医療の現場~市立病院発 予防接種編第1回~(広報やまと平成22年6月1日号掲載) 予防接種 初めて物語 今号から数回にわたり、 「予防接種編」として主に子どもの予防接種について紹介していきます。今回 は、予防接種の誕生の話です。 そもそも、予防接種とは何なのでしょうか。 とう 話は昔々にさかのぼります。エジプト文明が始まるころからつい 100 年ほど前まで、天然痘という怖 い病気が世界中でたびたび流行し、大勢の人が亡くなっていました。死亡率は約 40 パーセント以上と推 いにしえ 定され、時には一つの町が丸ごと全滅するほどの猛威を振るっていました。そんな中で 古 の人々は、天 かか うみ 然痘に一度罹った人は二度は罹らないことを経験的に知っていたので、天然痘の人から膿を取ってきて、 まだ罹っていない人の皮膚や粘膜に接種しました。この方法により確かに天然痘を予防できたのですが、 逆に本物の天然痘を発症して亡くなる人もいました。予防も命がけだったのです。そこで、1796 年にイ ぎゅうとう ギリスのジェンナーという医者が、牛 痘 というウシの軽い病気から採取した膿を接種すれば天然痘を予 防できることを証明しました。これが予防接種の先駆けで、後にフランスのパスツールが発展させ、現 在に至ります。 つまり予防接種とは、 「弱毒性の病原体をあらかじめ体内に入れて軽い感染症にかけておき、次に感染 した強い病気を軽く済ませるための医療」なのです。だれでも知っている当たり前のことですが、これ は医学史上、最大の革命なのです。人類が根絶できた、ただ一つの病気は先ほどの天然痘です。がんも 糖尿病も関節リウマチも完全には治せませんが、天然痘は地球上から姿を消しました。病を防ぎ、社会 から駆逐する。これが予防接種の力です。 しかし、よい話ばかりではありません。次回は予防接種の注意点について紹介します。 (このコラムは市立病院 病院総務課 電話(260)0111 が担当しています。 )
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