東京産婦人科医会誌 第42号

東京産婦人科医会誌
第42号
平成22年発行予定
東京産婦人科医会発行
(日本産婦人科医会東京都支部)
出産育児一時金の医療機関等の直接支払制度
―流れと中間報告―
江戸川支部
池下久弥
池下レディースチャイルドクリニック
連絡先:〒134-0083
東京都江戸川区中葛西 5-2-41
TEL&FAX:03-5605-2277
「出産育児一時金等の医療機関等の直接支払制度」
−流れと中間報告−
江戸川支部
池下
久弥
「おお∼い。大変なことが起きているぞ」
昨年の8月上旬の友人からの電話である。そして「出産育児一時金等の医療機関等
の直接支払制度」
(以下、本制度)要項なるものがFAXされてきた。本制度が2ヵ月
後の、10月1日から施行とある。出所不明で誤字が多く難解な文章であるが、一読
して官僚が書いた文章と判る。読み返しているうちに背筋がゾーッと寒くなった。
その後の厚労省ホームページ(平成21年9月厚労省)よりのQ&Aと合わせると、
以下に要約される。
1)厚労省の出産費用調査で、全国平均が42万円。
2)煩雑な領収書・明細書の交付は厚労省が一時金の設定等の基礎資料や、医療機関
の出産費用を把握するため。
3)平成23年4月から出産費の保険給付のあり方を検討する。
4)本制度は保険診療のため、文書料は無償。
以上から、23年4月より出産費は42万円の現物給付、レセプト請求になる。
経済的問題点
1)10月11月の未収入金は永久に戻らない。理論的には閉院後、戻るが永久損金
となる。
2)21年の年収は20%ほどの現金が減収になる。設備のローンやリース代金支払
いに窮する。
3)融資返済に融資額の2倍以上の資金がかかる。
元本返済は同額の税金が必要で、さらに利息も支払うため。
4)長期的に経済的負担がかかる。
高額な元金の一括返済は不可能で、分割返済しか方法は無く長期的に経営を圧迫
する。
★結論
医療機関が一方的に未入金額の2倍以上の負担額がかかり、長期的に経営を圧迫す
る異常な制度である。
永久損金と永久益金
昨年度、全国の出産数約109万人。月約9万人が出産。本年10月11月で推定
約18万人出産。
18万人×一時金42万円=756億円。
756億円の永久損金=産科医療機関。
756億円の永久益金=保険者(自治体・保険組合)
。
756億円に税金を加えると1,000億円を超える膨大な損をする我々がいれば
得する国がいる。国の直轄金融機関から融資を受ければ、国はさらに金利まで儲か
るのである。だれがこの巧妙な仕組みを発案したのだろうか。
税金について
今回の未収入金はいずれ戻る売掛金と見なされ、昨年の納税対象となる。
例)未収入金が4千万円とする。そのクリニックの税率を50%とする。
4千万円の未収入金は、2千万円の税金がかかる。合計6千万円を金融機関から
借りる。
6千万円の元金返済には、納税後ですから、税率50%なら6千万円税引き後の
6千万円で返済する。
6千万円の元金+6千万円の税金+利息=1億2千万円+利息となる。
4千万円の未収入金のために1億2千万円+利息を払わなければならない。
愛知県産婦人科医会緊急調査(昨年8月)では、本制度で約3割の産科施設が経営
危機になり、1割が廃業に追い込まれるとの結果がでた。当たり前である。本制度を
立案し、許可するとは正気の沙汰ではない。2ヶ月の収入がストップすればどんな企
業でも破綻する。明らかに小産科施設潰しの政策である。
私の友人から「細々とやっていますが、この制度を使わないで、全て自費でやって
みます。それで患者さんが来なければ、閉院もしかたがないと思っています」とのメ
ールが来た。同僚達が意欲を無くしている。日本のお産の半分は小産科施設が扱って
いる。このままでは、産科医療は崩壊する。どうにかしなければ。
本制度の流れ
平成20年
8月22日
11月27日
舛添厚生労働大臣が出産一時金42万円等発言。
本件制度に関する意見交換会が厚労省、医会、各種団体で開催。
その後、日本産婦人科医会(以下、医会)が本制度に賛成する。ここ
から日本産科医療制度最大の事件が始まる。パンドラの箱が開いた。
平成21年
5月
厚労省が医会など団体・組織へ本制度を説明。
29日 厚労省より関連機構へ本制度の通達。
7月下旬
東京産婦人科医会(以下、東京医会)が実施要綱配布=問題点が浮上。
8月 4日 江戸川産婦人科医会(以下、江戸川医会)幹事等10人が集合。本制
度の問題点を話し合う。
問題点
8月10日
21日
30日
9月 8日
16日
18日
1.入金の遅れ(永久損金のため経営危機発生)
2.事務の複雑化(事務員雇用の人件費上昇)
3.分娩は自費診療の慣行の否定のおそれ(自由診療の慣行破綻)
4.政府系金融機関の貸し渋り(運転資金の融資困難)
5.制度強制は財産権の侵害(憲法違反の疑い)
6.出産一時金の受給権譲渡を禁じる規定に違反(健康保険法61条)
医会、東京医会に問題定義書を江戸川区医会が提出=返答なし。
医会執行部が「3ヶ月程度の実施猶予」を厚労省に提出。
衆議院総選挙で民主党に政権交代。
医会が厚労省に猶予の要望を取下げ「医会が直接払いに後ろ向きな医
療施設を丁寧に指導していく」と約束。(ロハス・メディカル)
厚労省大臣に長妻昭氏就任。
民主党の医療マニフェスト制作者の足立信也氏が政務官に就任。
足立信也(昭和32年生まれ)筑波大学医学部専門学群卒業
医師、民主党、大分県選挙区選出、参議院議員
《この頃には、産婦人科医会メーリングリスト(以下、医会ML)で
は、活発な論議がなされていた。私は、医会MLに加入していないた
