MRI | 所報 | アーキテクチャ創造企業の萌芽〜スタンダード競争から

ISSN 1347-4812
JOURNAL OF MITSUBISHI RESEARCH INSTITUTE
所報
42
2003
No.
特集号
「技術経営と産業再生」
巻頭言
●所報42号「技術経営と産業再生」特集号に寄せて
Message :On the Occasion of Publishing No.42 Special Issue,
“Management of Technology and Industrial Revitalization”
常務取締役 尾原 重男
Shigeo Obara
●デスバレー現象と産業再生
Valley-of-Death Phenomenon and Industrial Revitalization
●知識産業時代の技術経営
Management of Technology in Knowledge based Industry Era
●大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
Fostering university-launched Ventures and Venture Capitals
●アーキテクチャ創造企業の萌芽
The Indication of Architecture Creating Companies
●技術経営における技術資源管理に関する一考察
Consideration on Technological Resource Management in Management of Technology
●デジタル情報流通市場の中期展望
Mid-term Prospect of the Digital Information Distribution Market
●アイルランドの経済成長とソフト産業
Economic Growth of Ireland and its Software Industry
●Findings from ABS Cases and National and
International Legal Instruments
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研究論文 Research Paper
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目 次 ・
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研究論文
アーキテクチャ創造企業の萌芽
∼スタンダード競争からアーキテクチャ競争へ∼
歌代 豊
ITの技術革新によって、さまざまな分野でIT製品・サービスのビジネスチャンス
が生まれている。しかし、ITが有する特質ゆえに、ITビジネスの成功には、これま
での財・サービスとは異なった事業戦略が求められている。
本研究では、まず技術標準と製品アーキテクチャに関するこれまでの研究成果を
レビューした。そこから、ネットワークベースという新たな事業特性を有するITビ
ジネスを対象に、ビジネス・アーキテクチャやそれを構成する技術標準に関連して、
どのような戦略行動が見られるか、それはどのような条件のもとで有効か、を新た
な研究課題として設定した。
研究課題に対して、具体的には、音楽配信サービスで著しい成長を遂げている
フェイスを取り上げ、その戦略とビジネスモデルを分析した。その結果から、イン
クリメンタルな技術標準拡張戦略の有効性、重畳的なネットワーク外部性を考慮し
た対応の重要性、アーキテクチャ創造戦略の可能性という戦略的示唆を導出した。
最終的に、
「IT製品・サービスに関する価値連鎖の新ビジネス・アーキテクチャを
提案し、用途と市場を開拓展開し、場合によっては技術標準をも含め、競争優位を
確保するアーキテクチャ創造戦略」が今後の重要な戦略パターンとして認められる
ことを示した。
1.
はじめに
2.
技術標準とアーキテクチャに係わる諸概念
2.1 ネットワーク外部性と技術標準
2.2 アーキテクチャと標準化に対する戦略パターン
3.
問題意識と研究課題
4.
音楽配信ビジネスに関する事例分析∼フェイス
4.1 音楽配信の基礎技術
4.2 フェイスのビジネスモデル
4.3 着信メロディ業界における競争戦略パターン
4.4 フェイスの事業展開とコアコンピタンス
5.
新たな戦略パターンの示唆 ∼ アーキテクチャ創造企業
5.1 インクリメンタルな技術標準拡張戦略の有効性
5.2 重畳的なネットワーク外部性を考慮した対応の重要性
5.3 新たな戦略類型としてのアーキテクチャ創造企業
5.4 アーキテクチャ創造戦略が求められるビジネス条件
6.
まとめと今後の課題
アーキテクチャ創造企業の萌芽
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Summary ・
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Contents ・
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Research Paper
The Indication of Architecture
Creating Companies
− From the Competition among Standards to the Competition
among Architectures−
Yutaka Utashiro
Business chances of IT products and services are emerging in the various fields
by the technological innovation of IT. However, because of the characteristic
which IT has, the unique business strategy is required for a success in the field of
IT business.
In this paper, after reviewing the major theories and concepts which are related to
the technological standards and the product architectures, I provide research
questions about new network-based IT business. They are (1) what kind of
strategic behavior is seen from the viewpoint of standards and architectures, and
(2) what kind of environment these strategies are effective under.
To answer these research questions, I have analyzed the strategy and business
model of Faith, inc., which is accomplishing remarkable management growth in
the music providing services.
The result of the analysis shows following implications; (1) the effectiveness of an
incremental revision strategy of technological standards; (2) the importance of
multi-layered network externality consideration; (3) indication of architecture
creating strategy.
In conclusion, it would be suggested that the importance of the architecture
creating strategy, which propose new business architectures of IT business value
chain, develop applications and markets, and establish competitive advantage
using standards, would be increasing.
