経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 仮説の経営技術 1.企業革新において「葛藤」は大きな壁となっている 新 時 代 に お け る 中 堅 ・ 中 小 企 業 の 存 続 ・ 発 展 の た め の 道 新 た 立な ちビ 上ジ げネ ス の 失敗の原因(割合) 完 成 度 技術論 ビ ジ ”ネ 革ス 新モ ”デ ル の 本格的 実施 1/4 企画・ 設計 実験的 取り組み 3/4 葛藤を 乗り越える 社員vs顧客、戦略vs業務、 素人vsベテラン、 旧人財vs新人財・ ・ 時期 旧時代から新時代へと変わってきている現代社会において、日本の中 小企業はまだまだ旧時代のビジネススタイルから脱却できておらずに、 時代からどんどん遅れをとってきている。このような中で中堅・中小企 業が存続・発展していくためには、新たなビジネスを立ち上げるか、ビ ジネスモデルを革新する(企業革新する)かしかない。 このような革新の取り組みにおける、ビジネスやビジネスモデルの革 新設計の仕方、具体的に取り組んでいく上での実行プログラムの作り方 は、技術的に整備されているしプロセスを確実に踏んでいけばそう間違 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 いは起こらない。にもかかわらず企業革新に結構失敗するケースはあと を絶たない。それは、我々が「戦略経営」と称している第 3 の分野とな る「革新の実践」というところに問題があるからである。すなわち、ビ ジネスモデルの設計部分より、実際に革新していこうとしている中でい ろんな葛藤が起こり、それを乗り越えることができなかったために失敗 しているケースがほとんどなのである。最近ビジネスモデルの革新のお 手伝いしてきた中で、実感的には技術論の問題が 1/4、「葛藤を乗り越え る」ことについての問題が 3/4 のウエイトを占めていると感じている。 2.企業革新における「葛藤」とは何か “企業革新”とは倍・桁違いの変化へ適応すべく、役割分担の仕方・ 仕事の仕方を抜本的に改めることを言う。過去の延長線上の取り組みと は一線を画すということもあって、それだけ関係者間における“葛藤” つまり「人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと」が至るところ で起き、それによって革新が前に向いて進まない状況に陥ってしまうの である。 *某工事会社の例 「メンテナンス・エンジニアリング」というビジネスモデルに挑戦し ている工事会社がある。この会社は、小さいながらも「工事」 「製缶」 「機 械加工」 「組立」 「電気制御回路組立」などいろいろなことをやっている。 もともとは工事だけだったのだが、積極的に工事の受注活動をやってい たら、組み付けだけでなくて、製缶や機械加工などといった仕事もやる 必要に迫られるようになった。そうこうしていたら、受注物件も複雑化 してきて「機械加工」「組立」「電気制御」と枠が広がっていった。 今まではこれらの事業が全てバラバラに行われていた。それを統合化 した「メンテナンス・エンジニアリング」として展開しようとして取り 組みを始めたが、経営者は当初からこのような考え方を持っていたもの の、それ以外の社員は「自分たちは工事屋だから・製缶屋だから」と今 までの仕事の仕方を変えようとしなかったため、流れが創れずビジネス チャンスを逃し、時代に遅れを取ってしまっていた。 *某調剤薬局の例 調剤薬局で最近、健康補助食品などが販売されているところが増えて 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 きた。「売れゆきはどうですか」と聞いたら「まずまず」ということだっ たが、正直現場からすると、在庫管理もややこしいし、できれば売れな いほうがいいと言っていた。おそらく、トップは調剤薬局が単なる医者 から指示された薬を処方する窓口であったのを、生活者の健康を支える という使命を果たす場所へと変えていこうと考えて、このようなことを 始めたのだろうが、現場には全くその想いが伝わっていなかった。 