め知らなかったが、千葉・横浜・川崎の友人がメールを送ってくれた。
それによると、友人が藁にも縋る思いで、ある医会の執行部員に本制
度が中止にならないかと相談したところ、本制度は決定事項であり『個
人的な愚痴』を言うなと一喝されたとのこと。さらに、その医会執行
部が8月の厚労省と医会とのQ&A作成過程を送信してきた。その内
容の一部を紹介する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Q&A問17 直接支払制度は、窓口で全額を徴収していた従前とは異なり、入金ま
で1∼2ヶ月のブランクが生じるため、妊婦の方が直接支払制度の利用を希望しても
当院はこれを拒否し、現金等での支払いを求めてもよいでしょうか。
(厚労省側)直接支払制度は、妊産婦の経済的負担を軽減するための制度であり、出
産に関わる関係団体からも未収金対策にも資するとして賛意をいただき創設した制度
です。妊婦の判断が最優先されるものであり、医療機関等には直接支払制度の手続き
に必ず対応していただくことになります。
・・・直接支払制度の説明を行い、支払方法
についても十分ご説明ください。
(医会側)表現を柔らかく、曖昧に記載したほうがよろしいのでは。ボイコット運動
が起きかけており、本部ではコントロール不可です。新聞ネタにしない努力も必要で
は?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このように、なんとしても本制度完全実施を目論む厚労省側に、会
員の反発を回避しながら本制度を遂行しようと厚労省に歩み寄る医会
側の意向が伝わって来ます。9月8日、医会が厚労省に「医会が直接
払いに後ろ向きな医療施設を丁寧に指導していく」と約束しています
から、この様な折衝になるのでしょう。さらに、医会には厚労省から
天下った事務員がいますから、厚労省の出先機関のように動くのでし
ょうが、我々の会費から、その職員の給料が出ていることを思うと釈
然としません。
この、問17は後で述べますが、本制度は厚労省通達であり、強制
したら法律違反になります。医療機関が現金支払いを望んだら通達で
は拒否できません。我々には、通達をあたかも法律のように曖昧に指
導するしかありません。文章にすると法律違反が明確になり、どのよ
うにしても問題が残ります。従ってこの問17は削除されました》
9月24日 制度の執行決定が9月28日のため、長妻昭厚労大臣へ制度変更署名
を提出することを要望される。
《千葉の友人からの情報では、本制度の件で、事態を収拾すべく海野
信也東海大学産婦人科教授が厚労省に呼び出され長妻厚労大臣と折衝
しているとのこと。海野教授を長妻大臣と引き合わせたのは足立信也
政務官であり、立ち会ったのは医師の梅村聡参議院議員であった。
梅村聡(昭和50年生まれ)大阪大学医学部卒業
医師、民主党、大阪府選挙区選出、参議院議員
参議院厚生労働委員会委員「適切な医療費を考える議員連盟」事務局長
この二人の信也先生と梅村先生がキーマンとなってくださった。海
野教授は9月末に4日間に3回も長妻厚労大臣と折衝していた。
その三人が行き詰まっているとのこと。友人から『日本のお産を守
る会』が、長妻大臣宛に本制度を変更するよう要望書を出すためにF
AXの署名運動をしている。ついては、私が世話人をしている産科中
小施設研究会(以下、研究会)会員に署名依頼のFAXをしてくれな
いかと相談された。研究会とは10年ほど前より医療訴訟や最新の産
科医学等をテーマに勉強会を開いていた。会員数は全国で約400人
である。世話人達にコンセンサスを得る時間は無い。しかし、差出人
名が無ければ信用されない。私、個人の名前で送信し、責任は私一人
でとることにした。早速、送信文を作る》
25日 全国の研究会会員に署名運動のFAXを送信(FAX送信文 1、2
添付、14頁・15頁)
ほか
《会員約400人のFAX番号を入力するのに、思いの外、時間が
掛かり約5時間かけて送信する。反応があるかどうか心配で眠れない
夜を過ごす》
26日 一昼夜で千人以上の署名が集まる。
《「すごいよ。ありがとう」と友人から興奮した声で電話が掛かって
きた。沢山の署名が『日本のお産を守る会』に続々と届いているとの
こと。ホッとした。嬉しかった。日本国中の同志が皆同じ思いを持ち、
悩み苦しんでいたのだ。
『個人的な愚痴』どころではない。最終的には
約9200人もの署名が集まったのである》
9月27日 長妻大臣に直接要望書を提出するように会員にFAXを送付(FAX
送信文 3添付、16頁)
《友人から、長妻厚労大臣が本制度を変更しないようだから、研究会
会員に直接要望書をFAXしてもらえないかとのこと。明日の月曜日、
本制度が決定してしまう。焦る。慌ててFAX送信文を作成。また4∼
5時間掛けて送信する。日曜日である。反応が心配である。知る限りの
友人に電話してFAXを依頼する》
28日 6ヶ月の執行猶予決定。
長妻厚生労働大臣より「この制度の施行で、産婦人科施設が1件でも
消失することは、絶対にあってはならない。すぐに制度の内容等を見
直すこと」と副大臣、局長に指示。
《奇跡的なことが起こったのです。次々と会員の方々の歓喜のメー
ルが届き、電話が掛かってきた。署名運動や要望書提出にご協力して
くださった、皆様のおかげですと答える。本制度の事で何度も相談に
行った区役所の給付課の係の人も、通達が猶予になったことは聞いた
ことがないと驚いていた。しかし、これからが勝負であると身を引き
締める》
29日 厚生労働省保険局長より執行猶予についての通達。
