たかが読み、されど読み ―ヒシヒシと伝わる悲しさ・苦しさ・そして強い意志

英語教育法Ⅰ
レポート
たかが読
たかが読み、されど読
されど読み
―ヒシヒシと
ヒシヒシと伝わる悲
わる悲しさ・
しさ・苦しさ・
しさ・そして強
そして強い意志
英語教育講座 2 年
川北綾佳
<英語要約>
英語要約>
I really learned many things about reading through these classes. It was difficult for
me to write stress mark like circles and squares. I didn’t understand what is content
word or function word. But now, I can understand what is different. I also learned
importance to realize the background of the article. I understood that if I realized the
background of the article, I can read the article with much feeling. So I can convey
what the writer wants to tell us more, I think. I hope to put the skills which I got
through this class to good account when I sing Western music etc.
崩れ去った私
った私の自信
私は、英語の発音に関しては、そこそこに自信を持っていました。親戚がロンドンに住
んでいたり、アメリカへ何度かホームステイをしに行ったり、アメリカ人学生のホームス
テイ受け入れをしたりと、英語に触れる機会が、他人よりも少しだけ多くあったように思
います。だから、この授業で英音法をやるとわかったとき、得意分野が来たとうれしくな
りました。
しかし、最初の授業ですでに、その自信は見事に崩れ去りました。私は、一つ一つの音
を発音することは何とかできているものの、発音を感覚的にしか理解しておらず、理論的
にはまったく理解できていなかったということを思い知らされました。それどころか、単
語の品詞分類もままならず、どれが機能語で、どれが内容語なのかわかっておらず、丸や
四角のリズム記号をつけるのにも、ものすごく時間がかかってしまい、基本的なところで
躓いてしまいました。
しかし、さまざまな文章にリズム記号をつけ、リズム読みをしていくうちに、リズム記
号もすらすらとつけられるようになり、滑らかに読めるようになっていったように感じま
した。また、仲間とグループを組んで、リズム読みをしていくのも、一緒にペンでたたき
ながら、すらすらと息を合わせて読むのが、とても楽しく感じられました。
私がこのスピーチ
がこのスピーチを
スピーチを選んだ理由
んだ理由
私は、Democracy Now の Voices of a People's History of the United States から、
Orlando Rodriguez and Phyllis Rodriguez の「Not in our son’s name」を選んでリズム
読みや表現読みを行いました。なぜこれを選んだのかというと、スピーチの内容が 9-11
だったからです。私は、2 機目の飛行機がワールドトレードセンタービルに突っ込む瞬間
を、テレビで見ていました。本当に衝撃的な映像でした。当時の私は、人一倍感情が豊か
だったので、その映像を見ながら涙がぽろぽろとこぼれ、長い間止めることができません
でした。飛行機がビルに突っ込み、ビルが炎上し、黒い煙を挙げ、崩れていく瞬間の映像
が流れると、金縛りに遭ったようにからだが竦み、動けなくなることがしばしばありまし
た。それぐらいショックな出来事でした。だから、他の内容には目もくれず、Orlando
Rodriguez and Phyllis Rodriguez の「Not in our son’s name」を選びました。
ひしひしと伝
ひしひしと伝わる悲
わる悲しさ、
しさ、苦しさ、
しさ、そして強
そして強い意志
Orlando Rodriguez and Phyllis Rodriguez の「Not in our son’s name」は、文章自体
が短いのに、そこに盛り込まれている内容は、あふれるぐらいあり、これを Democracy
Now のなかで読んでいた Vanessa Martinez は、表情を変えることもあまりせず、身振り
手振りも全くと言っていいほど無く、声のトーンや大きさも、さほど変えているようには
感じず、淡々と、文を細かめに区切りながら流れるように読んでいました。それでも、文
にこめられた悲しさや苦しさ、怒りや強い意志は、ひしひしと伝わってきました。
私もそこを目指して、淡々と読んでいるのにもかかわらず、(淡々と読んでいるからこそ
といったほうが正しいかもしれませんが)さまざまな感情が伝わるようにと、Dramatic
Reading を練習していきました。私が意図したとおりに、聞く人に伝わっていたかは謎で
すが、みんなの前で発表したときが、今までで一番うまくスピーチできたように感じまし
た。私がこのスピーチで意識したところは、コンマで並列に挙げられているものを、区切
りながらゆっくりと、確認するように読むところと、It is not the way to go. It will not