どちらの事例も、経営者の考えと現場の考えが全くすれ違ってしまっ ている。これでは新しい動きができるとはいいがたい。ビジネスモデル の革新において、「人と人との衝突」は大きな壁となって立ちはだかって いるのである。無関心や他人事、反発(何でするの)といった具合に。 3.「葛藤」の種類と乗り越えるためのポイント 革新に対してよく出てくる葛藤には、以下のようなものがある。 どのような葛藤が起こっているか ① 社員 VS 顧客(関係業者) ② 戦略 VS 業務 「我々のことを潰す気か」 とか「我々にとってデメリット 戦略部門が何か言い出したら、現業 部門はとにかく だけでメリットがない」 という反発が顧客や関係業者 「我々は振り回される」という頭が先に来てしまい、す から頻発する。 べてを否定的・ 消極的に受け止めてしまう。 ③ 若い年代層 VS 年輩層 若い年代層が新しい取り組みにおける中心人物になってくると、年輩層は表面的には協力体制であっても、 実際には動いてくれないということが多い。 ④ 素人 VS ベテラン ⑤ 旧人財 VS 新人財 最近は、ベテランよりも素人に近いような人が業績を 功労者というものが新人財に「 何も知らないくせに」 と 上げるようなことが起こっている。こんな逆転現象の キツく当たる。一方、新人財は旧人財のことを「過去 中でますます葛藤がひどくなってきている。 の栄光にすがって生きている」 という目で見る。 1)社員 VS 顧客(関係業者) ビジネスモデルの革新とは、市場・顧客との共存共栄関係の創り方を 見直すということであり、当然顧客との付き合い方を変えていくことに なるし、“別れる”という決断をすることもある。 革新時には、顧客と「新たな“得々の関係”の姿」を共通理解するこ とが必要であるし、この新たな関係がそぐわない相手とは「別々の道を 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 歩む」ことがお互いの幸せであるということを共通理解することが必要 である。しかしながら、それを社員に求めても、葛藤を乗り越えること はできない。 なぜなら、社員と顧客はもちつもたれつの関係で今まで付き合ってき ているからである。また、いまだに「御用聞き」営業をしている社員も 少なくない。このような中で、突然付き合い方を変えると言えば「我々 の仕事を取り上げるのか」と反発してくるし、その反発を社員では抑え られない。結果、一向に前に向いて進んでいかないのである。 この葛藤を乗り越えるためには、社員に顧客を納得させる考働ができ るよう、以下のような仕掛けが必要である。 新たな”得々の関係”の姿 利 益計画→ 目標売上高 企画書 戦略課題 関 係リスト 親 和 戦 略発想 作業フレームワーク 営業日常活動 自覚した課題 集 約 実行計画書 固定費 ”御用聞き”営業マンの変身 戦 略ノウハウの データベース 基準づくり 変動費 ナレッジマネージメント 中長期計 目標売上高 課 題 概要 売 上 ギャップ1 データベース ギャップ2 売 上 高 需要の 氷山 全社営業・CS 実力方法での 工夫・努力によるアップ 高 実力売上高 戦 略 手 担 当者別販売予測 システム営業 組織営業 いもづる営業 編隊営業 売 上 高 広告宣伝 担当者営業 年度 目標売上高 実力売上高予定 受注規模別得意先数 の推 年度 来 期 取引規模 部門 全社営業 TMMS 方 法 営 非 的 販 売 業 営 業 計 画 人 当 期 売れ筋 商 品の保有 前 期 クラス2 L扶 :養家族ゾーン クラス3 狙 獲 守 営 業 C選 : 別ゾーン クラス4 省力営業 P共 :存共栄ゾーン 企画提案・協働営業 クラス6 P A C L ( 力学関係) 「守」営業 新規顧客開拓のための営業 「狙」営業 キィーワード を使う ー 攻撃方針 使用ツール( ソフト ・ハード ) A I D M A 商品の物 語り ル 発 考働管理 「BSOの組織考働力」 ビジネスセンス 作 開拓ツールの開発 