1. Introduction
2. Concepts Concerned with Standards and Architectures
2.1 Network Externalities and Standards
2.2 Strategy Types based on Standards or Architectures
3. Issues and Research Questions
4. A Case Analysis of the Music Content Providing Business: Faith
4.1 Basic Technologies of Music Content Providing
4.2 The Business Model of Faith
4.3 Competitive Strategy Types of Ringtones Providing
4.4 Business Development and Core Competence of Faith
5. Suggestion of a New Strategy Pattern: Architecture Creating Companies
5.1 Effectiveness of an Incremental Revision Strategy of Technological
Standards
5.2 Importance of Multi-layered Network Externality Consideration
5.3 Architecture Creating Companies as a New Strategy Type
5.4 Environmental Conditions which Need Architecture Creating Strategy
6. Summary and Future Issues.
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研究論文 Research Paper
1. はじめに
ITの技術革新によって、さまざまな分野でIT製品・サービスの新たなビジネスチャンスが
生まれている。しかし、ITが有する特質ゆえに、ITビジネスの成功には、これまでの財・
サービスとは異なった事業戦略が求められている。
これまでにも、ITビジネスにおいてデファクト・スタンダードを巡る多くの企業間競争の
歴史があり、技術標準の重要性が指摘されてきた。最も典型的な事例として、パソコンとそ
のオペレーティングシステム(OS)の競争が挙げられる。アップルコンピュータは、パソコ
ン黎明期にはApple IIで成功を収め、その後もMacintoshで高い評価をえていた。しかし、
IBMがパソコンへの参入に際してOSとしてマイクロソフトのMS-DOSを採用し、インター
フェース仕様をオープンにしたことから、IBM-PC互換機が拡大し、結果としてOSでのMSDOSの占有率が高まった。これを契機にMS-DOSの後継であるWindowsが市場を独占する
状況となった。これは、Macintoshの機能、性能が劣っていた結果ということではない。技
術標準による競争の結果、ネットワーク外部性によって淘汰された典型的なケースである。
パソコンの例では、このような技術標準を巡る競争の結果、コンポーネント間インタフェー
スのオープン化が促され、CPU、ディスク等のコンポーネントごとの分業・専業化に繋がっ
た。このような取引関係の変化は製品アーキテクチャのモジュラー化の観点から注目されて
いる。
ITに限らず、エレクトロニクス産業でもこのような状況は多く存在し、これまでにも技術
標準、アーキテクチャの観点から競争戦略の研究がなされてきた。本研究では、検討の端緒
として、これまでの研究の中から、今後のITビジネスの競争環境を検討する上で重要となる
概念をまず整理し、今日の研究課題を整理する。そして、典型的なITビジネスとして、コン
テンツ配信ビジネスを取り上げ、戦略・企業行動を分析し、今後のITビジネスの競争戦略と
して有用な要素を抽出し、新たな戦略フレームを検討することとしたい。
2. 技術標準とアーキテクチャに係わる諸概念
技術標準、製品アーキテクチャが事業戦略上重要な役割を果たすことについては、これま
でにさまざまな研究者が検討を重ねてきた。
山田[1993, 1997, 1999]は、エレクトロニクスやコンピュータ産業を対象に技術規格
が競争に与える影響を分析し、デファクト・スタンダードの重要性を指摘した。柴田[1992]
は、ビデオやCDなど電子メディアにおける規格競争に関する実体験を通して、メディア規格
とソフトウェアコンテンツとの戦略的関係を論じている。新宅等[2000]は、ゲーム機、半
導体等の事例に基づき、ハイテク産業における標準競争を巡る検討課題を提示している。國
領[1995]は、コンピュータ産業におけるプラットフォーム化とその中でのオープン戦略を
示した。また、技術標準と関連して、製品アーキテクチャの概念(Baldwin and Clark[2000]、
藤本他[2001])から技術標準に関する戦略、企業行動が検討されている。
ここでは、これらの先行研究から、本研究での理論的基礎を与える諸概念を整理しておく。
アーキテクチャ創造企業の萌芽
2.1 ネットワーク外部性と技術標準
(1)ネットワーク外部性
経済学では、ある経済主体の活動が、価格システム(取引)を通じないで他の主体の厚生
経済に及ぼす効果を一般に外部性と呼び、不完全競争に基づく市場の失敗が起こる一類型と
している。ネットワーク外部性とは、参加者の数が多く、ネットワークのサイズが大きくな
ることによってメンバーが享受する「外部効果」である。例えば、自宅のゲーム機がプレイ
ステーション2(PS2)の場合、PS2を持っている友人とはゲームソフトを交換し、利用す
ることができるが、ゲームキューブを持っている友人とはゲームソフトの交換ができない、
といったケースである。PS2のシェアが増加することによって、PS2のユーザは、ソフトを
共有できる仲間が多くなることから、間接的な便益を受けることになる。
一般に、ITに関連する財・サービスは、関連する機器・ソフト等と組み合わせ、あるいは
接続し利用することが多く、ビジネス市場、コンスーマー市場を問わず、このネットワーク
外部性が生ずることが多い。前述したパソコンのオペレーティングシステムにおけるマイク
ロソフトのWindowsの勝利も、ネットワーク外部性によるものである。製品の基本機能の優
劣とは別に、プログラム・ソフトウェアの共通化、データ交換の容易性、利用ノウハウ・ス
キルの共有と継承など、同一の機種を利用するメンバーが多いことによるメリットは大きい。
例えば、同じ会社組織や、コミュニティでパソコンの機種をルールとして規定することは、
業務効率やリスク回避の面からも行われていることである。
(2)デファクト・スタンダート
ネットワーク外部性を有する財・サービスの場合、それを規定する技術標準(規格、仕様
等)は、製品の提供側、利用側にかかわらず、極めて重要である。技術規格については、規
格が有する社会的便益の面から共有するという考え方がある。このような観点からは、国や
世界レベルで技術標準を策定し、管理している。分野によっても異なるが、世界的には、ISO
(国際標準化機構)*1やIEC(国際電気標準会議)*2が国際標準を定めている。わが国では
JIS(日本工業規格)、JAS(日本農林規格)が国内の標準として定められている。このよう
な国際標準、国内標準が公的標準(デジュリ・スタンダード)であり、関連する製品は準拠
することが求められる。
公的標準の策定プロセスは、重畳的な委員会を経て、時間をかけて行われる。しかし、近
年、情報通信技術に代表されるように、技術革新のスピードの高まりから、公的標準のこの
ような長期にわたるプロセスでは、適切な技術を適時に採択することが難しくなってきた。
反面、前述のようなパソコンのオペレーティングシステムのように、事業者の競争行動の結
果として市場に普及した事実上の標準が多くなっている。この事実上の標準はデファクト・
スタンダードと呼ばれ、技術標準を取り巻く競争戦略の鍵概念となっている。
山田[1
997]は、デファクト・スタンダードと、公的標準は対立概念ではなく、相互関係
があると指摘している。すなわち、デファクトは事実上市場を支配しているかどうかの状態
を表すものであり、デジュリは標準策定のプロセスを指したものと整理している。したがっ
て、組み合わせとしては、デファクトかつデジュリ、デファクトのみ、デジュリのみ、どち
らでもない、の4類型が存在する。VHSやCDはデファクトかつデジュリであるが、ドル
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研究論文 Research Paper
ビーはデファクトであるがデジュリではない。デジュリのみの例は、通信のOSI(オープン・
システム・インターコネクション)である。OSIはISO、CCITT(国際電信電話諮問委員会)
で承認された通信規約であるが、産業界ではTCP/IP等インターネット・プロトコルが主流で
あり、デファクト・スタンダードとなっている。
(3)標準化策定に関わる企業行動
以上のように企業の事業戦略においてデファクト・スタンダードが重要な役割を担うこと
から、標準化に関わる企業行動も戦略性を帯びるようになり、パターンも多様化してきた。
図1は標準化プロセスをいくつかの類型に分け、近年のIT関連規格を整理したものである。
従来の公的標準の策定プロセスを「標準化機関型」
、対極に位置する各企業の競争の結果デ
ファクト標準が決定されるケースを「リーダー型」と呼び、さらに近年増加しているそれら
の中間類型として、複数の企業が排他的な戦略的アライアンスを組み、デファクト・スタン
ダードを形成していくパターンとして「コンソーシアム型」
、攻撃的戦略意図が弱く、比較的
オープンな団体で規格を策定していくパターンとして「フォーラム型」を設定した。
近年の「コンソーシアム型」の例としては、ICタグが挙げられる。ICタグは極小のICチッ
プとアンテナから構成され、荷札情報をICチップに記録し、アンテナを通して無線通信で外
部から情報を読み取ることができるものである。ICタグはさまざまなモノに埋め込まれ、応
用される可能性がある。例えば、生鮮食品にタグ付きシールを貼り生産履歴や物流の追跡に
利用する試みが着手されている。日本では、ICメーカーなど約2
00社が集まり、ICタグの標
準化と普及促進のためのユビキタスIDセンターが設立された。これに対し、米国では、マサ
チュ−セッツ工科大学(MIT)に本部をおくオートIDセンターが標準化を進めている。双方
のICタグの仕様には、タグの種類、コード体系や、通信周波数に違いがある。将来的に、規
格が並立した場合、システムや機器の処理方法でさまざまな非効率が生ずるが、どちらか一
方の規格に収斂した場合、他方を採用したメーカー、流通などのユーザ組織は、投資リスク
や、取引先との障壁発生等さまざまな問題に直面する可能性が高い。一方、「フォーラム型」
の代表は、インターネットに関するIETFの一連の技術である。この場合、技術の囲い込みと
いった問題はなくなるが、先進技術や構造的な技術革新を取り込みにくい傾向がある。
次節で後述するようにモジュラー化が進展している今日、リーダー型による標準化形成は
難しくなっている。したがって、
「コンソーシアム型」あるいは「フォーラム型」で異業種/
多地域の複数事業者による標準化プロセスが展開されることになる。そのような状況の中で、
企業はどのような戦略パターンをとりうるか、競争上どのような戦略パターンが有効かを検
討していく必要がある。
アーキテクチャ創造企業の萌芽
図表1 IT分野の標準と標準化プロセス類型
類型名
技術分野
システム
アーキテクチャ
ユーザ
インタフェース
標準化機関型
フォーラム型
POSIX OSE
ISO/IEC TSG-1
ISO/IEC TR 10000-3
Look and Feel
Window System
コンソーシアム型
OMG OMA
COSE CDE
デスクトップ環境
分散データ
管理
MagicCap
SNMP OMG CORBA COSE DME
MIBI
DMI
MIBII
分散情報検索
データベース
セキュリティ
WOSA
Motif
X Window
ANSI X3KI3、H3.6
分散システム
管理
HTTP
WOSA ODBC/OLE/TAPI
TSAPI
Telescript
Secure-HTTP
SQL RDA
認証
Kerberos GSSAPI
PEM
RSA
暗号
データ交換
DES
EDI/CALS
ANSI X 12 EDIFACT CII
文書
SGML
HTML
マルチメディア符号化 JPEG MPEG1.2.4
キャラクタ
ISO 10646、2022
Uni code
CASE
リポジトリ
PCTE IRDS
CG/CAD
データ交換
ライブラリ
STEP
プログラミング 4GL
言語
スクリプト言語
オブジェクト指向
3GL
ネットワーク
上位層
中位層
下位層
OS
シフトJIS
IGES
DXF
OpenGL PHIGS+
PEX
FOCUS etc.
