1年生

数
学
1.概略
(1)高校数学とは
「中学校のときは数学が得意だったのに高校へ入ると数学が嫌いになった」という話をよ
く聞きます。それでは、中学数学と高校数学はどのように違うのでしょうか。
中学数学は比較的思考過程が単純で機械的に解決されるものが多いようです。それに対し
て、高校数学は教材の内容も多く、また、その程度も高くなり、取り扱いも厳密性・論理性
に重点をおくようになります。たとえば、テストのときなど、高校では答えの出てくるその
過程が要求され、答えのみでは駄目という場合が多くなります。
中学数学は更に進んだ数学を学ぶための基礎となるもので、まだ系統立ったものではあり
ません。これに対して高校数学では数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、数学A・Bというように系統的に組み
立てられており、整然とした論理体系をなしています。これを別の面から見ると、中学数学
が直感的、具体的、特殊的、静的なものであったのが高校数学は論理的、抽象的、一般的、
動的なものになります。
それでは中学数学と高校数学の違いについて具体例を一つ示しましょう。
例 ① 直線 y=2x+3と放物線 y=x2 との共有点の座標を求めよ。(中学数学)
例 ② 直線 y=2x+a と放物線 y=x2 との共有点があればその座標を求めよ。(高校数学)
①を「静的」と考えるなら、②は「動的」と考えられるでしょう。このように、高校数学
ではあちらこちらに動的な要因が現れます。これらを一般的に、「場合分け」と呼んでいま
す。
(2)数学を学ぶ心構え
なぜ数学を学ぶのでしょう。(数学で何を学ぶのでしょう)その答えとして、
・数学的に処理する力を身につける
・学習の方法を知る(生涯学習)
・数学のよさ(事象を数理的に処理することのよさ)を理解し、幅広く活用する力の養成
が考えられます。そのためにもまず、「分かる」ことと「できる」ことの両方を目指してく
ださい。学習は、「わかる」ことと「できる」ことを、車の両輪のごとく必要とします。
それでは「わかって、できる」ためにはどのようにするといいのでしょうか。
①自分でよく考えて理解をする
数学は論理的な学問ですから、理解をともなわない学習は砂上の楼閣ですぐに崩れてしま
います。繰り返し学習して疑問点を解明し、論理の糸で結ばれた網の目が破れないようにし
ましょう。
②問題演習を十分にする
授業で先生の説明を聞いて理解できたということと、それと同じ程度の問題が解けるとい
うこととの間にはかなり距離があります。その距離を短くし、理解を一層深めるのが問題演
習です。頭で理解できても、自分で実際に体得しなければ何にもなりません。数学の学習は、
自分で苦労して問題を多く解いてはじめて実力がつくものです。この問題演習の不足が数学
好きの中学生が高校に入って陥りやすい「わかるができない」というパターンを作るのです。
2.数学Ⅰ,数学A,数学Ⅱってどんな科目?
数学Ⅰ
高校数学で最も大切な科目です。数学Ⅱでも頻繁に数学Ⅰで学んだ事柄が使われま
す。
第1章では「数と式」を学習します。高校数学で扱われる文字式の計算、数の種類、不等
式の解法、集合と命題等について学びます。これから数学を学んでいく上で計算の基礎とな
る部分ですから、しっかりと定着させることが重要です。
第2章では関数の基礎として「2次関数」を学習します。“動的”数学が随所に表れ、高校
の数学らしい分野です。教科書の内容だけでなく問題集や参考書の内容もしっかりと理解し
ましょう。この章はいくら時間をかけてもかけすぎということはありません。
第3章では「図形と計量」を学習します。地形の測量や天体観測に利用されている“三角
比”について学びます。様々な図形の性質を量的に調べます。“三角比”も数学Ⅱに発展し
た内容を持つ分野です。きちんと約束事を理解して基本となる演習を大切にしてください。
第4章では「データの分析」を学習します。統計の基本的な考え方を学び、データの分析
や傾向把握ができるようにしましょう。
数学A
数学というと計算を中心に考えがちですが、数学を学ぶ上では計算だけでなく、その
背景にある考え方を身に付けることが大切です。この数学Aにおいては、扱う計算は比較的
簡単なものが多いので考え方を学ぶことが特に重要といえます。
第1章では「場合の数と確率」を学習します。数学Ⅰで学ぶ内容とは少し趣が異なる分野
で、演習を土台にした直観力が発揮できるでしょう。
第2章では「図形の性質」を学習します。中学校で学んだ図形の諸性質をさらに深め、具
体的な問題を演習します。
第3章では「整数の性質」を学習します。整数は一見とても簡単に見えますが、その背後
には神秘的な世界が広がっています。その性質について基本を身につけましょう。
数学Ⅱ
この科目は数学Ⅰが終わってから学習します。第1章と第2章まで進む予定です。数
学Ⅰ、数学Aに比べ、より体系的、論理的になります。
第1章では、「式と証明」を学習します。多項式の除法、分数式の計算、等式や不等式の証