公開資料 同業他社 各種機関 集客イベント 計画作成 ビジネスセンス 理 念で活きる セールス ポ イント 目標 の設定 理 念の経営 お 金の使い 方扱い方 開拓先候補を絞る 仕事の 性格分類 攻撃順位の決 定 自由度別スケジュール 決定要素の検討 プロセス 管理 気付き ルール 商 人 脈づくり 品 仕 事 の 質 企 業 ブ ラ ン ド ー マ ツ ニ ア ル ル 商社・金融機関などを使う オピニオンリーダー を探す 稼ぐ人の考働 「獲」営業 自 由度の有 無 ・ 個客情報の収集 個客攻撃 カードの作成 必 須の可 否 ・ 個 客の理解 要望の察知 生涯価値提供の最適化 第 一の要望 仕事の質 AEDMの A 設計 応用力 潜在ク レ ー ム 環境を作 る 第 二の要望 期待に応 える 針 の穴を開ける アテンション(注目させる) 仕事を面 白くする技術 第 三の要望 感動を与 える 注 目させる場面と工夫 コミュニケーション アポイントをとる 聴力 注)受注規模のク ラ ス 設定は各社毎で 共感して 貰える想いや志を持つ 「狙い」の開 拓 先に近い人 脈を探す 役割を果たす 前方待機 人脈づくり 人脈活用 適正チェック 仕事が出 来る 計画考働 優先順位の算出 紹介者を探す 計画対比 責任が 果たせるか 仕事が出 来る 商品の 市場情報の収集 商品 ・ サービスで応える工 夫と努 力を行なうこと ツール ソフト 企業の セールスポイント抽出 開拓個客のリストアップ 営業とは、 個客 の困っていること、欲しいも のを察 知して、自分が提 供できる 企業理念」の物 語り 「 ツ 想 と 制 ハード 半人前+武器+理念=一人前 パートナーシップ営業 A戦 :略攻撃ゾーン 「あなただけ 」 戦略営業 クラス5 人以外 ((タダの 人+ツール )×考 働 力=一 人 前セールスマン)+想い=プ ロ・ セールスマン 順 開拓個客 位 時代 営業方式の複合化 クラス1 戦 略 注目 させるテクニックを修得 する 資料を 先に送っておく 返事の達 人 紹 介 者の紹介 で、話ししていることを告 げる 話しの組み立て 方 相連報 見ていただいたかを 問いかける 定型・定時の相 連 報 興味を示 さなかったら、 日報など 何に 興味を感 じるかを察知 する 興味を示 しそうな資料を 作って、 再度送付 するか訪問 の口実を 創る 情 報の取扱い 不定期・不 定 形の相 連 報 訪問する 異常への対 応 誘 い水商品 のプレゼンテーションを検討する エントランスビジネス 誘い水 商 品を設定す る お願い 自分を買ってもらう 反対意見 への対応 お試しバイイングに応 える 会社を買ってもらう 交渉力 商品を買ってもらう 販売可能製品 のリストアップ す る プレゼン の中で個客 の要望を収 集する 宿題 を貰う、次回の アポイントをとる インタレスト(興味を沸 かせる) 人物分析にあわせて興味 を持たせる工 夫をする 個客提案の ストーリーを作る デザイアー(欲しがらせる) 欲望 と商品とを結びつけるストーリー を創る 体感営業 メモライズ(思い続け さ せ) る フレームチャート化 ( ビジュアル化) 印象 に残るもの(ハード、ソフト)を渡す 度々 問いかけさせる仕掛けをする 他社 に獲ら れ る防衛策を工 夫する 失注防止策 反対者を無害化する 5人の ファンとの友 好 関 係 を強化する クロージングのタイミングづくり 個客 の節 目 等を読む タイミングのレパートリィーを増やす 顧客(関係業者) を説得する ための道具として使いこなせる ように” 訓練( OJT教育) ”する ●「新たな“得々の関係”の姿」を伝えるための道具を“一緒に”創る まず、これから我々はどのように得々の関係を創り上げていくのかを 関係者がそれぞれの立場から理解できるような資料を一緒に創ることが 重要である。これはフレームチャートや写真・図表を用いてビジュアル 的に創ったほうが効果的である。 ●資料を使って顧客を納得させる訓練を行う 1 対 1 の話し合いで納得させようとするから、逆に相手に乗せられるよ うなことが起こる。