第26回日本社会福祉学会秋季大会 若手研究者のためのワークショップ - 鈴木俊文(すずきとしふみ) 静岡県立大学短期大学部社会福祉学科専任講師 日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科非常勤講師 【私の研究テーマ】 ①認知症ケア(特に実践知や暗黙知によるアセスメント) ②災害福祉(特に被災時の介護施設の福祉経営・災害介護過程) ③福祉教育方法・人材育成方法 (スーパービジョン、職員教育プログラム、地域福祉計画、自治体指針作成等) 研究テーマ 高等教育における卒後教育の課題 -介護福祉士のキャリア発達プロセス・要因に基づく 研修体系の構築を目指した研究デザイン- 対象 ・グラウンデッドセオリーアプローチ ・現象学的アプローチ ・事例コードマトリックス ②災害福祉 介護施設職員 ・エスノグラフィックアプローチ ・事例コードマトリックス ③福祉教育方法 人材育成法 介護福祉士 ケアマネジャー 社会福祉士 当事者団体 ・カードワーク ・質的統合法 ・グラウンデッドセオリーアプローチ ・事例コードマトリックス ・TEM/TEA(複線経路・等至性モデル) 静岡県立大学短期大学部 鈴木俊文 質的研究手法を(も)用いた 指針・教材開発 フィールドワークを基本とした現場研究 フィールドワーク 指針・計画 策定・評価 エスノグラフィー 事例・コードマトリックス データ 観察 現場 面接 質問紙 記述 フィールドノーツ 面接記録 集計表 グラウンデッド・セオリー 調査・研究手法 ①認知症ケアにおける 介護福祉士 実践知や暗黙知 ケアマネジャー 家族介護者 日本福祉大学 地域ケア研究推進センター 代表:平野隆之教授 静岡市地域福祉活動計画 評価推進委員 カードワーク 現象学 社会的現実を記述・分析する解釈アプローチ 質的研究手法を用いた 人材育成システムの開発 教材開発 介護施設における災害対応 研修モデル・教材開発 (科研) 日本福祉大学 大学院質的研究会 代表:田中千枝子教授 質的データの収集と分析 質的研究は質的データを分析する 質的データ(定性データとも呼ぶ)の分析 人々の行為、語りに含まれる ① 介護老人福祉施設における職場 内循環型人材育成モデルの開発 (受託研究:産学民間連携事業) 観察 インタビュー データ 文字テキスト化 収集 (逐語起こし) ② 文字テキストの 切片化 データ ラベル化 カテゴリー化 分析 (コーディング) 意味 を探求する ③ 図解化 結果 ストーリーライン 考察 第26回日本社会福祉学会秋季大会 若手研究者のためのワークショップ - 高等教育における卒後教育の課題 -介護福祉士のキャリア発達プロセス・要因に基づく 研修体系の構築を目指した研究デザイン- 介護福祉士の実践現場では、「認知症ケア実践者研修」「ユニットケアリーダー 研修」等の「義務研修」や、「実習指導者研修」「ファーストステップ研修等が「指 導者(リーダー)養成研修」等が整備。 しかし、これらを受講し、キャリアを積み上げている人はどの程度か・・・。 ①卒後の現状 初任期・中堅期・管理職期へのキャリア発達のプロセスは? ②卒後の課題 キャリア発達(形成)のプロセス・構造・関連要因はなにか? 研究テーマの設定(絞り込み) 3 初任・中堅・管理職の キャリア発達の実態(プロセス) インタビュー1 インタビュー2 研修ニーズ 暗黙知 キャリア発達 (現状) 介護福祉士のキャリア発達に係る ―キャリア形成プロセスと促進・阻害要因に焦点をあててー 事業種別毎の プロセス研究 5 方法(研究の進め方) 1 2 3 卒業生(介護福祉士)のキャリア発達の プロセスを探る 5 インタビュー 自身の役割とそれを担うために 必要な知識、技術、態度等 キャリア発達の段階で変容する能力の 促進・阻害要因を探る キャリア発達の過程から「実践概念」 「促進要因概念」「阻害要因概念」がみえる? 4 1)対象 初任期、中堅期、管理職期を時期区分にして調査 キャリア発達のプロセスで自覚していた 自身の役割(実践)を探る キャリア発達のプロセスで芽生えている 事業種別毎の課題・研修ニーズの考察 卒後教育に求められる研修内容の検討 視点・内容) グラウンデッド・セオリーアプローチ 事例・コードマトリックス TEM/TEA キャリア発達・形成過程における 促進・阻害要因から研修ニーズを探る 4 (卒後教育の 視 点 ② 視 点 ① 研修ニーズの分析 視 点 ② 研究設問 ③卒後教育で求められる研修内容 ①②の過程で関連する「研修ニーズ」はどのようなものか? それらは、「各実践現場(介護事業種別)」においてどのような共通点・特性 があるか? 