VBA,Hyper Script ScriptX
Smalltalk, Visual C++
Visual Basic
ANSI COBOL, C
FTAM VT
X.400
(MHS)X500
X25
ANSI FDDI
IEEE802.3.5.11.12
ネットワークOS
WS
PC サーバ
PC クライアント
ftp telnet
SMTP
TCP
IP IPv6
(ng)
Frame Relay
ATM UNI3
ICコード
PCカード
フロッピディスク
CD-ROM
デバイス
CPU
メモリ
バス
プリンタ
ディスプレイ
マルチメディア
LU6.2
NetWare Vines
POSIX1003
XPG 4.2
WindowsNT AS OS/2
MS-DOS Mac OS OS/2
WindowsNT
Windows forPen
他OS
メディア
リーダー型
ISO/IEC 7816
GSM
JEIDA/PCMCIA
ISO 8860-2
ISO/IEC 10149
イエローブック
PowerPC
JEDEC
ISA/EISA
RS-232C
SCSI
RS-170A
Sparc, PA Risc, Alpha
X86, Pentium
PCIBus
ESC/P,PCL
PostScript
VESA
Plug&Play
(資料:
「情報技術の標準化ロードマップ概要報告」『電子工業月報』12月号、1
99
5)
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研究論文 Research Paper
2.2 アーキテクチャと標準化に対する戦略パターン
(1)製品アーキテクチャ
技術標準の重要性は、製品アーキテクチャに関する議論からも高まっている(Baldwin
and Clark[2000])。アーキテクチャは「対象物を構成する要素の構造と、要素間の相互依存
関係のパターン」を意味する。製品アーキテクチャは、製品に関するアーキテクチャであり、
製品を構成するコンポーネントの構成とその間のインタフェースからなる。
近年、製品開発戦略、組織戦略を議論する上で、
「インテグラル」と「モジュラー」という
2つの製品アーキテクチャの類型が比較されてきた(藤本他[2
001])。「インテグラル・アー
キテクチャ」製品は、機能と部品との関係が複雑に絡み合っている製品であり、自動車に代
表される。自動車の場合、安全性、空力特性といった機能は、ボディ、エンジン、タイヤな
どの部品特性の複合的調整によって作り上げられる。これに対し、「モジュラー・アーキテク
チャ」製品は、機能と部品(モジュール)との関係が1対1に近く、関係が明瞭な製品であ
り、それゆえ開発や製造のプロセスを分業化することが容易である。デスクトップパソコン
が代表的であり、CPU、ディスク、外部周辺装置、オペレーティングシステム、アプリケー
ションソフト等の機能は明瞭に分離されており、それらの関係はインタフェース仕様として
明確に規定されている。その結果、コンポーネントの多くは、開発・製造がそれぞれ専門事
業者により分担されている。このようにモジュラー・アーキテクチャは、要素還元によるシ
ステムズ・アプローチに基づくものであり、複雑な製品の開発・生産の効率、品質、スピー
ドを高めるためには有効である。その反面、モジュール間のインタフェースが制約となり、
製品自体の品質は必ずしも全体最適できない。したがって、同じパソコンでも軽量化・省電
力化等ニーズに対応しなければならないノート型の場合、インテグラル型の側面が必要にな
り、デスクトップパソコンに比べ、コンポーネントの特殊仕様比率が高くなる。
図表2 製品アーキテクチャと取引のオープン性に基づく製品の分類
(資料:藤本隆宏・武石彰・青島矢一[2
001])
アーキテクチャ創造企業の萌芽
(2)プラットフォーム戦略
モジュラー・アーキテクチャは、上述のように開発・生産の効率、品質、スピードを向上
させる手段であるが、その結果として分業と取引のオープン化を促進させる傾向がある。
例えば、コンピュータでは1
980年代のIBMの汎用コンピュータの場合、アーキテクチャ的
にはモジュラー型であるが、そのインタフェースは非開示であり、コンポーネントの調達先
も限定されていた。これに対して、9
0年以降主流になったIBM互換パソコンの場合、インタ
フェース仕様をオープンにしたため、多くの互換機メーカーがIBM-PC市場に参入し、CPU、
ディスク、周辺機器等のコンポーネントも複数メーカーが競争するようになった。したがっ
て、製品は、製品アーキテクチャの2つのタイプと取引関係のオープン性/クローズ性の両
面から分類することができる(図表2)。
その結果として、クローズの場合は、基本的には囲い込み型/垂直統合型の製品戦略をと
ることになるが、モジュラー型でオープンの場合、あるモジュールに特化して異なった取引
先や、異なった製品カテゴリ、異なった市場分野に拡販していく戦略をとりうる。國領
[1995]は、このオープン型の戦略をプラットフォーム戦略と呼んだ*3(図表3)。
図表3 プラットフォーム型戦略と囲い込み型戦略
87
88
研究論文 Research Paper
3. 問題意識と研究課題
技術標準に関するこれまでの研究では、製品・サービス特性がネットワーク外部性を有す
る場合、技術規格に関してどのような戦略行動がとられ、そのパターンと有効性との関係が
検討されてきた。また、製品アーキテクチャにおけるモジュラー型の有効性に関連して垂直
統合型に代わり、プラットフォーム型の事業戦略が拡大していることが指摘されている。し
かし、ITに関する製品・サービスの近年の展開を見ると、技術標準に係わる戦略行動がさら
に進化し、多様化しているように思われる。
大きな変化要因は、ネットワークを基盤にした新サービスが拡大していることである。
ネットワーク外部性は、異なった財・サービスの間の関係により生ずるが、基本的には次の
3つのタイプに整理される。一つは、パソコンにおけるCPUや周辺機器のようなシステム内
のコンポーネント間の関係であり、次は、ビデオデッキとビデオソフトのような補完財の関
係である。そして最後は、携帯電話サービスと携帯電話端末のようなネットワークシステム
による連結である。これらは、いずれも2者の関係であり、ネットワーク外部性は2者間モ
デルを中心に議論されてきた。しかし、新たな動きとして着目すべき点は、ネットワークの
進展に伴うインタフェースの多層化である。例えば、コンテンツ配信では、ハードウェア端
末∼通信サービス、通信サービス∼コンテンツ配信といったインタフェースが多層に関わり
あう。そして最終的な利用者にサービスが提供されるまで、複数の事業者が介在することに
なる。これまでにも、モジュラー型製品の増加とともに、複数事業者の分業が議論されてき
たが、主に製品アーキテクチャのコンポーネントとしてである。これに対し、コンテンツ配
信の場合には、サービス・オペレーションのサプライチェーンの中での、複数プレイヤー間
のインタフェースが問題になる。すなわち、ビジネス・アーキテクチャの視点が必要になっ
ている。
本研究は、このような問題意識に基づき、コンテンツビジネスにおいてビジネス・アーキ
テクチャやそれを構成する技術標準に関連して、どのような戦略行動が見られるか、それは
どのような条件のもとで有効か、を考察する。具体的には、携帯電話の着信メロディにおい
て成功を収めているフェイスに着目し、彼らの役割や事業展開をレビューし、関係するプレ
イヤーとの対比を行うことにより、コンテンツビジネスにおける新たな戦略行動を分析する。
4. 音楽配信ビジネスに関する事例分析∼フェイス
ここでは、ITビジネスの成功企業として株式会社フェイス(以下、フェイス)を取り上
げ、技術標準およびアーキテクチャと企業行動との関連を考察する。
