健脚美へのStep.3

健脚美へのStep.3♪
更新⽇:2011年11⽉1⽇ ⽕曜⽇
〜下肢静脈瘤〜 今回は福島県⽴医科⼤学 ⼼臓⾎管外科 佐⼾川弘之先⽣に、
健脚・美脚を⽬指す皆さんのお悩みをご相談させて頂きました。
まず静脈瘤というのは、⽪膚(表⾯)に近いところの⾜の静脈の圧が⾼くなることにより、静脈が部分的に拡張したり(膨ら
んだり)、伸びたり、屈曲蛇⾏するような病気をいいます。静脈疾患のなかでも、下肢静脈瘤(下肢の静脈瘤)や静脈⾎栓症
は最も多く⾒られる病気です。
⾎管には「動脈」と「静脈」がありますが、⼼臓から出ていく⾎液は動脈を通り⾝体に⾏き渡り、静脈を通り⼼臓へ戻りま
す。⾎液が⼼臓へ戻る際、静脈の内側にある「弁」が⾎液の逆流を防ぐ⼤きな役割を果たしています。この静脈弁が壊れたり
機能の低下を⽣じると、⽴っている時や座っている時に⾎液が逆流し、⾎液が淀む・溜ることで、静脈に圧がかかり、少しず
つ膨らみ静脈瘤ができてきます。⾎液が淀むことにより⾜のむくみやつり(こむら返り)が⽣じたり、炎症を⽣じたりする慢
性の進⾏性の病気です。
◆ 発症のしやすさ
・年齢…加齢とともに⾜が⾼圧にさらされる時間が⻑くなるため、発症する頻度が増加する傾向にあります。また若年者でも
⽣まれつき静脈の弁がない・機能が良くないなど、原因は様々です。
・性別…⼥性は男性より1.5〜2倍ぐらい多くみられます。⼥性は妊娠の際、⾻盤の中に⼦宮で⼦供を抱える為、そこへ⾎液が
たくさん流れることや、⼦宮により⾻盤内の⾎管が圧迫されることで静脈瘤ができやすくなります。妊娠が終わると静脈瘤は
⼀時的に軽くはなりますが、まったくなくなることはないので妊娠する度に静脈瘤がどんどん増えていく⽅が多いです。
・遺伝…はっきりした様式は証明されていませんが、リスクの⼀つにはあげられています。
◆ 主な症状
・⾜が重い・だるい・むくむ・疲れやすい・痙攣する・つる(こむら返り)
・⾜の⾎管が浮き出てみえる・⾎管が腫れて痛む
・⾜の傷が治りにくい、湿疹ができる、⽪膚が⿊ずんでくる、潰瘍ができる
(※下肢静脈瘤以外の病気からおこるものもありますので、ご注意ください。)
⼀番多い合併症には⾎栓性静脈炎があります。
これは静脈瘤のところに炎症を起こし、⾎液が固まり⾚くなり腫れて痛みます。
◆ 分類 (伏在静脈瘤(ふくざい)・側枝状静脈瘤・網⽬状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤)
下肢静脈瘤の分類というのはたくさんあります。基本的には⼤きく2つに分けて考えて頂くと分かりやすく、細い⾎管が拡張し
たものと、太くて瘤のように拡張したものです。
細かい静脈瘤は、太い静脈瘤があるとどんどん増えて混在してきます。そのため、例えばこの⽅は網⽬状静脈瘤だけです、と
いう事にはならないわけです。炎症をおこしたり、治療が必要な重症のものには太い静脈瘤が多く、細い静脈瘤は炎症や⾎栓
を起こすことが少ないので、美容的な⾒た⽬の問題が主になります。⼥性の⽅は、症状よりも美容的な部分を訴える⽅が約
6〜7割いらっしゃいます。
症状のレベルは5段階に分かれていて、3段階以上へ進むと⽪膚の症状が現れます。
■重症化してくると…⽪膚の湿疹・炎症・⾊素沈着(⽇焼け後のように⾊が⿊っぽくなる)。
■さらにそれを過ぎると…⽪膚がだんだん固くなってくる。
■最重症に…ちょっとしたキズも治らなくなって潰瘍ができてくる。
※⽪膚の病気が出てきたときは、処置をされることをおすすめしています。
←例えばこの写真で、どのレベル?
ある程度、瘤が⼤きくなってきたこの状態は初期ではありませんが、まだ段階2や3で、
浮腫・むくみの症状。いわゆる静脈瘤の格好です。
ひどくなければ放置しても?