医会が寺尾俊彦会長名で執行猶予についての書類配布。
《医会の文章には、
「厚労省側が、医会側に配慮していただいたもの
と理解しております」とある。しかし、医会が困窮している医会会員
のために、厚労省に働きかけ、執行猶予にした形跡はない。後ほど判
明したが、多くの署名や要望書が大臣を動かしたと評価されている》
10月 1日 足立政務官が直前見直しの理由をロハス・メディカルに掲載。
入ってこない2ヶ月分の収入に課税されて、融資の利息も取られてと
いうのは、あんまりと思います。法的なことを言うと、もともと出産
分娩は保険診療ではなく、退院時に支払いされるのが当然で来た契約
です。その収入を国が強制的に遅らせることになるのは申し訳ない限
りです。
7日 研究会より日本産科婦人科学会(以下、学会)への要望書を提出(研
究会から学会への要望書添付、17頁)
《医会が動かないため、学会に要望書を提出することにした。要望
書の文面は、横浜の友人にお願いした。本制度を中止する要望である》
10月
要望
1.出産融資貸付制度の限度額を 10 割とし、全額貸し付けること
2.生活福祉賃金貸付制度の拡充による出産費用への充当すること
3.1−2より不要となる『直接支払制度』は中止すること
4.医療機関への事務量の軽減を図ること
学会への要望書とお知らせを研究会会員に送付(FAX送信文 4添
付、18頁)
8日 医会医療対策部より医会MLの先生方にとお知らせ。
「直前になって多くの個人、団体等が異議を発していただき、その結果、
6ヶ月の猶予を認めるとの長妻厚労大臣の判断が9月29日になされ
ました。努力してくださった関係者各位に感謝申し上げます」とあり、
差出人は医療対策部であり、会長名はない。
9日 東京都国民健康保険団体連合会説明会で企画事業部企画課長が
「今回の制度は保険請求とほぼ同じ扱いである」と明言(自費診療の
否定)。
13日
江東区長と面会。
《私が嘱託医になっている開業助産所の助産婦と一緒に、せめて融
資の金利を江東区が負担してくれるように陳情に行った。江東区長に
江東区は平成20年4096人が出生しているが、区内には有床診療
所3、助産所2の合計5施設しかなく、本制度を導入すると区の約半
数の分娩を扱う5施設とも経営の危機に陥ると説明すると驚き、本制
度で、金利を区が負担するのは無理であるが、陳情書を区議会に提出
するよう指導を受けた。さらにこの様な理不尽な制度を中止するのは
『闘い』であるから産科施設のある各自治体に共闘するように陳情を
すべきだと提言を受けた》
20日 江東区議会に陳情書提出(江東区議会への陳情書添付、19頁)
21日 学会が長妻厚労大臣に要望書を提出(学会の厚労大臣への要望書添付、
20頁、21頁)
要望内容
1.平成22年度には今回導入された直接支払制度を廃止し、被保険
者が出産直後に出産一時金の給付を受けることのできる制度を導
入すること
2.制度導入時に被保険者、保険者、分娩施設に過剰な負担がかから
ないよう配慮すること
3.直接支払制度による現場の分娩施設の負担軽減措置を早急に実施
すること
4.平成23年度には、出産一時金を55万円程度まで増額し、被保
険者の出産前後の経済的な負担をさらに軽減する制度を整備する
こと
10月22日 讀賣新聞朝刊に掲載。
「出産一時金直接払い 厚労相に廃止を要望 日本産婦人科学会
出産育児一時金が妊婦ではなく医療機関に直接支払われる新制度につ
いて、日本産婦人科学会は21日、来年4月までに新制度を廃止する
よう求める要望書を長妻厚生労働相あてに提出した」
《ついに学会が動いてくれた。我々は医会の会員でもあり、学会の
会員でもある。医会と学会は車の両輪に例えられている。片方の車輪
にブレーキがかかったままであるが、もう片方が動いてくれた。医会
の上層部から「一部の暴徒」と比喩されているらしい私は新聞記事を
読んで、感極まり涙がでた。多くの会員から、興奮した声で電話が掛
かってくる。多くの同志が同じ感激を持っていた》
28日 午後1時に厚労省副大臣に「お産を守る会」が、署名約9200人を
提出。
11月11日
13日
12月 9日
10日
江戸川区長、区議会議長と面会。
江戸川区議会に江戸川医会より陳情書提出。
民主党の江東区議会議員と面会。
民主党の東祥三衆議院議員と面会。
《嘱託している開業助産所の助産婦がロビー活動をしようと民主党
の江東区議会委員に面会に行くと、その場で江東区選出の東祥三議員
にアポイントをとってくれた。東議員にお会いすると即座に医療系の
議員に電話し、用件を伝えてくれた。東議員は江東区にある3診療所
のみが江東区の出産の約半分を取り扱っていることに驚き、そして、
本制度の経済的な問題点を理解してくださった。
「今はどうなさってい
ますか」と経営状況を心配してくださり、責任をもって本制度につい
て運動をしてくれることを約束してくれた》
11日 民主党の「今後の医療政策」シンポジウム開催。(毎日新聞社主催)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梅村聡参議院議員(シンポジストの一人)との質疑応答、本制度について
(井上清成弁護士・司会者)私が、国保連合会などで質問をして聞いたところによる
と、本制度を任意に採用した場合、妊婦さんが出産されて退院した後には、本制度は、
契約を解約できないという見解を厚労省が打ち出しているらしいのです。その場合、
実は本制度は健康保険法の譲渡制限に違反してしまっていることを指導していること
になるかと思うのですが、このことは厚労省の官僚から何か聞いていますか?
