P-34 自己啓発力を高める人材養成システムの確立 ~看護職の多様な生き方を支援するキャリアパスの構築~ 徳島大学病院看護部 ○木田菊恵 高開登茂子 近藤佐地子 Ⅰ.はじめに ●当院は、2010年8月に文部科学省大学改革推進事業「看護師の人材養成システムの確 立」に採択され、「愛と知と技のバランスのとれ た看護職養成~自己啓発力を高め 看護実践力を目指すプラン~」 に取り組んでいる。 ●このプランは、自己啓発力を高め、看護実践力の向上を図り、自ら学び続ける自律した 看護師 を育成する取り組みであり、本院が推進しているワーク・ライフ・バランス体制を強 化・推進し、看護職の多様な生き方を支援するキャリアパスを構築する。 ●本院のキャリアパスは3段階6レベルとし、段階別の教育プログラムを開発 した。 本事業は、看護部と看護学講座が連携を図り、愛と知と技のバランスのとれた看護実践力を向上させる「教育プロ グラムを開発」するとともに、看護職の多様な生き方を支援する「キャリアパスを構築」することである。 また、それぞれの看護師が持つ能力、資質を高め、臨床現場で教育指導が効果的に実施でき、学生の実習指 導、演習、講義ができる「教育指導者を養成」することである。 特色は、看護人材成長の3要素を経験、教育、自 己啓発、「人事交流」により経験と教育を連動させ、自己啓発力を高める人材養成システムを整備することである。 Ⅱ.本院のキャリアパス 1.キャリアパス構築への取り組み ◆H22年:「キャリア」の捉え方、考え方についてアンケート調査 ◆H23年:スタンダードレベルⅠ・Ⅱの評価指標および認定基準の作成、 キャリアパス キャリア開発支援 システム(CDSS) 愛と知と技のバランスのとれた看護職養成 経験 自己啓発 教育 生涯を通じた キャリアパスを構築 自律した看護師 *学術的検討を加えながら 教育プログラムを開発 ・ポイント制導入で処遇 ・多様なキャリアプログラム ・複線型人事制度 の枠組み・段階・能力を明確にするためにニーズ調査実施 ◆H24年:人材育成に向けた評価システム・処遇システムを検討 ワークライフバランス (能力評価・実績評価等) ◆キャリア開発支援システム(CDSS)に人材育成システムとして評価 システムを 導入 実践能力向上コース ・対人援助向上プログラム ・役割拡大プログラム 教育指導者養成コース ・教育担当者育成プログラム 自 己 啓 発 力 を 育 成 教育指導者養成 人事交流 キャリア相談サロン ◆平成22年度キャリアサロン「和」の開設 平成23年度より運用開始 平成24年度運用マニュアル周知、安定稼働 人事交流 徳島大学病院キャリア形成支援センター 徳島大学病院キャリア形成支援センター (プランの総括及びキャリア管理) (プランの総括及びキャリア管理) 看護部 看護部 キャリア開発委員会 2.3段階6レベルの複線型キャリアパス プログラム開発委員会 人事交流委員会 看護学講座 評価・認定委員会 3.キャリアパスを構成する要素 ミドルレベル以上 で、複線型人事 制度を導入 1) 各キャリアレベルに求められる能力や資格の概要 2) 取得申請に必要な条件→キャリアアップを申請する際に、自らが整えておくべき、 条件 (看護師経験年数、経験分野、研修などの履修歴(ポイント数)) 3) 人事評価→実績と能力で2種により評価 評価委員会により、レベルの認定を受ける際の主な評価 ①実績評価→目標管理実績。をはじめ、研修履歴や資格の取得が主な条件 ②能力評価→看護実践能力評価および本院で求められるNICの実践力等に より評価 4) 活用処遇 キャリアパスと連動した人材育成システム 人事考課制度 評価システム キャリアレベル Ⅵ キャリアレベル Ⅴ キャリアレベル Ⅳ キャリアレベル Ⅲ キャリアレベル Ⅱ 経験 分野 年数 1.キャリアレベル 2.申請に必要な 能力の概要 条件 3.人事評価 4.