発表01:ドラッカーの方法序説

第 18 回
ドラッカーの方法序説
ドラッカー「マネジメント」研究会
2010.11.18.
丸山有彦
発表<01>
2010/11/18
■ドラッカーのデカルト批判
(引用は一部を取り出し編集したもの)
『変貌する産業社会』1957 年
われわれはいつの間にか,モダンと呼ばれる時代から,新しい時代へと移行した。われ
われの世界観は変わった。モダンの世界観とは,17 世紀前半のフランスの哲学者デカルト
のものである。 →穏やかな言い方ではあるが,絶対的拒否である考えられる。
『産業人の未来』1942 年
ルソーからヒトラーまではまっすぐに系譜を追うことができる。ルソーの思想は,個人
の理性,個人の自由を認めるそぶりさえ見せなかった。ルソーと戦うには,ルソーが拠り
所としていたものを直接攻撃しなければならない。 →その拠り所がデカルトである。
■デカルトの方法序説
≪デカルトの理性についての考え方≫
cf. 木田元『反哲学入門』等
①理性は神がすべての人間に平等に配ったものである。
②したがって,理性だけを使って考えれば普遍的な思考ができる。
≪デカルトの方法≫
cf. 木田元『反哲学入門』等
①肉体を通じて入りこむ感性的な観念を全部排除し,残った確かな理性を拠り所とする。
②そのために,「方法的懐疑」に基づいて一切を疑い,疑わしきを排除する。
≪方法的懐疑-4つの準則≫
①私が明証的に真理であると認めるもの以外,いかなる事柄でも真実とは認めないこと。
②検討しようとする難問をよりよく理解するために、多数の小部分に分割すること。
③最も単純なものから複雑なものへ認識を進め、先後なき事物間に秩序を仮定すること。
④最後に完全な列挙と、広範な再検討をすること。
■ドラッカーの方法序説
≪ドラッカーの前提とする考え≫
(1) 問題を扱うには,分析的論理とともに知覚的認識が不可欠である。(『新しい現実』)
私には常に,知覚は論理に劣らず重要で,洞察はいかなる哲学「体系」にも劣らず
重要と思われた。(『ドラッカー全集』序文)
cf. ウィリアム・ジェームズ『哲学の根本問題』 ←「プラグマティズムの思想」
私達が事実を知るのは知覚の流れにおいてであり,感覚は排除できない。知覚は
思考を刺激し,思考は知覚を豊かにする。私達は,モノをよく見るほどよく考える。
(2) 人間が物事を知り尽くすことは不可能である。
私が 30 歳代だったとき,政府は全知全慈であると信じるのが流行した。私は
こうした信念は妄想だと常に考えていた。どんな「偉大な体系」も最終的なものとい
うより道具としてみるのだ。私の立場はいつも多元論者で,絶対的な体系・制度・組
織と称するものは,ぞっとするほど嫌である。 (『ドラッカー全集』序文)
cf. ユダヤ人は,人間が神を知り尽くすことは到底不可能であることを知っている。
だから神についての絶対的定義を下さない。定義できなくとも,神を形容すること
はできる。
(手島佑郎『ユダヤ人はなぜ優秀か』)
≪ドラッカーの方法≫
①分析的論理と知覚的認識の相互検証。 cf. 「カンが読みを超える」…米長邦雄
②知覚されたものと他の優れた知覚的認識との相互検証。
/(全集序文)
異なった条件・文化のもとに再三生じる基本的な考え方・世界観・立場に敬意を払う。
まず必要なことは,見えるようにすることである。 (『創造する経営者』)
③フィードバックによる検証
知識が成果を挙げるものか,行為させようとするものかの検証。 /(全集序文)
私の本は皆,人を動かして行為させようとしている。人を動機づけようとしている。