(梅村議員)私は、その見解を初めて聞きました。1 点付け加えると、妊産婦さんの
直接給付にすると改定の年には 13 ヶ月分、これは健康保険組合が持たないといけない
と、そこのところは絶対に納得がいかないなという答えは今日いただきましたけど、
そこの指導については、私、今日初めて聞きましたので。
(池下の質問)そもそも、本制度の永久損金のために、我々が借入しなければならな
いことに納得がいきません。
(梅村議員)私は 9 月 29 日に海野先生とお産を守る会の皆さんの声をいただいて厚労
省に行ったのもまさにそこにある訳ですよね。
つまり、福祉医療機構がいくら安い利率であろうと、そもそも債務とは何か?瑕疵
とは言いませんけども、要は何か必要があって借りて、それに対して債務を背負うと
いう形が原則としてあります。しかし、これは制度改正がそもそものきっかけである
訳ですが、実際これをどうして現場の産婦人科の先生が背負う必要があるのかという
のがまず第 1 点ですね。
それから 2 点目は、実際にどういう目的があったのかというと、もちろん妊婦さん
側の負担軽減をするということもありましたけども、もう 1 つはやはり実際に出産が
終わった後に、払わずにおられる方というのをどうしていくのかという観点だったと
思います。
その時に、そういう事例が多いのは大病院な訳ですね。産科の医療機関については
そのことは少ないということであれば、実際の受益と負担という立場が総合病院と産
科では逆転してしまっていると、私たちはまさにそこが今回、29 日に長妻大臣も少し
渋られました。
これは妊婦さんが期待をしているという面から見ますと、私たちは地域産科医療機
関が崩壊してはならないということで申し入れをした訳なのです。それに対していつ
か制度が転換した時点で、先生がおっしゃるようなことが起こる訳ですから、これは
単に猶予だけでは私たちはやっていけないのではないかと。
いつかその時がやってくる訳ですから、その時に先ほど申し上げた様な直接妊産婦
さんへの直接支払いが、例えば妊娠が 7 ヶ月 8 ヶ月で手続き上はできないことはない
と、ところが厚労省のこの何日間かの見解は健康保険法の改正が必要なので 6 月、7
月までかかると、それでもいいのかと、私がそこで申し上げたのはそれでもいいよと、
やれるんだったらやろうと、別に 4 月ということにこだわらなくても本質がどこにあ
るのかですね。
そういうことを考えると今、足立政務官が出しておられますけども、出来る限り直
接の支払い、要するに妊産婦さんの支払というのを目指していくべきだろうと、本来
の筋論としてはそうなのだろうと。
レセプトのオンライン化の件もそうだったのですけども動く時はやっぱり動くと思
うんですね。やっぱり世論ですよ。その時に先生方の力をやっぱり我々に伝えて欲し
い。これはロハス・メディカルなどにも言っておりますが、もう政治主導になったと
いうことは直接こういう形でできる訳です。今申し上げた様に何とかやっていきたい
と思います。
足立信也政務官が帰ったので、携帯に電話して言っておきますけどもそういう形で
考えております。以上です。
(井上弁護士)
レセプトオンラインの訴訟というのは 1 つのツールにすぎなくて、利用しながら本
格的にレセプトオンラインを義務化してはいけないのだという声をみんながあげたか
らこそ政治が動いてやっと変わったということだと思っております。
本制度についてこれが始まった時に私は個人的には、またやっているという風には
っきり言って思いました。レセプトオンラインよりもっとひどく、今は原則任意でや
っているなどということを言っております。
元々、強制実施をするならば憲法 29 条に違反するといって訴訟を起こすつもりで私
はいました。実は起案までしました。そしたら猶予になりましたので少なくとも強制
実施ではなくなりました。
でも妊産婦さんは退院してしまった後に直接支払いの契約を解約できないことにな
っているそうです。これは重大な違反でございまして、健康保険法の 61 条で保険給付
を受ける義務を譲り渡し、または担保に供し、または、差し押さえることができない
と書いてあります。これは絶対的な法律による制限です。これは任意であってもそう
いう規制はできないはずなのです。ところが厚労省がそういう通知を出しているので
す。
私としては声を大にして、どこかの退院した妊産婦さんが、退院後に直接支払いを
一度契約しておきながら解約して、解約したけどその解約が認められなくて医療機関
の方に入ったことによって、それを理由にして産婦さんが国に対して違法な行政指導
をしているといって損害賠償請求を起こすか、申し訳ないけども産科の方にやってい
ただいて、不当利得の返還請求をすると確実にその問題点が表にあがるという風に思
っております。
ですから早めのうちにこれは任意の実施であっても廃止しないと、そういう問題が
おこるよということを法律的な観点から申し上げておかないと、結局、政府三役のせ
いになりますのでと思っております。
《シンポジウム終了後の会合で、本制度導入に関わった重要な医会の一人の人物を指
摘された。本制度を賛成する前に、我々、開業医に少しでも相談すればこの様な混乱
は起きなかったのに、その人物が独断に近い決定をしたらしいとのこと。しかも、本
制度に大きな欠陥があり、我々が壊滅的な経済的打撃を受けることを知らずに賛成し
たと言うのである。
その人物が、面子にこだわらず、謙虚に反省し、自らが退任すれば本制度は中止に
なると言う。どの社会でも引き際が肝心である。その人物に勇退を望むしかない。動
きが無ければ、我々は何らかの行動を取ることになるだろう》
法律上の問題点
・ 今回の直接支払制度は法令化ではなく通達。
通達=拘束力なし、任意、法律ではなく、罰則もない。
・ 健保法114条 被保険者の被扶養者が出産したときは、家族出産育児一時金とし
て、被保険者に対し、第101条の政令で定める金額を支給する。
・ 健康保険法の61条には、受給権の譲渡を禁じる規定。
この規定は法律的には厳しい「強制規定」であって、本来は当事者間での受給権譲
渡の合意(民法上の抵当な合意)があっても、健康保険法はその民法規定の特別法
規として譲渡の合意を認めないという規定。医療機関に受給権譲渡は出来ない。
