南スーダン独立から5年 戦闘ふたたび、480万人が人道危機に

vol.16 No.
64
南スーダン独立から5年
戦闘ふたたび、480万人が人道危機に
Vol.16 No.64/2016年11月15日発行
ユニセフ南スーダン事務所
モニタリング評価担当官・
幸村真希さん語る
7 月、首都のジュバで 5 日間ほど政
権内対立による戦闘が起こってしまい
ました。2013 年 12 月に勃発した内戦
は去年 8 月に和平合意ができ、今年
2016 年 4 月には暫定政権が樹立した
ので、前へ進むのではないかという機
運がありました。避難していた人も元
の村へ戻り始め、私たちも命を救う緊
急人道支援から落ち着いた国づくりの
ための支援へ移行するという希望があ
りました。それが、すべて元に戻って
南スーダンで 2016 年 7 月に行われた栄養状態の緊急調査(MUAC)
。5 歳未満児の二の腕中央部外周を測定し、
栄養不良児には治療を行う。Ⓒ UNICEF/UN027026/Gonzalez Farran
しまいました。
ユニセフも緊急の対応が求められて
ただ個人の人生というは何があっても
戦闘後、国外退避という措置が決
います。南スーダン事務所に RRM
必ず前に進むと思います。大きな紛争
定され、私は隣国ケニアのナイロビに
(Rapid Response Mechanism)とい
になって何千、何万人単位のデータは
移りました。空港に行くまでの様子は
う仕組みがあり、緊急を要する場合や、 現状を伝える大切なデータですが、そ
落ち着いていましたが、ジュバでも戦
遠隔地・治安悪化で NGO が入れない、 れは一人ひとりの集まりだと思うと、こ
闘の激しかった地域では破壊や略奪、 忘れ去られて地図にも載らないような
の仕事はやらないといけないし、やり
性的暴力が起こりました。
村にユニセフが直接支援を届けるとい
続けたい。今は本当に毎日が勝負です。
2013 年 12 月以降の紛争で国民の 5
うものです。連携する WFP(世界食
日本でもそれに共感してもらえるなら、
人に 1 人、約 240 万人が故郷を追わ
糧計画)などのヘリコプターで現地に
忘れずにいてほしい。
(聞き手・近藤)
れています。7 月の戦闘を機に隣国ウ
入り、スタッフは野営をしながらひた
ガンダの難民キャンプへ 7 万人以上が
すらワクチン接種や栄養不良児の治療、
流出。国内では、住民は親戚や知り
水・衛生関連の物資配布といった支援
合いのところに身を寄せたり、教会や
を行っています。R R M の 合言葉は
学校、あるいはブッシュや野原といっ
“No regret policy”
。
「あのときああして
た、本当に何もないところに戦闘を逃
おけば」という後悔は、南スーダンで
れるため隠れています。
はその子はもう死んでいることを意味
国民の 40%、480 万人が深刻な食
します。そうならないために今スタッフ
糧不足に直面し、とくに 5 歳未満の
は集中的に活動をしています。
重度栄養不良児が 36 万人いると推定
アフリカ全体が成長へと向うなか、
されています。加えてコレラやマラリ
南スーダンはいつまでこんな紛争をし
アが流行するシーズンであり、はしか
ているのかと残念に思います。前に進
の感染拡大も懸念され、まさしく人道
んでいるのかといえば、国としては難
危機という言葉どおりの状況です。
しい状況にあると言わざるを得ません。
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contents
活動フォトニュース この人に聞く 第 7 回
柴田紘一郎さん
活動紹介 遊び道具づくり
活動日誌(8 月~ 10 月)
幸村真希さん
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