FLAT500 - モーターファン・イラストレーテッド

新しいクルマは 、
「 発 想 」が 生 み 出 す
by 国政久郎
サスペンションからアームをなくしてみたら…
FLAT500
PHOTO:BOEING FIGURES:萬澤琴美
(Kotomi MANZAWA)
フォーミュラのフレーム
デア
このアイ
よ!!
面白い
市販車の
場合の
ボディ
ストラット
アーム
非常にシンプルだが 、理 に適った機構 だ
「アームを廃した」のが大きなポイント。通常は1軸をもとにして揺動させているが、
ロワーアームやアッパーアームを廃して、直線だけで上下動させてタイヤを支えてい
る。昔のスライディングピラーに似た形式だね。もっと簡単に言えば、車体につい
た1本のパイプが伸び縮みして車輪ごと上下する。
2輪のフロントフォークをシャシー
につけたようだとも言える。格別新しくはないが、シンプルでとても現実的なアイデ
アだ。重量増加を心配しているようだが、ロワーアームやボールジョイントがなくなっ
て軽量化されたことによるメリットの方が大きいね。
今月のシャシーコンストラクター
NAME: PopGear
OCCUPATION: 自動車 メーカーエンジニア
AGE: 28
車両コンセプト :『FLAT500』ってどんな車両?
上のフィアット500 の図のように現在の自動車やフォーミュラーカーのサスペン
ションには必ずアームがあります。今回 Formula MFiのサスを考えるにあたっ
て「アーム」を取り払い、ボディ構造の一部としてストラットとフレーム(モノコッ
ク)を一体化させることで設計の自由度を上げました。アームがなくなるとリン
クがなくなるのでアライメントを一定に保つことができます。さらに、ロールセ
ンター=重心高となるので、サスペンションの「ロール抑制」という仕事をなく
すことができて、よりしなやかな乗り心地が実現できると考えています。飛行
機の車輪にもアーム類は存在しないので成立するのではないでしょうか? た
だ、水平/回転方向に対する剛性を確保するために重量が増加してしまうのと
いう課題が残ります。
剛性にも影響 する角度のつけ 方
正面から見た図。点線で囲まれているのがストラット部だ。路面の良いところ
を走る条件なのであまり気を遣わなくてもいいが、剛性にも影響するのでどの
くらいキャンバー角やキャスター角を持たせるのか聞いてみた。
「キャンバー角
は0 度-マイナス1度とし、前輪のキャスター角も5度程度で、転舵時のキャン
バー角は1度以内としたいです。路面に対して常にタイヤをまっすぐにしたいが、
キャスター 0は現実的でないので、このくらいをイメージしています」この数
値なら問題ないね。傾きが大きいとトレッド変化が出すぎるが、うまく傾きを
つければ剛性面で有利。
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的に
より現実
よう
考えてみ
国政久郎 の 総評
発想力
ホイールの中にスライディング機構を設けるという
案はどうだろう?(下図) 軽い車体なら十 分に考
パッケージング
えうる。それにしても、今回の案が実現すればサス
サスペンション
ペンションは機構分の空間しか取らなくなり、車の
スペース効率を飛 躍的に向上させられる。構 造も
シンプルだから用途を明確にすれば使い道がありそ
アームがなく、垂直に上下して舵も効くというのは航
う。学生フォーミュラは簡単な構造を嫌い、リンク
空機の脚に近い。ジオメトリー変化も少ないからロー
機構を多数設けてやたらと複 雑に作る傾向が強い
ルセンターの移動量は関係なくなり、車高変化だけ
が、
「シンプル」と「簡単」は違うということが今
になるから安定性が出せそう。さらにストローク量に
回のアイデアを見てわかってもらえただろうか? 比例して質量が増加していくから最 低限必 要なスト
必要な機能を満たすために項目を並べ、それに近
ロークを見切れば車重も軽くできる。Formula MFi
いものを突き詰めていけば新しいアイデアが浮かん
のコースなら80mm 程度で足りるだろう。それなら、
でくる、その代表例が FLAT500じゃないかな。
アイデア 募集中!
あなたもシャシーコンストラクターとなってフォーミュラカー
をデザインしてみませんか? 車両全体でもひとつのパーツだけでもOK。
今までにご応募
いただいたアイデアの改良版でもOKです。
イラストまたは
図面に簡単な説明を添えてご応募下さい。
発想は自由!
レギュレーションなどの詳細はVol.73またはMFi公式ウェブ
サイト
(http://motorfan-i.com/)
をご覧ください。
[ 応募先 ]
<郵送>〒160-8547 東京都新宿区本塩町19
株式会社三栄書房
モーターファン・イラストレーテッド編集部 Formula MFi係
<メール>[email protected]
<MFi公式ウェブサイト>http://motorfan-i.com/
国政案:スライディング機構 &転舵軸 をホイール 内 に
拡大図
正面図
ストローク
ナックルアーム
ホイールのリム
シリンダー
ストローク
地面
ホイール内にスライディング機構を設けて転舵軸も兼ねさせる。シ
リンダー内にオイルを満たしてロッドを貫通させ、ショックアブソー
バーごとストロークさせる。ストローク量が少なければ実現可能。
パンタグラフ 式 のステアリング伝達機構
車体 と一体化したストラットの断面を見てみよう
上はストラットの断面図。飛行機は油圧で機体を支えているが、FLAT500
は金属のばねを使って車体を支える。筒内にオイルも入れて、ショックアブソー
なり
これはか 。
だね
現実的
航 空 機 のラン ディングギ アに
ついているパンタグラフ(右)
。
実は自動車にも採用例があり、
トヨタの初代センチュリーの脚
(上)にもついていた。ストラッ
トの頂点が回転するとパンタグ
ラフが連動する仕組みだ。
バーとして機能させるという考えだね。筒が丸いと回転方向の止めが気になる
が、PopGearさんは筒下部のケース側とロッド側に各々歯を設けて、互いが
勘合することで回転を止める機構を考えているという。働くクルマにありそう
だけど、単純でわかりやすい。他にも飛行機のランディングギアについている
パンタグラフをつけるという案もあるね。筒がずれて動かないし、ステアリン
グを切る時も上からうまく力を伝えられる。
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