avenge our son's death. Not in our son's name. の部分で not に気持ちをこめ、聞いてい
る人に伝わるようにするところと、Let us grieve. Let us reflect and pray. Let us think
about a rational response that brings real peace and justice to our world. の let が3回
繰り返されるところを、滑らかに、かつクレッシェンド(だんだん強く)で読むようにする
ところと、 But let us not as a nation add to the inhumanity of our times. を 6 個に切っ
て、静かに、かつ強く読むようにするところです。これによって、話の内容の重たさや、
悲しさや寂しさ、つらさ、意志などを込めることができたように思います。
この授業を通して、英語の読み方に対して、理論的に接することができるようになり、
ひとつの文章を読むのにも、さまざまなことを考えながら読むようになりました。そうす
ることで、その文章をより深く理解できているように感じます。やはり、感覚的にではな
く、頭で考えながら、意識的に読むのが大切なんだなと感じました。そうすることによっ
て、相手に、より正確に伝えたいことが伝わるように思いました。
浮かんできたふたつの疑問
かんできたふたつの疑問
まず、最初に浮かんだのは、Vanessa Martinez とは一体、何者かという疑問です。私
は、Democracy Now の Voices of a People's History of the United States から、Orlando
Rodriguez and Phyllis Rodriguez の「Not in our son’s name」を選んでリズム読みや表現
読みを行いましたが、映像の中では、Vanessa Martinez という女性がスピーチを行って
いました。だから浮かんだ疑問なのですが、授業の中で先生は、俳優さんが読んでいると
おっしゃっていました。しかし、私はこの、Vanessa Martinez という人を知りませんで
した。私は、あまり外国のドラマや映画を見ないので、仕方のないことかもしれませんが、
その名前さえ聞いたことがありませんでした。
次に浮かんだ疑問は、リズム読みや、Dramatic Reading の練習をしていく中で、この、
“Not in our son’s name”を書いた Orlando Rodriguez と Phyllis Rodriguez、文中に出
てくる Greg とはいったい何者なのか、この文章にある背景やエピソードは何なのか、と
いうことが浮かんできました。これを知らなければ、よりうまく Dramatic Reading がで
きるようにはならない、と考え、調べてみることにしました。
二つ目の疑問を解決しようと、Orlando Rodriguez や Phyllis Rodriguez のことを調べ
ていく中で、実はこの二人が、New York Times 以外にも手紙を送っていることがわかり
ました。その送り先が、なんと、ホワイトハウスで、ブッシュ大統領宛に別の内容の手紙
を送っていたのです。なので、その原文を和訳してみようと思います。
女優バセッサ
女優バセッサ・
バセッサ・マルチネスのこと
マルチネスのこと
Vanessa Martinez
1979 年 6 月 19 日、アメリカのイリノイ州シカゴに生まれ、女優をしている。主に John
Sayles の作品に出演している。
<主な作品>
1996 年
真実の囁き(米)
Young Pilar 役
1999年
最果ての地(米)
Noelle De Angelo 役
2001 年
Solitude(米)
2003年
カーサ・エスペランサ~赤ちゃんたちの家~(米・メキシコ)Asunción 役など
Michele 役
基本的に私は映画をあまり見ないので、残念ながら、これらのうちで知っているものは
ひとつもありませんでした。なので、あまりメジャーな女優さんではないのだと認識して
しまいましたが、Dramatic Reading の中で、感情をあまり表情に出すことも無く、ジェ
スチャーも皆無に等しい状態でスピーチしていたにもかかわらず、悲しさや苦しみ、痛み
や強い意志などがひしひしと伝わってきて、声やリズム、間合いなどで表現するのが上手
な人だなと感じました。今後、Vanessa Martinez の作品を見てみたいと思いました。
ロドリゲス家
ロドリゲス家の人々
当時 59 歳の Orlando Rodriguez は Fordham 大学で社会学の教授をしています。妻の
Phyllis は当時 58 歳で、非常勤講師をしていました。子供は息子と娘が一人ずつで、名前
はそれぞれ、Greg、Julia です。
Greg(Gregory Ernesto Rodriguez)は、当時 31 歳であり、ワールドトレードセンター北
塔(第 1 ビル)のキャンターフィッツジェラルド社(101~103 階)の 103 階で、コンピュータ
セキュリティの責任者として働いていました。
2001 年 9 月 11 日の朝、Rodriguez 夫妻はいつも通りに、仕事場へと出かけていきまし
た。いつもよりよく晴れ、素敵な朝でした。Phyllis が仕事場に着くと、建物の門番が、今