フェイスは、任天堂で音楽制作を担当していた平澤創氏が1
992年に創業した音楽配信技術
に関連したビジネスソリューションサービス会社である。1994年に、ニフティと共同で
MIDIによる音楽データの配信ビジネスを開始し、その後通信カラオケ、着信メロディ等の事
業分野を展開し、事業規模を急拡大させている。2
001年9月にJASDAQに上場し、2002年9
月には東京証券取引所1部への上場を果たした。2
003年3月期の決算では、社員数58人なが
ら売上高は82億円(前年比23%増)、経常利益5
3億円(売上高経常利益率65.3%)という高
成長、高業績を収めている。
アーキテクチャ創造企業の萌芽
4.1 音楽配信の基礎技術
フェイスが扱う事業分野は広い。対象とするプラットフォーム(利用者端末)としては、
携帯電話、パソコン、ゲーム機器等があり、流通・配信するコンテンツとしては着信メロディ、
カラオケ、ゲーム音楽等がある。分野は広いがいずれも音楽配信技術関連という面では一貫
している。そこで、フェイスの事業を把握する基礎として、音楽配信技術を概観しておく。
音楽配信は、そのデータ構造から大きく2つに分けることができる。一つは、楽曲を音声
のデジタルデータとして配信するものである。パソコン上では、WAVE、AIFFといった音
声データで表現される。これらは非圧縮型であり音楽CD一枚分が約600Mバイト程度のデー
タ容量となり、保存・流通する上で問題があった。その後、音声データの圧縮技術とインター
ネットの高速化によって、インターネットによる音楽配信が可能になった。圧縮方法によっ
て、MP3、ATRAC等の音声データ形式があるが、CD一枚分の容量は、非圧縮型の10分の
1に削減され、約50Mになる。MP3やATRACは、パソコンのソフトウェアプレイヤーや、
専用のメモリプレイヤーによって再生され、利用者が増えている。
もう一つの音楽配信のタイプは、楽曲を楽譜データとしてデジタル化するものである。古
くからシンセサイザー等の電子楽器の分野では、MIDIという楽譜データが利用され、普及し
てきた。これは、メロディ・リズム・ハーモニー等を表現した楽譜をデータ化したものであ
り、電子楽器等によって演奏され、音楽になる。レコードやCDに相当する音声データに比べ、
楽譜データは容量が極めて小さい。そのため、インターネット通信や携帯電話・PHSでの利
用に都合が良い。着信メロディ、インターネット・カラオケが、この楽譜データによる音楽
配信の代表例である。音声データの場合、デジタルデータをアナログデータに変換し、再生
する「プレイヤー」が必要であったが、楽譜データの場合、楽譜データを演奏する「音源」
が必要となる。音源には、ハードによるもの、ソフトによるものなどがある。携帯電話・PHS
の着信メロディでは、初期のものは単音のメロディだけを再生する簡易な「音源」であった
が、以降、和音に対応した、より高機能・高品質の「音源」が用いられるようになってきた。
4.2 フェイスのビジネスモデル
(1)フェイスの発展経緯とビジネスモデル
フェイスは、創業以来、音楽データの中でも楽譜データ(MIDI)に関する技術を基盤に事
業を展開してきた。最初に手がけた事業は、自社製作の音楽データ(MIDI)を自社ブランド
『PROLINKS'』でパッケージ販売するというものであった。その後、パッケージ販売と並行
して、ネットワーク販売に着手し、1994年に、ニフティと共同で、日本初の有料音楽データ
(MIDI)配信事業をスタートさせた。これらの技術、サービスを基礎に、90年代後半に、通
信カラオケ、携帯電話・PHSの着信メロディのビジネスを拡大した。
現在、事業の中核となっている着信メロディを例にしたフェイスのビジネスモデルは、図
表4に示すとおりである。
エンドユーザが着信メロディのような音楽コンテンツを情報端末で利用するためには、コ
ンテンツ・プロバイダ、携帯電話通信事業者(キャリア)、携帯電話端末メーカー、半導体メー
カー等の複数の事業会社が提供する製品・サービスを組み合わせ、コンテンツ流通の仕組み
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90
研究論文 Research Paper
図表4 フェイスにおける着信メロディのビジネスモデル
(資料:フェイスFY0
1決算説明会資料、2
002年5月1
4日)
を構築することになる。この時、各製品・サービス間のインタフェースに介在する規格(ファ
イルフォーマット等)を統一する必要がある。
フェイスの役割は、まず、携帯電話向け音楽データの各製品・サービス間でのインタフェー
ス規格に係る技術・ソリューションを提供することである。具体的には、着信メロディ等の
音楽データのファイルフォーマットを設計し、携帯電話キャリアに提案し、端末仕様として
採択していくための一連のプロセスにかかわった。一方、コンテンツ配信事業者の事業の立
ち上げにも関与し、事業運営の提案・コンサルティング、コンテンツ配信システムやコンテ
ンツ作成システムの提供を行っている。
このような役割の中から、収益のタイプから次の2つの事業を運営している。一つは、
サービス事業である。着信メロディのコンテンツ配信プロバイダに対し、コンテンツ配信の
ためのサーバー構成、運営ノウハウや、付帯するソフトウェアを提供し、当該サービスのコ
ンテンツ売上に応じてロイヤリティを得ている。第二は、ライセンス事業である。携帯電話
の端末メーカー、半導体メーカーに音源やフォーマットに関する技術をライセンス供与し、
その対価として、製品の出荷数に応じたライセンス収入を得ている。
このビジネスモデルが示すように、フェイスの事業の中では企業間にわたる協創的なビジ
ネスアライアンスを短期間のうちに作り上げるという能力が重要といえる。以下では、いく
つかの特徴的な取り組みを概観する。
(2)着信メロディ配信事業者との協業
携帯電話の着信メロディは、1996年に発売されたNTTドコモの携帯電話で、内臓プリセッ
ト型ではあるが、世界で初めて搭載された。その後、オリジナル着信メロディ入力ができる
機種が登場した。現在の配信型着信メロディは、1997年にアステル東京のPHSで開始された。
商標としても、
「着メロ」はアステル東京が取得している*4。その後、エクシングの「ポケメ
ロ」、ギガネットワークスカンパニーの「着信メロディ GIGA」等、通信カラオケ大手をはじ
アーキテクチャ創造企業の萌芽
め、サービス事業者の参入が急増した。これは、携帯電話の普及と電話端末の高度化による
ものと解釈できる。
現時点では、国内に100社以上の配信業者があるが、月額100∼300円でサービスを提供して
いる。各業者は、日本音楽著作権協会(JASRAC)に1曲あたり約5円の著作権使用料を支
払い、それを著作権者に配分している。この著作権使用料に関しては、毎年報告されており、
2000年度約12億円、2001年度は38億円、2002年度は70億円超となっており、拡大は続いてい
る。この著作権使用料等から考えると着信メロディサービスの市場規模は、850億円程度と
見られる。
フェイスは、ブラザー工業の子会社で通信カラオケを手がけているエクシングと協業し、
NTTドコモ等のキャリアへの提案を通して、着信メロディ配信サービスを立ち上げ、市場を
拡大することに成功した。フェイスは、コンテンツ配信事業者にコンテンツ開発ツールを販
売している(売り切り)。また、エクシング等一部の配信事業者とは協業の契約を結び、企画
や技術ノウハウの提供から、事業運営、販促等の支援を行い、サービス収益に応じたロイヤ
リティ収入を得ている(レベニューシェア)。
(3)機器メーカーとのアライアンス/ライセンス供与
フェイスは、着信メロディ事業において、携帯電話・PHSの各端末メーカーや音源等のチッ