静脈瘤があるということは慢性の良性の病気なのです。悪性の病気ですぐ⼿術しないと…というこ
とではありませんので、重症の段階ではなく、ご本⼈がたいしたことないと思って我慢できるので
あれば、様⼦をみていける病気ではあります。ただし毎⽇圧がかかり続けますので、放っておけば
少しずつ悪くなってはいきますし、他の場所にも増えてくることはあります。どの時点で治療を始
めるかということは、担当した医師の判断で違いがあることもありますが、症状やご本⼈の希望や
事情などを相談しながら決まっていきます。
◆ お医者さん選びと治療
症状が出ていて⼼配だなという⽅は、⼼臓⾎管外科や⾎管外科の先⽣へ相談すると良いでしょう。静脈の2⼤疾患には静脈瘤と
⾎栓症があります。静脈瘤を扱う先⽣には⽇本静脈学会というところ⼊っている⽅が多く、⼼臓⾎管外科の先⽣が多いです。
下肢静脈瘤など静脈瘤に対する治療としては、圧迫療法・硬化療法・⼿術とこれらを組み合わせてやります。
■ 圧迫療法 医療⽤の弾性ストッキングや弾性包帯で、適度な圧⼒を下肢に与えることで⾎液の流れを助け、余分な⾎液が溜
ることを予防します。⼀般的に⼿術や硬化療法後の治療効果維持や治療の⼀貫として⽤いられていますが、症状の進⾏防⽌や
予防⽬的に使⽤しても効果的です。毎⽇継続して履くことは⼤変ですが、⼿術をしたくない⽅などは結構まじめに履いていま
す。履きなれれば「⾜がとてもラクで良い」という声も多く、ずっとこの⽅法で様⼦をみている⼈はたくさんいます。
■ 硬化療法 問題となっている静脈の中に硬化剤という薬剤を注射で注⼊し、静脈の内側の壁と壁をくっつけて⾎液が⼊らな
いように固めてしまいます。軽度の静脈瘤の場合に有効で、硬化療法は外来にて短時間で⾏える治療です。
■ ⼿術 ストリッピングというのが標準的な⼿術で、針⾦を⾎管の中に通し引きぬいてしまいます。傷跡は5mmくらいから
です。局所⿇酔で⾏えば、術後1時間程度休めば普通に歩けますので、当⽇から⽇常⽣活は⼗分可能です。当病院では3泊4⽇
で⾏っています。
じっと⽴っていない! じっと座っていない! こまめに⾜を動かす!
⽇頃から、ずっと⽴ちっぱなし、座りっぱなしはある程度避け
ましょう。
休み時間に椅⼦に⾜をあげる・マッサージをする・こまめな運
動を意識することが⼤切です。
⾎液は⽴っていたり座っていると重⼒がかかるため、⾜先から
⾎液が充満してきます。⾎液の充満には、静脈では数分から⼗
分くらいかかります。この⾎液が⼼臓に還っていくためには、
⾜の筋⾁の運動が必要です。
この運動が”第2の⼼臓”と呼ばれるものです。例えば、ふくら
はぎの筋⾁を意識しながら、つま先を床につけたまま⾜⾸を上
下に5.6回上げ下ろしする。1回の上下の動きで、
50cc〜100cc位⾎液は上に流れますので、10回ぐらいやれば
静脈の圧はずいぶん下がります。そういう動作で⾜の静脈の圧
が下がっていきますし、リンパも流れます。このようにちょっ
とした動作で良いので、こまめに動かしていくことが⼤切で
す。※⽇本も椅⼦の⽣活が増えてきましたし、患者さんたちに
は「椅⼦に座ってTVを⾒ている時や、⼀⽇座ってお茶飲みをし
ている時などにも、コマーシャルになったら意識して、⾜を動
かしましょうね。」と話しています。他には休み時間に椅⼦に
⾜をあげることも、お⾏儀は悪いのですが効果的です。また⾃
分でマッサージしたりと、みなさんも今⽇から意識して⾏って
みてください。
Q1.圧迫療法だけで治ることはないのでしょうか。
A.弾性ストッキングなどによる圧迫療法は、あくまでも進⾏防⽌・現状維持が⽬的で、下肢静脈瘤そのものが治るわけではあ
りません。圧迫療法は、下肢静脈瘤の治療上ではとても⼤切です。⾜の薬だと思って着⽤してください。
Q2.市販の商品で、圧の⼊ったストッキングや靴下もたくさんありますが…。
A.まずは病院で医療⽤のものを処⽅して買って頂いて、圧迫圧やサイズや履き⽅などを理解していただければ間違は
ないです。ただし⼀般の商品でも、ご⾃分の⾜の太さに合わせてもらえば⼤きな問題はありません。外側から静脈
瘤のボコボコっていうのが⾒えないくらい圧迫圧があり、⾜がラクで症状が良いのであれば、効果はあります。
Q3.購⼊するうえで注意することはありますか。
A.⼤事なのは圧迫圧、それから周径(⾜の太さ)です。圧迫圧は20mmHgくらいとしてください。⼤きさは⾜(靴)のサイズ
ではなく、⾜⾸・ふくらはぎの周径をきちんと測って購⼊しましょう。オーダーメイドではないため、サイズは標準的なもの
になりますが、周径の太さで圧迫圧が規定されますので、⾃分のサイズに合わせて買わないと圧迫圧が合いません。サイズが
合わないことで、締まり具合が違う、端っこが捲れる、捲れた部分は厚くなり履き続ければその部分の圧迫が強くなるため、
むくみが強くなったり、⽪ふが巻き込まれて⽔泡が出来たりと逆効果になります。時々意識をしてきちんと伸ばして履き直す
ことが⼤事です。
Q4.どの⻑さが良い?