朝ワールドトレードセンターに、飛行機が突っ込んだことを教えてくれました。Phyllis
は自分のオフィスまで急いでいき、すぐにテレビと留守番電話をつけました。
留守番電話には、彼女の息子 Greg から連絡が入っていました。
「ワールドトレードセン
ターでは最悪な事態が起こっているが、自分は大丈夫だ。そのことを妻の Elizabeth に伝
えてほしい。」とのことでした。Phyllis は、息子が無事に逃げてくれたのだと思い、ひと
まず安心しました。
決定的になった
決定的になった息子
になった息子の
息子の死
しかしそのとき、夫の Orlando から、息子と連絡が取れないとの電話がありました。
Phyllis も息子に電話してみましたが、一向につながりませんでした。Rodriguez 一家は、
Greg からの留守番電話を心の支えにして、Greg からの新たな連絡を待ち続けました。希
望はまだあると信じて待ちました。昼が過ぎ、日は沈み、夜が来て、一日が過ぎていきま
したが、Greg からの連絡はまったく来ませんでした。結局、あの留守番電話が、最後の
連絡になってしまったのです。その晩、政府は、
「見つけられなかった人々はすでに死んで
しまっていると推定される」と発表しました。これで、Greg の死は決定的なものとなりま
した。
半狂乱になりながらも、他の被害にあった家族と同じように、さまざまな地域の病院を
回って、必死に息子を捜し回りました。その合間には、息子の会社、キャンターフィッツ
ジェラルド社の、600 人以上にも上る行方不明者の家族とともに、ミッドタウンにあるピ
エールホテルに集まりました。キャンターフィッツジェラルド社の社長は、
「早くから会社
のあった上の階の人間は、誰も地上に下りられなかった。」と話していました。
息子は死んでしまったという結論に達するしかありませんでした。
復讐を
復讐を求める声高
める声高な
声高な叫びの中
びの中で
事件以降、ニュースで伝えられてきた、多くの怒りに燃えるアメリカ人たちとは異なっ
て、Rodriguez 一家は、大量報復、中東および中央アジアに対する戦争を要求する声は、
恐ろしいと語っています。
「息子の名において、私たちはそんなことを要求しません。復讐
というのは、きわめて強い感情です。最初は、もっともな反応に思えます。しかし、無差
別の報復は意味をなしません。
」と。さらに、
「怒りがあることは分かっています。それは
私達自身も感じているのですから。でも私たちは、息子の死を、他の人たちを殺すことを
正当化する理由に利用されたくはありません。公共の安全の名の下に、政府が我々の自由
を奪うことに対して、白紙委任状を渡すのはいやです。
」とも語っています。このような意
見は、どこに行っても少数派です。強大な2つのビルが崩れ落ちたとき、アメリカの国民
が持っていた、
“無敵”の意識も崩れ去りました。しかし、復讐と懲罰を求める声高な叫び
の中で、人間が、戦争から平和を生み出したことなどは、めったにないということを思い
起こさせようとする、このような孤立した声を無視するのは、大きな過ちです。
ワールドトレードセンターに 2 機の飛行機が突っ込んだ 4 日後の 2001 年 9 月 15 日、
Rodriguez 夫妻は、「Not in our son's name」を New York Times に送りました。
Rodriguez 夫妻が
夫妻がブッシュ大統領
ブッシュ大統領に
大統領に書いた手紙
いた手紙
以下はブッシュ大統領に宛てて書いた手紙の原文です。
Dear President Bush:
Our son is one of the victims of Tuesday's attack on the World Trade Center. We read
about your response in the last few days and about the resolutions from both Houses,
giving you undefined power to respond to the terror attacks. Your response to this
attack does not make us feel better about our son's death. It makes us feel worse. It
makes us feel that our government is using our son's memory as a justification to cause
suffering for other sons and parents in other lands. It is not the first time that a person
in your position has been given unlimited power and came to regret it. This is not the
time for empty gestures to make us feel better. It is not the time to act like bullies. We
urge you to think about how our government can develop peaceful, rational solutions to
terrorism, solutions that do not sink us to the inhuman level of terrorists.
