宅の §2.現状の2 4時間換気 システムの問題点 高気密化に伴 うレンジフー ド稼働時の扉や窓の開閉障害 §3.自然風 を利用 した2 4 時間換気 システムの概念 も解消できるもの と考 えている. §4.システム概要 §5.換気性能 i2.現状の2 4時間換気システムの問題点 §6.おわ りに ( 1 )消費電力の増加 現状の2 4 時間換気システムでは,ダク トにより各部屋 Sl.はじめに か らの排気 を 1箇所 に集め,そこに設置 したフアンによ り機械的に排気す るシステムが主流 となっている. しか 近年 ,省エネルギーの観点か ら,住宅の高気密化が進 し,この換気 システムでは,フアンを2 4 時間稼動 させ る んでいる. しか し,高気密住宅 において ,計画的に換気 必要があり,消費電力の増大 ,これに伴 うランニングコ を行わない場合 ,換気不足に伴 う空気質の低下 ,シック ス トの増加は避 けられない.また,ダク ト長が長 くなる ハ ウス症候群等の問題が生 じる可能性がある.このため , ことか ら圧力損失が大 きくなり,これによるフアン容量 高気密住宅には2 4 時間換気 システムが必要不可欠なシス の増大および消費電力の増加 も問題 となっている. テムとなっている. ( 2)扉等の開閉障害 現状の2 4 時間換気 システムは,機械換気 システムを用 いているため,電力使用量の増加によるランニングコス 高気密住宅で第3 種換気 を行 う場合 , 室内が負圧 にな り, 扉等の開閉障害 を発生 させ る可能性が高い. トの増大は避 けられない.このため,当研究では自然風 を利用することで ,換気に伴 うエネルギー消費 を可能な §3, 自然風 を利用 した2 4時間換気システムの概念 限 り削減 し,ランニ ングコス ト低減 と良好な室内環境の ( 1 )適用地域および建物用途 当換気 システムは,自然風 を利用 した2 4 時間換気 シス * 技術研究所技術研究部建築技術研究課 * * 技術研究所技術研究部 * * *技術研究所技術研究部環境技術研究課 テムで ,まず集合住宅 ,特 に,自然風 が得 られやすい , 中層か ら高層部分への適用 を考 えている.また,地域性 として ,外部風力が期待できる地域への適用を考 えてい 23 自然風 を利用 した2 4時間換気システム ( その1 ) 西松建設技報 VOL, 23 風力換気- ・ 風が強いところに適する る.ただ し,当換気 システムは集合住宅への適用に限 る ものではない. ( 2)換気方式 換気 システムを分類す ると図-1のように,自然換気 と機械換気に大別 され ,自然換気は風力を用いたもの と 自然換気 ( 中高層階など) 温度差換気- ・ 給排気口の高低差が 換気システム 確保できる建物に適する 機械換気 ( 2 階建て住宅など) 温度差 を用いたものに分けられる.当換気 システムは集 合住宅等 を対象 としてお り,給気口と排気口の高低差 を 図 - 1 換気システムの分類 あまり取れないため,温度差換気の適用は難 しい. した がって,自然エネルギーである自然風 を有効利用できる 風力換気 を選択 した. ( 3 ) 開発要件 ① 自然風の風連に左右 されず ,2 4時間安定 した換気量 を 得 る. ②扉等の開閉障害 を生 じない. ③ イニシャル コス トを可能な限 り抑 える. ④省エネルギー性が高い. ⑤単純な構造 ,メンテナンスが容易である. (4) 目標性能 現状 の集合住宅 を考慮 し,床面積 は8 0m2 ( 天井高 2. 4m) と想定 し,1時間当た り0. 5回の換気回数 に相 当 す る約1 0 0 m3/ hの換気量 を確保で きる性能 を有す るもの とす る.また ,2 4時間の うち,概ね1 2 時間以上 を自然風 により賄い,残 りを機械換気 と併用するもの とす る. §4.システム概要 4-1 システムの原理 当換気 システムは給気用および排気用の貫通ダク トと それ らか ら分岐するダク トにより構成 されている.