情報番号:01040988 テーマ:派遣契約の中途解約や打ち切りを巡る問題

情報番号:01040988
テーマ:派遣契約の中途解約や打ち切りを巡る問題
編著者:社会保険労務士 岡田真樹((株)ACROSEED)
1.派遣先からの派遣契約解約の制限
派遣法 27 条では、派遣先が派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、
労働組合の正当な行為をしたことなどを理由として、派遣契約を解除すること
を禁止しています。
この禁止規定は、派遣労働者の人権にかかわるものですから、例え派遣元と
の合意の上に派遣契約を解除する場合であっても、それらを理由とする限り、
派遣先は契約を解除できません。
それに違反して派遣契約を解除しても、その解除は公序良俗に反するものと
して無効となります。
このように派遣先が契約を解除したとしても、派遣元は解除の無効を主張し
て契約の履行を求めることができ、さらに損害を被った場合には、損害賠償の
請求をすることも可能です。
2.派遣元からの派遣労働者保護のための契約解除
派遣法 28 条には、派遣先が下記の規定に違反した場合においては、派遣元
事業主はその労働者派遣を停止し、又はその労働者派遣契約を解除することが
できるとしています。
(1)派遣法上の違反
① 派遣先が派遣契約に違反しないような適切な措置を講じない場合
② 派遣元責任者の選任を行わず、派遣労働者の指揮命令者等に所定事項の周
知を行わなかった場合
③ 派遣元責任者の選任を行わず、派遣労働者の指揮命令者等に所定事項の周
知を行わなかった場合
④ 派遣先管理台帳の作成を適正に行わなかった場合
⑤ 派遣先が派遣先で行った検診記録を派遣元事業主に送付しなかった場合
⑥ じん肺検診結果を派遣元事業主に送付しなかった場合
⑦ 派遣先がセクシャル・ハラスメントに関し、男女雇用機会均等法 21 条に
定める雇用管理上の配慮措置を講じなかった場合
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(2)労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法及び作業環境測定法の規定であ
って派遣法第3章第4節(労働基準法等の適用に関する特例等)の規定によ
り派遣先に適用される規定に派遣先が違反した場合
上記の違反事由は、派遣法においては派遣労働者の保護や適正な労働者派
遣業の運営の確保の観点から、特に、派遣元事業主に対してこれらの違反事
由に基づいて労働者派遣の停止や派遣契約の解除を認めました。
また、派遣元事業主が、上述のような事由につき、労働者派遣の停止や派
遣契約の解除を行った場合、派遣先で派遣労働者が就労しないことによる業
務の遂行に支障をきたし、派遣先に損害が発生したとしても、派遣元事業主
が派遣先に対して債務不履行による責任を負うことはありません。
3.派遣労働者の能力・勤務不良による派遣先からの契約解除の可否
派遣契約は派遣先・派遣元事業主間で締結される経済的な取引契約であり、
派遣労働者に起因する事由での派遣先が契約を解除する条項があることも任
意となります。
例えば、客観的に就業能力が劣っているあるいは勤務態度が劣悪であるとい
う場合を解除事由とすることは合理的であるといえます。
つまり、派遣先と派遣元とで締結される派遣契約上において、業務遂行能力
や勤務態度が劣悪であるなどの事由により、就業に不都合が生じているのが客
観的に明らかである場合においては、派遣元事業主は派遣契約の目的に従った
契約内容の履行を完全に行ったことにはならず、派遣先は、そのような派遣労
働者の交替を求めるか、又は派遣契約を解除することができます。
しかし、ここで問題なのが、勤務状況や業務遂行能力の判断によって、どの
ような就業状況の場合に契約不履行となるのかというものを、派遣契約上又は
就業条件明示の際に、求められる業務遂行能力やレベルなどを具体的に定めて
おく必要があります。
4.派遣先の都合による打ち切りの可否・損害賠償の可能性
派遣元事業主としては、派遣先の一方的な派遣契約の解除の申し入れに対し
て、まず派遣契約においてそのような解約できる条項が規定されているのか問
題となります。
もし、派遣契約の解除をした場合、それが中途であれば派遣元事業主として
はその派遣労働者を雇用していく義務があるために、このような点については、
「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成 15 年厚生労働省告示 449 号)
において、派遣先の義務として下記のように定められています。
①派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をも
って派遣元事業主に解除の申し入れを行うこと。
②当該派遣先の関連会社で就業を斡旋する等により、派遣労働者の新たな就業
機会の確保を図ること
③解除を行おうとする日の少なくとも 30 日前に、派遣元事業主に対しその旨
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を予告しなくてはならないこと、予告を行わない場合は、速やかに当該派遣
労働者の少なくとも 30 日分以上の賃金に相当する額について損害の賠償を
行わなければならないこと
また、この派遣労働者の賃金 30 日分というのは最低額の賠償金額で、これ以外
に派遣元事業主が派遣契約が続いていれば収益として得ることができたと考えら
れる利益についても、損害賠償の対象として含まれるものと考えられます。
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