自ら考える子 - 札幌市立三里塚小学校

《平成 22 年度三里塚小学校の研究》
【メインテーマ】
「自ら考える子」
【サブテーマ】
◎考える楽しさを実感し、主体的に考える子を育てる授業
【キーワード】
① まとめる(個人)
② ふかめる(集団)
【ブロックテーマ】
低学年ブロック:楽しんで
中学年ブロック:進んで
考える子
高学年ブロック:よりよく
考える子
考える子
【キーワード】
①まとめる(個人)
②ふかめる(集団)
①まとめる
21年度の「考えをまとめる」のは、授業の流れからいうと終盤であった。しかし、今回提案す
る『まとめる』は21年度でいうところの「考えを持つ」の意味も併せ持ち、必ずしも授業の終盤
をイメージしたものではない。つまり、子どもたちは授業の冒頭場面でまず課題を認識する。(認
識させるための教材化の工夫や教師のかかわり、すなわち21年度のポイント「個への働きかけ」
が重要であることはいうまでもない。
)そして自分なりの「考えを持ち」
、整理して「まとめて」か
ら発表・交流の場面に臨むことになる(ことが望ましい)。さらに、発表・交流の場面を経て、授
業の終盤にもまた「(学習をふり返りつつ、わかったことや自分の変容などを認識し)まとめる」
場面がやってくるのである。この2つの場面はまさに、個人の思考に委ねられる部分であるといえ
る。欲をいえば、ここは「書く」場面であってほしい。そして発達段階に応じて、みられる「子ど
もの姿」は変わってくる。しかし、高学年はこうあって(なって)ほしい、というゴールとしての
姿を共通化し、だから低学年ではこうあって(なって)ほしいし、中学年ではこうあって(なって)
ほしい、と追っていくことが必要である。問題は、2つの意味を持つならば、授業を作る時(研究
としての主張を明確にしていく時)、どちらか1つを主眼にしていくのか、2つともに言及すべき
なのか、の部分である。ブロックごとに軽重をつける手もあるが、そうなればキーワード設定の趣
旨に反する。難しいとは思うが、ここは両方に言及する方向でいきたい。
②ふかめる
こちらは21年度のキーワード「考えを広げ深める」のことであるととらえてよい。表現力が生
かされる部分でもあるし、21年度のポイント「思考の揺さぶり」が生かされる場面でもある。単
純にとらえると「広げる」は「多様性」、
「深める」は「深化、再認識、再構築、明瞭化」と考えら
れるが、今回「ふかめる」としたことで、最終の目指す姿はやはり「深化、再認識、再構築、明瞭
化」とおさえたい。21年度の低・中ブロックからは、「広げることはできたが、深めるところま
では…」という反省が出されていた。しかし、①同様、「ふかめる」にもゴールとしての姿を設定
することは可能であるし、そうすれば自ずと低・中学年で目指すべき姿を設定していくことも可能
となる。考えを出し合う中で、その多様性に気づくことも「ふかまり」とおさえられるし、さらに
いえば、自分の考えは他の子と「同じ・違う」という判断が明確にできるとすれば、それもまたそ
の子の考えが「ふかまった」としてよいと考える。こちらは「(聞いて)
(考えて)話す」場面とお
さえたい。
ここで忘れてならないのは、発達段階に応じて設定されるであろう「子どもの姿」は必ずしも全
員にみられるものではない、ということである。低学年であっても中学年の姿を実現している子
(個)もあるだろうし、逆に高学年であっても中学年レベルの子(個)がいてまったくおかしいこ
とではない、ということである。大切なのは、日々の授業実践をとおしてその多様な「個」を少し
ずつでも上のレベルに引き上げてあげることであり、さらに学習集団としての底上げを図ることを
も同時に目指しているということである。
【ブロックテーマ】
低学年・どんぐりブロック:
「楽しんで」
中学年ブロック:「進んで」
高学年ブロック:「よりよく」
(低学年ブロック:楽しんで考える子)
明快に、考えることを「楽しむ」ととらえる。考えることの良さを教師から教わりながら、考え
ることにひたってほしい。「楽しい」からより考えたい、という気持ちにつながればなお良い。学
習の中で「楽しんで考える」ための教師の支援が重要となる。キーワードと関連させて考えると、
3点のうち特に「自分の考えをもつ力」を重視して育ててほしい。他の2点の力についても、他の
子の考えに対する意識や、考える上での基本的な約束を理解させたり、経験させたりしながら、く
り返し指導していくことが大切であると考える。
●今年度はキーワードに関して指定したり軽重をつけたりはしない。21年度の反省から考えると、
楽しむためには「本時や単元に対する見通しを持たせる」ことが効果的であるとおさえられている。
また「具体物」や「根拠となる言葉」のおさえも重要である。
(中学年ブロック:進んで考える子)
単純に、「積極的に」「●能動的に」「●自分事として」考える子ととらえる。その積極性のもと
は、考えることの意義を知り、学習のつながりを意識することにあるのではないかと考えられる。
1つの授業で学習は終わりなのではなく、考えて得たことが後にいきていくことに気づき、意欲的
に活用しようとすることが「進んで考える子」であるといえる。そのためには、自分または、自分
たちで考えてきたことを簡潔に整理し、身につけることが重要となる。キーワードと関連させて考
えると、3点のうち特に「考えをまとめる力」を重視して育ててほしい。「自分の考えをもつ力」
は、継続的な取り組みにより、低学年より早く浸透していくことが予想される。「考えを広げ深め
る力」は、子ども同士で考えを広げ深めるという高いレベルを欲張らず、教師からの支援を積極的
に行い、(●広げ深める場面のあり方の訓練としての体験を重視)教師が認めていくことが大切で
あると考える。