活用処遇 ①実績評価 ジェネラリストに求められるキャリアレベル能力の概要 経験 取得 ポイント 目標 管理 患者ケアを 実践する 上で、組織力、先見性、情報分析を 有し、患者の治療・療養過程の全般を 管理・実践でき る。 受講 キャリアに必要 な資格 研修 患者中心の看護を 深化させる ため、部署や組織の壁を 越え横の連携を 強化を 図る 能力を 備えている 。部署の 看護実践力を 俯瞰し、部署における 看護上の問題を 明確にし、その対応策を 策定する 力を 備え患者ケアに関 ■ する 提言を 看護部門にできる 。 育成・活用システム 複雑な看護問題を 解決する 能力を 有し、併せてコミュニケーショ ン 、倫理的感受性を 確立している 。スタッフに対 して、患者中心の看護を 実践する ための方向性を 明示し、束ね動かすリーダーシップ がとれる 。また、地域の病 院等を 巻き込み患者中心の看護が遂行できる 。 教育・研修制度 看護実践能力評価 情意評価含む ②能力評価 配置制度 スタン ダードレベルの実践能力(問題解決力、コミュニケーショ ン 力、倫理的感受性)の発展に加え、患者指導、 退院支援等が付加される 。部署目標に沿った若手育成、リスクマネージメン トに参画できる 。 本院の基本となる 看護行動NIC169項目及び担当部署業務に必要な最低限の知識・スキル(問題解決力)、コミュ ニケーショ ン 力及び倫理的感受性を 身につけ、自部署で患者中心の看護が実践できる 。 処遇システム ACC及びNIC評価 3段階6レベル別の役割と能力を 明確にし、必要な経験、能力に到 達するために求められる教育(研 修)プログラムを開発 キャリア形成支援システム キャリア定義マスタ キャリアレベル Ⅰ 本院の基本となる 看護行動NIC169項目及びコミュニケーショ ン 力、倫理的感受性を 、助言・指導の下に身につ け、部署で患者中心の看護が実践できる 。 職員管理 資格情報 CDSS内 教育情報 個人レベルの データ管理 4.キャリアレベル別段階別プログラム キャリアレベルⅠ:新人研修プログラ 個人の キャリア開発 新人のレディネスと成長を確認しながら、集合教育と部署教育の連携 を図り、ホップステップジャンプと 一年かけて養成を行う。 組織の キャリア開発 キャリアレベルⅡ:対人援助向上プログラム 愛と知と技のバランスのとれた生涯教育プログラムを開発し、 対人援助向上プログラムを実施することにより安全、安心な 看護サービスを提供する。 キャリアレベルⅢ:役割拡大プログラム がん患者への自己決定への支援を強化するため、 医師とのスキルミクスを促進し、看護師が補足説明するため に求められる能力を分析し、患者家族への補足説明に求め られるプログラムを立案、実施する。 キャリアレベルⅢ:教育担当者養成プログラム 看護師を育成することのできる教育担当者を育成するために、 ①基礎的な能力②専門的な能力③教育に求められる能力を獲 得できるプログラムを構築し、短期集中講座と通年型講座など 多様な教育技法により体験しながら、学習をすすめる。 問題解決能力 倫理的感受性 コミュニケーション能力 Ⅲ.まとめ 1.キャリアパスを策定し、全看護師に周知することにより、自分がどのようなスキルや 経験を積めば次の段階に進めるのかを明らかにし、一人一人の看護師がキャリア デザインを描けるように、看護師のスキルアップや仕事に対するモチベーションの 向上に寄与できるキャリアパスを構築した。 2.キャリア開発支援システム(CDSS)を改変し、キャリアアップするための要素や、キャ リアレベル毎の能力の概要を示し、見える化したことにより、看護師が自分の立ち 位置を理解しキャリアパスへの理解が深まった。 3.キャリアサロンの開催は、参加した看護師のやる気を引き出し、就業目的の明確化 を強化した。 4.今後、段階別プログラムを充実し、「愛と知と技のバランスのとれた看護職養成」を 推進していく。
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