Sincerely,
Phyllis and Orlando Rodriguez
<私の和訳>
ブッシュ大統領へ
私たちの息子は、火曜日のワールドトレードセンターへの攻撃の犠牲者のひとりです。こ
の数日間、あなたの事件への対応や、上下院がテロ攻撃に対処するため、無制限の権力を
あなたに与えるという決議について、紙面で読んでいます。大統領のこの事件に対する対
応は、息子の死に対する私たちの気持ちを癒してくれません。それどころか、ますます気
分が重く暗くなっています。我が国の政府は、他国の息子たちやその親たちを苦しめるこ
とを、正当化するために、私たちの息子の思い出を使っているように感じられます。あな
たの立場にいる人が、無制限の権力を与えられ、それを後に後悔するというのは、今回が
初めではないことでしょう。私たちの気を和らげようとして、からっぽのジェスチャーを
している時ではありません。いじめっ子のように振る舞っている時ではないのです。我が
国の政府が、テロリストの非人間的なレベルに、私たちを落とす解決策ではなく、テロリ
ズムに対する平和的で理性的な解決策を、どうやったら作り出すことができるのか、大統
領にぜひ考えていただきたいと思います。
敬具
Phyllis and Orlando Rodriguez
歴史を
歴史を作っているのは誰
っているのは誰か
Phyllis Rodriguez や Orlando Rodriguez のことを調べていく中で、本当にこの人たち
は強い人たちだと感じました。自分たちの思いを形にして、ホワイトハウスや New York
Times に手紙を送り、ブッシュ大統領や国民に、その思いを伝えていけるのは、並大抵の
ことではないように思います。アメリカ人は自己主張の強い人たちだ、とはよく言われま
すが、それにしても、こういったことはアメリカ人なら誰でもできる、というわけではな
いでしょう。しかも、Phyllis Rodriguez や Orlando Rodriguez のこの動きから、イラク
戦争を反対する動きが生まれてきたのだから、本当にすごいと思いました。政府は、権力
を与えられて、政治という形で取り仕切り、表面上は国を動かしていますが、どこからも
権力を与えられていない国民が、実際に国を動かしているのだと実感するにいたりました。
このスピーチだけでなく、Democracy Now の Voices of a People's History of the United
States のスピーチを聞いていると、国を動かしているのも、歴史を作っているのも、権力
や地位を与えられたお偉いさんではなく、権力も地位も持ち合わせていない、普通の民衆
なのだなと感じました。
たかが読
たかが読み、されど読
されど読み
わたしは、この授業を通して、
「英語を読む」ということには色んなものが含まれている
のだと感じました。リズム読みをするためには、英単語の品詞や、音節というものを理解
していなければならないし、内容のどんなところを伝えたいからどのように読むのか、を
考えなければならないし、この文章を書いた人のバックグランドを知らなければ、感情を
乗せて読むことはできないし、そうでないとこの文章の現実味が失われてしまうし。本当
に色んな事を考えさせられました。たかが読み、されど読み、といったように感じました。
この授業のおかげで、文章に対して、色んな角度からアプローチできるようになったと
思います。これからも、スピーチする機会があったら、さまざまな文章に対して、いろい
ろな方向から迫って、深く読み取り、よりよいスピーチができるよう心がけたいです。
そして、私は洋楽が好きで、洋楽を毎日のように聞いているので、この授業で学んだこ
とを生かして、カラオケで洋楽を歌えるように頑張ってみたいと思います。沢山のことを
学ぶ機会を与えてくださってありがとうございました。
【参考資料一覧】
参考資料一覧】
“To the White House”原文:http://www.tagg.org/rants/gregrodriguez.html
Village Voice news Mother of 9-11 Victim Weeps With Mother of Moussaoui by Bernice
Yeung:http://www.villagevoice.com/news/0636,yeung,74362,6.html/full
嘆きの声が平和を求める:http://w3sa.netlaputa.com/~gitani/bushwar/ny-daily.htm
Vanessa Martinez:http://www.imdb.com/name/nm0553737/
http://f-actress.com/va/VanessaMartinez.html