給気 用貫通ダク トの端には逆流防止 ダンパが設置 され ,風上 か ら取 り込 まれた空気は直接風下側に排気できない ( 居 室 を介 さないと排気で きない)構造 となっている.また, この逆流防止 ダンパは,ベランダ側が風上の場合 ,図- 2①のように,ベランダ側か ら外気 を取 りこみ ,共用廊 下側か ら排気 を行 う.共用廊下側が風上の場合はその逆 ( 図 -2②) となる. これ によ り.風 向に左右 されず , 安定 した換気性能 を確保す ることが可能 となる.ただ し, 無風時および弱風時には,換気量不足 をきたすため,補 助 フアンを稼動 させ ,図- 2③のように機械換気 を併用 させ る方法 も考 えている.なお,一般 に排気 ファンが稼 動す ると居室内が負圧 になり,扉等の開閉障害が発生す るが,当換気 システムでは,補助 ファンの稼動時に給気 用貫通ダク トの両端 より外気が導入 されるため,住戸内 は負圧にならず ,この間題は発生 しない. 4-2 各部材の概要 ( 1 )外気取入口 風 を取 り込 みやす い形状 の外気取入 口 を得 るため , 図-3に示す外気取入口を作成 し,その特性の比較実験 を行った.実験の結栄 ,すべての風向に対 し,大量かつ 24 ③補助フアンを稼働 した場合 4時間 図 -2 自然風を利用 した2 換気システム概念図 自然風 を利用 した2 4時間換気システム 西松建設技報 vOL. 23 安定 した給気が得 られ ,また,メンテナンス性が優れて いるとい う観点か ら, 図-3③の形状の ものを選定 した. これ を改良 し,写真 - 1に示す外気取入口を試作 した. 現在 ,さらなる小型化 を目指 して改良を行 っている. ( 2)風量調整逆流防止 ダンパ ( その1) 屋 外 屋 外 壁 面 づ 琵ト 1 だ 「 G ,メ ① ガ イ ド な し ッ シ ュ メ ッ シ ュ + ガ イ ド 屋外 外 ト +ガイド ② 当換気 システムの風量調整逆流防止 ダンパ ( 写真 - ③ 屋外 屋外 ④メッシュ+ガイド ⑤メッシュ+ガイド 2:以下CVD)は下記の4 つの特徴 を有 している. ( D逆流防止機能 ・- 給気用貫通ダク ト内の外部風の通 り抜けを防止す る. ②風量調整機能 - ・目標 とした換気量である1 00m3/h 図-3 検討 した外気取入口 を多少超 えたあた りか ら急激 に圧力損失が高 まり,風 量制御が行われ る ( 図 - 4). これにより,強風時の 外気の過剰な取 り入れを防止する. ③低圧力損失 ・- ・従来の逆流防止ダンパ は無風時に ダンパが閉 じる構造であるため,少風量時の圧力損失 が大 きくなる.当ダンパは無風時にダンパが開 く構造 であるため ,少風量時の圧力損失が小 さく,弱い自然 展 をも効率的に取 り込む ことが可能 となる. ④ 自己制御機能 - ・ダク ト内の風速によりダンパ角度 が自動的に変化す るため ,風量 を制御す るための設備 や配線が不要である.また,逆風時には,逆流防止機 能が働 く.C VDの動作概念図を図-5に示す. 写真 -1 外気取入口 ( 3)補助 フアン 一般の機械換気 システムでは,外壁 に設けた排気口に 風圧がかかった状態で も排気が可能な容量のファンを選 定 している.このため ,ファン容量が大 きくなり,排気 口に風圧がかかっていない場合 は過剰換気 となる.また, フアン容量が大 きくなることか ら消費電力が増大す る. 一方 ,当換気 システムでは,無風時 もしくは弱風時のみ 補助 フアンを稼動 させ るため,排気口にかかる風圧 を考 慮する必要がない.また,無風時には,貫通ダク トの両 端か ら排気 され るため ,貫通ダク トを通過する風量が半 減す るため ,圧力損失 は小 さな もの となる.その結果 , 補助 フアンは,通常の機械式24時間換気 システムにおけ る排気 フアンの1 / 2 程度の小 さな容量 もので対応可能 と 考えている. 補助 ファンの発侍の制御は ,給気用貫通ダク トを通過 する風速により制御す る方式 を採用 した.