蛍光指紋を用いたナツメグにおけるアフラトキシン B1 迅速検知法の開発

蛍光指紋を用いたナツメグにおけるアフラトキシン B1 迅速検知法の開発
恩田浩幸 1.藤田かおり 2,杉山純一 2, 蔦瑞樹 2,佐川岳人 1, 鈴木直幸 1, 小島和彦 1
1)エスビー食品(株)
2)
(独)農研機構 食品総合研究所
【目的】香辛料中のアフラトキシン B1 を検出する手法として、HPLC や LC/MS、ELISA など
が用いられるが、煩雑な前処理や操作を要するため、産地や流通段階で実施可能な簡易・
迅速スクリーニング手法の開発がのぞまれている。本研究では、煩雑な前処理を経ずに簡
易的にナツメグ中のアフラトキシン B1 をスクリーニングする手法について検討を行った。
【方法】アフラトキシンが未検出のナツメグを粉砕した後、メタノール溶液(メタノール:
水=8:2)で振とう抽出を行い、ナツメグ抽出液を得た。この抽出液にアフラトキシン B1
標準試薬(メタノール:水=8:2)を添加し、0.0~4.0ppb(23 濃度段階)の疑似汚染試料
を調製した。各汚染試料とアフラトキシン B1 標準試薬は,前処理をせずそのまま蛍光指紋
計測に供試した。蛍光指紋は分光蛍光光度計(F7000、日立ハイテクノロジーズ)にて計測
し、測定条件の検討と蛍光指紋の特徴把握、および多変量解析の適用を行った。
【結果】アフラトキシン B1 標準試薬の蛍光指紋を計測したところ、特有の波形が確認され
た。このことより、蛍光指紋にアフラトキシン B1 の情報が含まれていることが見出せた。
さらに、蛍光指紋の測定方法に工夫を加えることで、煩雑な前処理工程を経ずに疑似汚染
試料の計測が可能となった。また、判別分析を用いることで、疑似汚染試料の簡易な汚染
濃度判別が可能であることが示された。加えて、PLS 回帰分析により得られた推定値は、実
際のアフラトキシン B1添加濃度と高い直線性を示した。これらの結果から、蛍光指紋を用
いることでナツメグ抽出液中におけるアフラトキシン B1 濃度を簡易に検知可能になると推
察された。