平成 26 年 3 月 14 日 版 全ての児童が抵抗なく取り組める呼吸・消化実験の工夫 鎌田 明美 1 ねらい、目的 小学校6年「動物のからだのはたらき」では,児童の理解の充実を図るために,映像や模型などを 活用しながら推論することも重要である。しかし,実際に実験できることについては,できる限り全 員の児童に取り組ませたい。実験器具の都合等でグループ実験しかできない内容もあるが,全員がで きるように工夫することで,児童が自らの問題として追究活動ができるものと考える。 2-1 「呼吸の実験」教材の内容 (1) 準備物 ・各自 ビニール袋 ストロー(少し太め) ・各班 ピペット(スポイト) 洗濯ばさみ(ピンチコック) 石灰水 (2)実験の進め方 ① ストローをビニール袋の口にはさんで絞り,セロテープで固定する。 ② ストローをくわえて数回呼吸した後,ストローを洗濯 ばさみ(ピンチコック)でとめる。 ③ 袋の中を観察させる。ビニール袋の内側に水滴がつく ので,ヒトの体からはき出された空気には水蒸気が多く 含まれていることが推論できる。 ④ 各班に準備していたピペット(スポイト)を使って, ストローから石灰水を流し込み,洗濯ばさみでとめる。 ⑤ ビニール袋を振って,白濁することを確かめ,ヒトの 体からはき出された空気には二酸化炭素が多く含まれて いることが推論できる。 (3)工夫・コツ 安価なビニール袋やストローしか使用しないので,各自で実験が可能である。また,より安全 かつ効率的に実験できるように,ストローから石灰水を入れ,洗濯ばさみでとめて振るようにす る。 2-2 「消化の実験」教材の内容 教科書の消化の実験では検体が各班1人分で,ストローを使って唾液を入れるようになっている。 全児童数の試験管を用意してもよいが,片付けで洗浄する際に,自分の使用した試験管であっても抵 抗があることが予想される。 平成 26 年 3 月 14 日 版 また,児童が嫌がるのはストローで唾液を入れると泡だってしまう点で,この見た目を変える必要 性がある。そこで,次のように工夫してみた。 (1)準備物 ・全体 でんぷん液(ご飯・流し三角コーナーネット〔不織布タイプ〕) 湯 ・各自 密閉パック付き収納ビニール袋 ・各班 ピペット(スポイト) 滅菌ガーゼ ヨウ素液 ビーカー 温度計 (2)実験の進め方 (事前に)流し三角コーナーネットを2重にしてご飯を入れ,水を入れたビーカーの中でもんで, でんぷん液を作る。それを,ビニール袋に少量ずつ入れておく。 ごはんが甘くなったように感じ ① 少量のご飯を口に入れて咀嚼し,口の中での変化を記録する。 るね。だ液(つば)がたくさん ② でんぷん液の入ったビニール袋を全員に配り, 出てきたよ。 名前ペンで記名させる。 ③ 滅菌ガーゼをわりばしで取らせて,1~2分間, ものが口に入ると,だ液(つば)がた くさん出るね。かむようにあごを動か 口に含ませる。 すと,さらに出てくるよ。 ④ 口の中の温度を考えて,体温くらいの40℃に して実験しなければならないことを推論させる。 口の中を再現しよう。 ⑤ ビーカーの中に40℃の湯を用意する。 ⑥ ガーゼを自分のビニール袋に入れ,でんぷん液が入っていて ガーゼ(だ液)を入れない対照実験のビニール袋も合わせて, ビーカーの中に入れる。 ⑦ だ液の働きで,でんぷん液はどうなるかの予想を確かめておく。 だ 液 は 1 日 あ た り 1 ~ 1 .5 リ ッ ト ル も 分 泌 さ れ る ことや分泌腺の位置などを補説しておくとよい。 ⑧ 各班に配っておいたピペット(スポイト)で,自分のビニール袋と 対照実験のビニール袋にヨウ素液を入れて色の変化を見させる。 (3)工夫・コツ ○ 事前にでんぷん液を準備できるので,実験が効率的に行える。 ○ ストローと違って,ガーゼを使うので,唾液の採取の際,「泡 立ってしまう」という見た目の問題が解決される。 3 ○ 各自が自身の体(唾液)を調べる実験なので,主体的な探求活動となる。 ○ ビニール袋ごと廃棄して片付けができるので便利である。 まとめ このように,身近なものを活用し,自分の体を使った実験を全員にさせることができると,子ども たちの知的好奇心が高められます。そして,自身の体の働きについて調べることを自己の学習問題と して意識し,探求する問題解決学習にすることができます。準備も操作も大変簡単ですので,是非, 実践してみてください。
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