A.基本的にはハイソックスタイプが履きやすいです。下肢静脈瘤の症状が多く出るのは膝下ですし、ズレが少なく、直しやす
いためストッキングタイプよりラクで続けやすいと思います。太ももや⾻盤部にも症状がある⽅はストッキングタイプにガー
ターベルトをしてもらうとか、パンストタイプにしてもらうなど組み合わせをして圧迫していただいたほうが良いです。
Q5.寝る時も履くのでしょうか?
A.寝るときは横になりますので、⾜に圧はかからない為、圧迫する必要はありません。
そこで、朝履いて⼣⽅あるいは夜寝る前に脱ぐというふうにしていただいています。ただし⼊院している⽅は別で、
寝ていることが多い状況になります。このため⾎液が淀みやすくなりますので、静脈⾎栓症の予防の為に、寝ている
時も弾性ストッキングを履いてもらっています。
Q6.スポーツやマッサージは⼤丈夫?
A.例えば⾎液の塊ができる静脈⾎栓症では、注意が必要です。下肢の静脈瘤で炎症を起こしたり(⾎液が固まってすぐの時は
必ず痛みがでて、外側に近いところが⾚くなり腫れます)、太い静脈に⾎栓ができるエコノミークラス症候群では、スポーツ
やマッサージは危険な時があります。
下肢静脈瘤では、逆に⾎栓がなければスポーツやマッサージは問題ありません。⾎液が淀まないようにマッサージをしてもら
うことは良いことで、基本は⾎液を上に流すためには下から上へ筋⾁をもみほぐします。
Profile
福島県⽴医科⼤学 ⼼臓⾎管外科学講座
准教授 佐⼾川 弘之 先⽣
専⾨分野 ⼼臓⾎管外科専⾨医 胸部外科指導医
取得学位 医学博⼠
URL:福島県⽴医科⼤学⼼臓⾎管外科ホームページ
URL:福島県⽴医科⼤学佐⼾川先⽣のページ
■出⾝⼤学院等・出⾝学校 ■所属学会
福島県⽴医科⼤学医学部医学科卒業 ⽇本静脈学会(評議員、平成8年〜平成14年事務局⻑)
福島県⽴医科⼤学医学部医学科博⼠課程修了 ⽇本脈管学会(評議員)
■資格等
⽇本外科学会認定医・指導医・専⾨医 ⽇本⾎管外科学会(評議員)
⽇本胸部外科学会認定医・指導医 ⽇本外科学会、⽇本胸部外科学会
⽇本循環器学会専⾨医 ⽇本⼼臓外科⾎管外科学会
⽇本⼼臓⾎管外科学会専⾨医 国際⼼臓⾎管外科学会Union of Angiology
⽇本⼼臓⾎管内視鏡学会指導医
Specialist
⼈を相⼿にしたいという思いから医学の分野へ⼊り、ライバルも多く、スペシャリティーのある外科医に⾃分のポジションを
置きたいと思いました。
当時あんまり⼼臓⾎管外科医を選ぶ⼈がいなくて、今も決して多い⽅ではないと思いますが、そういった場所で⽇々みんな⼀
⽣懸命勉強をしているアカデミックな雰囲気に惹かれ、この分野を選びました。
悩むことは多いですし葛藤やストレスも⽇々ありますが、どちらかというとストレスに強い⽅なので…。休⽇はスポーツなど
で⾝体を動かし良い汗をかいています。家の草むしりもしますよ(笑)
Message
下肢静脈瘤は、効果療法で根本的に治すのは難しいですが、簡単な治療で様⼦を⾒ていける病気でもあります。
ですから静脈瘤=⼿術をしなければ治らないという病気ではありませんので、まず相談をしていただくような気持ちで来院し
ていただければと思います。