瑕疵担保責任は 法定責任説から 契約責任説へ 瑕疵担保責任は 法定

契約の内容に適合した目的物を引き渡さ
なければならないという義務を負っており、
瑕疵があるということは、その義務の不履
行だという考え方です。債務不履行では
一般に、売主に故意または過失がある場
合に債務不履行責任を負うとされていま
した。
ところが、今回の改正ではその規定
自体も大きく変更し、売主は、故意または
過失がない場合でも、債務不履行責任
でない限り、有効です。
しかし、民法に賃
平となります。
その不公平を是正するため
を負うとされました。
貸人負担と明文化されたことにより、「賃
に、売主に責任をもってもらうためです。
そ
目的物の品質等が契約不適合だっ
借人負担の特約は民法の規定に反し
して、売主の責任は、売主に故意・過失
た場合、買主は、売主に①修補等の履
無効だ」
との主張が多く出る可能性があ
がなくても負わなくてはならない無過失責
行の追完、②損害賠償請求、③契約の
ります。
こうしたトラブルを未然に防止する
任となります。
こうした考えを、法定責任説
解除、④代金減額請求、ができることを
ため、特約には、負担範囲の特定・明確
といいます。
明記しました。瑕疵の修補請求、代金減
化、おおよその金額の明示などを記載し、
民法ではこれまで法定責任説が通説
額請求については、売主に過失が全くな
賃借人に認識してもらう必要があります。
的な見解でした。
しかし、最近は、瑕疵担
くても可能となりました。損害賠償請求は、
保責任の法的性格は、契約不履行(債
売主に免責事由があれば行うことはでき
務不履行)責任の一特則に過ぎず、損
ません。契約解除については、売主に故
害賠償請求だけではなく、修補請求や
意または過失がなくても行うことはできます
代金減額請求なども可能だとする、契約
が、不履行の内容が軽微であればでき
責任説が有力になっています。今回の民
ないとされます。一方で、契約不適合責
現行の民法では、売主の瑕疵担保責
法改正は、法定責任説から契約責任説
任に関する規定は任意規定ですから、
任について、売買の目的物に
「隠れた瑕
へ大転換を図るものなのです。
表現等の検討は必要ではあるものの、契
瑕疵担保責任は
法定責任説から
契約責任説へ
疵」があった場合、
買主がこれを知らず、
かつ、契約をした目的を達することができ
ないときは契約解除、解除できない場合
は損害賠償請求ができるとされています。
瑕疵担保責任は
法定責任説から
契約責任説へ
さらに、契約解除、損害賠償請求は、買
主が事実を知った時から1年以内にしな
瑕疵担保責任についての改正内容
ければならないと定められています。
について、
まず、
これまでの「隠れた瑕疵」
なぜこのような規定があるかというと、例
という要件を、目的物の品質等が「契約
えば、不動産はこの世に同じものはない
の内容に適合していない」
と修正されまし
特定物ですから、売主が買主に引き渡
た。
さらに、買主に過失があったとしても、
せば契約は完全に履行されたといえま
売主に責任追及できるようになりました。
すが、瑕疵があった場合は代金が不公
売主は、種類、品質または数量について
4
約不適合責任の免責特約は原則として
有効です。
以上のとおり、改正法は不動産取引
実務に大きな影響を与えるものです
松田弘(まつだ ひろし)
弁護士 松田・水沼総合法律事務所
1944年静岡市生まれ。1966年日本大学法学部
卒。一般社団法人不動産協会参事・事務局長
代理、高千穂商科大学講師を経て、1990年弁護
士登録(東京弁護士会)
。1993年松田弘法律事
務所開設。2012年松田・水沼総合法律事務所
開設。得意分野は、
不動産取引法、
借地借家関係。
『住宅・不動産取引と消費者契約法』『わかりや
すい定期借家の仲介管理実務』など著書多数。