プメーカーとのアライアンス関係も構築している。着信メロディ事業の立ち上げ初期の段階
においては、ロームと提携し、3音同時発音、独立5オクターブの高音質Hi−Fi音源回路と
それに対応した音楽データフォーマット(CompactMIDI)を開発した。CompactMIDIを採
用した端末、チップメーカーからは、販売数、販売高に応じたライセンス収入を得ている。
(4)コンテンツ開発者に対するシステム供給
フェイスは、着信メロディ等のコンテンツ開発者に対するシステム提供も行っている。コ
ンテンツ制作者は、最終的に音楽データを制作するオーサリングツール、シーケンサ、そし
てCompactMIDIに変換するコンバータを、キャリアを通して配信事業者、音楽製作会社へ提
供している*5。
また、ノキアとは、ノキアのソフトウェア・アプリケーションの開発者コミュニティであ
る「フォーラム・ノキア」のメンバーに向けて、SP−MIDI(Scalable Polyphony MIDI)規
格の音楽コンテンツ作成のためのオーサリングツールを提供している。
(5)段階的な機能拡張戦略
フェイスは、着信メロディ等音楽データのフォーマット規格に関して、段階的な機能拡張
戦略をとっている(図表5)
。着信メロディのファイルフォーマットとしては、MIDIのサブ
セットを採用し、それをCompactMIDIとして規格化した。CompactMIDIを用いると、配信
する1曲は、数Kバイト程度の容量で表現される。これは、着信メロディサービス当初の携
帯電話の仕様であるPDC方式(9.
6Kビット/秒)でも1
0秒以内にダウンロードできる容量で
ある。その後、高品質化に対するニーズに対応するために、音源の高度化(WebSynth)と
合わせて1
6和音等(最新は6
4音)への対応が図られた。WebSynthとは、フェイスが開発し
たソフトウェアMIDI音源で、他社のソフトウェアMIDI音源と比較して低負荷で再生処理を
91
92
研究論文 Research Paper
行うことができる技術である。
フェイスは、MIDIに基づく機能拡張として、さらに、ゲーム・カラオケ等のアプリケー
ションを想定し、WebAudioという規格を開発し、提供している。これは、MIDI(楽器演奏)
、
音声(ボーカル)、グラフィックス(映像)、テキスト(歌詞)を融合したものであり、デー
タ量を最適化したマルチメディアフォーマットである。
図表5 フェイスにおける音楽データフォーマットの進展
(資料:フェイス・ホームページ)
4.3 着信メロディ業界における競争戦略パターン
フェイスは、独自のビジネスモデルを形成し、事業展開してきた成功企業といえる。ここ
では、その戦略の特徴を明らかにする意味で、中心となる着信メロディビジネスの構造を概
観し、関係するプレイヤーの戦略との対比を行う。
(1)着信メロディ業界の構造
着信メロディのビジネスは、図表6に示すような構造になっている。利用者は、大手電機
メーカーが開発・製造した携帯電話端末を、携帯電話キャリアを通して購入し、携帯電話キャ
リアとサービス契約を行うことにより、携帯電話サービスを受ける。携帯電話サービスの一
環として、利用者は、NTTドコモのiモード、KDDIグループのEZWeb、J−PHONEのJ−
SKYといった携帯電話インターネットサービスを通して着信メロディデータをダウンロー
ドし、利用することができる。
着信メロディは、携帯電話のコンテンツサービスの中では最も利用されるサービスの一つ
である。着信メロディデータを供給するのが、着信メロディ配信事業者である。市場拡大に
アーキテクチャ創造企業の萌芽
図表6 着信メロディビジネスの構造
伴い、配信事業者は大小多数が参入したが、現在は淘汰の時代に入っている。2003年時点で
100社超の事業者が配信を行っている。配信サービスの課金形態は月額定額制か、従量制の
2つに分けられる。2003年時点で、わが国の着信メロディ配信サービス市場の規模は、約850
億円*6といわれている。
その他にも関連するプレイヤーがある。配信を行うためには、インターネットを介して、
音楽データを配信するシステムが必要であり、それを開発・納入するベンダーがいる。
配信する音楽データの制作は、配信事業者が楽曲データ制作会社、個人の音楽データ制作
者に委託して行う場合が多い。また、楽曲データの制作を行うためには、MIDIシーケンスソ
フトウェアやDTM(デスクトップミュージック)等の楽曲データ制作ツールが必要であり、
それを開発・販売するベンダーがいる。
加えて、音源チップメーカーが、携帯電話端末メーカーにチップを供給している。
(2)プレイヤーの機能範囲と業者間の取引関係
このような業界構造の中で、注目すべき点は、各プレイヤーの機能的カバー範囲と業者間
の取引関係である。携帯電話キャリアは、規制と世界規模での統合・提携の動きから、わが
国では、3グループのサービスに限定される。また、携帯電話端末は、わが国ではキャリア
が携帯電話端末の基本仕様を定め、販売もキャリアが行っている。そのため、携帯電話端末
の開発・製造はキャリアと関係が深い国内の大手電機メーカーが中心となっている。このよ
うに、キャリアと端末メーカーは、少数の特定事業者により競争が行われている。また、音
源チップメーカーとしては、ヤマハ、ローム等がある。キャリア・端末メーカーの機種ごと
に採用される音源チップは異なる。例えば、NTTドコモの5
0X系でも、NEC、富士通ではヤ
93
94
研究論文 Research Paper
マハが、松下、三菱ではロームが採用されている。
着信メロディ配信の事業者は、100社を超えるが、大手には、エクシング、ギガ、第一興商、
タイトー、セガ等の通信カラオケ事業者の兼業が多い。これは、基盤となる音楽データ制作
の技術、リソースの類似性によるものである。着信メロディ配信事業者の大手には、この他
インデックス、サイバード、ドワンゴ等のネットベンチャー系や、音楽・楽器の総合企業ヤ
マハが含まれている。
音楽データフォーマットの面からは、事例として検討したフェイスに加え、ヤマハの動向
が興味深い。ヤマハは、楽器・音楽の総合企業であるが、携帯電話、着信メロディに関して
は、音源チップの製造販売、着信メロディ配信事業を行っている。加えて、音源規格や音楽
データフォーマットの規格の開発・提案を行っている。この部分に関しては、フェイスと
オーバーラップする領域である。ヤマハが提案する着信メロディ向けのファイルフォーマッ
トは、SMAF(Synthetic Music Mobile Application Format)と呼ばれるものであり、フェ
イスのCompactMIDIと同様にMIDIがベースになっている。その拡張として、画像を組み合
わせたマルチメディアコンテンツを扱うデータフォーマットになっている。携帯電話では、
J−PHONEとKDDI/auの一部がSMAFを採用している。音楽データの他、テキストや静止
画、動画、音声も扱うことができるため、カラオケ、ゲーム等にも適用できる。
したがって、図表6の業界構造の図の中で中核に位置する「ソリューションアーキテク
チャ・フォーマットの提案・調整」機能を担っているのが、フェイスとヤマハということに
なる。しかし、ヤマハは同時に音源チップ、配信サービス、音楽データ制作も手がけ、垂直
統合的な戦略をとっている。これに対し、フェイスは、ソリューションアーキテクチャ・
フォーマットの提案・調整機能と配信業者へのシステムの提供、音楽データ作成ツールの提
供の部分に特化している。
4.4 フェイスの事業展開とコアコンピタンス
着信メロディの例で示されるように、フェイスの事業目的は「その時代において最も適し
図表7 フェイスとヤマハの事業領域の比較
事業/役割
フェイス
ヤマハ
コンテンツ配信サービス事業
なし
有り
配信システム
コンテンツ配信事業者に供給