・ 本制度は被保険者(患者)と医療機関に合意があれば受給権譲渡が可能との見解。
Q&A 問28 代理契約締結後の契約を解除について
1.被保険者は退院するまで契約解除可能
2.退院後の契約破棄は医療機関側は「信義則に反することとして解除できない」と
主張しえる。
3.専用請求書を支払い機関に提出した後では被保険者は代理契約の破棄をすること
が出来ない。
《2は「解除出来ないと主張し得る」とあり、強制ではないとも読める。例えば、被
保険者が支払い機関に専用請求書が届く前に解除を要求した場合は拒否できない。拒
否すれば、健康保険法61条の違反になる。被保険者が退院直後に解除すれば一時金
は被保険者に渡り、医療機関には一時金が振り込まれないことになる。医療機関は追
跡不能だから、その分娩費の大半が回収不能となる》
融資について
政府系金融機関 独立行政法人福祉医療機構の融資条件
(厚労省は医療機関に対して、この機構を融資の斡旋窓口として紹介)
平成21年10月8日、無担保融資可能額3000万円、融資利率1.1%、保証人
1人となった。
私は9月1日より、この機構に融資を申し込むため、大量の書類を提出した。最初
の若い担当官は面倒くさそうに、患者さんにこの制度を利用しないように説得しなさ
いと指導してきた。厚労省からは容易に融資が可能と言われていると告げると、知ら
ないと言う。初取引だから民間の金融機関と同様に、審査は厳しいのは当然と言われ
る。最終的には、当クリニックに資材を納入している会社の決算書提出を求められた。
他人の会社の決算書など入手出来るはずがない。それを理由に融資を断られた。無理
難題の資料を要求してくるなど、元々貸すつもりは無いのである。
地元の民間金融機関は本制度では融資は不可能と言われた。
医会会報(平成21年12月1日発行)によれば、この機構に申し込んだ「2百数十
件のほとんどに貸し付けを行っている」とあるが、私を含め友人達でこの融資を受け
られた人を知らない。東京医会会長ですら融資を断られている(TAOGグリーンレ
ターバスケット、2000年11号)。融資を断られた理由は、貸借者が高年齢、収入
が少ない、債務超過である等が大きな理由である。医会は、貸し渋りで苦労している
我々に直接調査をせず、機構官僚の言葉を鵜呑みにして会報に載せれば、何も知らな
い我々にミスリードどころか、恣意的に事実を糊塗している様にさえ思えてしまう。
さらに、
「これを機会に増額できた施設もあり好評なところも多い」と、あたかも分
娩費便乗値上げを薦めるような記載さえある。分娩費設定は個々の施設での自由判断
であり、この記載は、本制度が少子化対策の一環であることを理由に、本制度を奨励
している医会にしては本末転倒の考えである。少子化を防ぐために、懸命な企業努力
で分娩費を値上げしていない医療機関に対して失礼極まりないどころか、国策に反す
る暴言である。
さらに、分娩費を数万円便乗値上げしても税金が増えるし、納税後、10月11月
の膨大な永久損金分を補填するには多くの年数がかってしまう。貯金を切り崩して運
転資金に充填している施設もあると聞くが、貯金は納税後の財産で、同額を補填する
には、また、多くの納税が必要であり、さらに10月11月の損金は閉院するまで戻
らない。医会は、経営のことを分かっているのかと疑問に思う。経営面の負担だけで
も、本制度を中止するしか方法はないのである。
また、会報には「8月に行われた厚労省との教義で・・時間的猶予を求めた・・会
長の挨拶のとおりの経緯で6ヶ月の猶予となった」と、医会の要求で猶予になったと
記載されている。しかし、ロハス・メディカル(2009年10月4日)によれば、
『取
り下げられた猶予の要望』との題で「8月21日 医会執行部が「3ヶ月程度の実施
猶予」を厚労省に提出。
・・・9月8日 医会が厚労省に猶予の要望を取下げ「医会が
直接払いに後ろ向きな医療施設を丁寧に指導していく」と約束」とある。メディアが、
根拠も無く記事を掲載する事は無い。医会の猶予の要望は3ヶ月で6ヶ月では無い。
それどころか、猶予の要望を取下げ、なんと我々会員に背信行為的な「医会が直接払
いに後ろ向きな医療施設を丁寧に指導していく」と約束さえしているのである。もし
も、ロハス・メディカルが虚偽記載をしているのなら、医会の名誉のため断固たる抗
議をしなければ、医会会報の信憑性が疑われることになる。
現況報告
A県のあるクリニックの昨年度10月の分娩退院者の窓口収入の比較を図に示す。
あるクリニック10月1日∼31日の分娩退院者の窓口収入の比較
2006年
2007年
2008年
2009年
分娩合計
現金
代理
2006 年
22
22
2007 年
22
18
4
2008 年
26
20
6
2009 年
19
2
直接
17
図に示すように本制度を導入すれば、当然のことながら窓口収入は激減する。
江東区には産科施設は3診療所しかなく、3施設とも本制度は導入していない。そ
の他、開業産科医は、足立区や江戸川区、練馬区、日野市などもほとんどがこの制度
を導入していない。導入しようにも、経済的に立ち行かなくなるから導入出来ないの
である。
12月1日の医会の「アンケート調査のお願い」の文中には『予備調査では本制度
参加率が85%前後という情報もあります』とあり、ほとんどが今度の制度を利用し
ているように受け取れる。これでは制度を利用していない医療機関があたかも悪いよ
うな印象を持たれてしまう。
非公開情報ではあるが、東京都の平成21年11月出産育児一時金受付状況(平成
20年10月の制度利用数)によると、都内195産科医療機関中、本制度利用医療
機関は140で72%である。しかし、この利用機関は1人でも制度利用者がいれば
医療機関数にカウントされてしまう。取り扱い件数は3279人であり、昨年の都内
の一月あたりの出生数が約8500人であるから、39%に満たない推定利用者数に
なる。
「アンケート調査のお願い」には予備調査とあるが、いつ何処で行った調査なのか
記述がなく、85%の根拠が不明である。このように医会の文章にはあたかも真実だ
と思わせる、虚偽に近い記述でミスリードするような記載があるので注意しなければ
ならない。