明などについて学びます。いろいろなところで使える基本事項を多く学習します。
第2章では「複素数と方程式」を学習します。複素数は新しく学ぶ数ですが、これによっ
て数学の世界が大きく広がることになります。続いて3次以上の方程式を因数分解によって
解く方法を学びます。
3.授業の受け方について
(1)授業を大切にする
皆さんは自力で一冊の本を読み、理解するのにどれだけの労力がかかるか知っているでし
ょうか。それが教科書だともっと大変です。授業は、先生方が教科書一冊を読み、研究し、
かみ砕いて皆さんに教えていくわけですから、どれだけ授業の価値があるかわかっていただ
けると思います。
(2)ノートを工夫する
黒板を全部写している人を見かけますが、その必要はありません。例えば教科書の例題を
やる時に、その内容が教科書と同じならば写す必要がありませんね。教科書に書いてあるこ
とを説明している時は前を向いてしっかり話を聞いてください。必要な所だけ予習している
ノートに書き込んでいくのです。
ノートは授業用と問題集用の2冊を準備してください。消しゴムは極力使わないでくださ
い。失敗や間違いが財産なのです。間違えたときは大きくバツを付けてください。このよう
にして3年間作ったノートが皆さんの宝物となるでしょう。
4.予習・復習Q&A
Q.なぜ、先生方は予習をしなさいというのでしょうか。
A.予習は自分の力で新しい内容を理解してみよう、明日の授業は前向きに臨もう、とするプ
ラス志向の表れです。たとえそのとき、わかりにくいところがでてきても構いません。その
ために授業があり、先生がいます。
また、予習が日常化してくると、興味や自信も生まれ、それが成績に反映される好循環を
作り出すからです。
Q.予習では何をすればよいでしょうか。
A.①まず、教科書を読んでください。そして例題を解いて、解答と比較してみましょう。
“手を動かす”ことです。
②次に演習をします。(教科書の問・練習や4STEPの基本問題)。初めからヒントを
見るのでなく、自分の着想で解答しましょう。そのときノートには各問ごとに十分に余白を
とってください。そのスペースに授業中に習った大切なことや復習中に分かったこと、問題
集から知った類題などを書いていきます。ノートはぜいたくに使いましょう。
以上の①、②をするのに1時間ほど必要になります。また、このとき生まれた疑問点を明
確にして次の授業に臨みましょう。
予習はその日の復習の延長にありますから、復習とあわせてすると効率がいいでしょう。
しかし、自分で考えないで解答をそのまま写す、というのでは意味がありません。そのため、
教科書ガイドは使わないようにしてください。
Q.復習もしなければいけないですか。
A.「1.(2)数学を学ぶ心構え」で述べたように理解するためには、必ず、問題演習が十分に
なされなければなりません。そのため、授業の内容の定着とともに、自分から進んで発展し
た問題にアタックをしなければいけないでしょう。
Q.復習では何をすればよいでしょうか。
A.①まず、授業のノートや教科書を見ながら、宿題をしましょう。
②次に、その日の学習した範囲の問題(4STEPの練習・発展問題)を参考書をうまく
使って考えます。図やグラフが描けるときは、図やグラフを描きましょう。このときも“手
を動かす”、“ノートはぜいたくに使う”ことです。
また、なかなか理解しにくかった範囲については、関連のある問題を参考書から探して、
一週間のまとめとして土曜日や日曜日に解いてみるといいでしょう。
どうしても分からない問題は先生に質問したり、友達に聞いたりしましょう。
5.問題集,参考書の使い方
(1)授業の進度にあわせて問題を解いていきましょう。
(2)解けなかった問題は早い機会に先生に質問し、疑問点をなくすようにしましょう。「こ
の問題を解いてください」ではなく「自分はこのように考えて行き詰まりました」とい う
ように、どこまで分かってどこから分からないのかはっきりさせておいてください。 病院
へ行ったら頭痛とか腹痛とか自己申告するのと同じです。
(3)参考書は、教科書に比べて説明が一般に詳しいので、授業で習った事柄で理解できな
かった点を参照して補うようにしましょう。問題集を解くときの参考にもなります。
(4)例題の解答を読み、答案の書き方の参考にしましょう。
(5)本校では次の参考書を使用します(一括購入するので各自で購入する必要はありませ
ん)。
「新課程チャート式 基礎からの数学Ⅰ+A」(数研出版)
「新課程チャート式 基礎からの数学Ⅱ+B」(数研出版)
6. 数学研究室やメディアコーナーを活用しよう
堅いイメージのある「数学」も人と人が言葉を使って教え学びあうものです。困った時こそ、
先生と世間話をする感覚で、是非、「数研」に来てください。数学の先生を身近にすることが、
「数学」を身近にする近道です。また、メディアスペースには、各種問題集や参考書があるの
で、自由に利用してください。
さあ、この一年、数学と気持ちよく付き合いましょう。