自社サービスのみ
オーサリングツール
(音楽データ作成)
キャリア、端末メーカーを通してコ
コンテンツ配信業者、制作者に無
ンテンツ配信業者、制作者に供与(制
償提供
作者には無償)
ファイルフォーマット
CompactMIDI系フォーマット
→NTTドコモ(MFi)
→KDDI(CMX)
SMAF
→J-PHONE
→KDDI
音源販売
ライセンス供与
クアルコム、ローム等
製造・販売
備 考
当初、関連事業者にビジネス・サービ −
スモデル、フォーマット、音源技術
等の提案と調整機能を果たした
アーキテクチャ創造企業の萌芽
た情報伝達手段でコンテンツを流通させること」*7である。創業後、当初フロッピーディス
クによる音楽データの販売を行っていたが、その後パソコン通信による配信を行い、これが
現在のビジネスの原型になっている。しかし、現在5つの戦略−「マルチプラットフォーム
戦略」「マルチコンテンツ戦略」「アライアンス戦略」「グループ戦略」「グローバル戦略」−
を掲げており、携帯電話以外に、パソコン、ゲーム機器といった多様な情報端末で、カラオ
ケ、ゲーム音楽を初めとする多様な音楽コンテンツを扱っている。事業分野、ビジネスモデ
ルは異なっているが、「コンテンツ流通の仕組み創り」という点には一貫性がある。
着信メロディに関しては、グローバル展開を積極的に図っている。しかし、国内のビジネ
スモデルをそのまま踏襲しているわけではない。米国では携帯電話キャリア等との提携、欧
州ではその地域の有力企業の買収等事業展開の手法も多様である。ビジネス環境に適したア
ライアンス戦略をとり、地域密着で事業推進している。
フェイスの事業目的である「その時代において最も適した情報伝達手段でコンテンツを流
通させること」を実現するための中核技術(コアコンピタンス)は、標準化されたビジネス
モデルやシステムではなく、コンテンツ流通の仕組み、すなわちビジネス・アーキテクチャ
を創る力といえる。この力は、ビジネス・アーキテクチャを設計する力、適切なパートナー
を選定し、調整し、組織化する力が中核となるが、ユーザが求めるサービスを企画し、その
実現のために必要なフォーマットや技術を選択する「目利き」も求められる。
5.
新たな戦略パターンの示唆∼アーキテクチャ創造企業
本研究では、技術標準とアーキテクチャ特性が競争戦略、企業行動にどのような影響を与
えるかを、音楽配信ビジネスを事例として取り上げ検討した。ここでは、事例が示す重要な
示唆を提示する。
5.1 インクリメンタルな技術標準拡張戦略の有効性
技術革新の進展が緩やかな場合や、世代間の技術革新の幅が大きい財・サービスに関して
は、これまで世代間競争、世代内競争、規格内競争というフレームワークが有効と考えられ
た。しかし、ITビジネスのように技術革新が激しく、かつ関連する製品・サービスが相互関
連する特性を持つ場合、2年程度のサイクルの中で、技術標準を適度に改良していくことが
有 効 と 考 え ら れ る。フ ェ イ ス の 場 合、着 信 メ ロ デ ィ サ ー ビ ス 導 入 当 初 に 開 発 し た
CompactMIDIは、当時の通信速度、端末性能の観点から適切な目標設定だったといえる。し
かも、その後の携帯電話の世代進化やユーザニーズの変化に対応し、音源の高機能化、そし
てWebAudioのような広義のマルチメディア音楽データフォーマットへのスムーズな移行戦
略をとっている。このようなインクリメンタルな拡張戦略は、特に、現在のフェイスのよう
なリーダー企業が取りうる戦略として妥当なものといえる。
95
96
研究論文 Research Paper
5.2 重畳的なネットワーク外部性を考慮した対応の重要性
ITビジネスの特性である製品・サービス間の相互依存関係を踏まえると、ネットワーク外
部性を規定するインタフェースが、単純な二層ではなく、多層化し、重畳的になっているこ
とに注意する必要がある。着信メロディの場合でいえば、携帯電話キャリア∼携帯電話端末
メーカー、携帯電話キャリア∼コンテンツ配信サービス等さまざまなインタフェースで、規
格やネットワーク外部性が生じうる。
このような場合、戦略的には相互関連する財・サービスの中で最も長期的に強いネット
ワーク外部性を有するインタフェースを重視する必要がある。フェイスの例でいえば、携帯
電話キャリア∼携帯電話端末(利用者)の間のネットワーク外部性が、現在のところ相対的
に最も重要なポイントであり、長期的にネットワーク外部性による「一人勝ち」を生む起点
といえる。そのため、携帯電話キャリアのリーダーであるNTTドコモが重要となるのは自
明である。また、次に音楽配信∼携帯電話端末(利用者)の間のインタフェースもネットワー
ク外部性を有すると考えられる。その観点から、着信メロディ配信のリーダーであるエクシ
ングとの強固な関係を構築してきた戦略的意義は大きい。
加えて、今後は配信サービス∼音楽データ制作間のネットワーク外部性も重要性が高まる
と思われる。音楽データ制作者は、制作する楽曲を耳コピーし、それをMIDI等によりメロ
ディ、ハーモニー、リズムを採譜していく。ハーモニー、リズムの部分は編曲の能力も必要
となる。その場合、ファイルフォーマットの制約や音源の特徴を熟知している必要がある。
また、過去の蓄積により、素材データが揃っていることは、作業効率を高めることになる。
異なったファイルフォーマットのコンバートも可能ではあるが、特定のファイルフォーマッ
トを継続的に利用するインセンティブが働く。このような点から、配信サービス∼音楽デー
タ制作間にもネットワーク外部性が存在する可能性もある。
いずれにしても、このような重畳的なネットワーク外部性の連鎖をいかに利用し、戦略的
な取り組みをしていくかが重要となる。
5.3 新たな戦略類型としてのアーキテクチャ創造企業
以上の点を踏まえると、フェイスの戦略展開について、次のように解釈することができる。
コンポーネント・サービス機能間の有機的な連携によって最終利用者に受益をもたらすITビ
ジネスの場合、各コンポーネントから最終利用者にいたる価値連鎖をどのようにつなぐかと
いうアーキテクチャおよび介在する技術規格の設計の戦略的影響力が大きい。しかも、技術
革新と利用者、ベンダーの環境変化に伴い、適宜・適時にこのアーキテクチャの創造とメン
テナンスをしていくことが戦略実現上不可欠になる。
本研究で見てきた着信メロディ配信のケースでいえば、立ち上げ当初このアーキテクチャ
の創造で重要な役割を果たしたのがフェイスである。業者間の関係を規定した上で、実現す
るためのファイルフォーマット、処理技術、処理システムを開発し、各事業者に提案し、調
整を図る役割を担ってきた。その結果として、業界全体のビジネスシステムが成長し、成熟
化してきたのである。
フェイスでは、このような「アーキテクチャ創造とコーディネーション能力」をコアコン
アーキテクチャ創造企業の萌芽
図表8 フェイスにおけるアーキテクチャ創造戦略
ピタンスとして、異なった分野・市場に事業を拡大している。プラットフォームでは、携帯
電話を初め、PC、家庭用ゲーム機、カーモバイル機等の展開を進めている。コンテンツとし
ては着信メロディ、携帯カラオケ、さらにはイーコマース分野に参入している。市場に関し
ては、海外の携帯電話市場への展開を図っている。フェイスのように価値連鎖の新アーキテ
クチャを提案し、用途と市場を開拓展開し、さらに技術標準によって競争優位を確保する戦
略を「アーキテクチャ創造戦略」、それを実践する企業を「アーキテクチャ創造企業」と呼ぶ
こととしたい(図表8)。
アーキテクチャ創造戦略では、立ち上がった業界の中で継続的に付加価値・収益を得てい
くという課題もある。フェイスの場合には、成熟化したビジネス・アーキテクチャの中で、
豊富な資源を持つ企業の攻撃に対してどのように対抗するかが重要となる。着信メロディで