私のクリニックでは夫も参加する母親学級を行っているが、そこで「今度の制度を
使うと2ヶ月間分娩費を無料でやらなければなりません。皆様方のご主人の給料が2
ヶ月間支給されなかったら大変でしょう。そして、その給料2か月分は会社を辞める
まで入ってこないのですよ」と説明すると納得してくださり、さらには、同情してく
れた患者さんが本制度を利用しないため、今まで通りの経営状態が続いている。
まとめ
産科開業医においてほとんど未払いは存在せず(そのために予納金などで対処)、本
制度のメリットは開業医療機関にはほとんどありません。
本制度は、保険に加入しているもののみが対象の制度なので、未払い問題には全く
意味がありません。厚労省に確認したところ出産時保険に入っていない場合は自費で
もらえ、ということでした。それならば保険に加入しておらず、かつお金も用意して
いない人は出産を断ってもいいのか、と尋ねたところ返答はありませんでした。
健康保険法では第61条に受給権を保護するために保険給付を受ける権利は、譲り
渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないことが規定されています。これ
は明らかに健康保険法違反の通達です。法律と通達の関係からみれば健康保険法が優
先するのは当然のことでしょう。
23年4月以降の制度はどうなるかは、現実的には出産一時金の支払いは保険現物
給付の形式がすでに整っているので健康保険法を改正して法律の上からも追認する、
という手法をとることでしょう。その結果、厚労省の思惑とおり分娩費は現物給付と
なってしまいます。なんとしても、この健康保険法改正は阻止しなければなりません。
本制度は国の一方的な改正で不利益を生じるのは医療機関のみであります。新制度
により入金時期が2ヶ月遅れとなるため、約3割の施設が今、経営危機に直面してい
ます。
貸し渋りで融資を受けるのは困難であり、大半の産婦人科医が資金繰りに支障をき
たします。本制度で金融機関からの融資がなければ、約1割の産科開業医が廃院する
統計があります。融資は本来なら、非課税、無条件、無利子、無担保、上限無しの融
資をするべきです。
現場の医療機関が資金ショートする問題もあり、瑕疵のない医療機関が、本制度の
ために保証人をつけて金利を払いながら融資を受けなければならない事態が22年4
月に来ようとしています。本制度は即刻廃止すべきだと思います。
しかし、根本的に違法である本制度のために、何故、我々が融資を受けなければな
らないのでしょうか。出産融資貸付制度を充実させ、全額貸付にすれば何も問題が無
いのです。
平成22年3月までの執行猶予期間に本制度の中止運動を展開しましょう。
海野信也北里大教授はロハス・メディカルに「しくじりのツケを妊婦さんに負わせ
ることになってしまい、本当に申し訳なく、我々も含めて関係者一同で謝罪する必要
があると思います。大臣にも意に染まない決断をしていただいたと思いますが、それ
でも今回はこうするしかなかったのです」と語っています。
海野教授が動いた理由の一つは、医会MLに流れた開業医の嘆きに大変に心を打た
れたからだとのことです。そのメールを紹介して中間報告を終わりにします。
−−自分はお産が好きなので、ほとんど儲からない中で、家族に迷惑をかけながら細々
と診療所をやってきた。でも、今回の資金繰りをすることは絶対にできない。悲しい
けれど診療所を閉める−−
FAX 送信文1
院長殿
突然の FAX をお許しください。
10 月1日より「出産育児一時金等の医療機関等の直接支払制度」が開始されます。
この制度には色々な問題点があります。
・経済的問題点
1)10 月 11 月 12 月の未入金は永久に戻りません。
理論的には閉院後、戻りますが現実的には永久損金となります。
2)21 年の年収は 20%ほどの現金が減収になります。
設備のローンやリース代金支払いに窮します。
3)融資返済に融資額の2倍以上の資金がかかります。
元本返済は同額の税金が必要で、さらに利息も支払うためです。
4)長期的に経済的負担がかかります。
高額な元金の一括返済は不可能で、分割返済しか方法は無く、長期的に経営を圧迫します。
★結論
医療機関が一方的に未入金額の2倍以上の負担額がかかり、長期的に経営を圧迫する異常な制
度です。
・税金について
今回の未収入金はいずれ戻る売掛金と見なされ、今年の納税対象となります。
例)未収入金が2千万円とします。
そのクリニックの税率を所得税・住民税を 50%とします。
2千万円の未収入金は、1千万円の税金がかかります。
合計3千万円を金融機関から借りることになります。
3千万円の元金返済には、納税後ですから、税率 50%なら3千万円税引き後の3千万円
で返済します。
3千万円の元金+3千万円の税金+利息=6千万円+利息となります。2千万円の未収入
金のために6千万円+利息を払わなければなりません。
この様に高額な借金が必要になることは納得がいきません。
この新制度を強制することは財産権の侵害であり、憲法違反の疑いすらあります。
厚生労働省総務課「現時点で制度導入に変更はない」と説明しています。
是非とも新制度の再検討が必要です。
★お願い
「日本のお産を守る会」が署名運動の長妻昭厚生労働大臣に対する要望書を集めています。
その要望書を送りますので、署名運動にご賛成の方はご協力をお願い致します。
貴院の職員さんもご賛同いただければ、ご記入をお願い致します。
お忙しいと思いますが新制度の導入が迫っています。宜しくお願い致します。
平成 21 年9月 25 日
池下レディースチャイルドクリニック院長 池下久弥
〒134-0083 東京都江戸川区中葛西 5-2-41 TEL03-5605-4103
FAX03-5605-2277
FAX 送信文2
長妻昭厚生労働大臣に対する要望書
平成21年9月
日本のお産を守る会
赤堀彰夫、石井廣重、衣笠万里、木内敦夫、
田中啓一(代表)、前田津紀夫、船橋宏幸 代表住所:
京都市右京区嵯峨釈迦堂門前瀬戸川町4−8
[要望趣旨]
日本の分娩の99%をになうのは産婦人科医です。全国各地に展開する開業産科診療
所、中小病院産科、2次病院産科、高次病院周産期センターの連携により周産期死亡率
及び母体死亡率において世界有数の水準を保持し続けています。