御用聞き営業をしてきた社員に「提案営業」をさせ ようとするなら、それなりの道具が必要である。 「新たな得々の関係の姿」 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 のフレームチャートがその道具となる。ただ、道具は、その使い方を体 得しなければ何の意味もない。そこで、そのフレームチャートを使って、 社員が顧客を納得させる(誘導する)訓練(OJT 教育)を行うのである。 *広がりが作れなかった雨傘方式 配管は縦横に組まれている。これは組むのに時間がかかる。G 社の雨 傘方式は、組まれた配管を傘のように畳んだ状態で現場に持ち込み、現 場で広げるだけで施工ができるのですごく楽だし、品質も安定するとい うことで良いこと尽くめだったのに広がっていない。これは、施主や設 計事務所はものすごく喜んだのだが、現場技能者の 1 日の手取りが少な くなるということで反発されている。ここで、得々の関係をきちんと作 り出して納得させるということができれば、一気に流れが広がるはずで ある。 2)戦略 VS 業務 戦略グループ・担当者が何か言い出したら、現業担当者はとにかく「振 り回される」という頭が先に来てしまい、すべてを否定的・消極的に受 け止めてしまうということが多くの企業で見られる。 戦略部門には常に「革新性」があるし、現業部門には常に「保守性」 がついて回るから反発が起こるのは当たり前のことである。 ここで大事なことは、保守的な人に「理解してもらう」ことだけに固 執するのではなく「新しいしくみの中に組み込む」「強制的にさせる」と いう選択肢を持っておくということである。 たとえば、新しく決められた順番に作業をしないとシステムや機械が 動かない(仕事にならない)状況や、古い設備を排除して新しい設備だ け置く状況をつくってやれば、今までの仕事の仕方を変えざるを得なく なる。それを今までのやり方でも仕事ができるような自由度を持たせた 仕事のさせ方をしているようでは、いつまでたっても変えさせていくこ とはできない。 現業担当者の反発の仕方にはいくつかのタイプがある。そのタイプに 応じて、仕掛け方を使い分ける必要がある。 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 抵抗 ニュートラル 逃 げ 腰 動 け る 動 け な い しくみ・ 機械設備 で動かす ① ② ② 変 身 強制的にやらせる ④ 積 極 的 精神的共通基盤 を持つ ⑥ 使命感 身 体 か ら 頭 だ け ③ ⑤ ⑤ ①割り切っている人 「これでやってください」ときっぱり言う。あなたの考えについては 良く分かるが、これはこのやり方でやってくれと言うことである。一番 いけないのは騙し騙しやることである。土下座ひとつで動かすこともで きる。 ②意欲のない人 練習・訓練をしてきちんとできるようにして始めて使ってくれるよう になる。意欲も関心もない人には、とにかく使わせることを考える。 ③頭だけでは使命感を感じている人 動かざるをえない・使わざるを得ない環境を作る。某印刷会社で新し い製本機を導入したのだが、パート社員が「怖いから」と一切使わない という状況になったことがあった。その時に、使え使えとだけ言ってい たのを「この機械で作業しないと今日はいつまでたっても帰れないよ」 と言って閉じ込めてしまったところ、誰かが試しに流してみようといっ てサンプルを流してみると、全然怖くもないし綺麗に早くできたことが きっかけでやっと使ってくれるようになった。その結果をパートの小集 団活動の成果として大々的に発表し評価したところ、その後は積極的に 機械を使ってくれるようになった。 使わざるを得ない環境を作って使わせたあと、このような「成功体験」 を作ることができれば、あとは自走してくれるようになる。 ④逃げ腰の抵抗者 これは②と同じである。ただ、やりたくないなら別のところに行けと 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 いってやらせるくらいが必要である。 ⑤口だけで実際は無関心な人 口では同調しているようで、実質的にはあまり聞いていないし理解し ようともしていない。右から左なのである。表面的な理解だけではいつ までたってもパワーにはならない。本質的に理解してもらえるようにじ っくり腰をすえて当たる必要がある。 ⑥自分の対極にいる人 このタイプの人はとにかく自分の対極にいると考えてよい。自分の意 見を持っているから、少しでも違うと反発する。流れを作ろうとしたら 潰しにかかる。この人には命懸けで立ち向かっていかなければならない。 例えば、デスマッチ(時間無制限)で話をし、自分の考え方を相手に納 得させるような場を作るなど徹底的な議論をすることが必要である。 3) 若い年代層VS年輩層 若い年代層は理論的ではなく直感的に受け止めることが多い。また、 雑談はものすごくするのだが、「コミュニケーションができない」「意思 疎通ができない」「口を開くとややこしくなる」というような人が増えて きた。 年輩者は今までの仕事の仕方から新たな仕事の仕方に切り替えるとい うことが容易に進まないことから、革新をスタートさせるにあたって、 若い年代層を取り組みの中心人物に据えることが多いが、年輩層は表面 的には協力体制であっても、実際には「こんな礼儀も経験もないような 若造が」動いてくれないということが多い。 我々は、若い年代層は過去の積み上げがないから動かしやすいという 捉え方だけではいけない。自らが動くだけでなく、彼らには年輩層をも 動かすという役割を担ってもらわなければならない。そのためには、理 論的にものごとを受け止めることができるようにしなければならないし、 年輩層に嫌われないためにも産業人としての最低限の常識と素直さを持 つことが不可欠である。これは“躾レベル”の話である。 4)素人VSベテラン 最近は、ベテランよりも素人に近いような人が業績を上げるようなこ 経営技術レポート「企業革新における葛藤を乗り越える」 とが起こっている。こんな逆転現象の中でますます葛藤がひどくなる。 これに関しては、次の「旧人財と新人財」の葛藤に対する対処の仕方と 基本的には同じである。 5)旧人財 VS 新人財 功労者というものが新人財に「何も知らないくせに」とキツく当たる。 一方、新人財は旧人財のことを「過去の栄光にすがって生きている」と いう目で見る。また、旧人財が「経営者は自分たちを見限った」と新人 財に対して劣等感を持つというようなことが起こる。 革新に取り組むプロセスにおいて、新しい人財を外部から連れてくる ということは珍しいことではないが、旧人財が劣等感を持つような配置 のさせ方をするとこのような事態に陥ってしまう。別会社にしたり、新 たに組織を作ったりして、旧人財に新人財を意識させないように配慮す ることも必要である。 *「人の扱い方」のまずさで葛藤はいくらでも生まれる ある中堅企業で 15 年くらい人事部長を務めてきた人を突然降板させ、 経営企画室の室長が交代するという出来事があった。聞けば、「今の状況 ではおかしくなる一方だから、私に人事部長をやらせてくれ」と経営企 画室室長自ら経営者に名乗りを挙げたとのこと。早急に人事部門の抜本 的な改革が必要になるということで、期の変わり目でもない時期に、こ の会社では前代未聞の人事異動となった。 前任の人事部長に能力がなかったわけではない。素晴らしい人事マン であった。しかし、長年人事労務に携わっているうちに盲目になってし まい、「人の扱い方」のまずさで、組織内に様々な葛藤が起こっていると いうことに気づかなかったことが、今回の交替劇の一番の原因だった。 結局のところ、企業革新とは企業に携わる人そのものも変身させるこ とができなければ成し得る事ができないものであると言える。しかしそ こには必ずと言ってよいほど「葛藤」が生じ、それを乗り越えつつ変身 させていくということを、経営をプロデュースする立場の人がどこまで やれるかが、企業革新をスピーディーかつダイナミックに進めていく上 での重要なポイントとなっている。
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