は、音楽・楽器の実績や豊富な経営資源を有するヤマハの垂直統合戦略に対してどのような
手を打つかが課題であり、インクリメンタルな技術標準拡張戦略の良否が問われるところで
ある。
97
98
研究論文 Research Paper
5.4 アーキテクチャ創造戦略が求められるビジネス条件
では、アーキテクチャ創造戦略が求められる業界の特徴は何であろうか。今日のITビジネ
スの多くは、高密度・高精度のコンポーネントからなるネットワーク型のシステムにより提
供されるということである。そのため、ネットワークシステム全体のアーキテクチャの規定
が重要になり、その結果として技術規格の戦略的位置づけが大きくなり、コンポーネントの
モジュラー化が進むことになる。
しかしながら、製品・サービスの開発戦略では、これまで議論されてきたモジュラー型産
業の特徴だけでは説明できない部分が存在する。それは、技術革新のスピードと市場ニーズ
に対応するための多要素の高密度実装、高品質・高性能への対応によるものであり、そのた
めコンポーネント設計においては、統合型の製品開発が求められる。そのため、アーキテク
チャ、インタフェース規格の設定もそれを踏まえたものでなければならないのである。
このような特徴が大きい場合、統合型のコンポーネント(例えば携帯電話端末等)の設計
目標を考慮したコンテンツ配信のアーキテクチャ、インタフェース規格の設定が必要となり、
かつ技術革新に伴う段階的な規格の改良が重要となる。したがって、上述のようなアーキテ
クチャ創造戦略の有効性が高くなる(図表9)。
図表9 アーキテクチャ創造戦略が求められる背景
アーキテクチャ創造企業の萌芽
6.
まとめと今後の課題
本研究では、ITビジネスにおける技術標準、アーキテクチャ特性の重要性を踏まえ、市場
拡大基調にある音楽配信ビジネスを事例として取り上げ、いくつかの戦略に関する示唆を得
た。その結果として、
* インクリメンタルな技術標準拡張戦略の有効性
* 重畳的なネットワーク外部性を考慮した対応の重要性
* アーキテクチャ創造戦略の可能性 という3つの戦略的示唆を導出した。そして、最終的に、
「IT製品・サービスに関する価値
連鎖の新ビジネス・アーキテクチャを提案し、用途と市場を開拓展開し、場合によっては技
術標準をも含め、競争優位を確保するアーキテクチャ創造戦略」が今後の重要な戦略パター
ンとして認められることを示した。
これらは戦略的な仮説であり、当然ながら業界特性等との依存関係が存在しうる。そこで、
今後の課題は、これらの仮説が成り立つ条件の理論的検討、およびその実証を行っていくこ
とである。ただし、技術変化の激しいITビジネスにおいては、実証方法についても方法論的
な吟味が必要といえる。
注釈
*1 非電気分野の国際標準化機関
*2 電気分野における国際標準化機関
*3 プラットフォームには、これとは別に「だれもが明確な条件で提供を受けられる商品やサービスの
供給を通じて、第三者間の取引を活性化させたり、新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割を
私的なビジネスとして行っている存在」と定義されるプラットフォーム・ビジネスを指す場合もあ
る(今井賢一・國領二郎[1
9
94]
)。
*4 その後、アステル東京と東京通信ネットワークとの合併や、その後の事業譲渡により、現在「着メ
ロ」は、株式会社鷹山の登録商標である。
*5 実際のファイルフォーマットは、CompactMIDIに基づくがキャリアごとに詳細が異なる。NTTド
コモは、MFi(拡張子.mld)
、KDDIは、CMX(拡張子.pmd)という形式である。
*6 財団法人デジタルコンテンツ協会では、20
02年度の市場規模を85
2億円(前年比16
93
. %)と推計し
ている(経済産業省商務情報政策局・財団法人デジタルコンテンツ協会、2003)
。
*7 フェイス『決算短信(連結)
』(2
00
3/5/21)
参考文献
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000)
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5, No.3(198
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Review, March-April(1
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『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』June-July, 1
993)
4)Shapiro, C. and H.R.Varian, Information Rules, Harvard Business School Press.(19
98)
.(千本倖生監訳
99
10
0 研究論文 Research Paper
『ネットワーク経済の法則』IDGコミュニケーションズ、1
99
9)
5)Moschella, D. C., Waves of Powers, AMACOM(1997)
.(佐々木浩二監訳『覇者の未来』IDGコミュニ
ケーションズ、1
99
7)
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95)
7)今井賢一・國領二郎編『プラットフォーム・ビジネス』情報通信総合研究所(1994)
8)経済産業省商務情報政策局監修・財団法人デジタルコンテンツ協会編『デジタルコンテンツ白書20
03』
デジタルコンテンツ協会(2
003)
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95)
1
0)柴田高「ハードウェアとソフトウェアの事業統合と戦略形成−音響・映像業界における共統合戦略」
『組織科学』第2
6巻、第2号(1
992)
1
1)新宅純二郎・許斐義信・柴田高編『デファクト・スタンダードの本質−技術覇権競争の新展開』有斐
閣(2
0
0
0)
1
2)新宅純二郎・田中辰雄・柳川範之編『ゲーム産業の経済分析−コンテンツ産業発展の構造と戦略』東
洋経済新報社(2
00
3)
1
3)名和小太郎『技術標準対知的所有権』中央公論新社(19
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1
4)日本電子工業振興協会情報産業部第1課「情報技術の標準化ロードマップ概要報告」
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1
2月号(1
9
9
5)
1
5)藤本隆宏・武石彰・青島矢一編『ビジネス・アーキテクチャ−製品・組織・プロセスの戦略的設計』
有斐閣(2
0
0
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1
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(1
9
9
3)
1
7)山田英夫『デファクト・スタンダード−市場を制覇する規格戦略』日本経済新聞社(1997)
1
8)山田英夫『デファクト・スタンダードの経営戦略−規格競争でどう利益を上げるか』中央公論新社
(1
9
9
9)
15
2 筆者紹介
筆者紹介
デスバレー現象と産業再生
井上 隆一郎
1
9
5
2年生まれ.197
9年東京大学経済学部経済学科卒業.(株)日本リサーチセン
Ryuichiro Inoue
ターを経て、1
9
84年(株)三菱総合研究所入社.現在、政策・経済研究センター
長、主席研究員.専門は自動車産業を中心とした産業分析、市場分析および製品
市場戦略・事業戦略策定.