ところが平成21年10月1日から実施予定である出産育児一時金の直接支払制度によ
り、分娩費の医療機関への入金時期が2ヶ月遅れとなるため、約3割の施設が今、経営危
機に直面しています。また約1割の施設は廃業に追い込まれようとしています。
そもそもは出産育児一時金の増額という妊産婦に好ましい制度変更がかえって産科施
設を失うという皮肉な結末をもたらそうとしているのです。
私どもはこのような事態を避けるため、緊急に以下の3項目を要望しています。
[要望事項]
1. 出産育児一時金の可及的すみやかな入金処理を要望します(せめて産後1週間ま
でに)
2. 現行の事前申請による代理受取制度の存続を要望します(妊産婦にとって直接支
払制度と同等の利便がありますが、今回廃止されようとしています)
3. 直接支払制度に伴う事務手続きの簡素化を要望します。
名前
所属
職種
FAX:075−873−2926
▼
田中啓一先生宛
FAX 送信文3
院長殿
たびたびのFAXをお許しください。
緊急提言です。
池下レディースチャイルドクリニック院長 池下久弥
〒134-0083 東京都江戸川区中葛西5−2−41
℡03-5605-4103 Fax03-5605-2277
明日の平成21年9月28日月曜日の午後、厚生労働省において長妻昭厚生労働大臣と「出
産育児一時金等の医療機関等の直接支払制度」の折衝が行われるようです。その会議に我々
開業医師達の真の要望が必要になります。
なんとか状況を緩和できるように、日本のお産を守る会の要望の内容が少しでも実現でき
るように努力が続いています。
(100%は無理な状況なのですが、少しでも産科医療機関が
困らないようにしたいと思います)
それを支援するための一つの手段として、民主党議員から政権への働きかけが有力と思わ
れます。
できるだけ多くの先生からそれぞれの地元の民主党国会議員に電話、ファックス、メール等
で要望を述べていただきたいと思います。
現在の多くの産婦人科開業医の意見を集約しますと、
「一刻も早く、長妻大臣・副大臣・政務官にお願いして、なんとか窮状を救って欲しい、そ
うでないと、この選挙区で地域の分娩環境は到底守れない。自分は頑張っても、こんなこと
では到底跡継ぎはいないし、自分も若者に継いでもらう気にもなれない。今回のことは産科
医絶滅の雪崩現象(土砂崩れ?)を引き起こそうとしている」
と言うような地域では産婦人科開業医の悲鳴が聞こえます。
「とりあえず、新制度の実施を3∼6カ月行わなくても現場はなにも混乱は起こりません。
今までどおりだからですし、今までの事前申請の支払い制度をやめなければいいのです。そ
の上で、この期間を利用して、お産が行われたらすぐに支払えるようなスキームを研究する
ことが1番矛盾がないと思います」
「厚生労働省が薦める所轄の政府系金融機関 独立行政法人福祉医療機構では融資を断られ
るケースが続出しています。民間の金融機関はこの制度を理解できず、融資は不可能で資金
繰りに困窮しています」
「実施する医療機関とそうでない医療機関を認める移行期を作り、並存することは混乱を起
こします。分娩は35週くらいで帰省分娩をしたりする方が多く、クリニックを変えること
が多いためです。」
「新制度を中止するか延期をすることが各産婦人科医院にとって説明がしやすいと思いま
す」
以上のようなことが要望されています。
この新制度の折衝が明日、9月28日月曜日の午後に予定されているようです。
もし、この新制度にご要望がありましたら、明日9月28日の午前中までに民主党議員の各
選挙区の議員宛に電話かファックスなどに連絡してみてください。
直接、長妻昭厚生労働大臣にFAXをするのも有効だと思います。
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
長妻昭厚生労働大臣
事務所
FAX
03−5342−6552
研究会から学会への要望書
「日本産科婦人科学会理事長殿」
要望書
今回の「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度(以下直接支払制度)」は、
『これまで、出産育児一時金及び家族出産育児一時金については、原則として出産後に被保
険者等が保険者に申請し、支給される仕組みであったため、一時的に被保険者等が多額の現
金を用意する必要が生じていたところであるが、緊急の少子化対策の一環として、安心して
出産できる環境を整備するという観点から、被保険者等があらかじめまとまった現金を用意
した上で医療機関等の窓口において出産費用を支払う経済的負担の軽減を図るものである。
(実施要綱趣旨より抜粋)』という制度での決定的な制度ミスは、医療機関の経営を考えずさ
らに事務負担を増やすことであった。もしこれが実施されれば、多くの産科医療機関が経営
危機に陥ったところである。
単にこの制度の要綱趣旨に書かれているように被保険者の経済的負担の軽減を目的とする
のであれば、現状でも保険者の裁量に任されていた出産融資貸付制度、生活福祉資金貸付制
度、を拡充することで十分に対応可能である。現に今もこの制度は運用されており、今回の
『直接支払制度』の延期に伴い、中止を決めた保険者でも通達により簡単に復活できた、運
用しやすい制度である。
医療機関の経営危機を引き起こさず、さらに『直接支払制度』実施により増える事務量の
増大による負担をやめ、現行の制度の拡充を求め医療機関の経営安定化、ひいては国民に安
定して産科医療を提供するために以下を要望するものである。
要望
1. 出産融資貸付制度の限度額を 10 割とし、全額貸し付けること
2. 生活福祉賃金貸付制度の拡充による出産費用への充当すること
3. 1−2より不要となる『直接支払制度』は中止すること
4. 医療機関への事務量の軽減を図ること
以上
平成21年10月
産科中小施設研究会
事務所
世話人
会員数
〒134-0083 東京都江戸川区中葛西 5−2−41 池下クリニック内
TEL&FAX 03-5605-2277
鈴木正彦(代表)
、堀口貞夫、関根憲治、久保田繁、大川豊、土屋清志、
池下久弥
約400人
FAX 送信文4
産婦人科の先生方皆様へ
私ども産科中小施設研究会から届けたいメッセージがあります。出産育児一時金の