この制御方法 は,給気貫通 ダク ト中央部で気流速 を測 るため ,ベラン ダ側 ,共用廊下側の どちらが風上になった場合で も同等 写真 - 2 風量調整逆流防止ダンパ 回転軸 主羽根 0 = 巨 ト ッ 悉 E × 8 6 ②少風盈時 :主羽根、補助 根 ㌔ 司た 2 「■ 0 C E ユ根 ニ ヨ コ 風風 [ 巨 : 左 補 助 羽 コ ④大風盈時 :主羽 50 100 ③ 中風盈時 :補助羽根のみ動 く 共ほとんど動かない j 斯く 郷㌦ 4 ( a . )水 質 只 J T パ ー ス ① 無 風 時 の ダ ン パ ー 羽 の 状 況 重 ヨ羽 風C ∃ ]風 補助羽根 150 送 風 丑 (m3/h) 図 -4 風量調整逆流防止ダンパの送風量と圧力損失の関係 共に閉 じる 、 根 ⑤逆風 時 :主羽根、補助羽根 共に閉 じる 図 -5 風量調整逆流防止ダンパ動作概念図 25 西松建設技報 VOL. 23 自然風 を利用 した24時間換気 システム ( その1) o o q > 4 1 . 0 o 2 Q =2 l 1 . 6 7 1 V o 0 ( L J 毒)0 0 8 0 40 6 叫 頭 〉 く X ) く ー 1 0. 8 //ノ ス 笠o?6 6 0 ) く 一 一 → . . , . 一 . 3 6 1 9 2 -8 5 1 2 月 1月 月 一 博鼓 一 ′ 〉 く 叫 I .4 , < * ◆I .醍 一′ 0. 2 0 2 × ×× I Ⅶ 」 . 0 0. 0 1 2 3 4 風速 : ∨ ( m/ち) 5 6 7 図-6 風速 と換気量の関係 ( 南風時 :大和住宅) 写真 - 3 大型風洞での実物大模型実験風景 0. 00 1 . 00 2, 00 3. 00 4. 00 5. 00 風速( m/S) 図- 7 1 996年 風速頻度分布 ( 東京) 写真 - 4 大和住宅 ( 7階で実験 を行 った) な気流 を感知でき,かつ ,構造が単純であるとい うると い う利点を有 している. ( 4)排気系統 排気系統では,チーズ部分 における貫通ダク ト内の気 流の誘引効果 を利用 して室内空気 を排出す る方式 を用い ている.現在 ,排気効率 を向上 させ るため ,さらに ,2 つの排気方式について実験 ,検討 を行っている. $5.換気性能 当換気 システムの換気性能 を把握す るため ,建設省建 築研究所の大型風洞実験施設 を用いた実物大模型実験 写真 - 5 当換気システム実験風景 ( 大和住宅) ( 写真 -3:最大風 連5 m/ S )および当社大和社宅 を用い た実験 ( 写真 -4-6) を行 った.風洞 を用いた実験 で は,主に各部材の性能 を把握 し,大和社宅での実験では, 建物外部の風速と当換気システムの換気量の検討を行った. m/Sの時に 目標 とした 風洞実験の結果 ,外部風速が3 換気量 で ある1 00m3/hをほぼ確保 で きることを確認 し $6.あわりに 大型風洞 を用いた実験および実在建物 を用いた実験 に より,当換気 システムの性能 を把握す ることがで きた. 今後は,その他の諸課題 について充分検討 を行い ,早期 実用化に向け細部を詰めてい く予定である. た. しか し,大和社宅の実験では,この換気量 を確保す るためには4 m/ Sの外部風 が必要であるとい う結果 とな 当換気 システムは ,平成9 年度か ら建設省建築研究所 った ( 図 - 6).図- 7に示すように,東京で3 m/ S の風 と共同開発 を行い ,さらに,平成1 1 年度か らは㈱ユニ ッ が吹 く頻度 は約5 0%,4m/ Sの風 が吹 く頻度は約2 0%で 者共同で開発 を進めているものである. クスを交 え、3 ある.電力消費量 をさらに削減 させ るためには補助 ファ ンの発停頻度 を抑 える必要がある.このため ,システム m/Sの 自然風で必要性能 全体の圧力損失 を低減 させ ,3 が確保できるように改良を加 えていく予定である. 26
© Copyright 2024 Paperzz