揺れる「Brexit」の行方! インフレ懸念も台頭か

【2016年10月26日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『揺れる「Brexit」の行方!
インフレ懸念も台頭か』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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英国の政局が揺れている。Brexit(英国の EU 離脱)を巡り、議会のコンセンサスが得られず、と
うとう最高裁の判決を待つことになりそうだ。今回のコラムでは、日本では全く報じられていない
「Brexit 中間報告」を書いてみたい。
●メイ首相に対する反乱
10 月 1 週目に開催された与党:保守党年次党大会で、メイ首相は英国は「ハード Brexit」を選択
すると公言した。同首相と取り巻きの数名の閣僚たちの間で決定された内容をはじめて耳にした
保守党議員の間で、大きな衝撃が走った瞬間だった。
この一方的な決定に違和感を覚えた野党:労働党の元党首や元副首相、そして一部の保守党議
員たちは 10 月 12 日(水)に動議を提出し、国の将来を決定する内容については、英国議会全体
で決定すべきであると主張し、これをきっかけに超党派議員のグループが誕生した。
170 項目にのぼる動議には、
①政府が決定した Brexit プランに関する議論を可能にする
②EU 基本条約 50 条を行使する前に英議会全体で内容の検証をする
などが含まれている。メイ首相はかなりの譲歩を示したが、「50 条行使前に、Brexit 案について議
会で採決を取ること」は絶対に認めないと粘っている。
●「ハード Brexit」と「ソフト Brexit」の違い
Brexit、つまり英国が EU から離脱をするのに、ハードやソフトの区別があるのか?そういう疑問
を抱く読者がおられるだろう。この 2 つの最大の違いは、「人・モノ・カネ・サービスの移動の自由」
が保証される EU 単一市場(シングル・マーケット)へのアクセスの有無で決まる。
つまり、シングル・マーケットのアクセスを維持し、ロンドン金融街:シティの銀行が今まで通り、欧
州で金融サービスを提供したいのであれば、「ソフト Brexit」を選択することになる。
しかし、金融サービスよりも、移民数の制限を徹底したいのであれば、人の移動の自由を保証す
るシングル・マーケットのアクセスを絶たなければならない。つまり「ハード Brexit」となる。
驚いたことに、英国議会(下院)650 人の議員のうち、75%に当たる 490 人は国民投票で「残留」に
票を入れていて、「ソフト Brexit」を希望している。つまり、メイ首相とその取り巻き閣僚が決定した
「ハード Brexit」案について議会で採決をとれば、ほぼ 100%の確率で否決されてしまうのだ。その
ため、文頭にも書いた通り、メイ首相は「50 条行使前に、Brexit 案について議会で採決を取ること」
は絶対に認めないと粘っている。
●最高裁の判決待ち
EU 離脱に向けた Brexit 案の内容に対し、議会の承認を求める訴訟が、10 月 13 日(木)に最高
法院に持ち込まれた。そして、12 月には下院議員の一部が、EU 離脱条件の内容について議会の
採決を求め、最高裁に訴訟を起こすともいわれている。このニュースが出た 10 月 18 日(火)から
19 日(水)にかけて、「ソフト Brexit」が実現する可能性が出てきたと判断したマーケットは、英ポン
ドのショート・カバーが炸裂し、「英ポンド/米ドル」は 1.23 ドル台へ上昇している。
離脱条件内容に絡む議会での採決の必要性に関しては、政府所属の弁護士の間でも意見が分
かれていることに加え、「50 条を行使する前に決定された離脱条件について採決を求めるグルー
プ」と、「2 年間の交渉期間後に決定された「最終案」に対してのみ、採決を求めるグループ」とにも
分かれていて、ますます判断に悩むところだ。
いずれにしても、ここからの英ポンドを取り巻く環境は、一筋縄ではいきそうにない。
●インフレ懸念とここからの英ポンド
今年 8 月から英中銀金融政策理事会(MPC)の新メンバーとなった元シティバンクの主席エコノ
ミスト:マイケル・ソーンダース理事が先週議会証言を行った。そこで同理事は、「英ポンドが 20%
下落すれば、輸入物価は 12 から 13%上昇する。これは、数年間にわたり、英国のインフレ率を 4%
程度、押し上げる要因となる。そのため、英ポンド下落によるインフレ率がオーバーシュートする
可能性が高い」と語った。6 月の Brexit 決定以来、英ポンドは 18%下落していて、ソーンダース理事
の言葉を借りれば、数年間で 3 から 4%近くインフレ率が上昇するリスクと背中合わせの状況だ。
11 月 3 日(木)に発表される英中銀・四半期インフレーションレポートで、果たして英中銀は
2018/19 年のインフレ率予想をどの程度のレベルに設定するのか?もし、その予想がインフレ・タ
ーゲットの 2%を大きく超えるようであれば、追加緩和の可能性が大きく低下し、英ポンドのショー
ト・カバーが吹き出すことにもなりかねない。
大手銀行の相場観を調べてみると、某米系銀行は「英ポンドは過大評価、とりあえず 1.20 ドル台
へ下落」という見方であった。それに対し、某欧州系銀行は、「英ポンドは過小評価ゾーンへ。一
旦は 1.29 ドル台へ戻す」と考えているようだ。
私自身は、シカゴ IMM 通貨先物市場での英ポンド・ショートが史上最高レベルまで膨れ上がって
いるのが非常に気になるが、政府が「ソフト Brexit」案を支持すると約束しない限り、戻りを丁寧に
売りたいと考えている。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
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おります。
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