直接支払制度に関しまして、厚労省通知や産婦人科医会通知をご存じのことと思いま
す。
10月1日から出産育児一時金の支払い方法が従来とちがって医療機関に直接支
払われる仕組みに変わろうとしていました。しかし、この仕組みには大きな問題点が
あり、私どもは厚労大臣に要望書を提出する署名活動(資料1)や民主党議員への働
きかけなどで協力しました。長妻大臣はとりあえず、10月1日から実施せず、猶予
期間を設けることを決めました。現在、署名者数は8300人以上になり、行政が制
度を変更するという奇跡的なことが起きました。これも皆様方のご協力のおかげで
す。本当に有難うございました。
さて、今、どうしたらいいのか、お困りの施設が多数あるように思われます。私ど
もから次のような指針を僭越ながら、発表いたします。
1.直接支払制度を採用するかどうかは元々、任意なのです。しかも猶予期間がもう
けられました。よほどの理由のない限り、始めないでください。始めない場合に
妊婦さんと交わす合意文書の見本(資料2)を掲げますので、参照してください。
2.貸付制度が従来からあり、現金を用意するのが困難な妊婦さんに利用を勧めてく
ださい。私どもは、貸付割合を10割にあげるよう、行政に提言を行なっていま
す。
3.事前申請受取代理制度は市町村、組合によってはまだ存在しています。
この制度を使うようにしてみましょう。
以上の3方法によりまして、妊婦さんの負担を軽くしてあげる一方で、医療機関が
予期せざる負担をしなくてもすむことになります。
また、10月に日本産婦人科学会理事長に提出するために作成した要望書も添付い
たします(資料3)。御覧くださるようお願いします。長妻大臣へ届ける声となりま
す。
平成22年4月1日以降、どのような仕組みを作るのか、現場で日々妊婦さんと向
き合う私たちの声を学会理事長、長妻大臣に届けましょう。日本の分娩施設を守るの
は私たちなのですから。
★お願いがあります。長妻厚生労働大臣に対する要望書を添付します。皆様の真実の
声を届けたいのです。
この制度を変革するには出来るだけ多くの方のご意見が必要です。産科中小施設研
究会の会員ではなくても、各都道府県の同じ思いを持つ方々にも要望を述べていただ
きたいのです。是非とも知人の方々にも添付した要望書を送っていただけたらと思い
ます。
平成21年10月7日
事務所 〒134-0083 東京都江戸川区中葛西 5−2−41
TEL:03-5605-4103 FAX;03-5605-2277
産科中小施設研究会
池下クリニック内
江東区議会への陳情書
「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」
見直しと中止に関する陳情
江東区議会議長
第1
陳情の趣旨
「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」は平成21年10月1日から施行でした
が、6 ヶ月の猶予となりました。この制度により、分娩費の医療機関への入金時期が2∼3ヶ月
遅れとなるため、約3割以上の施設が経営危機に陥り、1割の施設は廃業に追い込まれること
になります。
そもそも出産育児一時金の増額という妊産婦に好ましい制度が返って産科施設を失うという
皮肉な結果をもたらそうとしています。
この制度の中止を江東区から厚生労働省に提言する事を陳情致します。
第2 陳情の理由
1 出産育児一時金等の直接支払制度の経営的問題点
平成21年10月1日より、医療保険各法に基づく出産育児一時金等の支給額及び支給方法
について見直しがされることになり、支給方法として、妊産婦等が予めまとまった現金を用意
する経済的負担を軽減するなどの観点から、医療機関等への直接支払制度(以下「本件制度」
と言います。
)が創設されました。
本件制度は、原則として、各医療保険者から、直接、助産所や病院などに出産育児一時金が
支払われる仕組みですが、当該支払がなされるまで2∼3ヶ月の期間を要することから、医療
機関は経営危機に陥ります。
2 見直しに伴う運転資金の融資について
一時的な資金不足に対する産科医療機関の経営安定化資金として、独立行政法人福祉医療機
構による貸付利率年1.1%程度(但し最優遇金利の適用による変動利率である為、貸付時期に
より異なる)の融資対応がされることとなりました。しかし、その実、経営安定化に必要な金
額・条件での融資は困難な状況です。
3 江東区の出産事情
江東区の出生数は平成20年は4096人でした。
江東区には、出産施設は有床診療所3、助産所2の合計5施設しかありません。
この5施設が江東区出生数の約半数の分娩を扱っています。
しかし、5施設とも分娩費の2∼3ヶ月遅れの入金では、人件費や経費の支払いが困難で、
経営の危機にさらされています。
4 「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」の中止要請
本件制度は、言うまでもなく緊急の少子化対策として創設されたものですが、産科医療機関
の保護も伴わなければ、結局、有効な少子化対策は実現不可能となります。
よって、産科医療機関の保護は、少子化対策に必要不可欠なものとなります。
そもそも、少子化対策の為の本件制度が、出産育児に関わり、少子化対策を直接担う医療施
設の負担となることは、本末転倒と言うべきであり、この制度を中止することが産科医療機関
の保護になります。
特に、江東区は、子どもが増えている数少ない自治体である一方で、お産を取り扱う機関が
少なく、その保護は特に重要であると言えます。
5 まとめ
長妻厚生労働大臣に対する要望
1.出産融資貸付制度の限度額を 10 割とし、妊産婦等へ全額貸し付けること
2.生活福祉資金貸付制度の拡充により出産費用へ充当すること
3.1−2により不要となる『直接支払制度』は中止すること
4.医療機関への事務量の軽減を図ること
以上のとおり、出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度は江東区の出産事情に反す
る制度です。是非とも厚生労働省に本件制度の中止を求めて頂きたく、その旨、陳情致します。
以上
学会の厚労大臣への要望書