静岡県立大学短期大学部 鈴木俊文 視 点 ① 研究目的 卒後教育としての「研修体系」を検討・整備することをねらいに介護福祉士の 卒後のキャリア発達プロセス・要因を明らかにし、それらに関わる研修ニーズを 探求する(卒後の現状と課題)。 (背景) 研究計画 2 1 GTA 事例 コードマトリックス 分析結果に基づく 研修企画 事例(比較)研究 研究方法(第一段階調査) 卒業生(介護福祉士各取得者) 7名※ 実務経験10年以上 ※個人を対象 ※7種別 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、 障害者支援施設、通所介護、訪問介護、認知症グループホーム 2)期間 2013年12月~2月(計7日間) 3)方法 修正版グラウンデッドセオリー・アプローチ(以下M-GTA) ※データ収集はインタビュー調査(半構造化インタビュー) 4)ねらい ①卒後のキャリア発達のプロセス(実態:「初任期、中堅期、管理職期」 を捉える ②キャリア発達(形成)の関連要因と、それらの関係性を明らかにする 6 1 卒業後、介護福祉士としてのキャリア発達を「初任期」「中堅期」 「管理職期」の3期に分けるとすると、各段階はどれくらいの年月 でどのような実践活動・役割を担ってきたと思いますか? 2 ①において、キャリア発達の過程で感じていた(自覚していた) 「自分の役割と、それを実践するために必要な能力」はどのよう なものだと捉えていましたか? 3 M-GTAでは分析ワークシートを活用 7 インタビューガイド(半構造化インタビュー) ②でお答えいただいた「実践するために必要な能力」は、どのよ うもので、各3つの成長段階をとおして、どのように変化していき ましたか? 概念名 定義 ヴァリエーション 理論的メモ また、それらの能力を獲得、発揮できた要因や、十分に発揮で きなかった要因として、どのようなものが考えられますか? 4 ③の過程で発生していた(自覚していた)研修ニーズはどのよう なものですか?また、それらに役だった研修がありましたか? M-GTAでは分析ワークシート(イメージ) 8 概念名 ケアとしての嘘 定義 認知症者の興奮や不安を軽減する目的があり、認知症者の訴えに対し、ごまかしたり嘘をつくことを「ケア」とし て意味づけた介護職員の行為. ヴァリエーション なんだろ。結構さまざまですよ。「私、家に帰りたいの」とか言うんですけど(認知症者が)、それで、結構話しを 聞いていくと、お金をとりに帰りたいとか出てくるんですよね。で、「お金は事務所で預かっとるからね。僕も事務 所に預かってもらってるんです」って言って、一緒の立場だよという風に対応してます。No.2 あのGさんとか、時々「家に帰りたい」とか「お金がいる」とか言うんです。で、そういう時は、「今度買い物にいけ る日がありますよ」「なんかほしいものがありました?」とか言うと「あれがほしい」とか言うんです。で、そこで納 得されて話が終わったりとか。あと、「今日帰りたい」って言う時は、「もう帰るの?明日、兄さんまたくるんだけど、 おらんの?さみしいな」とか言うと「ほっか。じゃあもう一日おるかな」と言われたり。あと「仕事にいかにゃいか ん」っていう人もいますよね。で、その人の時は、「明日の朝、大変な仕事があって人手が足りないんですよ」と か言ったりします。そうすると「何時?」って聞かれて「朝の7時です」って言うと「そんじゃもう一日おらんといか んな」って言われたり。結構、よいしょよいしょしたりする(認知症者に対して)ことが多いですね。No.2 あ・・。Eさんですね。Eさんの場合は、そのまま「家には帰れんよ」というと落ち着かなくなっちゃっうんですよ、 逆に。んーなんていったらいいかな。まあ、まるっきり全部嘘はいっちゃいかんなと思って、言葉を選び選び対 応してるって感じです。言葉をにごすっていうかごまかすっていうか。でも、悪気はありつつも、安心してくれれ ばいいかなって。No.3 理論的メモ 9 予測される結果 概念 ①初任期、中堅期、管理職期で何をしていたのかという「実践活動」の (欠点) 概念は豊富に生成されるのではないか。 ・各障害の理解を単独に捉え、対象者の状態 ②一方で、それらを発揮するうえで必要な能力等の自覚が十分にはな く、うまく言語化出来ない為に、概念数が少なくなるのではないか。 が ③阻害要因は、人材不足やコンフリクトに関連するものが多いのでは ないか 重度化、重複化すると、その状態に合わせ 必要 プロセス ①初任期は、事業種別に影響を受けず、シンプルな径路が描かれるの ではないか。 ②中堅期~管理職期では、それぞれの立場、役割が分岐する時期であ り、複数の径路が描かれるのではないか ③また、その径路では、うまくキャリア発達出来ない(伸び悩み)等、 一定時期にプラトー現象が生まれているのではないか? な知識・技術を統合し思考することを苦手と する 傾聴・共感・受容的な援助姿勢を持ちつつも,嘘やごまかしによって何とか安心させようという目的や,業務の 忙しさによってはやくその場でけりをつけようという複雑な意識も背景にある.過度な帰宅願望や被害妄想等の 困難事例(周辺症状)に多くみられる.悪気の無い嘘とも言える. 意 味 を 構 成 し て 一緒の立場、 よいしょよいしょしたりする、 言葉を選ぶ、 言葉を濁す、 いると考えられる キーワード 10 結果の予測 管理職期 中堅期 初任期 実践概念 経路1 阻害要因 概念 研修ニーズ 概念 プラトー現象 実践概念 阻害要因 概念 促進要因 概念 研究方法(第二段階調査) 経路2 研修ニーズ 概念 阻害要因 概念 11 研修ニーズ 概念 1)対象 卒業生(介護福祉士各取得者) 7名※ 実務経験10年以上 ※個人を対象 実践概念 研修ニーズ 概念 実践概念 促進要因 概念 経路3 ※7種別 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、 障害者支援施設、通所介護、訪問介護、認知症グループホーム 2)期間 2013年3月(計7日間) 3)方法 事例・コードマトリックス (orTEM/TEA) ※第一段階調査で生成した概念・カテゴリーを比較軸にした事例分析 実践概念 4)ねらい 促進要因 概念 第一段階調査の結果(プロセス)を基に、各種別毎の事例分析を行い、分岐点 や等至点、促進要因、阻害要因の共通点、差異点、特性課題を明らかにする 事例コードマトリックス 12 13 事業種別毎のマトリックス(事例比較) 初任期 事業種別 性別 中堅期 プラトー現象期 分岐点 等至点 必須通過点 (TEM/TEAに関連する用語) 管理職期 卒業年度 年齢 実践 促進 阻害 概念 要因 要因 ① ① ① 研修 ニーズ ① 実践 促進 阻害 研修 概念 要因 要因 ニーズ ② ② ② ② 概念 概念 概念 概念 実践 概念 ③ 研修 ニーズ ③ 特養 セグメントには 切片化した データ 老健 有料 明らかに出来ない 追加調査が必要 障害 通所 縦軸、横軸で分析 訪問 小規模 GH サトウタツヤ(2009)「TEMではじめる質的研究」誠信書房 14 本研究の限界・課題 ①本研究はあくまで、個人の経験を「記述する」ことを重視した(事例の 限定)アプローチであり、普遍性に限界。 ②初任期、中堅期、管理職期におけるキャリア発達の過程を明らかにする ために「10年以上」とした。そのため、対象者の特性が限定的(特に基盤 的知識の偏り等)。 ※介護福祉士養成課程は平成21年4月入学生から新カリキュラム ③さらに、②に関連して、過去の悩みのリアリティが損なわれやすい ※「今思えば良い勉強だった」等、時間経過の中で阻害が促進要因に? 卒業生の実態調査等、幅広く傾向を捉えることが出来ない課題と限界。 (限定した範囲でのリアリティのある説明は得意) しかし、質的研究は個人の経験を「言語」を用いて概念化できることから 具体的な実践言語を用いた現象特性や対象理解に貢献できる。 反面、抽象度を上げすぎる手法を採用すると、理論構築の段階で、リアリ ティがそぎ落とされ、個別の特性が見えにくくなる課題も発生。 • 木下康仁「グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践-質的研究への 誘い-」弘文堂. • 木下康仁「ライブ講義M-GTA-実践的質的研究法-」弘文堂. • 木下康仁「グラウンデッド・セオリー・アプローチ-質的実証研究の再生 -」弘文堂. • 箕浦康子「フィールドワークの技法と実際-マイクロエスノグラフィー入 門-」ミネルヴァ書房. • 箕浦康子「フィールドワークの技法と実際Ⅱ-分析解釈編-」ミネルヴァ 書房. • サトウタツヤ「TEMではじめる質的研究-時間とプロセスを扱う研究を 目指して-」誠信書房. • 安田裕子,サトウタツヤ「TEMでわかる人生の径路-質的研究の新展 開-」誠信書房. • 佐藤郁哉「質的データ分析法-原理・方法・実践」新曜社. • 田中千枝子編集代表/日本福祉大学大学院質的研究会編集「社会福 祉・介護福祉の質的研究法-実践者のための現場研究-」中央法規.
© Copyright 2024 Paperzz