日本食品保蔵科学会 第56回大会 物流温度条件が冷凍食品の品質におよぼす影響 ~乳化破壊による油分離を応用した温度管理ツールの開発~ 1) 1) 1) 1) 小口かおり ・室井淳一 ・志村洋 ・長谷川峯夫 ・松本祐志 2) 1)キユーピー㈱研究所 2)㈱キユーソー流通システム 【目的】 消費者の食の安全・安心への関心が高まり、それに対応するために、様々な切り口か ら食品の品質管理が行われている。 その中で、食品物流における温度管理は、温度記録計によって行われることが多い。 また近年は、温度センサー付ICタグの検討も始まっており、人の手を介さずに大量の情 報を得ることが可能になった。一方で、その情報を得るためには読取り機が必要であり、 温度記録計やICタグを見ただけでは、製品の温度履歴が分からない等の課題が残って いる。 そこで、特別な機器を用いなくても直接目視で温度管理が適切であったかどうか確認 できる温度管理ツールの開発を目指した。 【方法】 O/W乳化物であるマヨネーズは、凍結解凍によって乳化破壊が起こり、油分離する 性質を持っている。この性質は、配合・物性に左右される。これを応用し、小袋に封入し た乳化物が油分離して、規定の物流温度条件から外れたことが分かる温度管理ツール (冷凍品用)の開発に取り組んだ。また、製品によって物流温度条件の規定が異なるた め、それに応じて油分離のスピードを変えることができるか検討した。 【結果】 油分離のスピードを変えるには、油脂の量・組成の影響が最も大きかった。その他、 乳化剤の量・組成、pH、食塩濃度、粘度の調整により、製品の物流温度条件に合わせて 油分離する温度管理ツールを開発できることが分かった。 例えば、特定配合(植物油65%,醸造酢27%,乳化剤5%,食塩2%,増粘多糖類1%)の乳 化物を封入した温度管理ツールは、冷凍品が冷蔵下に置かれた場合、60分後に油分離 が起こる。この配合の油の一部を高融点油脂に置き換えると、120分後に油分離が起き た。 冷凍食品に貼付した本温度管理ツールの外観確認により、温度管理が適切であった かどうかという情報をリアルタイムに可視化でき、物流時の品質管理につなげられると考 えられる。
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