犬にかまれたら?ヘビやサソリは?発熱、下痢は?

犬にかまれたら?ヘビやサソリは?発熱、下痢は?
今回は応急処置についてお話しします。ミャンマーでは野犬がうろうろしていますし、日本では
見たこともないような巨大なヘビやサソリもいます。蚊に刺されればデング熱の可能性もあり、ひど
い下痢ではアメーバ赤痢や腸チフスの可能性もあります。
そんな時、緊急時に医師がいない場合、家族はどのように対処していけばいいのでしょうか?
頂いたご質問に順を追ってお答えします。
1. 野良犬にかまれた時
一番恐ろしいのは狂犬病でしょう。
WHOが定めている処置の基準によりますと、傷のない皮膚をなめられた程度であれば
処置の必要はありません。狂犬病ウイルスは 唾液中に存在しますので、唾液が傷口に触
れ血中に入らない限り安全です。
直接皮膚をかじられた、出血を伴わない引っ掻き傷、あるいは傷のある皮膚を単になめ
られた場合では暴露後のワクチン接種を開始します。これはかまれたあとに6回ワクチンの
追加接種を行うものです。
1カ所以上の咬傷や引っ掻き傷や粘膜をなめられた場合は、上記の暴露後接種に加え
狂犬病免疫グロブリンを受傷当日中にできるだけ早く投与します。狂犬病免疫グロブリン
は日本では入手不可能ですが、ヤンゴンでは以下の薬局で入手可能です。
Select Pharmacy No.45 Pyay Road Mayangone T/S Tel:662749, 665568
1 バイアル、47,000 チャット
午前9時から午後8時半、満月の日は休業。
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また、破傷風感染の危険性を考慮し、破傷風トキソイドの接種歴に応じて、破傷風トキソ
イドの接種も必要となります。
しかしながら中国の地方都市で外国人一家4人が犬に咬まれ、上記のWHOの暴露後
接種スケジュールにそって、ワクチン接種していたにもかかわらず、3人が受傷後10~14
日で死亡した事例がありました(本症例は確定診断がついています)。北京WHOの見解
では、ワクチンが偽薬だった可能性もあるが、全身数カ所を咬まれ侵入したウイルスの量
が大量で、ワクチンが奏功しなかった可能性も否定はできないとのことでした。この事例で
は狂犬病免疫グロブリン接種は受けておりません。
狂犬病で発症した動物は2週間以内に死亡しますので、観察が可能な場合、2週間観
察しても咬んだ動物が死亡しない場合は狂犬病ではないので、暴露後接種を中止しても
良いです。 もし犬が捕獲できれば、の話ですが。
また狂犬病ではないものの犬にふくらはぎを咬まれ、数時間後に失血死した方もおられ
ます。出血が多量な場合、傷口を強く圧迫し、大使館がHPで紹介している医療機関を受
診する様にして下さい。とにかく野犬には近づかないことです。
2. ヘビにかまれた時
ヤンゴンでは2種類のヘビトキソイドが入手可能です。Cobra や
Kraibs は神経毒用の解毒薬を、Viper(まむし類)では血管毒用
の解毒薬を注射します。これらは政府の公的病院で注射できま
すので、Government Hospital 系を受診して下さい。
MPF(Myanmar Pharmaceutical Factory)製で 1 バイアル20FEC
前後です。個人で入手はできません。購入には大使館の公式
レターが必要であり、時間がかかります。
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3. サソリにかまれた時
当地にはアフリカや中東の砂漠のような猛毒のサソリ
はいません。せいぜい局所が腫れるくらいですが、ご心
配な場合は New Yangon General Hospital に Toxic
Center がありますので、そちらを受診下さい。
4. 熱が出た時(デング熱かな、と思われる時)
インフルエンザのように節々が痛く、40℃以上の高熱
が2,3日続くと心配になりますね。デング熱では普通の
採血でも、白血球数の低下や血小板数の低下などの特
徴がありますので、まず採血し確定診断をすることが大
切です。
その上で出血熱など重篤な症状が発現した場合は病
院を受診します。それ以外であれば、とにかく1週間、ご
自宅で耐え抜くしかありません。熱は必ず下がります。
5. 下痢が続く時(腸チフス?アメーバ赤痢?)
腸チフスの場合は下痢と言うよりも、発熱がひどいです。時には特徴的な発疹が出ること
もあります。これも採血でわかります。
アメーバ赤痢の場合は、経験したことのない腹痛と頻回な粘液様下痢が特徴です。
これは検便でシストやアメーバ原虫虫体を見つけることで診断できます。
腸チフスはニューキノロンなどの抗生物質で、アメーバ赤痢はメトロニダゾールなどの抗
原虫薬で治療できますし、これらの薬は市中の一般の薬局で入手可能です。
以上ですが、ご質問のある方は大使館までご遠慮なくお問い合わせください。
(なおこの医療コラムは以前のものもまとめて当館HPにてカラーでご参照頂けます。当館HPも
是非ご覧下さい。)
(文責:大使館・医務官、阿部 吉伸)
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