二瓶 正
1
9
5
8年生まれ.1
98
1年一橋大学経済学部卒業.同年
(株)三菱総合研究所入社.現
Tadashi Nihei
在、情報通信政策研究部 情報通信戦略チーム チームリーダー、主席研究員.専
門は情報・通信戦略.
石川 健
1
9
6
3年生まれ.1
98
7年東京大学工学部土木工学科卒業.同年(株)三菱総合研究
Ken Ishikawa
所入社.現在、産業政策研究部 産業デザイン研究チーム チームリーダー、主任
研究員.専門は産業政策、産業イノベーション政策、マーケティング・コンサル
ティング.
船曳 淳
1
9
7
0年生まれ.1
99
3年東京大学理学部天文学科卒業.1
9
9
5年同大学院理学系研究
Jun Funabiki
科終了.1
9
97年(株)三菱総合研究所入社.現在、安全技術研究部 原子力安全
研究チーム、研究員.専門は原子力工学、システム工学.
知識産業時代の技術経営
村上 清明
1
9
5
5年生まれ.1
9
7
8年東京大学工学部土木工学科卒業.1
9
83年Cornell大学大学
9
87年(株)三菱総合研究所
Kiyoaki Murakami 院社会環境工学研究科修了.日本国有鉄道を経て、1
入社.現在、科学技術政策研究部長、主席研究員.専門は科学技術政策、技術評
価・実用化.
田中 秀尚
1
9
5
8年生まれ.1
98
2年九州大学工学部機械工学科卒業.本田技研工業(株)を経
Hidehisa Tanaka
て、1
9
9
0年(株)三菱総合研究所入社.現在、科学技術政策研究部、主席研究員.
専門は科学技術政策、新事業戦略、自動車工学.
高橋 寿夫
1
9
6
3年生まれ.1
98
7年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業.1
9
89年同大学院理
Hisao Takahashi
工学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、科学技術政策研究部、
主任研究員.専門は技術評価、経済性評価、オペレーションズリサーチ.
山本 誠司
1
9
6
4年生まれ.1
98
7年大阪大学工学部環境工学科卒業.1
989年同大学院環境工学
Seiji Yamamoto
研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、科学技術政策研究部、主任
研究員.専門は科学技術政策、大学評価、技術動向調査.
筆者紹介
河合 毅治
1
9
6
7年生まれ.1
9
90年東京大学工学部土木工学科卒業.1
99
2年同大学院工学系研
Takeharu Kawai
究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、科学技術政策研究部、主任研
究員.専門は技術の経済的評価、知財分析、社会システム分析.
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル 桐畑 哲也
1
9
7
0年生まれ.19
92年同志社大学文学部(米国史研究)卒業.日本放送協会
Tetsuya Kirihata
(NHK)記者を経て、2
0
02年(株)三菱総合研究所入社.関西研究センター、研
究員.2
0
0
3年京都大学大学院経済学研究科
(組織経営分析)
博士前期課程修了.現
在、同大学院経済学研究科(組織経営分析)博士後期課程在籍.専門は新事業創
出(インキュベーション、ベンチャーキャピタル)
、企業広報.
アーキテクチャ創造企業の萌芽
歌代 豊
1
9
5
9年生まれ.1
9
82年上智大学理工学部電気・電子工学科卒業.同年(株)三菱
Yutaka Utashiro
総合研究所入社.1
9
9
2年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了(経営学修士).
現在、企業経営研究部 経営システム研究チーム、主任研究員.専門は経営情報、
IT戦略、ITマネジメント.200
3年4月より大阪大学大学院経済学研究科客員教
授(兼任)
.
技術経営における技術資源管理に関する一考察
前間 孝久
1
9
6
8年生まれ.1
9
91年早稲田大学理工学部工業経営科卒業.1
99
3年同大学院理工
Takahisa Maema
学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、経営システムソリューショ
ン事業部 研究開発システムグループ、主任研究員.専門は経営工学.
魚住 剛一郎
1
9
7
2年生まれ.1
9
95年慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業.1
997年同大学院理
Koichiro Uozumi
工学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、経営システムソリュー
ション事業部 研究開発システムグループ、研究員.専門は経営工学.
デジタル情報流通市場の中期展望
佐野 紳也
1
9
5
6年生まれ.1
9
78年慶應義塾大学経済学部卒業.同年(株)三菱総合研究所入
Shinya Sano
社.現在、情報通信政策研究部長、主席研究員.専門は情報通信、eビジネス.
中村 秀治
1
9
6
1年生まれ.1
9
83年北海道大学工学部建築工学科卒業.1
9
85年同大学院環境科
Shuji Nakamura
学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、IPv6事業開発部長、
主席研究員.専門は地域情報化政策、都市開発、環境計画.
153
15
4 筆者紹介
二瓶 正
1
9
5
8年生まれ.1
98
1年一橋大学経済学部卒業.同年
(株)三菱総合研究所入社.現
Tadashi Nihei
在、情報通信政策研究部 情報通信戦略チーム チームリーダー、主席研究員.専
門は情報・通信戦略.
アイルランドの経済成長とソフト産業
市吉 伸行
1
9
5
5年生まれ.1
97
9年東京大学理学部情報科学科卒業.1
981年同大学院理学系研
Nobuyuki Ichiyoshi
究科修了.1
9
8
2年(株)三菱総合研究所入社.現在、情報技術研究部 先端情報
技術チーム チームリーダー、主席研究員.専門は計算機技術(並列処理技術、
等)
.
小林 慎一
1
9
4
9年生まれ.1
97
3年東北大学理学部数学科卒業.
(株)東芝を経て1
9
79年(株)三
Shinichi Kobayashi 菱総合研究所入社.現在、取締役 情報環境研究本部長.専門は人工知能、コン
ピュータサイエンス、情報技術政策など.
Findings from ABS Cases and National and International Legal Instruments
林 希一郎
1
9
6
6年生まれ.1
99
0年東北大学理学部地球物理学科卒業.1
9
9
2年東京大学大学院
Kiichiro Hayashi
理学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、サステナビリティ研究
部 環境政策・経営研究チーム、主任研究員.専門は環境政策、国際環境条約、
貿易と環境、アジアと環境、生物多様性条約.
[所報編集委員会]
委 員 長:尾 原 重 男
編集委員:芝 剛 史
青 柳 雅
野 口 和 彦
小 林 慎 一
宮 武 信 春
平 石 和 昭
谷 明 良
高 尾 建 次
[査読者]
芝 剛 史
内 野 尚
田 中 秀 尚
磯 部 悦 男
中 村 秀 治
内 海 和 夫
三 嶋 良 武
谷 明 良
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三菱総合研究所 所報4
2号 特集号「産業再生と技術経営」
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発 行 日:2003年11月25日
発 行:株式会社三菱総合研究所
〒1
00−8141 東京都千代田区大手町二丁目3番6号
電話(03)3270−9211〔代表〕 http://www.mri.co.jp/
発行・編集:中村喜起
印 刷:エム・アール・アイ ビジネス株式会社
弊社への書面による許諾なしに転載・複写することを一切禁じます。
Printed in Japan, Mitsubishi Research Institute, Inc. 2003
3-6, Otemachi 2- chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8141, Japan
Tel.(03)3270-9211 http://www.mri.co.jp/
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