●「進んで」の意味は理解できると思う。21年度話題となった部分として、中学年が「考えをま
とめる」を重視して取り組んだ点が挙げられる。反省でも出されたが、表現力を生かした形で進む
ならば広げ深めることはある意味中学年にも容易であるということもできると同時に、
「まとめる」
の押さえがしっかりと共通理解されなかったことが原因となり、むしろ「まとめる」の方こそ高学
年で取り組むのがふさわしいのではないか、となったのである。繰り返すが、今年度はキーワード
をブロックに割り振りするわけではない。この「まとめる」に関しても全ブロックが同様に研究し
ていかねばならないのである。
(高学年ブロック:よりよく考える子)
低学年「楽しんで」・中学年「進んで」のさらに上に積み重なるものとして、既習事項や生活経
験に基づいて考えることができるようになってほしい。その上で互いの考えを交流していくと、よ
り多角的に意見が出たり、より論点が鮮明になったりする。その考えの広がりや深まりこそ「より
よく考える」状態であると言える。「自ら考える子」を目指す上では、子ども同士の交流が基本と
なるが、そこに、教師の適切な支援が加わることで、一層「よりよく考える」ことができるように
なる。キーワードと関連させて考えると、3点のうち特に「考えを広げ深める力」を重視して育て
てほしい。他の2点についても、他ブロックのような取り組みを継続的に行うことで、他ブロック
より早く浸透し、「自ら考える子」に近づいていくと考える。
●これも中学年ブロックのところで述べたのと同様、
「よりよく」の意味は理解できる。ただし、
「広
げ深める」ことと同等、もしくはそれ以上に「まとめる」ことこそが、高学年の目指す「よりよく」
につながるのではないだろうか。つまり「よりよく考える子」とは、キーワードの項で述べたとお
り、個々人がまず課題を認識し、本時や単元に対する見通しを持ちつつ、既習事項や生活経験を生
かしながら整理して考え、発表・交流に備えてある程度まとめ、表現力を生かしながら他とかかわ
り合う中でさらに考えを深化させ、多様性にも気づき、交流を経て自己が変容したことを自覚し、
それを自ら記述できる状態であると考えられるからである。
これらの段階を経て、我々が育てたい、
「考える良さを実感し、主体的に考える子」すなわち「自
ら考える子」に到達していくと考える。
◎「教材化」にあたっては…
・学習する必要性、必然性があり、学習したことのよさを感じ取れること
・子どもの生活経験や実態に即し、現実性のあること
・子どもに驚きや不思議さ、新鮮さを感じさせること
・解決にあたって適度の難しさを感じさせること
・子どもの興味、関心、学習意欲を喚起すること
・既習事項を活用できる題材、場面が多くあること
・多様な見方、考え方、活動が可能なこと
・一人ひとりの活動が互いに関連し合う学習場面があること
・学習の広がりが期待できること
・教師のねらいが明確化、焦点化されていること
(子ども同士のかかわりを重視した、教師のかかわり)
①「みんなはどうだろう」という気持ちを高め、全体に広め、深めること、すなわち
交流場面での教師のかかわり
・自分の考えを主張するとともに、相手の考えを受け入れる基盤づくり
・交流の方法を熟考し、交流の方向付けを的確におこなう
・互いの考え方の違いに気付かせ、その良さを認識させる
②自分自身と仲間の変容に目を向けさせること、すなわち
ふり返り場面での教師のかかわり
・ふり返りのファイル化~ふり返り用カードの活用による記録化
・ふり返りの発表~全体交流による共有化
・単元や2期4節の初めと終わりでの自分や仲間の変化に気付かせる
・その子の「良さ」を積極的に肯定する
◎研究からめざすもの
めざす子ども像
◎自分の思いや考えをしっかりもてる子
・相手の考えや話をしっかり聞ける子
・自分の思いや考えを積極的に表現できる子
およそ学校教育におけるすべての活動において、常に意識し続ける必要がある。また、これまで
の成果の上に立ち、
「他とのかかわり」を大事にしながら取り組み、
「相手の立場や気持ちを理解し
て行動できる子」でもあってほしい。
めざす教師像
・疑問や課題をもたせ、解決する意欲を育てる教師
・交流の仕方やその良さを学ばせ、楽しさを実感させる教師
・個々の思いや考えの表現方法を学ばせ、育てる教師
あたたかく確かな目で子どもをとらえ、一人ひとりのもっている「良さ」を一層伸ばしていくこ
とができる教師でありたい。
めざす授業像
・問題意識をもち、主体的に学習できる授業
・子ども同士が学び合い、高め合う授業
・一人ひとりの思いや考えが、生かされる授業
日々の授業実践の中で、常に意識されるべきものとしておさえたい。
◎学習場面に見られるめざす教師と子どもの姿
学習場面
問題の把握
と予想
子どもの姿
教師の姿
・題材に興味をもったり、驚いたりして、 ・教材を提示する
目を輝かせている
・自分の考えや思いをもとうとしている ・問題を共通化させる
・課題を理解している
・相違点や疑問点を明確にしようとして ・意見を主張する場面を作る
いる
問題解決の方法
と見直し
・自分の意見を述べ、友達の意見を真剣 ・内容に即した解決方法と手
に聞こうとしている
順を明確にする
・それぞれの意見の根拠や理由を知ろう ・感情移入の場を作る
としている
・それぞれの意見の中から、根拠をもっ
て、よいものを決めようとする
・友達の考え方や取り組みの良さを認め ・認め合う場面や助け合う場
る
応用と発展
面を作る
・良い意見をもとに「わかろう」として ・納得の場面を作る
いる
・
「わかった」
「できた」という喜びが見
られる
・問題を解決したことに、意義や価値を ・達成感に満たされた場面を
見出している
・新たな疑問や問題をもち始めている
作る